
こんにちは!リハビリくんです!
今回は喀痰吸引についてまとめさせて頂きます。
早速ですが、喀痰吸引って凄く難しい行為ですよね。
私の勤務する職場では、吸引に関する講習会を受けて、吸引シュミレーターを用いた実技練習をして、現場で看護師の指導のもと喀痰吸引を行うといったステップになっております。
私もこのような順序で臨床で喀痰吸引を行うようになったのですが、最初のうちは躊躇しながら喀痰吸引を実施していた記憶があります。
その後、呼吸療法認定士を取得する経緯で解剖学的な要素を学んだり、現場で経験を積む中で、不安感は軽減していきましたが、今でも、喀痰吸引はリスクがある行為で難しいものだと思っています。
そこでこちらの記事にて、喀痰吸引の概要から吸引手技、合併症予防まで解説していきたいと思います!

【簡単に自己紹介】
30代の現役理学療法士になります。
理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。
現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。
臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。
そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。
理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです
登録理学療法士
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
理学療法士と喀痰吸引

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は、それぞれの専門的なリハビリテーション実践の中で、喀痰吸引の必要性に直面する場面があります。
たとえば、呼吸理学療法や体位ドレナージ、嚥下訓練、食事介助などを安全かつ効果的に実施するには、気道内の分泌物を適切に管理することが重要です。
「気管吸引ガイドライン 2023(改訂第 3 版)」では、気管吸引を次のように定義しています。
気道クリアランス(気道浄化法)の一つとして、カテーテルを用いて人工気道を含む気道から機械的に陰圧をかけ、患者自身の咳嗽やその他の低侵襲的手段では除去困難な分泌物や血液を吸引・除去する行為。これには、実施前の評価・準備・手技の実施・実施後の観察に加え、アセスメントおよび感染管理を含む一連のプロセスが含まれる。
出典:気管吸引ガイドライン2023〔改訂第3版〕
このように気管吸引は単なる技術行為ではなく、総合的なアセスメントと感染予防管理を含めた専門的判断が求められる医療行為です。
理学療法士等による喀痰吸引の法的位置づけ
平成 22 年 4 月、厚生労働省医政局長からの通知により、一定の条件を満たす場合において理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による喀痰等の吸引行為が合法化されました。これは、それまで医師や看護師に限定されていた医療行為の一部を、専門職が臨床で安全かつ効果的に遂行できるよう法的に整備したものです。
この背景には、以下のような臨床的な必要性があります。
- 理学療法士(PT):呼吸理学療法や体位ドレナージ中に喀痰除去が必要となるケース
- 作業療法士(OT):食事動作訓練中の誤嚥・喀痰対応
- 言語聴覚士(ST):嚥下訓練中の吸引対応の必要性
また、チーム医療の推進という観点からも、各職種が連携して吸引行為を適切に担う体制が求められています。これにより、急変時の迅速な対応や、リハビリテーションの質の向上にもつながります。
気管吸引の目的
気管吸引は、呼吸理学療法の一環として実施されることの多い医療行為です。その主たる目的は、気道の開放性を維持・改善し、換気の効率を高めることにあります。特に分泌物の貯留によって気道が狭窄または閉塞している場合には、速やかな吸引が必要となります。
呼吸負荷の軽減とガス交換の改善
