リハビリの実施単位数と請求額が合わない理由
リハビリ部門で集計した実施単位数と、医事課の請求データが一致しないことはありませんか?「月間2,000単位を実施したのに、請求上の単位数が少ない」「収益シミュレーターの金額と請求額が違う」といった場合、最初に確認したいのは集計対象と数値の定義です。
実施単位数、算定対象単位数、請求単位数、基本報酬換算額は、それぞれ意味が異なります。差があるからといって、直ちに算定漏れや請求ミスとは判断できません。
この記事では、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士と医事課が月次実績を照合するときの確認順序、差異の分類、照合表の記入例を解説します。令和8年度診療報酬改定を踏まえつつ、個別の算定可否は最新の告示・通知と自施設の運用に基づいて判断します。
結論|実施記録・算定対象・請求データを同じ条件で比較する
実施単位数と請求額に差がある場合は、対象期間・患者・算定区分・集計単位をそろえてから、実施記録、算定対象として整理した単位数、請求データの順に確認します。
特に重要なのは、単位数と金額を直接比較しないことです。単位数の差を調べる場合は単位数同士を、金額の差を調べる場合は点数や円換算額同士を比較します。
| 数値 | 意味 | 主な確認先 |
|---|---|---|
| 実施単位数 | 診療録等に記録されたリハビリテーションの実施量 | リハビリ部門・電子カルテ |
| 算定対象単位数 | 算定要件を確認したうえで請求対象として整理した単位数 | リハビリ部門・医事課 |
| 請求単位数 | 請求データに計上された疾患別リハビリテーション料の単位数 | 医事課・請求システム |
| 請求額 | 所定の算定ルールを反映した請求上の金額 | 医事課・請求データ |
なお、「算定対象単位数」は本記事で照合を説明するための実務上の呼称です。全国共通の独立した診療報酬項目を意味するものではありません。
また、請求額と審査後の支払額も異なります。返戻や査定の確認は、請求前の実績照合とは分けて行います。
実施単位数・算定対象単位数・請求単位数の違い
月次照合では、同じ「単位数」という言葉でも、どの段階の数値なのかを明確にする必要があります。
実施単位数|実際に提供したリハビリテーションの記録
実施単位数は、担当療法士が実際に提供し、診療録等に記録したリハビリテーションの量を示します。
ただし、実施したことと診療報酬として算定できることは同じではありません。算定区分、対象患者、標準的算定日数、実施内容などの条件を確認する必要があります。
算定対象単位数|請求対象として整理した単位数
本記事では、実施単位数のうち、患者ごとの算定要件などを確認し、請求対象として整理した単位数を「算定対象単位数」と呼びます。
この段階で実施単位数との差が生じた場合は、患者別の条件や実施記録などを確認します。
差が生じた理由を確認する前に、すべてを「算定漏れ」と判断しないことが重要です。
請求単位数|請求データに計上された単位数
請求単位数は、医事課などが管理する請求データに計上された単位数です。
算定対象として整理した単位数と請求単位数に差がある場合は、データ連携、請求処理、締め処理、集計条件などを確認します。
請求単位数が一致していても、基本点数や加算・減算などの違いによって請求額が一致しない場合があります。
基本報酬換算額と請求額|金額の意味を分ける
基本報酬換算額は、基本点数と実施単位数から計算した参考額です。
例えば、脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅰ)245点を2,000単位、1点10円で換算すると、次のようになります。
245点×2,000単位×10円=4,900,000円
ただし、この金額がそのまま実際の請求額になるとは限りません。算定要件、加算・減算、包括評価などの影響を確認する必要があります。
基本報酬換算額の計算には、リハビリ収益シミュレーターを利用できます。シミュレーターは参考額を求めるツールであり、請求額との一致を保証するものではありません。
実施単位数と請求データに差が生じる主な5つの場面
差異の原因を調べるときは、最初から患者ごとの記録をすべて読み直すのではなく、差が生じた段階を分類すると効率的です。
| 分類 | 起こり得る状況 | 最初に確認すること |
|---|---|---|
| ① 集計条件の違い | 対象月・対象患者・病棟などが異なる | 抽出条件と締め日時 |
| ② 算定対象の違い | 実施記録と算定対象として整理した単位数が異なる | 患者別の算定条件 |
| ③ データ連携・請求処理の違い | 算定対象単位数と請求データが異なる | 連携状況と請求処理履歴 |
