BMS とは?(基本動作 9 項目・ 5 段階・ 9〜 45 点)
BMS( Basic Movement Scale /基本動作指標)は、寝返り・起き上がり・端座位保持など生活の土台になる基本動作を、「上肢を使うか」と「毎回できるか(再現性)」の 2 軸で 5 段階評価するスケールです。項目は 9 つで、各 1〜 5 点、合計は 9〜 45 点です。
本ページでは、BMS を Capacity(一定条件で “どこまでできるか” )として測るために、条件固定・採点の線引き・記録の残し方まで含めて「臨床で回る形」に落とし込みます。関連する評価の全体像は 評価ハブ からまとめて確認できます。
BMS を使う場面(目的と使いどころ)
BMS は、ADL の結果(できている/いない)よりも「基本動作のどこで詰まるか」を短時間で特定したいときに相性が良い評価です。とくに回復期〜退院前のボトルネック分解(寝返り・起き上がり・移乗・歩行の “どれを先に上げるか” )に向きます。
ポイントは、毎回の評価で環境条件(ベッド高・椅子高・支持物・介助位置)をそろえ、点数だけでなく失敗の型(どこで崩れるか)も一緒に残すことです。基本動作評価の整理は 基本動作評価ハブ( BMS / ABMS-2 ) にまとめています。
評価項目( 9 項目)と「実用側 / 非実用側」の考え方
BMS は 9 項目で構成されます。寝返り・起き上がり・足の踏み返しの 3 項目は「右/左」で方向があり、BMS では日常で多い方向=実用側、反対方向=非実用側として、チーム内の共通言語にします(左右を “別スコアで加算する” という考え方ではありません)。
| # | 項目 | 見るポイント(例) |
|---|---|---|
| 1 | 寝返り(実用側 / 非実用側) | 体幹回旋の連続性、上肢支持の要否、動作が “詰まる瞬間” |
| 2 | 起き上がり(実用側 / 非実用側) | 肩甲帯と骨盤の協調、上肢支持の要否、めまい・起立性症状 |
| 3 | 端座位保持 | 骨盤の安定、足部接地、上肢支持、姿勢の崩れ方 |
| 4 | 立ち上がり | 前方移動と荷重、下肢伸展の同期、支持物・介助量 |
| 5 | 立位保持 | 支持の要否、重心の揺れ、姿勢偏位、視覚依存の強さ |
| 6 | 着座 | 制動(ブレーキ)の質、膝折れ・後方失調、手すり依存 |
| 7 | 乗り移り | 方向転換、段差、ブレーキ操作、介助の “怖い場面” |
| 8 | 足の踏み返し(実用側 / 非実用側) | ステップ反応、支持脚の安定、足関節戦略、転倒リスク |
| 9 | 歩行 | 補助具・介助、歩容、速度、疲労での崩れ |
採点基準( 5〜 1 点)と “線引き” のコツ
BMS の 5 段階は、上肢を使うかと毎回できるかで決まります。ブレやすいのは 5↔4 と 3↔2 です。施設内で運用するなら、まず「毎回」の定義(例: 3 回中 3 回)を決めると再現性が上がります。
| 得点 | 区分(要点) | 運用メモ |
|---|---|---|
| 5 | 上肢を使わなくても、毎回できる | 条件が変わっても崩れにくいかを所見で補足 |
| 4 | 上肢を使わなくてもできるが、毎回ではない | 疲労・注意・環境差で崩れる。条件固定が重要 |
| 3 | 上肢を使うと、毎回できる | 「どの支持を許可したか」を記録(手すり、ベッド柵など) |
| 2 | 上肢を使うとできるが、毎回ではない | 危険な局面(着座直前、方向転換など)を特定して残す |
| 1 | できない(または危険が大きく実施困難) | 中止基準を優先し、代替の観察所見を残す |
実施手順( 5〜 10 分で回す簡易プロトコル)
- 目的を決めます(初回スクリーニング/経過確認/退院前の詰まり確認)。
- 環境条件を固定します(ベッド高、椅子高、支持物、靴、補助具、介助位置)。
- 各項目を安全第一で実施し、上肢使用と再現性に着目して採点します。
- 方向がある項目( 1・ 2・ 8 )は、実用側 / 非実用側のどちらを測ったかを明記します。
- 合計点だけで終わらせず、低い項目(詰まり)と失敗の型を 1〜 2 行で残します。
運用のコツは、点数の変化よりも「同じ条件で、同じ線引きで」測れているかです。点数が動いたときに、改善なのか条件差なのかを切り分けられると、介入がブレにくくなります。
判定と臨床解釈(合計点より “ボトルネック” を読む)
BMS は合計点が高いほど基本動作能力が高い目安になりますが、臨床で効くのは「低い項目」です。たとえば歩行が低いから歩行練習を増やすのではなく、立ち上がり・乗り移り・踏み返しのどこが足を引っ張っているかを先に特定します。
- 4〜 5 が増える:条件が多少変わっても崩れにくくなっているサイン
- 2〜 3 を反復する:成功/失敗が混在。失敗局面(タイミング・恐怖・注意)を潰すと上がりやすい
- 実用側と非実用側の差:支持戦略・回旋の出しやすさ・荷重の偏りを疑うヒント
合計点を 1 点上げるより、まずは詰まり項目を 1 つだけ選び、「条件統一 → 反復 → 再評価」で回す方が、チーム内の共通理解も作りやすくなります。
