リハビリ部門の監査対策|個別指導・記録・算定の確認ポイント

制度・実務
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リハビリ部門の監査対策で確認する5項目

リハビリ部門の監査対策では、計画書・説明記録・実施記録・再評価・算定根拠の5項目を、日常的に確認できる状態にしておくことが重要です。ただし、保険診療における「個別指導」と「監査」は制度上異なり、必要な対応は対象となる診療報酬や通知内容によって変わります。

この記事では、リハビリ部門の主任・リーダー・管理者に向けて、個別指導への備えを中心に、5分で行う一次確認、記録と算定情報の照合方法、令和8年度診療報酬改定で注意したい計画書の扱いを整理します。公式要件と部署独自の点検方法を区別し、現場で何を確認すべきか判断できる内容にまとめました。

最初に確認したいのは、書類の有無だけでなく、患者の状態・実施内容・計画書・診療報酬の請求内容が整合しているかです。

リハビリ部門の日常点検で確認する5項目
確認項目 確認する内容 不備を疑う場面
計画書 対象となる計画書の作成、説明・交付、必要な更新 患者の現状と計画内容が一致しない
説明記録 説明の実施状況、説明担当者、適用される要件 説明の実施状況を確認できない
実施記録 実施日、実施時間、実施内容、患者の状態 診療録と実績情報が一致しない
再評価 必要な評価、状態変化、計画への反映 状態変化後も計画が見直されていない
算定根拠 対象疾患、算定期間、実施単位、施設基準など 請求内容を診療録から説明できない

この表は、リハビリ部門の日常点検に使う独自の整理です。すべての項目が、すべての患者や算定項目で一律に義務付けられているわけではありません。実際の確認では、対象となる診療報酬の算定要件や施設基準を優先してください。

5分で確認する記録・算定チェック

日常点検では、対象患者を1例選び、計画書から請求情報までを順番に確認すると、不整合を発見しやすくなります。

以下は、主任・リーダーが行う一次確認の例です。5分で正式な個別指導への準備や算定要件の網羅的な確認が完了するという意味ではありません。

リハビリ部門の監査対策で使う5分チェック。計画書、説明、実施記録、再評価、算定根拠の確認項目と、不備発見後の対応フローを示した図
図:リハビリ部門の記録・算定チェックと不備発見後の対応フロー。部署内の一次確認用に作成した独自資料であり、公式チェックリストではありません。図中の署名・同意・説明記録などの確認項目は、すべての算定項目に共通する必須要件ではありません。特に令和8年度改定後のリハビリテーション計画書では患者等の署名欄が廃止されているため、適用される要件に読み替えて使用してください。
  1. 計画書:必要な計画書が作成され、現在の状態や目標と大きくずれていないか。
  2. 説明:適用される要件に沿って説明・交付などが行われ、その状況を確認できるか。
  3. 実施記録:実施日、時間、内容など、必要な情報を診療録から確認できるか。
  4. 再評価:必要な評価が行われ、状態変化や評価結果が計画に反映されているか。
  5. 算定根拠:診療録、実績情報、請求内容に明らかな不整合がないか。
5分チェックで不備を見つけた場合の一次対応
確認結果 次の対応
問題が見つからない 点検結果を残し、通常の運用を継続する
記録の所在が不明 電子カルテ、専用記録欄、関連書類を確認する
計画と現状が異なる 再評価と計画変更の必要性を確認する
実績と請求が異なる 原記録を確認し、医事課や管理者と照合する
算定要件に疑義がある 該当する告示・通知・疑義解釈を確認する

重要:不一致が見つかった場合は、推測による記録の補完や日付の変更を行わず、原記録と事実関係を確認してください。訂正が必要な場合は、施設の記録訂正手順に従い、訂正履歴を確認できる方法で対応します。

個別指導と監査の違い

保険診療における個別指導と監査は、目的や実施条件が異なる手続きです。記事内で両者を同じ意味として扱わないことが重要です。

保険診療における個別指導と監査の違い
項目 個別指導 監査
位置づけ 保険診療の質的向上と適正化を目的とする指導 不正または著しい不当が疑われる場合などに行う手続き
主な方法 関係書類の確認と面接懇談方式による指導 監査要綱に基づく調査・確認
実施の背景 指導大綱などに基づく対象選定 診療内容や診療報酬請求に不正・著しい不当が疑われる場合など
対応の基本 指定された資料を準備し、診療・請求内容を説明する 通知内容を確認し、管理者・医事部門などと組織的に対応する

厚生労働省の指導大綱では、個別指導は原則として診療報酬明細書と関係書類を確認し、面接懇談方式で行うこととされています。指導後の措置には「概ね妥当」「経過観察」「再指導」「要監査」があります。