| ④ 算定区分・点数の違い | 単位数は一致するが金額が異なる | 基本点数、加算・減算、評価方法 |
| ⑤ 請求と審査結果の違い | 請求額と支払額が異なる | 返戻・査定・再請求などの状況 |
① 集計期間や対象患者が異なる
最初に確認したいのは、両方のデータが同じ条件で抽出されているかどうかです。
例えば、リハビリ部門では実施日を基準に集計し、医事課では別の締め処理や請求処理の条件で抽出している場合、数値が一致しないことがあります。
確認する項目は、対象年月、実施日、患者ID、病棟、入院・外来区分、疾患別リハビリテーション料の区分、抽出日時などです。
② 実施した単位数と算定対象単位数が異なる
実施したリハビリテーションのすべてが、同じ条件で算定できるとは限りません。
患者別の対象疾患、標準的算定日数、算定単位数、実施内容、必要な記録などを確認します。
ただし、標準的算定日数を超えたことだけで一律に算定不可と判断することは適切ではありません。対象患者や例外的な取り扱いなど、該当する規定に従って判断します。
③ 算定対象として整理した単位数が請求データに反映されていない
算定対象として整理した単位数と請求データに差がある場合は、電子カルテから請求システムへの連携状況や、請求処理の状態を確認します。
未送信、未確定、修正処理、締め後の更新など、院内システムの運用によって確認すべき項目は異なります。
差が生じた場合は、元の実施記録を無断で修正するのではなく、担当者と医事課で原因を確認し、必要な訂正手続きを行います。
④ 単位数は一致していても点数・金額が異なる
単位数が一致していても、算定区分や評価方法が異なれば、金額は変わります。
例えば、令和8年度診療報酬改定では、一定の条件に該当する離床を伴わないリハビリテーションについて、通常の基本点数とは異なる評価が設けられています。
このため、通常の基本点数だけを使ったシミュレーション結果と、実際の請求額が一致しない場合があります。
ただし、ベッド上で行ったリハビリテーションがすべて同じ取り扱いになるわけではありません。対象となる訓練内容、患者条件、除外条件などを個別に確認してください。
⑤ 請求額と審査後の支払額を比較している
請求額と審査後の支払額を比較する場合は、請求前の単位数照合とは別の確認が必要です。
返戻や査定が関係する場合は、通知内容と請求履歴を確認します。
返戻・査定の違いや請求前の点検項目は、リハビリ算定ミス6選【2026】で詳しく解説しています。
月次実績と請求データを照合する5ステップ
照合は、集計条件の統一から始め、差が生じた段階を特定し、最後に患者別の記録を確認する順序がおすすめです。
以下の図は、実施記録2,000単位、算定対象として整理した単位数1,960単位、請求データ1,950単位という架空の例を用いて、差異を確認する流れを示しています。

図の「算定対象単位数」は、請求対象として整理した単位数を指す本記事独自の実務上の呼称です。正式な診療報酬項目名ではありません。
以下は院内で使用できる実務フローの例であり、全国共通に義務付けられた照合手順ではありません。
- STEP 1:対象条件をそろえる
対象年月、病棟、入院・外来、患者、算定区分、抽出日時を確認します。 - STEP 2:実施単位数を確認する
診療録等に記録された実施単位数を患者別・日別・算定区分別に整理します。 - STEP 3:算定対象単位数を確認する
患者別の算定要件を確認し、請求対象として整理した単位数との差を把握します。 - STEP 4:請求データと突合する
算定対象単位数と請求単位数を比較し、差がある患者・実施日・区分を抽出します。 - STEP 5:差異の原因と対応を記録する
原因が判明したものと未確認のものを分け、担当者、対応内容、再確認日を記録します。
最初から全件の記録を読み直さない
月間の実施単位数が多い場合、全患者の診療録を最初から確認すると時間がかかります。
まずは月次合計、疾患別区分、患者別、実施日別の順に対象を絞り込むと、差異が生じた箇所を特定しやすくなります。
ただし、差異がないことだけで、すべての算定要件が満たされていると保証されるわけではありません。月次照合と算定要件の定期点検は、それぞれ目的が異なります。
月次照合表の記入例|2,000単位と1,950単位の差を確認する
ここでは、図版と同じ架空の月次実績を用いて照合方法を示します。
| 確認項目 | 単位数 | 確認内容 |
|---|---|---|
| 部門の実施記録 | 2,000単位 | 対象月の実施記録から集計 |
| 算定対象として整理した単位数 | 1,960単位 | 実施記録との差40単位を確認 |
| 請求データの単位数 | 1,950単位 | 算定対象との差10単位を確認 |