気道閉塞が存在すると、呼吸仕事量が増大し、努力呼吸や呼吸困難感が生じます。気管吸引によってこれらの障害を除去することで、呼吸負荷を軽減し、患者が「安楽に換気できる状態」を保つことが可能となります。これは単に酸素化(SpO₂ の改善)を目指すのではなく、肺胞レベルでのガス交換を最適化するという広い視点が重要です。
なお、酸素化の改善のみを目的とする場合には、吸引以外の選択肢(酸素投与、体位調整、呼吸補助デバイスなど)も検討すべきです。気管吸引はあくまで、分泌物による換気障害が疑われる場合に限定して行うべき侵襲的処置です。
実施上の注意点
気管吸引は患者にとって苦痛や不快感を伴う侵襲的行為であり、実施に際しては慎重な評価と説明、感染予防対策が必要です。また、必要以上の頻度や時間をかけた吸引は、気道粘膜の損傷や酸素飽和度の低下などのリスクを高めるため、避けるべきです。
喀痰吸引が必要となる対象者
以下のようなケースでは、気管吸引の必要性が高まります。
- 気管チューブ・気管切開チューブ留置中で、自己喀出が困難な場合
- 意識障害や神経疾患などで咳嗽反射が著しく低下している場合
- 筋疾患や高齢による呼吸筋力低下が認められる場合
- 粘稠度の高い気道分泌物があり、自然排出が困難な場合
- 呼吸理学療法中に分泌音が著明で、吸引による除去が必要と判断された場合
このように、気管吸引は換気の質を保つための重要な手段である一方、患者への負担も大きいため、適切な評価と目的意識のもとで実施される必要があります。
気管吸引を安全に行う方法

気管吸引を安全かつ効果的に行うためには後述する 1 ~ 10 の要件、医療機関内では 11 と 12 までのすべ てを満たす必要があります。
これは医師、看護師以外の職種が気管吸引を実施する際に特に重要な事項であり、これらを基準に各施設において教育プログラムを作成することが望ましいとされています。
- 気道や肺、人工気道などに関しての解剖学的知識がある
- 患者の病態についての知識がある
- 適切な使用器具名称がわかり、適切な手技が実施できる
- 気管吸引の適応と限界を理解している
- 胸部理学的所見などからアセスメントができる
- 合併症と合併症が生じたときの対処法を知り実践できる
- 感染予防と器具の消毒・滅菌に関する知識と手指衛生を励行できる
- 経皮的動脈血酸素飽和度モニタについて理解している
- 非侵襲的排痰法(呼吸理学療法など)の方法を知り実践できる
- 心肺蘇生法の適応を理解し実施できる。心停止の早期認識、効果的な胸骨圧迫、可能なら AED の活用など、一般市民であっても最低限の知識は必要である
- 心電図について一般的な理解がある。医療機関においては必須であり、最低限でも致死性不整脈についての知識が必要である
- (人工呼吸器使用者に対して行う場合)人工呼吸器のアラーム機能と緊急避難的な操作法を理解している。人工呼吸器の換気モード、設定の意味、モニタされている気道内圧や換気量などの値の意味、人工呼吸器の一般的な使用方法を理解している。
気管吸引を行う前に
前項でも気管吸引を安全かつ効果的に行うための要件を説明しましたが、気管吸引を実施するのであれば最低限、以下の項目について理解を深める必要があります。
呼吸器系の解剖生理
気管は成人で直径約 2 ~ 2.5 cm、長さ約 10 ~ 12 cm となります。気管から気管支は、気管軟骨・気管支軟骨により支持されています。末梢側には軟骨はなく、虚脱しやすい状態となっています。
上気道には常在菌が存在していますが、下気道は気道の浄化作用により無菌状態に保たれています。気管吸引を行う際は清潔操作が必須となります。
気管吸引で除去できる範囲は、基本的に気管分岐部までに制限することが望ましいと考えられます。末梢側の吸引を行うのであれば、医師が気管支鏡で確認しながら行うことでリスクを回避することができます。
気管切開している症例
気管吸引は気管切開している症例では、より必要性が高くなります。気管切開している症例では以下のことに留意して喀痰吸引を実施します。
- 上気道を使った呼吸ができない
- 加湿や加湿がまったくできていない
- 分泌物が固形化しやすくなり、結果的に呼吸筋が疲労しやすくなる