一方、監査は、不正または著しい不当を疑う理由がある場合などに行われます。個別指導を受けたこと自体が、直ちに監査の対象になるという意味ではありません。

なお、施設基準の適時調査など、別の確認制度もあります。実際に通知を受けた場合は、通知文書に記載された対象、準備書類、出席者、期限を確認してください。

計画書・説明記録の確認|令和8年度改定の注意点

計画書の確認では、現在適用される診療報酬の要件を基準にする必要があります。令和8年度診療報酬改定では、リハビリテーション計画書の様式と説明方法が見直されました。

患者の署名欄と説明記録は分けて確認する

令和8年度診療報酬改定では、リハビリテーション実施計画書と総合実施計画書の様式が統合・簡素化され、計画書の患者等の署名欄が廃止されました。

そのため、改定後の様式について「患者の署名がないこと」を一律に不備と判断することは適切ではありません。

ただし、署名欄の廃止は、計画書の説明や交付などの要件がすべて不要になったことを意味しません。対象となる診療報酬の要件に沿って、説明の実施状況を確認する必要があります。

計画書に関する3つの確認事項
項目 確認の考え方
患者等の署名 改定後の計画書様式では署名欄が廃止されている
説明の実施 対象となる算定要件に沿って説明が行われたか確認する
説明の記録 適用される記録要件と施設の運用に沿って、説明状況を確認できるようにする

部署の運用では、説明日、説明担当者、説明対象者、説明方法などを確認できるように整理すると、後から経過を追いやすくなります。ただし、これらすべてを独立した必須記載項目と断定するものではありません。

医師以外による説明が可能な条件

令和8年度改定では、回復期リハビリテーション病棟以外において、医師の指示を受けた看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による計画書の説明が可能になりました。

一方、回復期リハビリテーション病棟では、引き続き医師による説明が必要です。

令和8年度改定における計画書説明の主な取扱い
確認事項 取扱い
回復期リハビリテーション病棟以外 医師の指示を受けた看護師・PT・OT・STによる説明が可能
回復期リハビリテーション病棟 引き続き医師による説明が必要
医師から他職種への指示 文書または口頭による指示が可能
指示自体の診療録記載 必ずしも必要とされない

令和8年度診療報酬改定に係る疑義解釈では、計画書を作成した医師が、他職種による説明が可能と判断した症例について、文書または口頭で指示することとされています。また、その指示自体については、必ずしも診療録への記載を要しないとされています。

したがって、「医師の指示記録がないこと」を一律に算定上の不備と判断しないよう注意が必要です。

計画書改定の詳細は、2026年リハ計画書改定|署名廃止・説明者・総合計画評価料で確認できます。

計画書と患者の現状を照合する

計画書が作成されていても、患者の状態や実施内容と大きくずれている場合は、再評価や計画変更の必要性を確認します。

例えば、歩行獲得を目標としていた患者が状態悪化により離床困難となった場合、現在の評価結果、目標、介入内容が整合しているかを確認します。

計画書の更新時期や算定要件は、対象となる診療報酬によって異なります。部署独自の点検頻度と制度上必要な更新時期を混同しないようにしてください。

実施記録と算定根拠を照合する

実施記録の確認では、診療録だけでなく、リハビリ実績情報や請求データとの整合性が重要です。

特に、実施日、実施時間、実施単位、対象疾患、算定期間などは、該当する診療報酬の要件と照合します。

実施記録と請求情報の照合例
確認対象 確認内容 対応例
実施日 診療録と実績情報の日付 不一致があれば原記録を確認する
実施時間・単位 実施時間と請求単位の整合性 算定要件とシステム記録を照合する
実施内容 患者状態と実施した介入内容 必要に応じて内容を具体化する
算定対象 対象疾患、算定期間、必要な条件 該当する告示・通知を確認する
重複・不整合 同時間帯の記録や請求内容 関係部署と事実関係を確認する

電子カルテに記録済みの情報を重複入力する必要はある?

電子カルテで開始・終了時刻が自動記録され、実施内容も専用欄に入力されている場合、同じ情報を本文へ重複記載する必要性は、適用される要件と施設の記録体系に応じて判断します。

重要なのは、必要な情報が診療録全体から確認できることです。本文だけにすべての情報を集約することが目的ではありません。

例えば、実施時間や訓練内容が専用欄に記録されている場合、本文では患者の反応、介助量の変化、介入判断、次回方針などを簡潔に残す方法が考えられます。

実施記録の記載例

以下は、患者状態と介入判断を簡潔に残すための架空の記録例です。公式の必須記載様式ではありません。

記録例

歩行器使用下で病棟内歩行を実施。方向転換時にふらつきを認め、軽介助を要した。歩行後の疲労感が強く、休息を挟んで終了。次回は方向転換時の安定性を再評価し、介助量を検討する。

この記録例では、患者の反応と次回の判断を中心に記載しています。実施時間や具体的な訓練内容など、算定・記録上必要な情報は、別の専用欄を含めて確認できることが前提です。

