リハ職がAIでやってはいけないこと7選|安全な使い方と注意点

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リハ職がAIでやってはいけないこと7選

リハ職がAIを使う際に避けるべきなのは、患者情報の入力、AI文のカルテへの無確認転記、観察していない内容の追加、診断や予後判断の代行などです。ChatGPTなどの生成AIは文章整理に役立ちますが、出力の正確性や安全性を保証するものではありません。この記事では、PT・OT・STがAIを安全に使うために、任せてよい作業と医療者が判断すべき範囲を現場目線で整理します。

リハ職におけるAI活用の全体像を確認したい方へ

本記事ではNG行為を中心に解説します。文章整理、患者説明、カンファレンス準備など、具体的な活用場面は総論記事で整理しています。

PT・OT・STのChatGPT活用例を見る

リハ職のAI活用で注意が必要な理由

AIが作った自然な文章と、臨床的に正しい記録は同じではありません。

生成AIは、入力された文章の続きとして自然に見える回答を作ります。そのため、観察していない内容が補われたり、根拠のない推測が断定的に書かれたりすることがあります。

特にリハビリ業務では、患者情報、診療記録、評価結果、予後、リスク管理などを扱います。入力内容や出力内容に誤りがあれば、個人情報保護だけでなく、申し送りや臨床判断にも影響しかねません。

また、AIサービスごとにデータの保存方法、学習への利用、管理者機能、契約条件が異なります。個人向けサービスの設定を変更しただけで、患者情報を自由に入力できるようになるわけではありません。

臨床では、AIの性能だけでなく、所属施設の利用規程、契約しているサービス、情報管理部門の方針を含めて判断する必要があります。

AIに任せてよいこと・注意すること・任せないこと

AIは「文章や情報の整理役」として使い、臨床判断と最終確認は医療者が行うのが基本です。

リハ職におけるAI活用の境界線。文章の要約や言い換えは活用しやすく、症例整理や教育資料は注意が必要で、個人情報入力や診断代行は避けることを示した図版
AIは整理役として使い、情報の確認と臨床判断は医療者が行います。
リハ職におけるAI活用の境界線
区分 活用例 判断基準
活用しやすい 一般的な文章の要約、専門用語の言い換え、見出し整理、チェック項目の案出し 患者情報を含まず、出力を自分で確認できる
注意が必要 症例情報の整理、新人教育資料、患者説明文、カンファレンス要約、文献要約 施設ルールを確認し、匿名化・内容確認・原典確認が必要
任せない 診断、予後判断、治療方針、リスク判断、患者情報を含む記録の無確認作成 患者の安全や専門職としての責任に直接関係する

同じ文章作成でも、「一般的な説明文を読みやすくすること」と「患者ごとの臨床判断を文章化すること」ではリスクが異なります。AIを使う前に、その作業が単なる整理なのか、医療者による判断なのかを分けましょう。

リハ職がAIでやってはいけないこと7選

避けるべき行為は、個人情報、記録の正確性、臨床判断、施設ルールの4つに整理できます。

1.患者や関係者を特定できる情報を入力する

もっとも避けたいのは、患者さんや家族、職員を特定できる情報を、利用許可が確認できていないAIサービスへ入力することです。

氏名、患者ID、生年月日、住所、連絡先、顔写真、病院名、病棟名などは入力しないようにします。氏名を削除していても、希少疾患、年齢、居住地域、入退院日、特徴的な経過が組み合わさると、個人が推測される可能性があります。

AIへの入力を避けるべき患者情報の例
情報の種類 具体例 基本対応
直接識別できる情報 氏名、患者ID、住所、電話番号、顔写真 入力しない
詳細な日付 生年月日、入院日、手術日、退院予定日 必要性を確認し、一般化する
施設情報 病院名、病棟名、施設名、地域名 削除または一般化する
組み合わせで特定される情報 希少疾患、詳細な年齢、職業、家族構成、特徴的な経過 組み合わせによる特定可能性を確認する

「名前を消したから大丈夫」とは限りません。また、匿名化や抽象化を行っても、施設が生成AIへの症例情報入力を禁止している場合は使用できません。

2.AIが作った文章をそのままカルテに貼り付ける

AIが作った文章を、内容確認せずに診療記録へ転記してはいけません。

AIの文章には、入力していない所見、曖昧な介助量、過剰な断定、施設で使用していない表記が混ざることがあります。文章が読みやすいほど、誤りに気づきにくくなる点にも注意が必要です。

カルテへ反映する前には、少なくとも次の点を確認します。

  • 自分が実際に観察・評価した内容と一致しているか
  • 実施していない検査や介入が追加されていないか
  • 介助量、距離、時間、回数などの数値が正しいか
  • 事実と解釈が区別されているか
  • 自分が記録者として説明できる文章か

AIはカルテを完成させる担当者ではなく、文章を整える補助者として扱います。

3.観察していない所見や原因を追加する

入力していない所見や、確認していない原因をAIに補わせてはいけません。

たとえば、「歩行時にふらつきがみられた」という情報から、AIが「下肢筋力低下やバランス能力低下が原因と考えられる」と補うことがあります。しかし、筋力やバランスを評価していなければ、それは観察事実ではなく仮説です。

