QuickDASH の評価方法|採点・欠損・記録用紙付き
QuickDASH を臨床で使うときに先に決めたいのは、診断名よりも「どう採点し、欠損が出たらどう扱い、次回比較をどう残すか」です。この記事では、QuickDASH を現場で回すために必要な最小セットだけを、迷いにくい順番で整理します。
答えるのは、実施条件、採点式、未回答の扱い、変化量の読み方、DASH との使い分けです。質問票そのものの全文ではなく、今日の評価を次回の再評価につなげる運用に絞ってまとめます。
評価の型は、個人の努力だけで身につくとは限りません。今の職場で教育体制がない、相談相手がいない、教材に触れにくい、適切なアセスメントの見本が少ないと感じるなら、学び方と環境の整え方を先に整理しておくと動きやすくなります。
評価の型をそろえると、採点・記録・再評価が一気にラクになります。 PT キャリアガイドを見る
まず結論|QuickDASH は「短時間で上肢全体の生活障害を追う」尺度です
QuickDASH は、上肢全体の生活障害を 0〜100 点 で表す PROM です。高いほど障害が強いと解釈し、肩・肘・手関節・手指をまたいで、短時間で困りごとを把握したい場面に向きます。
強みは、忙しい外来や病棟でも回しやすいことです。一方で、点数だけを見ると次の介入が決めにくくなるため、臨床では高得点だった困りごとを 1 行で添える運用にすると、チーム共有までつながりやすくなります。
実施手順|想起期間・記入方法・介助の有無を固定する
QuickDASH は自己記入式ですが、比較できる評価にするには「どう説明したか」をそろえる必要があります。初回に、先週 1 週間を基準に答えてもらうこと、自記で行うのか、読み上げで補助するのかを決め、次回も同じ条件で実施します。
高齢者や理解が不安な場合は、内容確認をしながら読み上げても構いません。ただし、その場合は「読み上げで実施」をカルテに残し、次回も同じ方法で回収できる形にしておくと、経時比較が崩れません。
採点方法|11 項目の合計を 0〜100 点に換算する
QuickDASH の機能障害 / 症状スコアは、11 項目中 10 項目以上の回答があるときに算出できます。計算式は (回答の合計 ÷ 有効回答数 − 1)× 25 で、最終的に 0〜100 点へ換算します。
実務では、式そのものを毎回書くよりも、合計点・有効回答数( n )・最終スコアを残す方が再計算しやすくなります。まず合計点を出し、次に n を確認してから換算すると、計算ミスが減ります。
計算ミスを減らす 4 ステップ
- 未回答がいくつあるか確認する
- 回答済み項目の合計点を出す
- 有効回答数( n )を数える
- 換算して 0〜100 点で記録する
仕事モジュール、スポーツ / 音楽モジュールは、どちらも 4 項目すべてに回答が必要です。通常の 11 項目スコア と、選択モジュールのルールを混同しないように分けて扱います。
欠損(未回答)があるとき|「埋める」よりルール固定を優先する
QuickDASH では、2 項目以上が未回答だと機能障害 / 症状スコアは算出できません。現場で起こりやすい失敗は、その場しのぎで空欄を埋めてしまい、次回との比較条件を崩してしまうことです。
基本は、①まず質問の意味を再説明する、②それでも回答できないときは欠損ありとして記録する、③次回も同じ扱いで回す、の順です。欠損対応の院内ルールを 1 つに固定しておくと、担当者が変わっても運用がブレにくくなります。
変化量の解釈|MCID と MDC を「目安」として使う
QuickDASH の変化量は病態や集団で幅がありますが、近年の整理ではMCID は 12〜15 点程度、MDC90 は 9 点前後が 1 つの目安です。日々の臨床では、数点の増減だけで改善・悪化を断定せず、測定誤差を超えているかを先に見た方が安全です。
判断を安定させるには、①数値の変化、②本人の実感、③生活課題の変化、の 3 点をセットで確認します。数字だけで「改善」と決めず、困りごとの内容と合わせて読むと、介入の方向がブレにくくなります。
理学療法・作業療法での活用|「困りごと」を目標に変える
QuickDASH は、肩痛、肘障害、手関節・手指障害など、診断名をまたいで上肢の生活障害を追えるのが利点です。初回評価では、痛み、関節可動域、筋力、巧緻性などの客観所見と合わせて、どの生活場面で困っているかを見つける入口として使います。
再評価では総スコアだけでなく、何ができるようになったか / 何がまだ残っているかを確認します。同じ総スコアでも、残っている制限が「上の棚に手が届かない」のか、「重い袋を持てない」のかで、次の打ち手は変わります。
カルテに残す最小テンプレ
記録例:
QuickDASH:合計 ( )点 / n =( ) / スコア ( )/ 100
条件:先週 1 週間 / 自記 or 読み上げ
主な困りごと:(例:上の棚・瓶開け・買い物袋)
次回:( )後に再評価
QuickDASH 記録用紙 PDF
記録の型をそろえたい方向けに、QuickDASH 記録用紙 PDF を用意しました。採点、欠損確認、主な困りごと、再評価メモを 1 枚で残しやすい構成です。質問票本体の確認が必要な場合は、日本手外科学会の日本語版案内もあわせて参照してください。
QuickDASH 記録用紙 PDF を開く / QuickDASH 日本語版の案内を見る
QuickDASH 記録用紙 PDF をプレビューする
DASH との使い分け|まず 2 つを分けて迷わない
QuickDASH と DASH は同じ系統の尺度ですが、役割は同じではありません。QuickDASH は短時間で回したいときに向き、DASH はより詳細に追いたいときに向きます。迷ったときは、「頻度」と「精度」のどちらを優先するかで決めると整理しやすくなります。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 指標 | 強み | 向く場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| QuickDASH | 短時間で上肢全体の生活障害を把握しやすい | 外来・病棟で回す運用/頻回の経時比較 | 点数だけで終わらせず、困りごとを 1 行で残す |
| DASH | 情報量が多く、個別患者を詳細に追いやすい | 術前後の詳細フォロー/精度を重視する場面 | 回答負担が上がるため、回収頻度の設計が必要 |
現場の詰まりどころ|よくある失敗と戻し方
QuickDASH の運用が崩れやすいのは、説明のブレ、欠損対応のブレ、点数だけで終わるの 3 つです。ここを先にそろえると、再評価とチーム共有がかなり安定します。
- 欠損が出たときの戻し方を見る
- 記録用紙 PDF を先に確認する