再評価と計画変更のつながりを確認する

再評価では、評価を実施したかだけでなく、その結果が目標や介入方針に反映されているかを確認します。

特に長期介入では、状態変化が緩やかなため、評価結果と計画変更の関係が不明瞭になる場合があります。

再評価を確認する主な場面と確認内容
場面 確認する内容
初回評価 介入開始時の状態、問題点、目標
状態変化時 変化した機能、ADL、リスク、介入方針
計画書更新時 評価結果と計画内容の整合性
退院・転院前 最終的な状態と引き継ぎ事項

これらは一般的な実務上の確認場面です。制度上必要な評価頻度や計画書更新時期は、該当する診療報酬の要件を優先してください。

例えば、ADLが低下しているにもかかわらず、計画書の目標や介入方針が以前のままである場合は、再評価の必要性を検討します。

再評価の結果、現行計画を継続すると判断した場合も、その判断理由を確認できるようにしておくと、経過を追いやすくなります。

監査前に慌てないための日常点検

部署内の点検は、日常確認、状態変化時の確認、定期的な抽出点検に分けると運用しやすくなります。

月1回の点検は、部署独自の管理方法として設定できます。ただし、月1回確認すれば制度上の要件をすべて満たすという意味ではありません。

リハビリ部門の日常点検の運用例
タイミング 確認内容 担当例
日常 実施記録、実績入力、患者状態 担当療法士
状態変化時 再評価、目標、介入方針 担当療法士・関係職種
計画書更新時 計画内容、説明・交付、必要な記録 担当者・確認担当者
月次の抽出点検 計画書、実施記録、算定情報の整合性 主任・リーダーなど

不備を見つけたときの対応

日常点検で不備が見つかった場合は、単に記録を修正して終わりにせず、原因と影響範囲を確認します。

  1. 事実確認:原記録、電子カルテ、実績情報を確認する。
  2. 影響範囲の確認:同様の不備が他の患者や期間にもないか確認する。
  3. 関係部署への相談:算定への影響が疑われる場合は、医事課や管理者と確認する。
  4. 適切な訂正:施設の規程に従い、訂正履歴を残す。
  5. 再発予防:入力方法、確認担当者、点検タイミングを見直す。

診療報酬の請求内容に誤りが疑われる場合は、部署内だけで判断せず、医事部門や管理者と連携してください。必要な請求上の対応は、誤りの内容や対象期間によって異なります。

記録と実績の照合ルールを標準化する

リハビリ部門で最初に整えたいのは、記録と実績情報を照合する方法です。

計画書、実施記録、請求情報が別々の画面やシステムに存在する場合、誰がどの情報を確認するのかを決めておく必要があります。

例えば、担当療法士が日常の実施記録を確認し、主任・リーダーが抽出した症例について計画書と算定情報を照合する方法が考えられます。

確認項目を増やしすぎず、既存の電子カルテや実績管理システムで確認できる情報を活用することが重要です。

記録業務そのものの整理については、理学療法士の書類業務Q&Aも参考になります。

よくある質問

個別指導と監査は同じものですか?

同じものではありません。個別指導は保険診療の質的向上と適正化を目的とする指導であり、監査は不正または著しい不当が疑われる場合などに行われる別の手続きです。

令和8年度改定後も計画書に患者の署名が必要ですか?

改定後のリハビリテーション計画書様式では、患者等の署名欄が廃止されています。ただし、説明・交付などの要件まで不要になったわけではありません。対象となる診療報酬と適用時期を確認してください。

月1回のチェックで監査対策は十分ですか?

月1回の点検だけでは十分とは限りません。制度上必要な記録、計画書更新、説明、算定要件は、それぞれの期限や条件に従う必要があります。月次点検は、日常運用の不備を発見するための補助的な方法です。

電子カルテに実施時間が記録されていても本文への記載が必要ですか?

電子カルテの記録体系や適用される要件によって判断します。必要な情報が診療録として適切に保存され、確認できることが重要です。本文への重複入力を一律に求めるものではありません。

次の一手

リハビリ部門の個別指導・監査への備えでは、書類を増やすことよりも、計画書、説明、実施記録、再評価、算定根拠を確認できる状態にすることが重要です。

まずは対象患者を1例選び、記録と請求情報を照合するところから始めてみてください。

部署全体の運用を整えたい場合:リハ部門の標準化で、記録・評価・共有の仕組みを確認できます。

計画書を重点的に確認したい場合:リハ実施計画書の監査対策で、計画書に関する確認事項を整理できます。

参考文献

  1. 厚生省保険局長. 保険医療機関等及び保険医等の指導及び監査について. 平成7年12月22日保発第117号. 厚生労働省公式資料.
  2. 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定について. 厚生労働省公式資料.
  3. 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定項目の概要. 公式資料(PDF).
  4. 厚生労働省保険局医療課. 令和8年度診療報酬改定に係る疑義解釈資料の送付について(その1). 令和8年3月31日事務連絡. 公式資料(PDF).

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

2022年4月にrehabilikun blogを開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの経験をもとに、理学療法士をはじめとする医療従事者に向けて、臨床評価や実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションなどを中心に、現場での判断や記録に役立つ情報を整理しています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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