AIで混同しやすい観察事実・解釈・判断
区分 記載例 AI利用時の注意
観察事実 歩行中に右側へ2回ふらついた 入力した事実の範囲内で整理する
解釈・仮説 右下肢の支持性低下が影響した可能性がある 評価根拠を確認し、事実と分けて記載する
臨床判断 歩行練習には見守りが必要と判断した 患者の状態を確認した医療者が判断する

AIへ依頼するときは、「入力文にない所見・原因・数値は追加しない」「不明な点は不明と示す」と条件を付けます。それでも、出力後の確認は必要です。

4.診断・予後・治療方針をAIに決めさせる

診断、予後予測、治療方針、離床可否、転倒リスクなどの臨床判断を、AIだけで決めてはいけません。

AIは、患者さんの表情、疲労、急な状態変化、医師指示、検査結果、服薬、生活背景、施設の対応能力を現場で確認しているわけではありません。入力されていない情報を考慮することもできません。

AIへ任せられるのは、判断に必要な情報の整理までです。最終的な判断は、患者さんを評価した専門職が、多職種との情報共有や施設基準を踏まえて行います。

5.数値・文献・制度情報を確認せずに使う

AIが示した基準値、カットオフ値、文献名、ガイドライン、診療報酬情報を、原典確認なしで使用してはいけません。

生成AIは、実在しない文献や不正確な数値を、もっともらしい形式で示すことがあります。また、実在する情報でも、対象疾患、評価条件、測定方法が異なれば、そのまま臨床へ適用できません。

院内資料、記事、勉強会資料に使う場合は、次の順序で確認します。

  1. 文献やガイドラインが実在するか確認する
  2. 原文を開いて対象者と測定条件を確認する
  3. 数値が原文と一致しているか確認する
  4. 改訂版や新しい通知がないか確認する
  5. 引用元を明記する

AIは検索や整理の入口として使い、根拠の確定には一次情報を使用します。

6.施設ルールや契約条件を確認せずに使う

個人の判断だけで、業務端末や患者対応に生成AIを導入してはいけません。

AIツールの利用可否、使用できる端末、入力してよい情報、アカウント管理、保存期間、出力の利用方法は、施設や法人によって異なります。

利用前に、次の項目を確認します。

  • 施設として生成AIの業務利用が認められているか
  • 使用を許可されたサービスや契約プランか
  • 個人アカウントと法人管理アカウントのどちらを使うか
  • 患者情報や業務上の秘密情報を入力できる契約か
  • 入力内容の保存・学習利用・管理方法が確認されているか
  • 問題発生時の報告先が決まっているか

データの学習利用を停止する設定があっても、それだけで施設の許可や情報管理上の要件を満たすとは限りません。上司、情報管理部門、個人情報保護担当者などへ確認したうえで使用します。

7.新人教育や実習指導をAI任せにする

新人教育や実習指導で、AIの回答をそのまま模範解答として扱ってはいけません。

AIはチェック項目や説明資料のたたき台を作れますが、対象者の理解度、施設の手順、患者さんの状態まで踏まえた指導はできません。

療養病棟などでは、同じ移乗介助でも、拘縮、皮膚状態、認知機能、医療機器、職員配置によって注意点が変わります。一般的なAI回答だけで手順を標準化すると、現場に合わない教育になる可能性があります。

新人教育では、AIを答えを出す道具ではなく、考えを整理する道具として使います。指導者は内容を確認し、「なぜその判断になるのか」「患者ごとに何が変わるのか」を対話で補足する必要があります。

AIを安全に使うための5原則

安全なAI活用では、入力情報を制限し、判断を任せず、出力を必ず確認します。

リハ職がAIを安全に使うための5原則
原則 具体的な対応
個人情報を安易に入力しない 匿名化だけで判断せず、施設規程と利用サービスを確認する
臨床判断を任せない 診断、予後、方針、リスク判断は医療者が行う
事実と解釈を分ける 観察していない内容や根拠のない原因を追加しない
出力を必ず確認する 患者情報、数値、表現、施設ルールとの整合性を確認する
一次情報へ戻る 文献、制度、ガイドライン、製品仕様は原典で確認する

AIを使うかどうかは、「文章作成を時短できるか」だけでは決められません。誤りが生じた場合の影響と、自分で内容を確認できるかを考えて用途を選びます。

入力前・出力後・記録前の3段階チェック

AI利用時は、入力前、出力後、カルテや資料へ反映する前の3段階で確認すると、見落としを減らしやすくなります。

リハ職がAIを利用するときに入力前・出力後・記録前の3段階で確認する項目を示した図版
入力前・出力後・記録前の各段階で確認し、1つでも確認できない場合はそのまま使用しません。
リハ職向けAI利用の3段階チェック
確認時点 確認すること 中止する例
入力前 個人情報、施設情報、秘密情報、利用規程を確認する 患者を特定できる情報が残っている
出力後 追加された所見、誤った数値、過剰な断定、架空の文献を確認する 自分が確認できない内容が含まれている
記録・共有前 観察事実との一致、施設様式、説明責任、共有範囲を確認する 記録者として根拠を説明できない

