リハ前の血圧チェックと中止基準の実務
リハビリを安全に実施するためには、セッション前の血圧チェックを“誰が測っても同じ”手順で標準化することが重要です。本稿では、臥位→座位→立位の体位移行を含めた測定プロトコル、症状と数値を統合した判定、現場での中止基準の整理、共有しやすい記録テンプレートまでを 1 本にまとめます。既存の起立性低血圧記事(総論/運動・生活プロトコル)と束ねて運用してください。
測定準備:カフサイズ・姿勢・環境の整え方
測定誤差は“準備”でほぼ決まります。上腕周径に適合したカフを選び、腕は心臓レベルで支持、衣類の圧迫を避けます。会話・足ぶみ・寒冷刺激は上昇要因になるため控え、5 分程度の静穏を確保。薬・水分・排尿・発熱・睡眠など当日の条件をメモ化し、同一条件で再現できるようにします。訪問場面では椅子の高さ・足底接地・背支持の有無を揃え、病棟ではベッド角度と休息時間を記録しましょう。
項目 | 基準 | 確認 |
---|---|---|
カフ | 上腕周径に適合/心臓レベルで支持 | □ OK |
姿勢 | 足底接地・背支持(座位)/体位保持後に測定 | □ OK |
環境 | 会話しない・寒冷回避・安静 5 分確保 | □ OK |
体位別プロトコル:臥位→座位→立位
原則は「臥位の基準値→座位→立位」で段階的に確認し、体位変更後は一定タイミングで再測定します。立位は“直後・1 分・3 分”の再測定で変化を把握し、めまい・悪心・視覚のかすみ・ふらつきなどの症状を同時に記録します。体位の保持が困難な場合は、安定を待ってから測定してください。測定票は記事末のテンプレートを使用すると、条件と所見を同一紙面で残せます。
判定と“やる/やめる”の線引き(症状優先)
判定は「数値 × 症状 × 経時変化」を統合します。症状(失神感・ふらつき・胸痛・呼吸苦 等)があれば、数値だけが許容範囲でも強度を下げるか中止を検討します。立位での著明な低下が持続する場合は、休息・体位戻し・体液管理・服薬タイミングの再検討をチームで共有。施設の規程がある場合はそれに従い、最終判断は主治医の指示系統に沿ってください。
状況 | 観察ポイント | 対応の例 |
---|---|---|
症状性の起立性低血圧 | 立位直後〜 3 分の低下とめまい・ふらつき | 座位/臥位で休息→再評価。必要に応じて当日は延期。 |
胸痛・呼吸苦・動悸の出現 | 顔面蒼白・冷汗・SpO₂ 低下 | 中止・医師連絡・バイタル再評価・必要時救急対応。 |
明らかな転倒前兆 | 歩行時の蛇行・会話途切れ・視線固定 | 中止。離床レベルを下げ、安全確保・観察を強化。 |
チーム教育や導線設計の整備は、業務の生産性を上げます。新人配置やルーチン構築の全体像はこちら(#flow)を参照してください。
起立性低血圧へのブリッジ
本記事で“どう測るか/やめるか”を標準化した上で、起立性低血圧の背景整理や生活・運動の具体策は既存記事へブリッジします。総論はこちら、生活・運動プロトコルはこちら。相互リンクで 3 本束にすると、検索意図の分担が明確になり、カニバを避けつつ内部回遊が伸びます。
記録・共有テンプレート(印刷ボタン付き)
以下はすべて HTML(印刷ボタン付き)です。院内でも在宅でもそのまま使えます。
- リハ前バイタルチェック表(体位移行込み):/rehab-bp-precheck_log_a4_v1_20251019.html
- 起立性低血圧 記録シート(1・3 分 Δ 自動計算):/oh-recordsheet_a4_v1_20251019.html
- 家庭血圧 7 日ログ(朝夕× 2 回・週平均自動):/home-bp_7day-log_a4_v1_20251019.html
よくある測定エラーと防ぎ方
(1)カフ不適合(上腕周径と合わない)→ 正しいサイズに変更。(2)腕が心臓レベルより低い/筋緊張で保持→ アームレストで支持。(3)体位変更直後の雑談・足ぶみ→ 測定前は静止を徹底。(4)寒冷刺激→ 毛布や室温の調整。(5)連続測定で反応が鈍る→ 所定の間隔を守る。(6)不整脈→ 自動計のばらつきに留意し、手技+聴診での再確認も検討。
FAQ
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
体位は必ず臥位→座位→立位の順ですか?
安全確保の観点から推奨です。立位のみ確認したい場面でも、当日の基準値を把握するために臥位または座位の測定を 1 回入れると判定が安定します。
立位で“何分後”まで測れば十分?
最低でも直後・ 1 分・ 3 分の 3 点を推奨します。症状が持続する・遅れて出る場合は、追加の再測定や当日の負荷軽減を検討してください。
在宅(家庭血圧)と院内の数値が合いません
測定条件(時間帯・腕・姿勢・安静時間・服薬前後)の違いが主因です。条件を揃える・記録テンプレを共有して再現性を高めましょう。