褥瘡の発生要因と危険因子 7 つ|評価と予防の基本

臨床手技・プロトコル
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褥瘡の発生要因と危険因子 7 つ(予防の基本)

褥瘡( Pressure Injury )は、皮膚や軟部組織にかかる 応力(圧縮・引張・剪断) が、時間頻度 の条件で積み重なって生じます。現場では「赤いかどうか」だけで判断しがちですが、実際には圧・ずれ・微気候・活動性・循環・栄養などが重なって進行します。

この記事では、褥瘡がなぜ起こるかを 7 つの危険因子で整理し、観察したあとに最初に何を変えるかまでをつなげて解説します。体位の細かな作り方やマットレスの選定手順ではなく、まず「見立てと優先順位」をそろえるための総整理に絞ります。

褥瘡の発生機序とメカニズム(応力 × 時間 × 頻度)

外力は体内で 応力 として伝わり、骨突出部では圧縮、皮膚や軟部組織の伸長(引張)、層間のずれ(剪断)が複合します。これが一定時間続いたり、短時間でも繰り返されたりすると、微小循環の障害から組織損傷へ進みます。

特に重要なのは、「圧だけ下げても、ずれが残ると損傷が進む」点です。ベッド上での背抜き不足、座位での前滑り、移乗時の引きずりは、見た目以上に剪断を増やします。微気候(湿潤・温度)の悪化や栄養不良が重なると、皮膚の耐久性はさらに落ちます。

現場の詰まりどころ(“やっているのに防げない”を減らす)

詰まりやすいのは、「体位変換しているのに悪化する」「マットレスを変えたのに変わらない」「赤くないのに痛がる」の 3 場面です。先に よくある失敗回避手順 を同じ順番で確認し、ベッド上の具体策は 褥瘡予防のポジショニング で補完すると、現場の認識差が減ります。

  • 体位変換はしているのに悪化する:圧は下がっていても、背抜き不足や座位の滑りで剪断が残っていることがあります。
  • 赤くないのに痛がる/硬い:深部損傷( DTI )では、表面所見が乏しいまま進行することがあります。
  • 寝具を変えたのに変わらない:支持面は導入で終わりではなく、姿勢・離床量・皮膚反応に合わせた再調整が必要です。

よくある失敗と最初の修正

褥瘡予防でよくある失敗と、最初に修正したいポイント
よくある失敗 なぜ起こるか 最初の修正
体位変換の回数だけを見ている 体位が変わっても、仙骨部や踵部の当たり方が残っている 体位の名称ではなく、骨突出部の接地と前滑りを確認する
支持面を変えたあと再評価しない 導入後の沈み込み、離床しにくさ、湿潤の変化を見逃しやすい 24 時間・48 時間・72 時間の観察時点を先に固定する
発赤だけで判断している DTI や濃い皮膚色では表面変化が乏しいことがある 熱感、硬結、疼痛、紫色調、経時変化をセットで記録する

褥瘡の好発部位・発生部位の見方

好発部位は「骨突出部 × 体位」で整理すると見やすくなります。仰臥位では後頭部・肩甲部・仙骨部・踵、側臥位では耳介・肩峰・肋骨・大転子・膝内側・外果、座位では坐骨結節周囲が代表です。

観察では、発赤の有無だけでなく、熱感・硬結・疼痛・紫色調 と、時間経過で悪化していないかを合わせて確認します。特に座位では、骨盤後傾による滑り込みがあると、仙骨部や坐骨部への負荷が増えやすくなります。

褥瘡の危険因子・リスク因子( 7 つを共通言語にする)

褥瘡は単一の原因で起きるより、複数の危険因子が重なったときに一気に進行します。現場では「 7 つの危険因子」を共通言語にして、弱点 → 介入 → 再評価 の順で回すと、チームで迷いにくくなります。

