せん妄で最初に見るポイント|新人 PT・OT 向け初期対応

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せん妄の初期対応|PT・OT が最初に見るポイント

せん妄は、急に意識・注意・認知の状態が変動する症候群です。PT・OT の臨床では、「いつもより反応が遅い」「指示が入りにくい」「急に落ち着かない」「日中なのに強く眠い」など、リハ場面で最初に気づくことがあります。

この記事では、せん妄を診断するためではなく、PT・OT が臨床で安全に対応するための初期確認、リハ中止・報告判断、記録例を整理します。重要なのは、無理にリハを継続することではなく、いつもとの違いを観察し、原因になり得る身体変化をチームへ共有することです。

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せん妄が疑われる場面では、バイタル、呼吸状態、意識レベル、疼痛、脱水などを合わせて確認すると安全です。

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せん妄とは?リハ場面では「急な変化」に注目する

せん妄は、急性に発症し、時間帯によって症状が変動しやすい点が特徴です。注意が保てない、話がかみ合わない、見当識が低下する、幻視や不穏が出る、逆に強い傾眠として現れることもあります。

リハ場面では、診断名を付けるのではなく、「昨日と違う」「朝と午後で違う」「訓練中に急に反応が変わった」という変化を拾うことが重要です。特に高齢者、認知症、感染、脱水、低酸素、術後、薬剤変更後では注意して観察します。

PT・OT が最初に気づきやすいサイン

せん妄が疑われるサインは、不穏だけではありません。過活動型では落ち着きのなさや点滴・ラインへの接触が目立ちますが、低活動型では「眠い」「反応が遅い」「指示が入りにくい」として見逃されやすくなります。

PT・OT は、運動や ADL の変化だけでなく、注意、覚醒、会話、行動、バイタルの変化を合わせて観察しましょう。

せん妄で最初に見る3つのポイント
せん妄が疑われるリハ場面のサイン
観察領域 気づきやすい変化 記録に残す表現
注意 指示が入りにくい、話が逸れる 声かけへの注意持続困難
覚醒 強い傾眠、反応が遅い 開眼維持困難、反応遅延あり
行動 落ち着きがない、ラインを触る 安静保持困難、点滴ラインへ接触あり
会話 話がかみ合わない、場所が分からない 質問への応答が一貫しない
変動 朝と午後で状態が違う 午前と比べ午後に注意低下あり

まず確認する 5 項目

せん妄が疑われるときは、すぐに「せん妄」と決めつけるのではなく、身体状態の変化を確認します。低酸素、発熱、脱水、疼痛、低血糖、薬剤変更、睡眠不足、便秘、尿閉などが関係することがあります。

PT・OT が最初に確認しやすいのは、意識・注意、バイタル、呼吸、疼痛、環境・チューブ類です。異常がある場合は、リハを継続せず、看護師や医師へ共有します。

せん妄が疑われる時の初期チェック
確認項目 見るポイント 対応の目安
意識・注意 開眼、反応、指示理解、見当識 急な低下があれば中止・報告
バイタル 血圧、脈拍、体温、SpO2 いつもと違う値を確認
呼吸 息切れ、努力呼吸、SpO2 低下 低酸素が疑わしければ中止
疼痛・不快 痛み、尿意、便秘、口渇 訴えにくい患者ほど観察
環境 点滴、尿道カテーテル、抑制具、騒音 危険行動があれば安全確保

リハを中止・報告する判断

せん妄が疑われる状態で、無理に離床や歩行練習を進めると、転倒、ライン抜去、急変のリスクが高まります。特に、指示理解が不安定、注意が保てない、強い傾眠、興奮、バイタル異常がある場合は、リハ内容を軽負荷に変更するか中止して報告します。

判断に迷う場合は、「リハを続ける根拠」よりも「今続ける危険がないか」を優先します。安全確保、ベッド周囲環境、ライン類、ナースコール、家族・スタッフへの共有まで含めて対応しましょう。

せん妄疑いでリハを中止・報告したい場面
場面 判断 理由
指示が入らない 中止またはベッド上確認へ変更 転倒・事故リスクが高い
強い傾眠 離床は見送り 覚醒維持が困難
不穏・興奮 安全確保し報告 ライン抜去・転倒リスク
SpO2 低下 中止して呼吸状態を共有 低酸素が背景にある可能性
発熱・頻脈 負荷をかけず報告 感染・脱水などの可能性

