車椅子でずり落ちる原因と対策| 3 点調整

臨床手技・プロトコル
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車椅子でずり落ちる(仙骨座り)原因と対策|最初に触る 3 点

車椅子で「ずり落ちる(仙骨座り)」は、見た目の問題だけでなく、骨盤後傾の固定化せん断が増えやすく、褥瘡リスクや上肢活動の低下につながります。本記事は、現場で再現しやすいように最初に触る 3 点(座奥行・フットサポート・背もたれ)に絞って、原因→チェック→調整の順にまとめます。

「とりあえずクッション」より先に、設定のズレを潰すだけで改善するケースも多いです。まずは 5 分で確認できるチェック表からいきましょう。

車椅子設定や教育が回らないなら、環境から整えるのも 1 つの手

ずり落ちが繰り返す背景に「相談相手がいない」「手順が統一されていない」ことがあります。情報だけ先に揃えておくと、いざという時に動きやすいです。

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なぜ起きる?ずり落ち(仙骨座り)のメカニズムを 1 分で整理

ずり落ちは、骨盤が後傾して坐骨が前方へ逃げ、体幹が丸まり、背もたれへ「もたれるほど」下方へ滑っていく流れで起きます。多くは設定のミスマッチ(座奥行が長い/足が届かない/背もたれが合わない)で始まり、本人は「楽な姿勢」を探した結果としてずり落ちます。

つまり、対策の第一歩は摩擦で止めるではなく、滑りたくなる条件を作らないことです。

結論:最初に触るのは 3 点(座奥行・フットサポート・背もたれ)

ずり落ち対策で効果が出やすい順に、まずは 3 点を確認します。ここを揃えずにクッションやベルトを追加すると、かえって圧とせん断が増えることがあります。

ずり落ち(仙骨座り)で最初に触る 3 点(チェック→調整の順)
優先 見る場所 ずり落ちのサイン まずやる調整 狙い
1 座奥行(シート奥行) 膝裏が当たる/骨盤が後傾して前へ逃げる 座奥行を適正化(膝裏に余裕) 「前へ逃げる」開始点を潰す
2 フットサポート高さ・位置 足が届かず引っ張られる/踵が浮く 足底接地を作る(高さ・後方位置) 骨盤後傾を助長する張力を減らす
3 背もたれ(角度・高さ・支持) 腰背部が支えられず「丸まり」が強い 後方骨盤の支持を作る(腰背部の当たり) 体幹が落ちて滑る連鎖を止める

5 分チェック:原因を「設定」で切り分ける

現場で再現しやすいように、チェックを Yes / No で進めます。 Yes が 1 つでもあれば、まずはその設定から直します。

ずり落ち(仙骨座り)原因の切り分けチェック( Yes 優先で調整)
チェック項目 Yes の所見 原因の当たり 先にやる調整
膝裏がシート前縁に当たる 痛み・圧迫で前へ逃げる 座奥行が長い 座奥行を短く(クッション位置も確認)
踵が浮く/つま先立ち 大腿後面の張り・骨盤後傾 フットサポートが高い/遠い フットサポートを下げる・後方へ
骨盤が後傾し、腰が丸い 仙骨荷重が増える 背もたれ支持不足 後方骨盤を支える当たりを作る
座面が「たわむ」感じがある 骨盤が不安定で滑りやすい シートのたるみ シート張り・ベースの確認

原因別レシピ:最初に触る 3 点をどう直す?

ここでは「現場で手が動く」形に、調整の狙いと手順をセットでまとめます。大事なのは、 1 回で全部やらないことです。必ず「 1 箇所 → 再座位 → ずり落ちの変化」を見て、当たりを確かめます。

レシピ 1:座奥行(長すぎ)を直す

座奥行が長いと、膝裏の圧迫を避けるために骨盤が前へ逃げ、結果として後傾とずり落ちが起きやすくなります。まずは「膝裏の余裕」を作り、坐骨が座面に乗り続ける条件にします。