褥瘡の 7 つの危険因子(外因 × 内因)と、まず打つ対策
危険因子 分類 臨床での見え方(例) まず打つ対策(優先)
圧迫(持続圧) 外因 同一部位の発赤が消えない、骨突出部の疼痛や圧痕が残る 除圧、支持面の調整、体位変換条件の固定
ずれ(剪断) 外因 座位の滑り込み、背抜き不足、移乗時の引きずり 背抜き、前滑り対策、持ち上げ移動、スライディングシート
摩擦 外因 皮膚表層のびらん、シーツやテープでこすれる こすらない介助、保護材の適正使用、皮膚保護
微気候(湿潤・温度) 外因 発汗、失禁、蒸れ、皮膚のふやけ 吸湿・通気、失禁ケア、バリア保護、寝具の見直し
活動性・移動能力低下 内因 長時間臥床、自力体位変換ができない、離床量が少ない 離床量の確保、介助量の最適化、見守り体制の調整
循環・灌流低下 内因 低血圧、浮腫、末梢冷感、酸素化不良 全身状態の共有、負荷量と体位の調整、早期介入
栄養不良 内因 摂取低下、体重減少、筋量低下、創傷治癒の遅れ スクリーニング → 栄養計画 → 体重・摂取率のモニタリング

なお、感覚低下や認知機能低下は、単独で別の柱というより「痛みや圧迫に気づきにくい」「自力除圧が遅れる」ことで上の 7 因子を悪化させる修飾因子として捉えると、臨床で整理しやすくなります。

褥瘡予防の三本柱(実践の優先順位)

褥瘡予防は、① 応力(圧・ずれ)を減らす皮膚バリアと微気候を整える栄養・循環・活動性を支える の 3 本柱で見ると整理しやすくなります。いきなり「何時間ごとに体位変換するか」を決めるより、どの柱が崩れているかを見立てる方が近道です。

1. 体圧分散(除圧・減圧)と、ずれ対策

目標は「数値を追う」ことではなく、圧の集中を減らし、ずれを残さないことです。支持面(マットレス・クッション)の導入後は、体位・姿勢・離床量に合わせて再調整し、皮膚所見の変化で効果判定します。

特に仙骨部と踵部では、前滑り接地の残り を見逃さないことが重要です。体位変換の回数より、「その体位で当たりが消えたか」を優先して確認します。

2. 栄養・循環を支える

低栄養や灌流低下は、褥瘡の発生にも治癒遅延にも関わります。食事摂取量、体重変化、浮腫の有無、脱水兆候、血圧や酸素化の変化などをまとめて見て、皮膚だけの問題にしないことが大切です。

栄養は「評価して終わり」ではなく、不足の把握 → 補正 → モニタリング までが 1 セットです。体重だけでなく、摂取率や経口摂取のしやすさも一緒に記録すると、次の一手につながりやすくなります。

3. スキンケア(洗浄・保湿・保護)と微気候管理

湿潤が続くと皮膚がふやけ、乾燥が強すぎると亀裂が入りやすくなります。洗浄・保湿・保護を組み合わせて皮膚バリアを守り、発汗や失禁がある人では、吸湿・通気・排泄後ケアを早めに回します。

また、テープ類の貼付・剥離による皮膚損傷( MARSI )にも注意が必要です。褥瘡予防は「除圧だけ」で完結せず、皮膚を傷つけない介助と日常ケアが土台になります。

SSKIN(褥瘡予防を整理するフレームワーク)

褥瘡予防を現場で回すときは、SSKIN( Surface・Skin inspection・Keep moving・Incontinence / Moisture・Nutrition )で抜けを減らせます。重要なのは、項目を埋めること自体ではなく、不足している要素を介入に変えることです。

たとえば、 Surface で支持面を確認し、 Skin inspection で熱感や硬結を拾い、 Keep moving で離床と体位変換を調整し、 Incontinence / Moisture で湿潤対策、 Nutrition で不足補正につなげます。実務では「チェック表」より「修正の順番」をそろえる用途で使うと機能します。

褥瘡危険因子評価とリスクアセスメント(評価 → 介入 → 再評価)