この例では、確認すべき差が2段階あります。
- 40単位の差:実施記録と算定対象として整理した単位数の違い
- 10単位の差:算定対象として整理した単位数と請求データの違い
合計50単位の差としてまとめて処理するのではなく、40単位と10単位を分けて確認します。
なお、これは差異の分類を説明するための架空例です。40単位が算定不可であったことや、10単位が請求漏れであったことを意味するものではありません。
患者別に差を特定する
次に、請求データとの差がある10単位について、患者別・実施日別に絞り込みます。
| 管理番号 | 算定対象単位数 | 請求単位数 | 差 | 確認状況 |
|---|---|---|---|---|
| A | 40 | 36 | 4 | 要確認 |
| B | 60 | 56 | 4 | 要確認 |
| C | 30 | 28 | 2 | 要確認 |
| 合計 | 130 | 120 | 10 | 確認中 |
この段階では、差の原因を推測で入力しません。患者ごとの実施日、記録、算定条件、請求処理履歴を照合してから原因を分類します。
院内資料に患者情報を使用する場合は、アクセス権限や情報管理規程に従って取り扱ってください。外部サービスへ患者名・患者IDなどを入力しないでください。
単位数が一致しても請求額が違う場合の確認方法
単位数が一致している場合は、次に算定区分と点数の違いを確認します。
例えば、同じ100単位でも、基本点数が245点の場合と180点の場合では基本報酬換算額が異なります。
| 計算条件 | 基本点数 | 単位数 | 基本報酬換算額 |
|---|---|---|---|
| 例A | 245点 | 100単位 | 245,000円 |
| 例B | 180点 | 100単位 | 180,000円 |
上記は1点10円、通常の基本点数を使用した単純な計算例です。
請求額に差がある場合は、単位数の一致だけで判断せず、算定区分、基本点数、加算・減算、包括評価などを確認します。
また、療養病棟やDPC対象病棟では、入院料や包括評価との関係を確認する必要があります。部門内で計算した基本報酬換算額を、そのまま病院の請求額や増収額として扱わないようにします。
差異が見つかったときの対応|PT・OT・STと医事課の役割
差異が見つかった場合は、原因の確認と請求処理の判断を分けます。
| 担当 | 主な確認内容 | 判断・連携 |
|---|---|---|
| 担当療法士 | 実施日、実施内容、単位数、診療録等 | 記録の事実関係を確認する |
| リハビリ部門管理者 | 部門集計、患者別の差異、集計条件 | 差異の分類と確認状況を管理する |
| 医事課 | 算定区分、請求データ、請求処理履歴 | 請求上の取り扱いを確認する |
| 医師 | 医学的必要性、指示、患者の状態など | 医学的判断が必要な事項を確認する |
| 施設基準担当者 | 届出区分、施設基準、適用条件 | 施設基準に関する疑問を確認する |
この役割分担は院内運用の一例です。実際の権限や担当範囲は施設の規程に従ってください。
差異の確認記録に残したい項目
確認結果を残す場合は、少なくとも次の項目を整理すると、翌月以降の再確認に役立ちます。
- 対象年月とデータ抽出日時
- 患者・実施日・算定区分を特定できる院内管理情報
- 実施単位数・算定対象単位数・請求単位数
- 差異の数値と確認した資料
- 原因の分類(判明・未確認)
- 確認担当者と確認日
- 必要な対応と再確認結果
原因が確定していない場合は、「未確認」「医事課確認中」などと記録し、推測を確定事項として扱わないようにします。
月次照合を継続するための運用ポイント
照合を毎月続けるには、確認項目を増やしすぎず、差が生じたときに追跡できる仕組みを整えることが重要です。
集計条件を毎月固定する
対象期間、病棟、算定区分、抽出タイミングを固定し、変更があった場合は記録します。
集計条件が毎月異なると、単位数の変化が実際の提供量によるものなのか、抽出方法によるものなのか判断しにくくなります。
実施量の管理と請求管理を分ける
実施単位数はリハビリテーションの提供量を把握する指標ですが、請求額や利益を直接表すものではありません。
部門の提供量、算定対象、請求額を別々に管理することで、差異が生じた段階を確認しやすくなります。
未解決の差異を翌月へ持ち越す場合は管理する
請求処理や確認作業の都合で、当月中に差異の原因を確定できない場合があります。
その場合は、未確認のまま消去せず、対象月、差異、確認担当者、次回確認日を記録します。
ただし、請求期限や訂正手続きなどは施設の運用と適用される規定に従い、必要な対応を遅らせないようにします。
よくある質問
Q.実施単位数と請求単位数は必ず一致しますか?
