QuickDASH の評価方法|計算・欠損ルール・MCID/MDC まで 1 ページで整理
QuickDASH(上肢機能障害質問票)は、肩〜手までの「生活の困りごと」を短時間で数値化できる PROM です。臨床では “計算方法” と “未回答(欠損)の扱い” で詰まりやすいため、本記事では実施 → 計算 → 解釈 → 記録までを、迷いにくい順番でまとめます。
ゴールは「今日の評価が、次回の再評価と比較できる形で残る」ことです。説明文・想起期間・記入方法を固定し、QuickDASH を “回る運用” に落とし込みます。
評価がラクになるのは、「指標」より先に “評価 → 記録 → 再評価” の型が決まったときです。 評価 → 記録 → 再評価の流れを 3 分で確認する
まず結論:QuickDASH は「最短で上肢の生活障害」を可視化する
QuickDASH は、上肢全体の生活障害を 0〜100 点で表し、高いほど障害が強い(困りごとが大きい)と解釈します。忙しい外来・病棟でも回しやすく、術前後や経時変化の追跡にも組み込みやすいのが強みです。
一方で、点数だけを見ると介入に落ちにくいため、臨床では「高得点だった項目(困りごと)」を 1 行で添えると、チーム共有が一気に通りやすくなります。
実施手順|説明文・想起期間・介助の有無を固定する
QuickDASH は自己記入式ですが、運用の再現性は「説明の揃え方」で決まります。初回に、想起期間(例:この 1 週間)と記入方法(自記か読み上げか)を決め、次回も同じ条件で実施します。
高齢者や理解が不安な場合は、質問の意味を確認しながら読み上げても構いません。ただし、その場合は「読み上げで実施」をカルテに残し、次回も同じ方法で回収して比較できる形にします。
計算方法|0〜100 点への換算(基本の式と手順)
QuickDASH は複数項目の合計を、一定のルールで 0〜100 点に換算します。実務では「合計点」「有効回答数( n )」の 2 つを先に確認すると、計算ミスが減ります。
院内で統一するなら、カルテや記録用紙に式そのものよりも「合計点・ n ・最終スコア」を残す運用が簡潔です(次回も同じ手順で再計算できます)。
計算ミスを減らすコツ(例)
- ① まず未回答がないか確認する(未回答がある場合は次の章へ)。
- ② 回答済みの合計点を出す。
- ③ 有効回答数( n )を数える。
- ④ 換算して 0〜100 点で記録する(高いほど障害が強い)。
欠損(未回答)があるとき|「埋める」より “ルール固定” を優先
QuickDASH で詰まりやすいのが、未回答(欠損)の扱いです。現場で困るのは「その場しのぎで埋めた結果、次回と比較できなくなる」ケースなので、まずは院内ルールを 1 つに固定するのが最優先です。
基本方針は、①まず再説明して再実施、②それでも難しい場合は「欠損がある」ことを明記し、③次回も同じ扱いで回す、の順にするとブレにくいです(症例ごとに扱いが変わると、経時変化の解釈が崩れます)。
スコア解釈|MCID・MDC の目安と読み違え防止
経時変化を見るときは「統計学的な差」より、患者にとって意味のある変化( MCID )と、測定誤差を超えた変化( MDC )を意識します。QuickDASH は集団や病態で幅がありますが、概ねMCID は 10〜15 点、MDC は 13 点前後が一つの目安として整理されます。 [oai_citation:6‡リハビリくん](https://rehabilikunblog.com/quickdash-assessment/)
臨床では、① MDC を超えているか、②本人の主観(楽になった/まだつらい)と一致するか、③生活・仕事の目標に近づいたか、の 3 点をセットで確認すると判断が安定します。
理学療法・作業療法での活用|「困りごと」から目標を具体化する
QuickDASH は、腱板断裂、肩関節周囲炎、遠位橈骨骨折、手根管症候群など、さまざまな上肢疾患で使えます。初期評価では、痛み・ ROM ・筋力・巧緻性などの所見と合わせて QuickDASH を取り、高得点だった項目=困りごとを抽出します。 [oai_citation:7‡リハビリくん](https://rehabilikunblog.com/quickdash-assessment/)
フォローでは総スコアだけでなく「どの項目が改善したか」を確認し、介入の焦点(痛み/仕事負荷/環境調整など)を更新します。同じ総スコアでも “残っている制限” が違うと、次の打ち手は変わります。 [oai_citation:8‡リハビリくん](https://rehabilikunblog.com/quickdash-assessment/)
DASH・Hand20・Shoulder36 などの使い分け|最小セットで迷わない
上肢 PROM は複数ありますが、現場で続くのは「まず 1 つ決めて、同条件で回す」運用です。QuickDASH は短時間で上肢全体を把握する汎用ツール、DASH はより詳細に追う、Hand20 / Shoulder36 は部位特異的に深掘り、という整理が実務的です。 [oai_citation:9‡リハビリくん](https://rehabilikunblog.com/quickdash-assessment/)
「どれを使う?」から迷う場合は、運動器 PROM ハブの選択フロー(主訴の部位 → 条件固定 → 再評価日)で先に枠組みを決めると、評価設計が安定します。 [oai_citation:10‡リハビリくん](https://rehabilikunblog.com/musculoskeletal-prom-hub/)
| 指標 | 強み | 向く場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| QuickDASH | 短時間で上肢全体の生活障害を把握 | 外来・病棟で “回る” 運用/経時変化 | 点数だけでなく高得点項目も 1 行で残す |
| DASH | 情報量が多く、詳細に追いやすい | 術前後の長期フォロー/研究/詳細説明 | 回収負担が増えるため頻度設計が重要 |