皮膚所見の観察に加えて、 Braden などの褥瘡危険因子評価スケールを併用すると、介入の優先順位づけがしやすくなります。ただし大切なのは総合点だけでなく、どの因子が弱いか を言語化してケアへ落とし込むことです。

スケールは「予防してくれる道具」ではなく、修飾可能な危険因子を見つける道具です。湿潤が弱点なら失禁ケアへ、活動性が弱点なら離床や体位調整へ、栄養が弱点なら不足補正へとつなげて、再評価で効いたかを確認します。

  • 評価のタイミング:入院・入所時、術後、発熱、活動性低下、食事量低下、浮腫増悪、支持面変更時
  • 再評価の視点:発赤の消退、熱感・硬結、離床量、前滑り、湿潤状況、摂取率
  • 共有のコツ:「スコア」だけでなく、「今どの因子に手を打つか」を文章で残す

ダウンロード( A4 ・印刷可)

褥瘡予防は、観察した内容を「皮膚所見」「体位・支持面」「ずれ・活動性」「湿潤」「栄養・循環」「次の一手」で残すと、担当者が変わっても運用が崩れにくくなります。今回の A4 記録シートは、危険因子を言語化して介入と再評価につなげやすい構成にしています。

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FAQ(よくある質問)

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体位変換は何時間ごとが目安ですか?

一律の正解より、皮膚所見・支持面の性能・活動性に合わせた個別化が大切です。発赤が戻りにくい、痛みや硬結が出る、前滑りが強い場合は、間隔を短くするより先に「当たり方」と「ずれ」を見直します。

“ずれ”と“摩擦”は何が違いますか?

ずれ(剪断)は皮膚の下の層が引き伸ばされる力、摩擦は皮膚表面がこすれる力です。前滑りや背抜き不足では両方が同時に起こりやすく、持ち上げ移動や姿勢調整でまとめて減らすのが基本です。

踵のケアで最重要なのは何ですか?

基本は踵を接地させないことです。枕や専用具でフローティングを作り、足関節の角度、ベッド角度、装具や靴の当たりも合わせて確認します。

皮膚が赤くならないのに悪化することはありますか?

あります。深部損傷( DTI )では、表面の発赤が目立たないまま内部損傷が進むことがあります。熱感、硬結、疼痛、紫色調、経時変化をセットで見て、早めに支持面と体位を見直します。

次の一手

全体像から戻って見直したいときは 褥瘡予防の基本フロー、すぐ実装に落としたいときは 褥瘡予防のポジショニング を続けて確認すると、判断と実践がつながりやすくなります。

運用を整えたあとに、職場環境の詰まりも点検しておきましょう

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参考文献

  1. Bergstrom N, Braden B, Laguzza A, Holman V. The Braden Scale for Predicting Pressure Sore Risk. Nurs Res. 1987;36(4):205-210. PubMed:3299278
  2. Coleman S, Gorecki C, Nelson EA, Closs SJ, Defloor T, Halfens R, Farrin A, Brown J, Schoonhoven L, Nixon J. Patient risk factors for pressure ulcer development: systematic review. Int J Nurs Stud. 2013;50(7):974-1003. DOI:10.1016/j.ijnurstu.2012.11.019PubMed:23375662
  3. Gillespie BM, Walker RM, Latimer SL, Thalib L, Whitty JA, McInnes E, Chaboyer W. Repositioning for pressure injury prevention in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2020;6(6):CD009958. DOI:10.1002/14651858.CD009958.pub3PubMed:32484259
  4. Kottner J, Black J, Call E, Gefen A, Santamaria N. Microclimate: A critical review in the context of pressure ulcer prevention. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2018;59:62-70. DOI:10.1016/j.clinbiomech.2018.09.010PubMed:30199821
  5. Dealey C. Challenges in pressure ulcer prevention. Int Wound J. 2013;10(3):237-244. DOI:10.1111/iwj.12107PubMed:23786251

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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