PHQ-9 運用プロトコル|PT の記録・再評価ガイド

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PHQ-9 運用プロトコル|PT が決める実施・記録・再評価

PHQ-9 は、抑うつ症状を数値化してチームで共有し、同じ条件で経時変化を追いやすくする評価尺度です。ただし、合計点だけを残しても、リハ参加への影響や再評価の判断にはつながりにくくなります。

本記事では、項目文の再掲ではなく、PT が現場で迷いやすい「いつ使うか」「どう記録するか」「どの条件なら前回と比較できるか」に絞って整理します。実施条件、点数、背景、リハへの影響を 1 セットで残し、次回も同条件で取り直せる運用を目標にします。

このページで決めること:PHQ-9 を“測って終わり”にしない

このページで決めるのは、PHQ-9 の詳細な診断ではなく、リハ場面での実施条件・記録・共有・再評価の型です。点数は重要ですが、PT の記録では「点数がリハ参加にどう影響しているか」を観察とセットで残す必要があります。

一方で、薬物療法の判断、診断名の確定、精神科的な専門評価の代替は本記事の範囲外です。自傷リスクに関わる項目が陽性の場合や、急な悪化が疑われる場合は、点数の大小にかかわらず、施設の手順に沿って主治医・看護師・心理職などへ速やかに共有します。

※表は横にスクロールできます。

PHQ-9 運用プロトコルで扱う範囲と扱わない範囲
区分 このページで答えること このページで深掘りしないこと
実施 自己記入・面接、同席者、実施タイミングの固定 診断面接の代替、治療方針の決定
解釈 点数区分、背景要因、比較可否の整理 点数だけでの診断確定
記録 実施条件、点数、背景、リハへの影響の 4 点セット 項目文の全文掲載や質問票の代替配布
共有 チームへ伝えるタイミングと報告内容 専門職による精神科的評価の代行

PHQ-9 はいつ使う?入口評価と経過観察に分ける

PHQ-9 は、抑うつ症状を「入口で拾う」場面と「経過で追う」場面の両方で使いやすい尺度です。回復期、外来、訪問、慢性疾患のリハなどで、気分の落ち込みが活動量・参加・自主練に影響していそうなときに候補になります。

ただし、リハ場面では身体症状の影響を受けやすいため、疼痛、不眠、息切れ、薬剤変更、転棟・退院調整などを同時に確認します。尺度選択で迷う段階では比較記事に任せ、本記事では「PHQ-9 を使うと決めた後の運用」に絞ります。

実施前にそろえる条件:比較できる形にする

PHQ-9 の再評価で最も大切なのは、前回と比較できる条件を残すことです。合計点が同じでも、実施方法やタイミングが違えば、変化の意味が変わります。

初回実施時点で、自己記入か面接か、リハ前後のどちらで行ったか、同席者がいたか、読み上げや記入補助があったかを記録します。次回も同じ条件で取り直せるように、記録欄の最初に「実施条件」を置くと運用が安定します。

5 分フロー:実施 → 採点 → 解釈 → 記録 → 共有 → 再評価

PHQ-9 は、測定そのものよりも「点数をどう共有し、次にどう取り直すか」で臨床的な価値が決まります。以下の 5 分フローで固定すると、初回評価から再評価までの抜けが減ります。

  1. 実施(1 分):自己記入か面接か、同席者、実施タイミング、補助の有無を記録します。
  2. 採点(1 分):合計点を 0〜27 点で算出し、前回値があれば差分を確認します。
  3. 解釈(1 分):点数区分だけで判断せず、痛み・睡眠・息切れ・薬剤変更・環境変化を併記します。
  4. 記録(1 分):実施条件、点数、背景、リハへの影響を 4 点セットで残します。
  5. 共有・再評価(1 分):共有先、報告期限、次回の再評価日と条件を決めます。

点数の見方:10 点以上は共有と背景確認を強める

PHQ-9 の合計点は 0〜27 点で、点数が高いほど抑うつ症状が強い可能性を示します。臨床では 5・10・15・20 点を区切りとして重症度の目安にしますが、点数は診断確定ではなく、共有・追加確認・再評価条件を決めるための情報として扱います。

