- 新人理学療法士の病院勤務は「1日の確認順」を決めると動きやすくなります
- 新人理学療法士の1日の流れは「朝・介入・記録・共有」で整理します
- 朝は「今日変わったこと」から確認します
- 介入順は予定表だけでなく「安全性・時間制約・目的」で組み直します
- 介入前は「前回と同じ患者さん」と決めつけず安全性を確認します
- 介入中は「できたか」だけでなく反応の変化を追います
- 記録は「事実→解釈→次回方針」が読み取れるように残します
- 申し送りは「変わったこと」と「次に注意すること」を優先します
- 相談は「答えが分からない時」より「安全に進めてよいか迷った時」を先にします
- 退勤前は「未記録・未共有・明日の予定」の3点を確認します
- 急性期・回復期・療養系では「1日の重点」が異なります
- 新人PTが1日の中で詰まりやすいのは「全部を同時に処理しようとする時」です
- 新人理学療法士の病院勤務でよくある質問
- 次の一手|1年目全体の優先順位と記録・報連相を分けて確認します
- 参考文献
- 著者情報
新人理学療法士の病院勤務は「1日の確認順」を決めると動きやすくなります
新人理学療法士が病院勤務で迷いやすいのは、治療手技そのものだけでなく、朝に何を確認し、介入前後に何を見て、いつ記録・相談・共有するかという1日の動き方です。基本は、出勤後の情報収集→優先順位づけ→介入前確認→評価・治療→記録→申し送り→翌日準備の順に整理します。
この記事では、新人PTが病院で1日を回すときの確認ポイントを、朝から退勤前まで時系列で整理します。時刻や担当件数は施設によって異なるため、固定スケジュールではなく、「各時間帯で何を確認・記録し、どの時点で相談するか」をつかむための実務例として活用してください。

新人理学療法士の1日の流れは「朝・介入・記録・共有」で整理します
病院勤務の1日は施設ごとに異なりますが、新人PTが押さえたい業務の順番は共通化できます。特に重要なのは、予定表どおりに患者さんを回ることではなく、その日の変化を確認してから介入順と内容を決めることです。
| 場面 | 主な業務 | 新人PTが確認したいこと | 次の行動 |
|---|---|---|---|
| 出勤後 | 情報収集 | 夜間からの変化、検査・処置、安静度、医師指示、申し送り | 当日の予定へ反映する |
| 始業時 | 優先順位づけ | 状態変化、検査時刻、退院・転棟予定、他職種との調整 | 介入順を組み替える |
| 介入前 | 安全確認 | 症状、意識、必要なバイタル、ライン・ドレーン、当日の制限 | 実施・変更・相談を判断する |
| 介入中 | 評価・治療 | 患者さんの反応、介助量、症状、目標とのつながり | 負荷を調整する |
| 介入後 | 記録 | 何を確認・実施し、どう反応したか | 評価と次回方針を残す |
| 午後〜夕方 | 申し送り・情報共有 | 状態変化、注意点、病棟での介助方法、次に確認すること | 必要な職種へ共有する |
| 退勤前 | 残務・翌日準備 | 未記録、未共有事項、翌日の検査・カンファレンス・予定 | 翌朝の確認事項を明確にする |
時刻を暗記する必要はありません。予定が崩れたときも、「情報収集→安全確認→介入→記録→共有」の順番へ戻ると、次に何をすべきか整理しやすくなります。
朝は「今日変わったこと」から確認します
出勤後のカルテ確認では、患者さんの情報を最初からすべて読み直すのではなく、前回のリハ以降に何が変わったかを先に確認します。前日の評価がそのまま使えるとは限らないためです。
| 確認項目 | 見る内容 | 介入へのつなげ方 |
|---|---|---|
| 夜間・前回以降の変化 | 発熱、疼痛、転倒、呼吸状態、意識、食事・睡眠など | 前回と同じ負荷でよいか再検討する |
| 医師指示・安静度 | 新しい指示、活動制限、荷重条件、離床範囲など | 当日の実施範囲を確認する |
| 検査・処置 | 手術、検査、透析、点滴、処置などの予定 | 介入時刻や負荷を調整する |
| 看護・多職種情報 | 病棟での移動状況、ADL、症状、介助方法の変化 | リハ室だけでは分からない変化を補う |
| 当日のイベント | 退院、転棟、カンファレンス、家族指導など | 優先する患者さんと業務を決める |
新人のうちは情報量が多くなりやすいため、「何を知っているか」ではなく、今日の介入判断を変える情報は何かという視点で確認すると整理しやすくなります。
介入順は予定表だけでなく「安全性・時間制約・目的」で組み直します
予定表が組まれていても、当日の患者さんの状態や検査予定によって順番を変更する必要があります。新人PTが迷ったときは、少なくとも安全性、時間制約、介入目的の3点を確認します。
- 安全性:状態変化があり、介入前に医師・看護師等への確認が必要ではないか
- 時間制約:検査、処置、食事、入浴、透析、退院など時刻が決まった予定はないか
- 介入目的:カンファレンスや退院判断など、当日中に必要な評価はないか
自分だけで順番を決めにくい場合は、予定が崩れてからではなく早めに先輩や担当スタッフへ確認します。特に、安全性に関わる疑問を「とりあえず実施してから聞く」形にしないことが重要です。
介入前は「前回と同じ患者さん」と決めつけず安全性を確認します
