2026 年診療報酬改定×リハの実務|急性期〜在宅のポイント
令和 8 年( 2026 年 )診療報酬改定は、点数の増減だけでなく「医療提供体制の役割分担」「質(アウトカム)」「リハ×栄養・口腔」「医療 DX/業務効率化」といった “ 方向性 ” が、現場の業務設計に直結します。本記事では、その方向性を急性期・回復期・外来/在宅の実務に翻訳して整理します。
まだ告示・通知・疑義解釈で細部は変わります。だからこそ、今の段階でやるべきは「方向性に沿って、院内の型(記録・カンファ・引き継ぎ)を先に整え、あとから点数に合わせて微調整できる状態」にしておくことです。
まず “地図” を作る:基本方針の 4 本柱をリハ業務に落とす
改定資料を読むときは、個別点数を追う前に「何を評価しやすくするか(体制/質/連携/効率化)」の地図を作ると迷いが減ります。リハ部門では、同じ資料でも “ 病期ごとの実務 ” に置き換えると、準備の優先順位が決まります。
基本方針の全体像(確定版)は、親記事で PT 目線に整理しています。まず方向性を押さえたい方は 2026 診療報酬改定の基本方針(確定版)まとめ も併読すると理解が速くなります。
| 柱(基本的視点) | リハ部門で起きやすい変化 | 今から用意できる “ 型 ” | 最小単位(まずここから) |
|---|---|---|---|
| 物価・賃金・人手不足への対応 | 処遇・人材確保/業務負担軽減/タスクシフト | 説明・記録テンプレ、役割分担表、会議短縮 | 1 病棟でテンプレ統一 |
| 機能分化・連携/地域包括ケア | 入退院の質、在宅・介護との連携、逆紹介 | 退院時サマリの要点フォーマット | 退院支援カンファの議題固定 |
| 安心・安全で質の高い医療 | アウトカム、質の高いリハ、口腔・栄養連携 | アウトカム測定の運用(いつ/誰が/どこに) | 測定タイミングの統一 |
| 効率化・適正化/持続可能性 | 医療 DX・ ICT 連携、適正化、ムダ取り | カンファ資料 1 枚化、情報の拾い方を固定 | “ 1 画面( 1 枚 ) ” を作る |
急性期:早期離床 “だけ” で終わらせず、質と連携で伸ばす
急性期は「早期離床・早期リハ」が当然の前提になった一方で、今後は “ 早いかどうか ” よりも「安全・質・連携を担保したうえで、アウトカムにつながるか」が問われやすくなります。スタッフ不足や土日体制の課題があっても、まずは “ できる形 ” に再設計するのが現実的です。
急性期で効く準備は、①介入の中止基準の共有、②カンファでの論点固定(栄養・口腔・退院見通し)、③退院時に渡す情報の要点化、の 3 点です。ここを整えると、回復期や在宅へ繋ぐ “ 運用の強さ ” が上がります。
| 詰まり | NG(起きがち) | OK(こう直す) | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 早期離床が “ 量だけ ” になる | 介入した事実だけが残る | 介入目的(何を改善したいか)と反応を残す | 介助量、歩容、症状(息切れ・めまい) |
| 中止基準が曖昧 | 不安で止める/無理して続ける | 病棟で共通の中止基準を決めて運用する | バイタル推移、症状、対応(中止・再開) |
| 栄養・口腔が後回し | 食べられない理由が整理されない | 嚥下・栄養・口腔を “ 議題として固定 ” | 摂取状況、咳嗽、痰、口腔ケア状況 |
| 退院支援がギリギリ | 退院直前に情報を集める | 退院時に渡す項目を先に決めて集める | 移動(監視/介助量)、転倒要因、福祉用具 |
回復期:アウトカム運用(測定→使う→渡す)を “ 回す ”
回復期は、提供単位や体制の議論が起きやすい領域ですが、実務としては「アウトカムをどう回すか」が最重要です。測定はしていても、カンファで使われない・退院時に要点が渡らない、という形だと “ 質の説明力 ” が弱くなります。
回復期での準備は、①アウトカム指標の測定タイミング(入棟・ 2 週・ 4 週・退院など)を統一、②カンファ資料に必ず載せる、③退院サマリへ短く要約、の 3 点を “ まず 1 病棟 ” で固定するのが現実的です。
| ステップ | 目的 | やること(実務) | よくある失敗 |
|---|---|---|---|
| 1 )測定 | 改善の “ 現状把握 ” | 測定日を固定し、担当を決める | 忙しさで測れない/測定が属人化 |
| 2 )使う | 介入の “ 意思決定 ” | カンファ資料 1 枚に必ず載せる | 測って終わり(会議で使われない) |