特に 10 点以上、前回からの明らかな上昇、自傷リスクに関わる項目が陽性の場合は、PT 単独で解釈を完結させません。リハへの影響を観察語で整理し、施設の手順に沿って主治医・看護師・心理職などへ共有します。

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PHQ-9 合計点の目安と PT 記録で残す視点
合計点 目安 PT が確認すること 共有の考え方
0〜4 点 最小〜ほぼなし 活動量、睡眠、疼痛の変化を通常記録で追う 大きな変化がなければ経過観察
5〜9 点 軽度の目安 リハ参加、自主練、離床量への影響を確認 背景要因を添えてチーム内で共有
10〜14 点 中等度の目安 参加低下、拒否、疲労感、不眠、疼痛を整理 主治医・看護師へ共有し、再評価条件を固定
15〜19 点 中等度〜重度の目安 離床・ADL 練習・退院調整への影響を具体化 早めに共有し、チーム方針と再評価日を確認
20〜27 点 重度の目安 リハ負荷、参加可否、生活機能への影響を確認 PT 単独で判断せず、施設手順に沿って速やかに共有
PHQ-9 は点数だけで判断しない。記録に残すべき 3 つの視点を整理した図版
点数、背景、リハへの影響をセットで捉えると、共有と再評価の判断がぶれにくくなります。

記録テンプレ:4 点セットで比較可否まで残す

記録は、点数だけでなく「同じ条件で取り直せるか」が分かる形にします。次回の比較に使うため、実施条件、点数、背景、リハへの影響を固定項目にします。

以下は、カルテや共有メモにそのまま転用しやすい記録例です。施設の記録ルールに合わせて、必要な語尾や共有先を調整してください。

PHQ-9 記録テンプレ(PT 向け 4 点セット)
項目 記録する内容 記録例
実施条件 日付、時間帯、リハ前後、形式、同席者、補助の有無 2026/○/○ 午前リハ前、自己記入、家族同席なし、読み上げ補助なし
点数 PHQ-9 合計点、前回との差、比較可否 PHQ-9:12 点。前回 8 点より +4。条件一致のため比較可
背景メモ 疼痛、不眠、息切れ、薬剤変更、転棟、退院調整など 夜間不眠あり。疼痛 NRS 6。転棟後で環境変化あり
リハへの影響 離床、自主練、ADL 練習、参加、外出、家族指導への影響 午前の離床開始が遅れ、自主練は声かけ後も実施困難

PHQ-9 記録・再評価シート(PDF)

上の記録テンプレを、A4 1 枚で使える記録・再評価シートにしました。PHQ-9 の項目文を載せた質問票ではなく、実施条件、合計点、背景、リハへの影響、比較可否、次回再評価条件を残すための補助シートです。

PHQ-9 記録・再評価シート

印刷して、初回評価・再評価・チーム共有時のメモとして使えます。

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現場の詰まりどころ:点数・条件・共有で止まりやすい

PHQ-9 は「測る」ことよりも「点数をどう扱うか」で詰まりやすい尺度です。特に、合計点だけが独り歩きする、実施条件が毎回違う、共有先が決まっていない、という 3 つで運用が止まりやすくなります。