体位ドレナージ、体位排痰法
気管吸引前に「体位ドレナージ」「体位排痰法」を実践することで気管吸引の効果を高くすることができます。
気管吸引前の排痰援助では、「加湿」「咳嗽」「重力」がポイントになります。分泌物が気管支より末梢に貯留している場合、加温加湿や咳嗽、体位ドレナージ等の呼吸理学療法により、分泌物を気管吸引で除去できる気管分岐部辺りまで移動させる必要があります。
気管吸引前のアセスメント
気管吸引は苦痛を伴い低酸素血症等、多くの合併症のリスクがある医療行為となります。アセスメントにより必要性を総合的に判断して実施することになりますが、一般的に以下のような症状を認める場合には、喀痰吸引を行う必要性があります。
- 呼吸困難感や努力呼吸などの症状がみられる
- 気管チューブ内に分泌物がある
- 副雑音を聴取
- グラフィックモニタの変化
- 酸素飽和度の低下
気管吸引ガイドライン でも、気管吸引が適応となる状態とアセスメントについて記載されているため、興味がある方は以下のリンクよりご参照ください。
「気管吸引ガイドライン2023」では気管吸引の適応となる状態を以下のように定めております。
- 異常呼吸
- 副雑音
- 咳嗽、振動などフィジカルアセスメントによ る所見
- 気管チューブ内の分泌物、振動など人工気 道の観察による所見
- 気道抵抗の増大
- 鋸歯状波形 など人工呼吸器のグラフィックモニタによる所見
患者のフィジカルアセスメントを基本に、人工気道の観察と生体情報モニタなどの異常所見から、総合的に判断することが重要になります。
気管吸引の手技

実際の喀痰吸引の手技について解説します。
吸引圧について
吸引圧は最大で 20 kPa / 150 mmHg が推奨されており、これを超えないようにチューブを閉塞させて調整します。基本的にはカテーテル挿入時は吸引圧をかけず、カテーテルを引き抜きながら吸引圧をかけます。
吸引カテーテルのサイズ

患者様が挿入している気管チューブの内径の 1/2 以下の太さとなるカテーテルを選択します。太いカテーテルでは低酸素血症や無気肺のリスクが高くなり、細いカテーテルでは効率的に吸引できず時聞が長くなることで低酸素血症のリスクが高くなります。
吸引時間について
吸引圧をかけるのは 10 秒以内で、カテーテル挿入から抜去の操作は 15 秒以内で行います。分泌物が取れる位置があれば、そこで少しの間、カテーテルを抜去するのを止めて分泌物を吸引します。
気管チューブを挿入する長さ
特に注意したいポイントになります。気管分岐部に当てないように、気管チューブ先端から出ない長さ、もしくは先端から 1 ~ 2 cm 出る程度に留める必要があります。あらかじめ気管チューブの長さを確認し、挿入する長さを決めておく対策も良いと考えられます。
吸引カテーテルで気管分岐部に触れると迷走神経が刺激され、不整脈の発生や心停止に繋がる可能性があります。絶対に気管分岐部に当たらない位置までの挿入に留める必要があります。
感染防止策
標準予防策を遵守する必要があります。分泌物が周囲に飛散することで院内感染のリスクが増加します。気管吸引前後に手指衛生を行い、個人防護具(PPE)を着用します。
清潔操作
気管吸引では滅菌されたカテーテルをシングルユース(使い捨て)で使用します。手袋は滅菌手袋もしくは清潔な未滅菌手袋を着用します。
閉鎖式吸引カテーテル
閉鎖式吸引は、人工呼吸器回路の接続を外さずに気管吸引を行う方法になります。開放式吸引と比べ、肺容量の維持の点で優れています。
口鼻腔吸引
口腔・鼻腔・咽頭部の上気道に貯留した分泌物の吸引は、気管吸引の手技に準じて行います。気管吸引と同様に合併症として粘膜損傷や咽頭への刺激により迷走神経反射の可能性があるため、愛護的に行う必要があります。
挿入長の目安としては、口腔:約 10 cm、鼻腔〜咽頭部:15 ~ 20 cm となります。
カフ上部吸引について
気管チューブのカフ上部に貯留した分泌物は、気管チューブに付いている専用のポートから除去します。主に吸引器やシリンジを使用し吸引します。