| 3 )渡す | 地域への “ 引き継ぎ ” | 退院サマリに “ 要点 5 行 ” で残す | 長文で要点が埋もれる/情報が不足 |
外来/在宅:引き継ぎの “ 情報品質 ” を上げると再入院が減る
外来・在宅の領域は、訪問診療・訪問看護・介護との接点が増え、医療側から “ 支える医療 ” へ寄っていきます。リハの役割は「訓練する」だけでなく、生活場面のリスク(転倒・誤嚥・低栄養・活動低下)を早く見つけて、連携へ繋ぐことです。
ここで詰まりやすいのは「何を渡すか」が曖昧で、結局 “ いつも通りの長文サマリ ” になってしまう点です。退院サマリの情報は、相手(在宅側)がすぐ使える “ 具体 ” に寄せると価値が上がります。
| 領域 | 要点(短く) | 根拠(観察) | レッドフラッグ |
|---|---|---|---|
| 移動 | 監視/介助量、屋内外の差 | 転倒状況、歩行補助具、疲労 | ふらつき増悪、失神様、活動急減 |
| 摂食・嚥下 | 食形態、むせ、口腔ケア | 咳嗽、痰、摂取量、呼吸状態 | 発熱、湿性嗄声、食事量低下 |
| 栄養 | 体重変化、栄養課題 | 体重、食事摂取、浮腫、筋力 | 体重減少、食欲低下、脱水傾向 |
| 住宅・福祉用具 | 段差、動線、必要物品 | 家屋課題、試行の結果 | トイレ動作不安定、夜間転倒リスク |
横断テーマ:リハ×栄養・口腔、医療 DX、タスクシフトを “ 実務 ” にする
改定の方向性として「リハビリテーション・栄養管理・口腔管理等の高齢者の生活を支えるケアの推進」や「医療 DX/ ICT 連携」「タスクシフト・シェア」が明確に示されています。これは “ どれか 1 つを頑張る ” ではなく、同時に回す体制を作る話です。
現場の最短ルートは、システム導入の前に “ 型化 ” を進めることです。カンファ議題の固定、共同記録の置き場所、退院サマリの要点化、説明チェックリスト化など、まずは紙( 1 枚 )で回してからデジタルへ寄せるほうが、忙しい職場でも定着しやすいです。
| 型化するもの | 狙い | 導入のコツ | 効果が出る指標 |
|---|---|---|---|
| カンファ資料 1 枚化 | 会議短縮+意思決定の質 | 必須項目を固定(アウトカム/栄養/口腔) | 会議時間、決定事項の明確さ |
| 退院サマリの要点フォーマット | 引き継ぎの情報品質 | “ 要点 5 行 ” を先に決める | 問い合わせ減、再入院の減少 |
| 説明チェックリスト | 漏れ防止+負担軽減 | 家族説明で “ 同じ順番 ” にする | 説明の再実施、トラブル減 |
| 役割分担(タスクシフト)表 | 属人化の解消 | “ できる人 ” から “ 役割 ” へ | 残業、引き継ぎの時間 |
今からの 5 分フロー:改定に振り回されない準備
点数が出る前にやるべきことは、方向性に合わせて “ 後で微調整できる土台 ” を作ることです。やることが多く見えても、まずは最小単位で回し、勝ち筋(型)を作ると横展開できます。
おすすめは「情報源固定 → 論点メモ → 1 病棟で試行 → 記録整備 → 再点検」の順です。これなら、告示・通知が出た後も “ 追いかけるだけ ” になりません。
| 優先 | やること | 目的 | 完了の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | アウトカムの測定タイミングを統一 | 質の説明力を上げる | 入院(入棟)・中間・退院で固定 |
| 2 | カンファ議題に栄養・口腔を固定 | 連携を “ 証拠化 ” | 議題に毎回入る状態 |
| 3 | 退院サマリを “ 要点 5 行 ” に | 在宅側がすぐ使える | フォーマットが 1 つに統一 |
| 4 | 説明・記録テンプレを 1 枚化 | 業務負担軽減( DX の第一歩 ) | 同じ順番で説明できる |
おわりに(方向性→病期別準備→型化→試行→再点検で回す)
令和 8 年改定は、点数の当てっこより「方向性を確認 → 病期別の準備 → テンプレ(型)を整備 → 小さく試行 → 再点検」のリズムで回すほうが、現場の負担を増やさず成果につながります。急性期は安全と連携、回復期はアウトカム運用、外来/在宅は引き継ぎの情報品質を “ 先に強くする ” のが近道です。
改定対応の準備と一緒に「面談準備チェック」と「職場評価シート」で働き方も整理しておくと、次の一手が決めやすくなります。必要に応じて マイナビコメディカルの無料ツール(ダウンロード) も活用してみてください。
