METs とは?運動強度と METs 表の見方【簡単に】

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METs とは?(超要約)

METs(metabolic equivalents/メッツ)は、安静時代謝量を 1 とした相対的な運動強度の単位です。簡単に言うと「運動のきつさを数字で表したもの」で、1 MET = 3.5 ml O2/kg/min ≒ 1 kcal/kg/時 と定義されます。4 METs なら「安静時の約 4 倍の代謝量」という意味になります。

臨床では、「どのくらいの強度で、どのくらいの時間動いたか」を数量化して、運動処方・教育・リスク管理に活用します。ただし年齢・体格・疾患・薬剤・環境などで実際の代謝量には個人差が大きいため、数値はあくまで目安として扱い、主観的運動強度(RPE)や会話テスト、症状の観察と組み合わせて評価することが安全です。

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METs の求め方と計算式(まずここだけ)

kcal = METs × 体重(kg) × 時間(h)

  • 1 MET は概算で 1 kcal/kg/時(安静時の消費エネルギー)です。
  • 酸素摂取量から METs を求めるときは、METs = VO2(ml/kg/min) ÷ 3.5 です。
  • 酸素摂取量から消費エネルギーを求める場合:kcal/min = VO2(ml/kg/min) × 体重(kg) ÷ 200

分で計算する場合:kcal = METs × 体重(kg) × ÷ 60

計算例: 60 kg の方が 4 METs で 30 分活動した場合
4 × 60 × 0.5 = 120 kcal

METs 表(60 kg の kcal 換算早見表)

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60 kg を想定した METs 別の消費エネルギー(METs 表・四捨五入)
METs 10 分 30 分 60 分
330 kcal90 kcal180 kcal
440 kcal120 kcal240 kcal
550 kcal150 kcal300 kcal
660 kcal180 kcal360 kcal
880 kcal240 kcal480 kcal

他の体重は「kcal = METs × 体重 × 時間」で計算してください(例:50 kg なら上表の値 × 0.83、70 kg なら × 1.17 ほどが目安です)。

体重別の換算係数(60 kg を 1.00 とした目安)

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体重別の相対係数(60 kg 基準)
体重 係数 体重 係数 体重 係数
45 kg0.7560 kg1.0075 kg1.25
50 kg0.8365 kg1.0880 kg1.33
55 kg0.9270 kg1.1790 kg1.50

代表的な活動の METs(代表値)

主に Compendium of Physical Activities に基づく代表値です。実際には速度・斜度・路面・気温・技術などで変動します。原著は こちら(PubMed) を参照してください。

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代表的な活動の METs 目安(抜粋・代表値)
活動 具体例 METs
歩行ゆっくり(約 2.0 mph)2.0–2.8
歩行普通(約 3.0 mph)3.0–3.5
歩行早歩き(約 3.5–4.0 mph)4.3–5.0
階段昇り手すり併用含む6.0–8.8
自転車(屋外)< 10 mph4–6
自転車(屋外)10–12 mph6–8
ジョギング約 5 mph(時速 8 km)8
ランニング約 6 mph(時速 9.7 km)10
家事掃除機・床掃き3–3.5
レジスタンス運動サーキット・中等度4–6
ヨガハタ・ビニヤサ等2.5–4

METs による運動強度区分と RPE・%HRR のブリッジ(目安)

METs は「メッツ」という単位で運動強度を表しますが、実際の処方では RPE や心拍(%HRR)とセットで使うと安全です。以下は成人一般を想定した運動強度区分(メッツ)の便宜的な対応表です。薬剤(β 遮断薬など)、心疾患、自律神経障害、暑熱環境では乖離しやすく、必ず症状観察と組み合わせて判断します。

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強度区分の目安(METs/%HRR/RPE/会話テスト)
区分 METs %HRR RPE(6–20) 会話テスト
軽度1.6–2.920–39%9–11楽に会話できる
中等度3.0–5.940–59%12–13やや息が上がるが会話可
高強度≥ 660–84%14–16会話は途切れがち
非常に高い≥ 9≥ 85%17 以上会話困難

現場の詰まりどころ(よくある混乱)

  • 体重を掛け忘れる:4 METs × 30 分 = 120 kcal と計算してしまい、体重(kg)を式に入れていない。
  • 「分」のまま掛けてしまう:4 × 60 × 30 など、時間を h に直さず掛けてしまい、非現実的な kcal になる。
  • METs と「実感」のギャップ:同じ 4 METs でも年齢・体格・路面条件で体感が違うのに、一律の指示として扱ってしまう。
  • ウェアラブル頼み:デバイス表示の METs を鵜呑みにし、推定アルゴリズムの違いや装着条件を考慮していない。
  • 「強度だけ」を見てしまう:3–4 METs を指定して満足し、週あたりの総時間・頻度や、既存活動量からの増分を十分に検討していない。