口腔や鼻腔に存在する常在菌の中には、病原性の高い菌があります。それらを含む上気道の分泌物の下気道への垂れ込みは、誤嚥性肺炎や人工呼吸器関連肺炎(VAP)の原因となります。気管吸引前に口鼻腔やカフ上部の分泌物を吸引することで、リスクの軽減が期待できます。
合併症の原因と予防
気管吸引の合併症は不適切な手技により発生することも多く、適切な手技での実施がまず大事です。その上で、各合併症の原因を知り予防することが必要になります。
気管・気管支粘膜の損傷
カテーテルが気道粘膜に接触することで起こります。また、咳嗽や体動により気管チューブが気管壁に当たり損傷することもあります。
損傷を予防するには、気管チューブ先端から出ない長さで挿入することが重要となります。そして、カテーテルを無闇に上下に動かさないようにする必要があります。万が一気管分岐部に当たった場合、少し引き抜いてから吸引圧をかけるようにします。
低酸素血症
気管吸引により気道内の酸素濃度が低下し発生します。開放式吸引では、人工呼吸器回路の開放による換気中断や PEEP 低下も原因となります。
低酸素血症を予防するためには、気管吸引中の酸素飽和度をモニタリングすることがまず重要になります。場合によっては、閉鎖式吸引カテーテルの使用や気管吸引前後の高濃度酸素投与を検討します。
徐脈・頻脈・不整脈
吸引カテーテルの接触刺激や痛み刺激が交感神経を刺激し、頻脈や不整脈を誘発します。一方で副交感神経反射(迷走神経反射)を引き起こすと徐脈・心停止の原因となります。また、低酸素血症から致死的不整脈につながることもあります。
心疾患のリスクが高い症例では、心電図モニタを確認し安定している時に吸引したほうが安全になります。気管吸引前後に高濃度酸素投与の検討や医師による気管支鏡下での吸引が適切なケースもあります。
血圧変動
血圧上昇は咳嗽や、痛み刺激が交感神経を刺激することで起こります。血圧低下は、副交感神経反射(迷走神経反射)によるものと、咳嗽により胸腔内圧上昇に起因する心拍出量低下から発生します。
血圧や心電図モニタを確認し、安定している時に実施する必要があります。咳嗽反射の有無や強弱の確認をしていくのも重要になります。
無気肺
頻繁な開放式吸引の実施による回路開放に伴い、PEEP が消失し肺胞虚脱が発生します。また、長時間の吸引操作等の誤った手技によっても発生します。気管吸引後に酸素飽和度の低下が持続する時は、無気肺を生じている可能性があります。
予防策としては、閉鎖式吸引カテーテルの使用が挙げられます。また、気管吸引前後に用手的換気を実施することも効果的となります。
頭蓋内合併症(頭蓋内圧上昇、脳浮腫増悪)
交感神経の刺激や、咳嗽反射により胸腔内圧が急激に上昇し、頭蓋内圧を上昇させます。
予防としては、循環動態が安定している時に実施し、咳嗽の有無や強弱の確認しましょう。頭蓋内圧上昇の軽減を図るため頭部挙上も効果的です。
気道感染
吸引カテーテルや手袋などが細菌で汚染されていると、気道感染を起こすことがあります。
開放式吸引では滅菌されたカテーテルをシングルユースで使用しましょう。手袋は滅菌手袋もしくは清潔に管理された未滅菌手袋を使用する必要があります。吸引前後での手指衛生など標準予防策を遵守する必要があります。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「気管吸引」をキーワードに解説させて頂きました。
こちらの記事を読むことで気管吸引についての理解が深まり、臨床における呼吸ケアやリスク管理への一助へとなれば幸いです。
参考文献
- 高橋仁美,玉木彰.喀痰吸引の実際.理学療法学 .第38巻,第6号,2011,p471-476.
- 佐久間佐織,渡邉順子,樫原理恵.看護師の気道吸引における情報収集と吸引手技の実態調査─ 吸引前の情報収集と吸引手技、フィジカルアセスメント教育経験との関連 ─.日本看護研究学会雑誌.Vol.40,No.4,2017,p677-684.
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- 松下太一.セラピストの喀痰吸引.
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