一次情報(公式資料)
- 令和 8 年度 診療報酬改定の基本方針(厚生労働省)
- 令和 8 年度 診療報酬改定の基本方針( PDF )
- 令和 8 年度 診療報酬改定の基本方針の概要( PDF )
- 令和 8 年度 診療報酬改定について(経緯・資料まとめ)
参考文献
- Langhorne P, Bernhardt J, Kwakkel G. Stroke rehabilitation. Lancet. 2011;377(9778):1693-1702. DOI: 10.1016/S0140-6736(11)60325-5
- Bernhardt J, et al. Very early versus delayed mobilisation after stroke ( AVERT ): a randomised controlled trial. Lancet. 2015;386(9988):46-55. DOI: 10.1016/S0140-6736(15)60690-0
- Wakabayashi H. Rehabilitation nutrition in general and family medicine. J Gen Fam Med. 2017;18(4):153-154. DOI: 10.1002/jgf2.116
- Nagano A, Nishioka S, Wakabayashi H. Rehabilitation Nutrition for Iatrogenic Sarcopenia and Sarcopenic Dysphagia. J Nutr Health Aging. 2019;23(3):256-265. DOI: 10.1007/s12603-018-1150-1
- Yoneyama T, Yoshida M, Ohrui T, et al. Oral care reduces pneumonia in older patients in nursing homes. J Am Geriatr Soc. 2002;50(3):430-433. DOI: 10.1046/j.1532-5415.2002.50106.x
- Shimizu A, Maeda K, Koyanagi Y, et al. The Global Leadership Initiative on Malnutrition ( GLIM )-defined malnutrition predicts prognosis in persons with stroke-related dysphagia. J Am Med Dir Assoc. 2019. DOI: 10.1016/j.jamda.2019.07.008
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
点数や算定要件は、いつ頃 “ 固まる ” のでしょうか?
基本方針(確定版)の後に、中医協で具体項目が議論され、告示・通知・疑義解釈で細部が固まります。現場は「点数が出てから動く」とバタつくため、本記事で整理した “ 型(アウトカム運用、連携導線、引き継ぎの要点化)” を先に作っておくと、後から微調整で対応しやすくなります。
急性期で最優先に準備するなら、何からですか?
①中止基準の共有(安全の型) ②栄養・口腔を含めたカンファ議題の固定(連携の型) ③退院サマリの要点フォーマット(渡す型) の順が進めやすいです。設備投資より、運用設計のほうが先に効きます。
回復期でアウトカムを “ 回す ” コツはありますか?
測定するだけでなく「使う(カンファ資料に必ず載せる)」「渡す(退院サマリに要点 5 行)」までセットで固定することです。まずは 1 病棟で測定タイミングとフォーマットを統一し、回る形を作ってから横展開すると定着しやすいです。
在宅側に渡す情報は、何を優先すると喜ばれますか?
移動(監視/介助量、屋内外の差)、転倒の要因、嚥下・栄養・口腔の注意点、住宅・福祉用具の要点、再増悪のレッドフラッグを “ 短く ” 渡せると価値が上がります。長文よりも、すぐ使える具体が重要です。
医療 DX はリハ部門だと何を指しますか?
新しいシステム導入だけではありません。カンファ資料 1 枚化、退院サマリの要点フォーマット、説明チェックリストなど、情報を “ 同じ形で回す ” こと自体が DX の第一歩になります。まず紙で回してからデジタル化すると失敗が少ないです。