リハ開始前は、その日の状態で実施できるかを確認します。必要な観察・測定項目は疾患、病期、医師指示、院内基準によって異なるため、全患者さんへ同じ項目を機械的に当てはめるのではなく、患者さんごとのリスクに合わせます。
| 視点 | 確認例 | 迷ったとき |
|---|---|---|
| 全身状態 | 意識、表情、呼吸、疼痛、倦怠感など | 前回との差を確認する |
| 循環・呼吸 | 必要に応じて血圧、心拍数、SpO2、呼吸数など | 患者個別の目標や院内基準と照合する |
| 指示・制限 | 安静度、荷重、術式、装具、活動範囲 | 不明点を確認してから進める |
| デバイス | 点滴、酸素、尿道カテーテル、ドレーンなど | 移動時の管理方法を確認する |
ここで大切なのは、単に「バイタルが測れたから開始する」のではなく、情報収集・症状・測定値・患者さんの反応を合わせて、その日の介入を安全に開始できるか考えることです。
介入中は「できたか」だけでなく反応の変化を追います
評価・治療中は、予定していたメニューを終えることよりも、負荷に対して患者さんがどう反応したかを確認します。同じ歩行距離や同じ練習内容でも、介助量、症状、疲労、動作の質が変われば次の判断も変わります。
- 開始前より症状が増えていないか
- 呼吸、表情、会話、意識などに変化がないか
- 移乗・立位・歩行の介助量が変化していないか
- 疼痛や疲労によって動作が崩れていないか
- 設定した介入目的を確認できているか
安全性に疑問が生じた場合は、予定メニューを完遂することを優先しません。負荷を下げる、中断する、安全な姿勢へ戻す、必要なスタッフへ共有するなど、患者さんの状態と院内手順に合わせて対応します。
記録は「事実→解釈→次回方針」が読み取れるように残します
新人PTは、介入後に記録をまとめて書こうとして時間がかかることがあります。記録では文章を長くするより、何が起きたか、その事実をどう評価したか、次に何を見るかが読み取れることを優先します。
| 順番 | 残す内容 | 例 |
|---|---|---|
| 1.事実 | 状態、評価値、介助量、実施内容、反応 | 「歩行器で20m。方向転換時に軽介助を要した」 |
| 2.解釈 | 事実から何を考えたか | 「直線歩行より方向転換時に支持性が低下する」 |
| 3.次回方針 | 次に何を評価・介入するか | 「次回は方向転換時の介助量と足部位置を再評価する」 |
SOAPなど施設で決められた形式がある場合は、その様式を優先します。重要なのはテンプレートを埋めることではなく、次に記録を読む人が「何が変わり、なぜこの方針になったか」を追えることです。
新卒理学療法士の臨床記録を扱った質的研究でも、記録への準備状況には個人差があり、慣れない状況や臨床的な複雑さが課題となる一方、練習・振り返り・テンプレートや記載例へのアクセスなどの職場支援が重要と報告されています。
申し送りは「変わったこと」と「次に注意すること」を優先します
申し送りですべての評価結果を読み上げる必要はありません。他職種へ共有するときは、その情報を受け取った人の行動が変わる内容を優先します。
新人PTが整理しやすい順番は、次の4点です。
- 何が変わったか:症状、移動能力、介助量など
- どの場面で起きたか:立位、歩行、トイレ動作など
- どう対応したか:中止、介助量変更、環境調整など
- 次に何をお願い・確認したいか:病棟での観察、介助方法、医師確認など
「歩行練習しました」だけでは、次の担当者が何に注意すればよいか分かりません。たとえば「歩行器歩行は見守りですが、方向転換時に右へふらつくため、病棟歩行では方向転換時の見守りをお願いします」のように、共有後の行動まで分かる情報にします。
相談は「答えが分からない時」より「安全に進めてよいか迷った時」を先にします
新人PTが相談で迷いやすいのは、「もう少し自分で考えてから聞くべきか」という場面です。通常の学習上の疑問なら考えを整理してから相談できますが、安全性や当日の介入可否に関わる疑問は、判断を抱え込まないことが優先されます。
| 状況 | 対応の考え方 |
|---|---|
| 患者さんの安全に関わる | 継続・開始を自己判断せず、院内の連絡手順に沿って早めに相談する |
| 医師指示や制限が不明 | 推測で進めず、確認してから介入する |
| 介助方法に自信がない | 実施前に先輩へ確認し、必要なら一緒に実施する |
| 評価・治療方法の疑問 | 緊急性がなければ、自分の考えと分からない点を整理して相談する |
相談するときは「分かりません」だけで終わらせず、今の状況、自分が確認したこと、迷っている判断を短く伝えると、先輩も回答しやすくなります。
退勤前は「未記録・未共有・明日の予定」の3点を確認します
退勤前は、その日の仕事をすべて思い返すのではなく、今日中に終える必要があることと、翌日に持ち越すことを分けます。
- 未記録:介入した患者さんの記録が残っていないか
- 未共有:状態変化や介助方法など、当日中に伝えるべき内容が残っていないか
- 翌日の予定:検査、退院、カンファレンス、家族指導、再評価などがないか
明日のすべてを準備する必要はありません。翌朝に優先して確認する患者さんや予定を1〜2点だけ明確にしておくと、翌日の情報収集を始めやすくなります。