チーム内で記録の型をそろえたい場合は、心理・メンタル評価の全体像も合わせて確認すると、尺度選択から記録・共有までの流れを整理しやすくなります。

同じところで毎回詰まる場合は、学び方や相談環境も整理しておきましょう

手順を整えても評価・記録・報告で迷いが続く場合は、個人の努力だけでなく、教育体制、共通フォーマット、相談相手の有無などの影響を受けていることもあります。

PT キャリアガイドを見る

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PHQ-9 運用で起きがちな失敗(NG)と対策(OK)
テーマ NG(起きがち) OK(こう直す) 比較判断 記録ポイント
点数の独り歩き 合計点だけで状態を断定する 臨床像、背景、リハ参加への影響と併読する 条件一致なら可 背景メモを 1 行で固定
条件がバラバラ 時間帯、形式、同席者が毎回違う 同条件で再評価できるよう初回から記録する 不可〜保留 実施条件をテンプレ化
共有不足 点数を残すだけでチームに伝わらない 点数+背景+リハ影響の 1 セットで共有する 判定不能 共有先と報告期限を記載
身体症状の影響 疼痛・不眠が強い日の点数をそのまま比較する 背景を点検し、条件をそろえて取り直す 保留〜不可 比較可/不可を明記
再評価が止まる 初回だけで終わり、次回条件が決まらない 再評価日、形式、タイミングをその場で決める 次回予定が必要 日時と条件を記録

再評価のタイミング:日数より条件一致を優先する

再評価は、1〜2 週ごとの節目に加えて、転棟、退院調整、薬剤変更、疼痛や睡眠の変化、リハ参加の低下があったときに設定します。変化が大きいほど、点数だけでなく背景を同時に確認します。

前回より点数が上がっていても、実施条件が違う場合は比較を保留します。「午前リハ前・自己記入・同席者なし」のように条件を再固定し、次回測定時に比較可否を判断すると、チーム内で解釈がずれにくくなります。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

PHQ-9 が 10 点以上なら、PT はどう動けばよいですか?

10 点以上は中等度以上の目安として扱い、点数だけで判断せず、背景とリハへの影響をセットで共有します。主治医・看護師・心理職など、施設内の共有先を確認し、次回の再評価日と実施条件も同時に決めます。

自傷リスクに関わる項目が陽性の場合はどうしますか?

点数の大小にかかわらず、PT 単独で判断を完結させません。施設の手順に沿って、主治医・看護師・心理職などへ速やかに共有し、専門的な評価につなげます。カルテには、合計点だけでなく、共有先、共有時刻、指示内容を残します。

身体症状が強い患者さんでは点数がブレませんか?

ブレることがあります。疼痛、不眠、息切れ、薬剤変更、転棟などがある日は、背景メモを必ず残します。条件が大きく違う回は無理に前回値と比較せず、条件をそろえて取り直すほうが臨床判断に使いやすくなります。

前回より点数が上がったが、背景要因が明らかな場合は?

トレンド悪化と即断せず、比較を一旦保留します。不眠増悪、疼痛増加、薬剤変更、転棟、退院調整などを記録し、同条件で再測定できるタイミングを設定します。

外来と入院で運用を変える必要はありますか?

基本の型は同じです。入院では環境変化が多いため、実施条件と共有先を明確にします。外来では、前回値との差、生活上の変化、自主練や外出への影響を同じテンプレで追うと比較しやすくなります。

HADS や SRQ-D と併用したほうがよいですか?

目的が明確な場合は併用できます。ただし、尺度を増やすほど記録と解釈の負担も増えます。まずは主尺度を 1 つ決め、必要に応じて比較記事で HADS や SRQ-D との使い分けを確認する運用が破綻しにくいです。

次の一手(回遊)


参考文献

  • Kroenke K, Spitzer RL, Williams JBW. The PHQ-9: validity of a brief depression severity measure. J Gen Intern Med. 2001;16(9):606–613. DOI: 10.1046/j.1525-1497.2001.016009606.x
  • Manea L, Gilbody S, McMillan D. Optimal cut-off score for diagnosing depression with the Patient Health Questionnaire (PHQ-9): a meta-analysis. CMAJ. 2012;184(3):E191–E196. DOI: 10.1503/cmaj.110829
  • Negeri ZF, Levis B, Sun Y, et al. Accuracy of the Patient Health Questionnaire-9 for screening to detect major depression: updated systematic review and individual participant data meta-analysis. BMJ. 2021;375:n2183. DOI: 10.1136/bmj.n2183
  • Cameron IM, Crawford JR, Lawton K, Reid IC. Psychometric comparison of PHQ-9 and HADS for measuring depression severity in primary care. Br J Gen Pract. 2008;58(546):32–36. DOI: 10.3399/bjgp08X263794

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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