  • 狙い:膝裏の圧迫を減らし、骨盤が前へ逃げる開始点を潰す
  • やること:座奥行を短くする(可能なら機構で調整、難しければクッション位置を再確認)
  • 確認:座り直し後、骨盤が後傾しにくいか/大腿が前へ押し出されないか

レシピ 2:フットサポート(足が届かない)を直す

足が届かないと、大腿後面の張力や姿勢保持の不安定さが増え、骨盤後傾が助長されます。足底接地を作るだけで「ずり落ちが止まる」こともあります。

  • 狙い:足底支持で骨盤と体幹を安定させる
  • やること:フットサポートの高さ・前後位置を見直す(踵が浮かない)
  • 確認:大腿が押し上がらず、骨盤が後傾しにくいか

レシピ 3:背もたれ(支持不足)を直す

背もたれの当たりが合わないと、体幹が丸まり、背もたれへ「もたれるほど」滑ります。まずは後方骨盤が安定する支持を作り、上体が落ちる連鎖を減らします。

  • 狙い:後方骨盤の支持で体幹を起こし、滑りの連鎖を止める
  • やること:腰背部の当たり(高さ・当たり方)を調整し、必要なら支持を追加
  • 確認:骨盤後傾が軽くなり、頭部が前に落ちにくいか

よくある失敗:クッションやベルトの前に潰すこと

ずり落ち対策は「滑らない素材」へ寄せるほど、圧とせん断が増えることがあります。特に、設定がズレたままベルトで止めると、上体の不快感が増えて別の崩れ方を招きやすいです。

ずり落ち対策の NG → OK(先に潰す順番)
NG(やりがち) なぜ悪化? OK(先にやる) 記録の一言例
滑り止めで止める 摩擦でせん断が増えやすい 座奥行・フットサポートを先に適正化 「座奥行調整後、ずり落ち軽減」
ベルトで引き戻す 不快感で別の崩れが出る 背もたれ支持を作ってから検討 「腰背部支持の追加で骨盤後傾が減少」
毎回やり方が違う 再現できず、改善が続かない 条件(足底接地・声かけ)を固定 「足底接地を統一し再評価」

現場の詰まりどころ:設定が属人化して「再発」する

ずり落ちは、調整そのものより運用の属人化で再発します。新人は「どこから触るか」が分からず、結果としてクッションやベルトに寄りがちです。まずは本記事の最初に触る 3 点を院内の共通言語にし、記録の型を揃えるのがおすすめです。

現場の型(チェックの持ち方)を揃える資料が必要なら、無料ダウンロードも使えます。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

ずり落ちがある時、まずクッションを変えるべきですか?

最初はクッションより設定(座奥行・フットサポート・背もたれ)を優先します。設定がズレたまま滑り止めやベルトへ寄せると、圧やせん断が増えて悪化することがあります。まず 5 分チェックで原因の当たりをつけ、 1 箇所ずつ直して変化を見ます。

座奥行はどこを見れば「長い」と判断できますか?

膝裏がシート前縁に当たる、または当たりそうで本人が前へ逃げる場合は「長い」サインです。膝裏の不快感を避けるために骨盤が前へ移動し、結果として後傾とずり落ちが起きやすくなります。

足が届かない場合、何から直すのが早いですか?

まずは踵が浮かない足底接地を作ります。フットサポートの高さと前後位置を見直し、足が安定すると骨盤後傾が軽くなることがあります。直した後は、必ず座り直してずり落ちの変化を確認します。

再評価で記録しておくと良い項目は?

「どこを直したか(座奥行/フットサポート/背もたれ)」「座位条件(足底接地の有無)」「ずり落ちまでの時間」「本人の訴え」を短く残すと、次の調整が速くなります。

次の一手(関連)

参考文献

  • Kamegaya T, et al. Influence of sacral sitting in a wheelchair on the distribution of interface pressure and shear force. J Phys Ther Sci. 2016. PubMed
  • RESNA Position Paper: Application of Ultralight Manual Wheelchairs. (Seat depth and sliding forward) PDF
  • NSW Agency for Clinical Innovation. Postural intervention for posterior pelvic tilt and kyphosis. PDF

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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