急性期・回復期・療養系では「1日の重点」が異なります
病院勤務という点は同じでも、病期や病棟機能によって1日の中で重点を置く情報は変わります。以下は固定的な役割分担ではなく、新人PTが情報収集の焦点を考えるための整理例です。
| 病棟・機能 | 朝に確認したいこと | 介入中の焦点 | 共有で重視すること |
|---|---|---|---|
| 急性期 | 病状変化、検査・処置、安静度、デバイス | 全身反応と活動耐容、離床段階 | 状態変化と当日の活動範囲 |
| 回復期 | 病棟ADL、前日の介助量、生活場面での変化 | 目標と課題、介助量、自立度 | 病棟で再現する動作・介助方法 |
| 療養・地域包括系 | 体調、生活リズム、ケア場面、退院・生活支援の予定 | 生活機能、活動量、介助負担、環境 | 継続可能な移動方法・生活上の注意点 |
同じ病棟名でも患者構成やリハ提供体制は施設によって異なります。まずは自施設で、「朝に必ず確認する情報」「介入前に必要な安全確認」「誰へ何を共有するか」を先輩とそろえることが実務的です。
新人PTが1日の中で詰まりやすいのは「全部を同時に処理しようとする時」です
新人PTの業務が止まりやすい場面は、知識がない時だけではありません。複数の患者さん、記録、電話、病棟からの依頼などが重なり、次に何を優先すべきか分からなくなった時にも起こります。
| 詰まりやすい場面 | 避けたい状態 | 戻るポイント |
|---|---|---|
| 朝の情報収集 | 全カルテを細部まで読んで開始が遅れる | 前回から変わった情報を先に探す |
| 予定変更 | 元のスケジュールに固執する | 安全性・時間制約・目的で再整理する |
| 介入 | 予定メニューを終えることが目的になる | 患者さんの反応と当日の目的へ戻る |
| 記録 | 経過をすべて文章化して長くなる | 事実→解釈→次回方針へ整理する |
| 相談 | 自分で答えが出るまで抱え込む | 安全性に関わる疑問は早めに共有する |
1年目全体で「何から身につけるか」という学習の優先順位と、病院の1日をどう回すかは別の問題です。本記事では後者に絞り、毎日の業務で迷ったときに戻れる順番を整理しています。
新人理学療法士の病院勤務でよくある質問
新人理学療法士は朝、最初に何を確認すればよいですか?
前回のリハ以降に起きた変化から確認します。夜間の状態変化、医師指示、安静度、検査・処置、病棟での移動状況など、当日の介入内容や順番を変える情報を優先します。
患者さん全員のバイタルを毎回測定した方がよいですか?
必要な測定項目は患者さんの疾患・病期・全身状態・医師指示・院内ルールによって異なります。全員へ同じ測定を機械的に行うのではなく、その患者さんで何を確認すべきかを施設の手順や指導者と確認してください。
予定どおりにリハを回れなくなったら、何を優先しますか?
まず患者さんの安全性を優先し、次に検査や退院などの時間制約、当日中に必要な評価・介入目的を確認します。自分だけで調整できない場合は、早めに先輩や関係職種へ共有します。
新人PTで記録が遅いときはどうすればよいですか?
文章を短くすることだけを目標にせず、「事実→解釈→次回方針」の順番を固定します。施設の記録様式や記載例がある場合はそれを優先し、何を残す必要があるか分からない場合は先輩と記録例を確認すると整理しやすくなります。
次の一手|1年目全体の優先順位と記録・報連相を分けて確認します
本記事は「病院勤務の具体的な1日」に絞っています。1年目の最初の3か月で何を優先して身につけるかは、新人理学療法士1年目の優先順位で整理しています。
記録の書き方や申し送り・相談の型をさらに具体化したい場合は、新人PTの記録・報連相の基本へ進んでください。
参考文献
- 公益社団法人日本理学療法士協会. 新人理学療法士職員研修ガイドライン(初版). 日本理学療法士協会. Accessed September 20, 2026.
- Wilesmith S, Mandrusiak A, Martin R, Lu A, Forbes R. Writing for the role: A qualitative exploration of new graduate physiotherapists’ transition to practice of clinical documentation. Physiother Theory Pract. 2025;41(1):115-127. doi:10.1080/09593985.2024.2315255.
- Müller M, Jürgens J, Redaèlli M, Klingberg K, Hautz WE, Stock S. Impact of the communication and patient hand-off tool SBAR on patient safety: a systematic review. BMJ Open. 2018;8(8):e022202. doi:10.1136/bmjopen-2018-022202.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