| Hand20 | 手の機能にフォーカスしやすい | 手関節・手指の課題を深掘りしたい | 上肢全体の説明には別指標が必要になることも |
| Shoulder36 | 肩の困りごとを部位特異的に整理 | 肩疾患で局所の変化を追いたい | 上肢全体の比較には向きにくい |
現場の詰まりどころ|よくある失敗と、戻し方
QuickDASH の運用が崩れる原因は「説明のブレ」「欠損対応のブレ」「点数だけで終わる」の 3 つが多いです。ここを先に潰すと、チーム共有と再評価が一気にラクになります。
環境要因(教育体制・標準化・記録文化)が整わず評価運用が回らないときは、面談準備チェック等を印刷してそのまま使える形でまとめた資料もあります(必要なら活用してください)。/mynavi-medical/#download
| 論点 | NG(よくある) | OK(おすすめ) | 記録の一言(例) |
|---|---|---|---|
| 説明・想起期間 | 毎回説明が違う | 想起期間と説明文を固定 | 「この 1 週間で実施」 |
| 欠損(未回答) | その場で埋めてしまう | 再説明 → 再実施を優先、欠損は明記 | 「未回答 1、欠損あり」 |
| 解釈 | 合計点だけで終わる | 高得点項目を 1 行で添える | 「瓶開け・買い物袋が主訴」 |
| 再評価 | 測定日が飛ぶ | 初回に次回の再評価日を決める | 「 4 週後に再評価」 |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
QuickDASH は何ポイント変化したら「意味のある改善」ですか?
目安としては、MCID が 10〜15 点、MDC が 13 点前後が一つの基準になります。 [oai_citation:11‡リハビリくん](https://rehabilikunblog.com/quickdash-assessment/) ただし集団や病態で幅があるため、MDC を超えているか、本人の実感と一致するか、生活・仕事の目標に近づいたかをセットで確認すると判断が安定します。
未回答(欠損)があるときは、どうすればいいですか?
まずは再説明して再実施が基本です。それでも難しい場合は「欠損がある」ことを明記し、次回も同じ扱いで回せるようにルールを固定します(症例ごとに扱いが変わると経時変化が読みにくくなります)。
QuickDASH と DASH は、どちらを優先すべきですか?
短時間で回して経時変化を追うなら QuickDASH、より詳細に追う/研究・長期フォローなら DASH が実務的です。両者とも「説明文・想起期間・測定タイミング」を固定できると、評価が強い武器になります。
日本語版の入手先はどこですか?
DASH / QuickDASH の日本語版( JSSH 版)は、日本手外科学会の案内ページを参照してください。日本手外科学会 DASH/QuickDASH(JSSH 版)
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参考文献
- Beaton DE, Wright JG, Katz JN, et al. Development of the QuickDASH: comparison of three item-reduction approaches. J Bone Joint Surg Am. 2005;87(5):1038–1046. DOI: 10.2106/JBJS.D.02060
- Gummesson C, Ward MM, Atroshi I. The shortened Disabilities of the Arm, Shoulder and Hand questionnaire (QuickDASH): validity and reliability based on responses within the full-length DASH. BMC Musculoskelet Disord. 2006;7:44. DOI: 10.1186/1471-2474-7-44
- Imaeda T, Toh S, Wada T, et al. Validation of the Japanese Society for Surgery of the Hand version of the Quick Disability of the Arm, Shoulder, and Hand (QuickDASH-JSSH) questionnaire. J Orthop Sci. 2006;11(3):248–253. DOI: 10.1007/s00776-006-1013-1
- Franchignoni F, Vercelli S, Giordano A, et al. Minimal clinically important difference of the Disabilities of the Arm, Shoulder and Hand outcome measure (DASH) and its shortened version (QuickDASH). J Orthop Sports Phys Ther. 2014;44(1):30–39. DOI: 10.2519/jospt.2014.4893
- Rysstad T, Grotle M, Skolleborg KC, et al. Responsiveness, minimal important change and minimal detectable change of the QuickDASH and PSFS in patients with shoulder pain. BMC Musculoskelet Disord. 2020;21:658. DOI: 10.1186/s12891-020-03289-z
- 日本手外科学会. 患者立脚型機能評価質問表 DASH/QuickDASH 日本語版(JSSH 版). https://www.jssh.or.jp/doctor/jp/infomation/dash.html
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