どこか一つでも確認できない場合は、そのまま使用せず、元の情報へ戻って修正します。

安全に使いやすい指示文例

AIへの指示には、追加禁止、断定禁止、原文厳守などの制約を具体的に入れます。

リハ職向けの安全性を意識した指示文例
目的 指示文例
SOAP形式への整理 以下の匿名化済みメモをSOAP形式に整理してください。入力文にない所見、原因、数値、判断は追加しないでください。不明な項目は「情報なし」としてください。
患者・家族向けの言い換え 以下の文章を一般の方にも分かる表現に言い換えてください。医学的な判断や新しい説明は追加せず、原文の意味を変えないでください。
カンファレンス内容の整理 以下の情報を「確認できた事実」「現在の課題」「次回確認すること」に分けてください。原因や方針を推測しないでください。
文献の要約 以下の原文を、対象者、方法、主な結果、限界に分けて要約してください。原文にない数値や結論は追加しないでください。

ただし、安全性を意識した指示文を使っても、誤った出力を完全に防げるわけではありません。最終確認は必ず使用者が行います。

AI利用前チェックリスト

次の項目に一つでも不安がある場合は、入力や使用をいったん止めて確認します。

  • 所属施設で生成AIの業務利用が認められている
  • 使用するサービスとアカウントが施設の規程に合っている
  • 患者、家族、職員を特定できる情報を入力していない
  • 情報を組み合わせても個人や施設を推測できない
  • 診断、予後、治療方針、リスク判断をAIに任せていない
  • 観察していない所見や原因が追加されていない
  • 数値、文献、制度情報を一次情報で確認した
  • AI文章をそのままカルテや資料へ転記していない
  • 記録者・作成者として内容を説明できる
  • 最終判断を自分または担当する医療者が行っている

AIを使用したかどうかに関係なく、カルテ、説明資料、院内文書の内容に責任を持つのは作成・確認した医療者です。

よくある質問

各項目名をタップすると回答が開きます。

ChatGPTに患者情報を入力してもよいですか?

個人の判断で患者情報を入力するのは避けましょう。氏名や患者IDだけでなく、病院名、地域、詳細な日付、希少疾患、特徴的な経過なども個人の特定につながる可能性があります。施設規程、契約しているサービス、データの取扱条件を確認する必要があります。

患者情報を匿名化すれば入力しても安全ですか?

匿名化だけで安全と判断することはできません。複数の情報を組み合わせると患者さんを推測できる場合があり、施設が症例情報の入力自体を禁止していることもあります。匿名化の程度だけでなく、利用目的、施設規程、契約条件を確認してください。

カルテ文の下書きにAIを使ってもよいですか?

施設ルールで認められていることが前提です。使用する場合も、匿名化した観察メモの整理や言い換えなどの補助にとどめ、入力していない所見や判断が追加されていないかを確認します。完成した文章を無確認でカルテへ貼り付けてはいけません。

学習に使わない設定なら患者情報を入力できますか?

学習利用を停止する設定だけで、患者情報の入力が許可されるわけではありません。履歴、保存期間、契約条件、管理者機能、施設規程、個人情報保護上の取扱いを含めて判断する必要があります。

新人教育でAIを使うのは問題ですか?

一般的な説明資料や質問案のたたき台には使えます。ただし、AI回答を模範解答としてそのまま渡すのではなく、指導者が内容を確認し、施設手順や患者ごとの判断を補足します。新人自身が根拠を確認して考える過程を残すことが重要です。

次の一手

AI活用では、まず「個人情報を入力しない」「臨床判断を任せない」「出力を自分で確認する」の3点を共通ルールにします。そのうえで、文章整理や言い換えなど、誤りがあっても自分で確認・修正できる用途から始めましょう。

記録業務や職場環境も整理したい方へ

記録やカンファレンス業務が重く、個人の工夫だけでは改善しにくい場合は、教育体制、人員配置、相談環境なども確認する必要があります。

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参考文献

  1. 厚生労働省. 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版. 2026. 厚生労働省掲載ページ
  2. 個人情報保護委員会. 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について. 2023. 個人情報保護委員会掲載ページ
  3. OpenAI. Data Controls FAQ. OpenAI Help Center
  4. OpenAI. Business data privacy, security, and compliance. OpenAI公式ページ
  5. OpenAI. Terms of Use. OpenAI公式ページ
  6. Haltaufderheide J, Ranisch R. The ethics of ChatGPT in medicine and healthcare: a systematic review on large language models. NPJ Digit Med. 2024;7:183. doi:10.1038/s41746-024-01157-x
  7. Tian S, Jin Q, Yeganova L, et al. Opportunities and challenges for ChatGPT and large language models in biomedicine and health. Brief Bioinform. 2024;25(1):bbad493. doi:10.1093/bib/bbad493

著者情報

rehabilikun blog運営者の理学療法士rehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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