迷ったときは「METs(強度)× 時間 × 体重」だけでなく、RPE・会話テスト・症状をセットで確認し、「安全側に 1 段階弱く・短く」から始めると現場で使いやすくなります。

処方・活用のコツ(安全第一)

  1. 開始ラインの確認:既往歴、併用薬(β 遮断薬など)、主訴、既存の活動量を把握し、必要に応じて医師に運動処方の枠組みを確認します。
  2. 目標設定:多くの成人では中等度(3.0–5.9 METs)が出発点になります。最初は「弱め・短め」に設定し、10–20% の時間(h)または頻度を週次で微増していきます。
  3. モニタリング:RPE、会話テスト、息切れ・動悸・胸痛・めまいなどの症状で安全側に調整します。暑熱・脱水・低血糖時には、同じ METs 指示でも実質強度が上がる点に注意します。
  4. 教育:「kcal = METs × 体重 × 時間」で患者さん自身がおおよその消費量を見積もれるように、一緒に簡単な例題を解きながら練習すると、行動変容に結び付きやすくなります。

注意点・よくある誤解

  • METs は母集団の平均値であり個体差が大きい(年齢・筋力・技量・路面・気温など)。同じ 4 METs でも体感強度は人によって異なります。
  • 時間の単位は h(時間)。10 分は 0.167 h、30 分は 0.5 h。分のまま掛けないようカルテ記載でも単位を明示します。
  • β 遮断薬内服や自律神経障害がある場合は心拍指標が当てになりにくく、RPE や症状を優先して評価します。
  • ウェアラブルデバイスの METs 表示は機器の推定モデルに依存します。臨床記録では「アプリ推定」など推定方法を併記しておくと解釈しやすくなります。
  • 暑熱・高地・感染症回復直後などでは閾値が下がるため、従来の METs 指示でも過負荷になり得ます。段階的再開(減量→漸増)を徹底します。

FAQ(よくある質問)

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Q1.安静時 1 MET は人によって違いますか?

A.はい、実際の安静時代謝量には個体差があります。ただし実務では「平均的な成人」を前提に 1 MET = 1 kcal/kg/時 として扱い、METs 単独ではなく RPE や会話テスト、症状と組み合わせて安全側に調整するのが基本です。

Q2.活動リストの METs はどれを信じればよいですか?

A.代表的なのは「Compendium of Physical Activities」です。同じ活動名でも速度・路面・斜度・技量などで METs は変わるため、「代表値+その人の文脈」で解釈します。カルテには「普通歩行(約 3 METs)」など、条件とセットで記録しておくと再評価がしやすくなります。

Q3.患者教育では何を中心に伝えれば良いですか?

A.まずは「強度(METs)× 時間 × 体重 = 消費 kcal」というシンプルな枠組みと、「強度は RPE・会話テストとセットで決める」ことを押さえてもらうのが有効です。学習の流れや説明の組み立て方は、臨床導線の考え方をまとめた こちらの流れ も参考になります。

働き方を見直すときの抜け漏れ防止に。見学や情報収集の段階でも使える 面談準備チェック(A4・5分)と職場評価シート(A4) を無料公開しています。印刷してそのまま使えます。

おわりに

METs を使った運動処方は、「安全確認 → 強度の目安設定 → 実施 → 症状・RPE・METs の再評価」というリズムで回すと、日々の介入がぶれにくくなります。METs 表や代表的な活動の値を活用しつつ、その人の感覚や症状に合わせて微調整することが、リハ栄養や疾病管理の場面でも重要です。

一方で、こうした運動処方を日常的に回していくには、所属先の体制やスタッフ構成も大きく影響します。キャリアや働き方を整理するときには、上記の面談準備チェックと職場評価シートも印刷して手元に置き、「今の職場でできること」と「数年後にめざしたい臨床」をセットで見直してみてください。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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参考文献

  1. Ainsworth BE, Haskell WL, Herrmann SD, et al. 2011 Compendium of Physical Activities: a second update of codes and MET values. Med Sci Sports Exerc. 2011;43(8):1575–1581. doi:10.1249/MSS.0b013e31821ece12. PubMed
  2. Garber CE, Blissmer B, Deschenes MR, et al. Quantity and Quality of Exercise for Developing and Maintaining Cardiorespiratory, Musculoskeletal, and Neuromotor Fitness in Apparently Healthy Adults: Guidance for Prescribing Exercise. Med Sci Sports Exerc. 2011;43(7):1334–1359. doi:10.1249/MSS.0b013e318213fefb. PubMed
  3. Piercy KL, Troiano RP, Ballard RM, et al. The Physical Activity Guidelines for Americans. JAMA. 2018;320(19):2020–2028. doi:10.1001/jama.2018.14854. PubMed
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