離床 10%減算は「端座位できたか」だけでは決まらない
離床関連の制度・監査対策をまとめて確認したい方へ
離床 10%減算は、「端座位できたか」だけで決まるわけではありません。制度の全体像や離床レベルの整理も合わせて確認すると、院内運用を統一しやすくなります。
令和 8 年度診療報酬改定では、「離床を伴わないリハビリテーション」に対して 10%減算と 1 日 2 単位制限が導入されました。ただし、実際の疑義解釈を見ると、“端座位に至らなかった=減算” ではありません。
厚生労働省は、「ベッド上から移動せずに、ポジショニング又は拘縮予防等を主目的とした他動的訓練のみ」を行った場合を「特定の患者」と整理しています。逆に、離床に向けた過程や能動的要素が含まれていれば、減算対象外となる可能性があります。 [oai_citation:0‡一般社団法人 日本作業療法士協会](https://www.jaot.or.jp/files/page/seido/r8shinryo_QA2.pdf?utm_source=chatgpt.com)
監査で危ない記録と安全寄りの記録
現場で最も議論になっているのは、「離床準備として股関節 ROM を実施」というケースです。実際、疑義解釈では“端座位に至らなくても、離床を目指して臥位から座位へ移行しようとした例”は減算対象外とされています。 [oai_citation:1‡一般社団法人 日本作業療法士協会](https://www.jaot.or.jp/files/page/seido/r8shinryo_QA2.pdf?utm_source=chatgpt.com)
ただし、「離床準備」と書けば自動的に回避できるわけではありません。監査では、“本当に離床へ向けた介入だったのか” が見られる可能性があります。
| 危ない記録 | 安全寄りの記録 |
|---|---|
| ベッド上 ROM のみ | 離床へ向けた段階的介入あり |
| 他動運動のみ | 自動運動・起き上がり練習あり |
| 「離床準備」とだけ記載 | 目的・評価・反応・中止理由を記録 |
| 活動性向上の記録なし | 座位保持・耐久性向上を記録 |
| 他職種記録と矛盾 | 看護・OT・ST記録と整合 |
股関節 ROM はどこまで減算回避になるのか
実務上、「離床準備として股関節 ROM を実施」というケースは多いと思います。しかし、“ROM だけ” では、拘縮予防目的と判断されるリスクがあります。
一方で、以下のような文脈が加わると、“離床に向けた介入” として整理しやすくなります。
- 起居・移乗動作改善目的
- ギャッジアップ耐久性向上
- 起立性低血圧への段階的介入
- 寝返り・起き上がり練習
- 自動介助運動を含む
- 次回離床計画を記録
つまり重要なのは、“離床できたか” ではなく、“離床へ向けた過程が存在するか” です。
監査で安全寄りに見えやすい記録例
例えば、以下のような記録は、単なる拘縮予防 ROM よりも、離床へ向けた段階的介入として解釈されやすいと思われます。
血圧変動に配慮しつつ離床準備として体幹・股関節運動を実施。起き上がり動作練習を試みるも倦怠感強く、端座位には至らず終了。次回も段階的離床を継続予定。
逆に、「ベッド上 ROM 実施」のみでは、活動性向上や離床プロセスが見えにくく、監査上は弱い可能性があります。
現場で重要になりそうなポイント
今回の制度は、“端座位できた患者だけを評価する” 制度ではありません。むしろ、「活動性向上につながるリハビリか」を見ようとしている制度と考えた方が理解しやすいと思います。
そのため、今後は以下が重要になりそうです。
- 離床へ向けた段階性
- 能動的要素の有無
- 離床できなかった理由
- 次回方針
- 他職種記録との整合性
特に療養型・慢性期では、“今日は離床できなかったが、離床を目指した介入は実施している” ケースが多くなります。単なる ROM 記録ではなく、“活動性向上へのプロセス” を残す視点が重要になると思われます。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
ベッド上 ROM だけだと減算になりますか?
拘縮予防等を目的とした他動的訓練のみの場合は、減算対象となる可能性があります。一方で、自動運動や離床へ向けた段階的介入が含まれていれば、減算対象外として整理される余地があります。 [oai_citation:2‡一般社団法人 日本作業療法士協会](https://www.jaot.or.jp/files/page/seido/r8shinryo_QA2.pdf?utm_source=chatgpt.com)
端座位に至らなかった場合も減算ですか?
疑義解釈では、離床を目指して介入したが、結果として端座位に至らなかったケースは減算対象外となる例が示されています。 [oai_citation:3‡一般社団法人 日本作業療法士協会](https://www.jaot.or.jp/files/page/seido/r8shinryo_QA2.pdf?utm_source=chatgpt.com)
「離床準備」と書けば減算回避できますか?
記載だけでは不十分と思われます。目的、評価、反応、中止理由、次回方針など、実際に離床へ向けた介入であることを記録で示すことが重要です。
次の一手
離床 10%減算は、「離床できたか」だけでなく、“活動性向上へ向けた過程” が重要になります。制度全体や院内定義も合わせて整理しておくと、記録や監査対応を統一しやすくなります。
参考文献
- 厚生労働省.疑義解釈資料の送付について(その2).2026.https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001689076.pdf
- 日本作業療法士協会.令和8年度診療報酬改定 疑義解釈について.2026.https://www.jaot.or.jp/files/page/seido/r8shinryo_QA2.pdf
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