安全管理と中止基準(例)
- 強いめまい・胸部不快感・著明な息切れなどの自覚症状が出た場合は中止を検討します。
- 立ち上がり・踏み返し・歩行は転倒リスクが上がるため、介助者配置と退避手段(手すり等)を確保します。
- 疼痛や痙縮の増悪、低血糖・低酸素が疑われる場合は、評価を延期し必要時に連携します。
記録例(カルテ記載サンプル)
点数だけでなく、条件と失敗の型をセットで残すと、申し送りと再評価が強くなります。
BMS:28 / 45(実用側で評価) 内訳:寝返り 3、起き上がり 3、端座位 5、立ち上がり 3、 立位保持 3、着座 4、乗り移り 3、踏み返し 2、歩行 2 補助手段:T 字杖 条件:ベッド高 45 cm、椅子高 40 cm、右手すり使用可 所見:立ち上がり終盤で体幹後方化。踏み返しで支持脚が不安定。
現場の詰まりどころ/よくある失敗( OK / NG と対策)
運用でつまずきやすいポイントを、原因 → 対策 → 記録のコツまでセットで整理します。評価や記録の抜け漏れが続くときは、面談準備にも使えるチェックリスト( A4 )を ここからダウンロードして、チームの “やること” を先に揃えておくと回りやすくなります。
| よくあるミス( NG ) | なぜ起きる? | 対策( OK ) | 記録のコツ |
|---|---|---|---|
| 合計点だけを共有する | 介入が散り、改善が遅い | 低い項目を 1 つ選び、次の 72 時間で上げる | 「詰まり項目」と「失敗場面」を 1 行で残す |
| 条件が毎回違う | 点数が条件差で動く | ベッド高・椅子高・支持物・介助位置を固定 | 条件欄を作り、数値で残す( cm など) |
| “毎回” の線引きが人で違う | 4↔5、2↔3 がブレる | 試行回数(例: 3 回)と基準( 3/3 )を先に決める | 迷ったら同席評価で校正し、ルール化する |
| 上肢使用の扱いが曖昧 | 支持の許可範囲が不明確 | 「何に、どう支持したか」を明文化する | 手すり・柵・ベッド端などを具体語で書く |
BMS 記録用紙(A4 PDF)
印刷してそのまま使える A4 版の記録用紙です。
プレビューを表示(クリックで開く)
公式資料(マニュアル)と入手先
BMS の詳細(原典の説明・運用上の注意)は配布元の資料を参照してください。院内で共有する場合は、版(バージョン)が変わっていないかも合わせて確認すると安心です。
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1.評価にかかる時間は、どのくらいですか?
初回は説明と安全確認込みで 10 分前後、慣れると 5〜 7 分が目安です。転倒リスクが高い場合は、立位・歩行など高難度項目を無理に通さず、必要な基本動作に絞って実施します。
Q2.「毎回できる」の判断が難しいです。どう決めればいいですか?
施設内で運用するなら、試行回数と判定基準を先に決めます(例: 3 回中 3 回=毎回)。そのうえで、疲労・注意・環境差で崩れやすい症例は、条件(支持物・高さ・介助位置)を固定してから再評価するとブレが減ります。
Q3.実用側 / 非実用側は、毎回どちらを測るべきですか?
経過で追うなら「どちらを測ったか」を固定するのが基本です。日常で多い方向(実用側)を優先して共有しつつ、必要に応じて非実用側も確認して “差” を所見として残すと、回旋の出しやすさや支持戦略の偏りが把握しやすくなります。
Q4.BMS の点数が上がっても、ADL が伸びません。どう解釈しますか?
BMS は一定条件での Capacity を見ます。ADL は環境・道具・習慣・介助量などで変わるため、両者がズレることは起こり得ます。点数が上がった項目が「生活で使われる動作」へ一般化しているか(道具、動線、介助方法)を一緒に点検すると、次の一手が見えやすくなります。
次の一手(関連ページ)
参考文献
- Toyama S, Sawada K, Ueshima K, et al. Changes in Basic Movement Ability and Activities of Daily Living After Hip Fractures: Correlation Between Basic Movement Scale and Motor-FIM Scores. Am J Phys Med Rehabil. 2018;97(5):316-322. PubMed / DOI
- Goto R, Toyama S, Sawada K, et al. The Usefulness of Basic Movement Scale in Hip Fracture Patients. Am J Phys Med Rehabil. 2019. PubMed / DOI
- BMS 使用マニュアル(日本語 PDF )
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