必ず一致するとは限りません。集計条件や患者別の算定要件、請求処理の状態などによって差が生じる場合があります。差があるときは、原因を確認してから判断します。
Q.実施単位数が請求単位数より多ければ、算定漏れですか?
直ちに算定漏れとは判断できません。実施した単位数のうち、どの単位数が算定対象として整理されているかを確認し、その後に請求データとの違いを調べます。
Q.請求単位数が一致していれば、請求額も一致しますか?
いいえ。算定区分や基本点数、加算・減算、包括評価などによって金額が異なる場合があります。単位数と金額は分けて照合してください。
Q.療養病棟やDPC対象病棟でも同じ方法で確認できますか?
実施記録と請求データの照合手順は参考になります。ただし、実際の請求上の取り扱いは入院料や包括評価の規定によって異なるため、施設ごとの算定条件を確認してください。
Q.返戻や査定があった場合も、この照合表で確認できますか?
請求前の実績照合と、審査後の返戻・査定の確認は分けて行います。返戻・査定では通知内容や再請求の状況を確認する必要があります。
次の一手|直近1か月の実施記録と請求データを照合する
実施単位数と請求額に差がある場合は、まず直近1か月のデータを使って、対象条件を統一するところから始めてください。
- リハビリ部門の実施単位数を集計する
- 算定対象として整理した単位数を確認する
- 医事課の請求単位数と照合する
- 差がある患者・実施日・算定区分を抽出する
- 原因と対応状況を記録する
基本報酬換算額を確認したい場合は、リハビリ収益シミュレーターを利用してください。
起算日、単位・日数、実施記録、計画書、コメント、施設基準などの算定上の点検項目は、リハビリ算定ミス6選【2026】で整理しています。
実施記録と請求データの差を、すべて算定ミスと決めつけないことが重要です。まずは数値の定義をそろえ、どの段階で差が生じたのかを明確にしましょう。
参考文献
- 厚生労働省.令和8年度診療報酬改定について.告示・通知・疑義解釈等の掲載ページ.
- 厚生労働省.診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号).医科診療報酬点数表,第2章第7部リハビリテーション.公式掲載ページ.
- 厚生労働省.診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日保医発0305第6号).公式掲載ページ.
- 厚生労働省.診療報酬請求書等の記載要領等について(令和8年3月27日保医発0327第2号による改正).公式掲載ページ.
※本記事の照合手順と架空データは、院内実務を整理するための例です。診療報酬上の算定可否、請求・訂正処理、施設基準の判断は、最新の公的資料と自施設の届出・運用状況に基づいて確認してください。
著者情報
rehabilikun|理学療法士
急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの経験を基に、PT・OT・STが臨床判断や記録、制度を実務につなげやすい情報を発信しています。
脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションなどを中心に、現場で確認すべき判断条件と実務上の手順を整理しています。診療報酬に関する内容では、制度上の算定要件と院内運用の例を区別して解説しています。
保有資格:脳卒中認定理学療法士/褥瘡・創傷ケア認定理学療法士/登録理学療法士/3学会合同呼吸療法認定士/福祉住環境コーディネーター2級
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