褥瘡が起きる理由と 7 つの危険因子(要約)
臨床の進め方・評価の全体像を短時間で復習(PTキャリアガイド)
褥瘡は応力(圧縮・引張・剪断)×時間×頻度の相互作用で生じます。長時間の持続圧に、座位での滑りなどの微小ずれの反復が重なると微小循環が障害され、皮膚損傷へと進展します。リスクは外因(圧・ずれ/摩擦・微小環境)と内因(活動性・栄養・循環・感覚/認知)で増幅されます。
臨床のチェックフロー全体像はこちらも参考にしてください。
褥瘡の発生メカニズム(最適化)
外力は体内で応力として伝わり、圧縮(骨突出部での押しつぶし)、引張(皮膚の伸長)、剪断(層間のズレ)が複合すると毛細血流が低下します。これが時間的に持続し、しかも頻度高く反復すると、不可逆的な組織障害へ移行します。臨床では「同じ圧でも、頻回な微小ずれのほうがダメージを蓄積しやすい」点を意識します。
危険因子(チェック&介入の要点)
因子 | 観察ポイント | 介入の方向(例) |
---|---|---|
① 基本的動作能力 | 1) 自力体位変換の可否/2) 座位の安定保持と自力座り直し | 体位変換練習・離床促進、座位調整(足底接地・骨盤前傾)、移乗の“持ち上げ”徹底 |
② 病的骨突出 | 仙骨などで軟部組織のボリューム低下(臀筋・皮下脂肪やせ)→突出強調 | 減圧寝具選定、ポジショニングピロー、踵フローティング/坐骨荷重の分散 |
③ 関節拘縮 | 伸展側軟部組織の内側圧迫/肢同士の交差圧(膝・趾間など) | ROM・良肢位保持、スペーサーで接触回避、装具・クッションで圧分散 |
④ 栄養状態低下 | 体重減少・食思不振・低Alb・脱水所見 | 栄養スクリーニング(MST/GNRI/CONUT 等)→必要量の確保、十分な水分 |
⑤ 皮膚湿潤 | 多汗・尿/便失禁で皮膚が長時間ぬれる/化学的刺激 | 吸収体材・皮膚保護剤・適切な清拭、通気性の確保、ドレッシング見直し |
⑥ 皮膚の脆弱性(浮腫) | 全身/局所の浮腫で皮膚伸展性低下・治癒遅延 | 原因評価(循環・栄養・活動性)と浮腫マネジメント、圧の再配分 |
⑦ 皮膚の脆弱性(スキン-テア) | 高齢皮膚の裂傷既往・薄化・乾燥 | 持ち上げ介助・滑走資材活用・保湿徹底、テープ選択と貼付方向の配慮 |
栄養評価の目安:Alb 3.1–3.5 g/dL=軽度、2.5–3.0=中等度、<2.5=重度低栄養。BMI:<18.5 やせ/18.5–<25 普通/≥25 肥満。理想体重=(身長m)
×22、%理想体重=現体重÷理想体重×100(90%以上正常、80–90軽度、70–80中等度、<70高度)。予防の三本柱(実践要点)
1. 体圧分散(徐圧・減圧)
- 減圧寝具+ポジショニングで接触面を広くし、骨突出の集中圧を避ける。
- 体位変換は2–4 時間を目安(皮膚所見・寝具性能・活動性で調整)。30°側臥位ローテーションを基本。
- 移乗は引きずらず持ち上げ介助、座位は足底接地・骨盤前傾で滑りを抑制。
2. 栄養管理
- スクリーニング(MST/MNA-SF/SGA 等)→不足量の把握→エネルギー・たんぱく質・水分の確保。
- 体重・摂取量・浮腫・Alb を定期モニタリングし、介入効果を評価。
3. スキンケア(洗浄・保湿・保護)
- 洗浄:弱酸性・低刺激で泡立て、刺激物のみ除去。
- 保湿:角質細胞間脂質を補い乾燥を是正(乳液・クリーム・ローション)。
- 保護:軟膏等で水分蒸発を抑え、外的刺激(圧・摩擦・化学刺激)を遮断。
※実施は各施設の手順とチームの臨床判断を優先してください。
SSKIN(予防を整理する枠組み)
- Surface:体圧分散寝具の適合、ピロー配置、踵フローティング。
- Skin inspection:骨突出部の色調・温度・圧後の戻り、ずれ痕・滲出の観察。
- Keep moving:2–4 時間目安の体位変換/持ち上げ介助/座位の滑り対策。
- Incontinence/Moisture:失禁・発汗時の清潔と通気、皮膚保護。
- Nutrition/Hydration:栄養・水分の確保、スクリーニングから介入へ。
リスク評価の使い分け
皮膚所見とケア計画の見直しに加え、Braden 尺度などのリスク評価を併用すると優先順位づけが容易です(スコアが低いほど高リスク)。栄養面は MST・GNRI・CONUT を適宜選択し、チームで共有します。
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よくある質問
※各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
体位変換は何時間ごとが目安ですか?
一般には2–4 時間を目安にしますが、皮膚の発赤・体圧・寝具性能・活動性で短縮/延長を調整します。赤みが消えにくい場合は短めに、問題なければ延長も検討します。
“ずれ”と“摩擦”は何が違いますか?対策は?
ずれは層間の滑走で皮下が引き伸ばされる力、摩擦は皮膚表面が擦れる力です。持ち上げ移乗、30°側臥位、座位での足底接地と骨盤前傾づくり、スライディングシート活用で両者を最小化します。
踵のケアで最重要なのは?
踵は好発部位のためフローティング(踵下に空間をつくる)が基本。足関節の位置決め、寝具の硬さ、靴・装具の当たりも併せて再評価します。
栄養評価は何から始めれば良いですか?
MST や MNA-SF/SGA でスクリーニング→不足量を見積→エネルギー・たんぱく質・水分の確保へ。体重・Alb・浮腫を定期モニタリングします。