睡眠異常を「夜だけ」で見ないことが重要
病棟では「夜に眠れない」「昼間ずっと寝ている」「最近落ち着かない」など、睡眠に関する変化を目にする場面があります。しかし実際には、睡眠異常は“夜だけの問題”として切り分けられないことも少なくありません。
特に高齢患者では、せん妄、低酸素、薬剤、痛み、不安、昼夜逆転などが複雑に関係し、睡眠・覚醒リズム全体が崩れているケースがあります。そのため、PT・OT が最初に見るべきなのは「夜」「昼」「行動」の変化をセットで観察することです。
睡眠異常とせん妄を合わせて確認する
昼夜逆転や夜間不穏、日中傾眠は、せん妄や全身状態悪化のサインとして現れることがあります。
睡眠異常で最初に見る 3 つ
睡眠異常を観察するときは、「夜に眠れているか」だけでなく、昼間の覚醒状態や行動変化まで含めて確認することが重要です。特に急性期・療養病棟では、睡眠異常が全身状態悪化やせん妄の初期サインとして現れることがあります。
まずは複雑に考えすぎず、「夜」「昼」「行動」の 3 方向から観察を始めると整理しやすくなります。
夜に眠れているかを見る
まず確認したいのは、入眠困難や中途覚醒の有無です。「眠れない」だけでなく、「夜中に何度も起きる」「頻回ナースコールがある」「トイレ回数が増えている」なども重要な情報になります。
背景には、疼痛、頻尿、不安、環境変化、呼吸苦などが隠れていることがあります。単純な不眠として扱わず、睡眠を妨げる要因を整理する視点が重要です。
昼間に眠気が強くないかを見る
昼間の強い眠気や反応低下は、睡眠不足だけでなく、低酸素、薬剤、感染、全身状態悪化などの影響で起こることがあります。
リハビリ場面では「集中できない」「反応が鈍い」「途中で眠ってしまう」などとして現れやすく、単なる意欲低下と誤認されるケースもあります。夜間だけでなく、昼間の覚醒状態まで含めて観察することが重要です。
行動変化が出ていないかを見る
睡眠異常では、行動変化が先に目立つ場合があります。落ち着きがない、夜間徘徊、昼夜逆転、急な不穏などは、せん妄や環境適応不良のサインとして重要です。
特に「昨日までと違う」という変化は重要な観察ポイントになります。睡眠だけを切り離さず、行動全体の変化として捉えることが実務では重要です。
現場でよくある見落とし
睡眠異常では、「夜眠れない=睡眠薬」という流れになりやすい一方で、背景要因の整理が不十分なケースも少なくありません。リハ職は処方を判断する立場ではありませんが、日中の覚醒状態や活動性の変化に気づきやすい立場です。
夜間不眠、日中傾眠、不穏を別々に見るのではなく、同じ睡眠・覚醒リズムの変化として整理すると、病棟共有につなげやすくなります。
| 場面 | よくある見落とし | 確認したい視点 |
|---|---|---|
| 夜間不眠 | 不眠だけで判断 | 疼痛・頻尿・不安・呼吸苦 |
| 昼間傾眠 | 意欲低下と誤認 | 低酸素・薬剤・感染 |
| 不穏 | 性格変化と判断 | せん妄・環境変化 |
| 昼夜逆転 | 生活リズムだけで判断 | 活動量低下・せん妄・病棟環境 |
PT・OT が共有したいポイント
睡眠異常は、看護師だけで完結する問題ではありません。リハビリ中の反応低下や不穏、覚醒変化は、病棟全体で共有すべき情報になることがあります。
特に「昨日との違い」「時間帯による変化」「リハ中だけ悪化する」などは、PT・OT が気づきやすいポイントです。単なる睡眠の話として終わらせず、全身状態やせん妄リスクまで含めて共有する視点が重要になります。
| 観察項目 | 共有例 | 確認したい背景 |
|---|---|---|
| 夜間覚醒 | 夜間に複数回起きている | 疼痛・頻尿・不安 |
| 日中傾眠 | 離床中に閉眼が増える | 薬剤・低酸素・睡眠不足 |
| 反応低下 | 声かけへの反応が遅い | せん妄・感染・全身状態悪化 |
| 行動変化 | 落ち着きがない、不穏 | せん妄・環境変化・尿意 |
リハ実施判断の考え方
睡眠異常がある場合でも、すぐにリハを中止するわけではありません。覚醒刺激で改善する場合や、短時間・低負荷で安全に実施できる場合もあります。
一方で、反応低下、意識変化、SpO2 低下、強い不穏、転倒リスクが重なる場合は、通常の睡眠不足ではなく全身状態悪化の可能性があります。迷った場合は、無理に進めず情報共有を優先しましょう。
| 状態 | リハ判断 | 対応 |
|---|---|---|
| 軽度傾眠 | 通常〜軽負荷 | 覚醒刺激を入れながら確認 |
| 集中低下 | 軽負荷 | 短時間介入へ調整 |
| 反応低下 | 中止検討 | バイタル確認・報告 |
| 不穏・危険行動 | 中止 | 安全確保し病棟共有 |
共有で使いやすい SBAR 例
睡眠関連の報告では、「眠れていませんでした」だけでは情報が曖昧になりやすいです。いつ、どの場面で、どの程度リハに影響したかを具体化すると共有しやすくなります。
S:本日、離床中に閉眼が多く傾眠傾向がありました。
B:昨夜は中途覚醒が複数回あったとのことです。
A:歩行時も集中低下あり、反応がやや遅い印象でした。
R:本日は軽負荷で終了し、病棟でも覚醒状態の確認をお願いします。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
睡眠異常はリハビリ中でも確認できますか?
できます。昼間の強い眠気、反応低下、集中困難、不穏などは、リハビリ中に気づきやすい変化です。特に「昨日との違い」は重要な観察ポイントになります。
昼間に眠そうなら夜眠れていないだけですか?
必ずしもそうとは限りません。低酸素、感染、薬剤、せん妄などが関係している場合もあり、全身状態を含めて考える必要があります。
不穏がある場合は睡眠異常と関係しますか?
関係することがあります。昼夜逆転や睡眠リズムの乱れは、せん妄や行動変化として現れる場合があります。
睡眠薬を飲んでいる場合はどう見ればよいですか?
薬剤の影響は重要ですが、それだけで判断しません。疼痛、頻尿、呼吸状態、感染、せん妄など他の背景も合わせて確認します。
次の一手
参考文献
- Inouye SK, Westendorp RGJ, Saczynski JS. Delirium in elderly people. Lancet. 2014;383(9920):911-922. doi:10.1016/S0140-6736(13)60688-1
- American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition, Text Revision. American Psychiatric Association Publishing; 2022.
- 日本睡眠学会. 睡眠障害診療ガイドライン. 南江堂.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