- 詳細に追う運用は DASH の評価方法 で整理できます。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 論点 | NG(よくある) | OK(おすすめ) | 記録の一言(例) |
|---|---|---|---|
| 説明・想起期間 | 毎回説明が違う | 「先週 1 週間」で固定する | 「先週 1 週間、自記で実施」 |
| 欠損(未回答) | その場で埋めてしまう | 再説明 → それでも不可なら欠損ありと記録 | 「未回答 2、今回は算出不可」 |
| 解釈 | 合計点だけで終わる | 困りごとを 1 行で添える | 「上の棚・瓶開けが主訴」 |
| 再評価 | 次回時点を決めない | 初回時点で再評価のタイミングを決める | 「 2〜4 週後に再評価予定」 |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
QuickDASH は何点変化したら「意味のある改善」と考えますか?
目安としては、MCID は 12〜15 点程度、MDC90 は 9 点前後です。ただし病態や集団で幅があるため、数字だけで判断せず、本人の実感や生活課題の変化とあわせて読みます。
未回答(欠損)があるときは、どうすればいいですか?
機能障害 / 症状スコアは、11 項目中 10 項目以上に回答があるときに算出できます。つまり、2 項目以上が未回答なら算出不可です。まずは再説明し、それでも難しい場合は欠損ありとして記録し、次回も同じルールで扱います。
QuickDASH と DASH は、どちらを優先すべきですか?
短時間で回して頻回に追いたいなら QuickDASH、より詳細に個別患者を追いたいなら DASH が実務的です。迷ったら、「回答負担を下げたいか」「精度を優先したいか」で決めると整理しやすくなります。
仕事モジュールやスポーツ / 音楽モジュールも同じルールですか?
選択モジュールは 4 項目すべてに回答が必要です。通常の 11 項目スコアは 1 項目まで欠損が許容されますが、選択モジュールでは欠損は許容されません。通常スコアと同じ感覚で扱わないように注意します。
日本語版の入手先はどこですか?
DASH / QuickDASH の日本語版( JSSH 版 )は、日本手外科学会の案内ページから確認できます。日本手外科学会 DASH / QuickDASH( JSSH 版 )
次の一手
参考文献
- Beaton DE, Wright JG, Katz JN, Upper Extremity Collaborative Group. Development of the QuickDASH: comparison of three item-reduction approaches. J Bone Joint Surg Am. 2005;87(5):1038-1046. DOI: 10.2106/JBJS.D.02060
- Gummesson C, Ward MM, Atroshi I. The shortened Disabilities of the Arm, Shoulder and Hand questionnaire (QuickDASH): validity and reliability based on responses within the full-length DASH. BMC Musculoskelet Disord. 2006;7:44. DOI: 10.1186/1471-2474-7-44
- Imaeda T, Toh S, Wada T, Uchiyama S, Okinaga S, Sawaizumi T, et al. Validation of the Japanese Society for Surgery of the Hand version of the Quick Disability of the Arm, Shoulder and Hand (QuickDASH-JSSH) questionnaire. J Orthop Sci. 2006;11(3):248-253. DOI: 10.1007/s00776-006-1013-1
- Franchignoni F, Vercelli S, Giordano A, Sartorio F, Bravini E, Ferriero G. Minimal clinically important difference of the Disabilities of the Arm, Shoulder and Hand outcome measure (DASH) and its shortened version (QuickDASH). J Orthop Sports Phys Ther. 2014;44(1):30-39. DOI: 10.2519/jospt.2014.4893
- Rysstad T, Grotle M, Klokk LP, Tveter AT. Responsiveness and minimal important change of the QuickDASH and PSFS when used among patients with shoulder pain. BMC Musculoskelet Disord. 2020;21:658. DOI: 10.1186/s12891-020-03289-z
- Galardini L, Coppari A, Pellicciari L, Ugolini A, La Porta F, Bravini E, et al. Minimal clinically important difference of the Disabilities of the Arm, Shoulder and Hand (DASH) and the shortened version of the DASH (QuickDASH) in people with musculoskeletal disorders: a systematic review and meta-analysis. Phys Ther. 2024;104(5):pzae033. DOI: 10.1093/ptj/pzae033
- Institute for Work & Health. The QuickDASH Outcome Measure: Information for Users. 公式 PDF
- 日本手外科学会. 患者立脚型機能評価質問表 DASH / QuickDASH 日本語版( JSSH 版 ). 公式案内ページ
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