よくある失敗

よくある失敗は、「認知症だから仕方ない」「眠いだけ」「やる気がない」と判断してしまうことです。せん妄は日内変動があり、昨日できたことが今日はできない、午前と午後で反応が違うという形で現れることがあります。

もう一つの失敗は、運動機能だけで判断することです。筋力や歩行能力が保たれていても、注意障害や指示理解低下があれば安全にリハを実施できないことがあります。

せん妄疑いで避けたい判断
避けたい判断 見直したい視点
認知症だからいつも通り 急な変化・日内変動を確認する
眠いだけ 低活動型せん妄や低酸素を疑う
歩けるから大丈夫 注意障害と転倒リスクを確認する
不穏なので説得する 安全確保と刺激調整を優先する

SBAR での共有例

せん妄が疑われる場合は、「なんとなく変です」だけでは伝わりにくいため、変化の時期、観察内容、バイタル、危険行動、リハ判断を短く共有します。SBAR 形式にすると、看護師や医師へ伝えやすくなります。

せん妄疑いの SBAR 共有例
項目 共有例
S 本日午後のリハ開始時より、昨日より反応が遅く、指示理解が不安定です。
B 昨日は端座位保持と立位練習が可能でしたが、本日は開眼維持が難しい場面があります。
A 血圧 104/62 mmHg、脈拍 104 回/分、SpO2 92%。注意持続困難で離床は危険と判断しました。
R 本日の離床は中止し、意識状態と呼吸状態の確認をお願いします。

記録例

記録では、「せん妄」と断定するのではなく、観察した変化、確認したバイタル、実施判断、共有先を残します。特に、昨日との差、午前との差、リハ中の反応を具体的に書くと、チームで状態変化を追いやすくなります。

せん妄疑い時のリハ記録例
場面 記録例
傾眠 リハ開始時より開眼維持困難。声かけへの反応遅延あり。昨日と比べ指示理解が不安定であり、離床は中止。看護師へ共有した。
不穏 端座位中に点滴ラインへ繰り返し接触あり。注意持続困難で安全確保が難しいため、立位練習は実施せず病棟へ共有した。
注意低下 移乗動作中に声かけへの反応が遅く、ブレーキ操作の指示が入らない。転倒リスク高く、移乗練習は見送りベッド上評価へ変更した。
呼吸変化 会話中に息切れあり、SpO2 92%まで低下。注意散漫も認めたため、リハは中止し呼吸状態を看護師へ報告した。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

PT・OT がせん妄を判断してよいですか?

診断するのではなく、急な変化やリハ中の危険サインを観察して共有する役割です。「せん妄疑い」「いつもと違う反応」として、観察事実を記録・報告しましょう。

傾眠だけでも報告した方がよいですか?

急な傾眠、開眼維持困難、反応遅延がある場合は報告した方が安全です。低活動型せん妄、低酸素、感染、薬剤影響などが隠れている可能性があります。

不穏がある時はリハを続けてもよいですか?

指示理解が不安定、ライン接触、立位保持困難、転倒リスクがある場合は中止または軽負荷へ変更します。安全確保と病棟共有を優先します。

記録には「せん妄」と書いてよいですか?

診断名として断定するのではなく、「せん妄疑い」「注意持続困難」「反応遅延」「日内変動あり」など、観察した事実を中心に記録するのが安全です。

次の一手

せん妄が疑われる場面では、「リハを進めるか」よりも「今、安全に実施できるか」を先に確認します。意識、注意、バイタル、呼吸、危険行動を見て、必要時は中止・報告・記録につなげましょう。


参考文献

  1. 日本サイコオンコロジー学会, 日本がんサポーティブケア学会. せん妄ガイドライン 2023 年版. https://jpos-society.org/pdf/gl/2023delirium/all_2023-guideline-delirium.pdf
  2. NICE. Delirium: prevention, diagnosis and management in hospital and long-term care. CG103. Updated 2023. https://www.nice.org.uk/guidance/cg103
  3. 日本麻酔科学会. 高齢者における術後せん妄の予防と治療のプラクティカルガイド. 2025. https://anesth.or.jp/files/pdf/guideline_prevention_postoperative_delirium_elderly.pdf

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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