NPIとNPI-NHの違い|BPSD評価の使い分けと採点方法

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NPIとNPI-NHの違いは情報提供者で決める

NPIとNPI-NHは、認知症に伴うBPSD(行動・心理症状)について、症状の種類、頻度、重症度、介護者や職員への影響を整理する評価尺度です。選択に迷ったときは、在宅か施設かだけでなく、日常の状態を最も把握している情報提供者が誰かで判断します。

家族などの情報提供者から聞き取る場合はNPI、入院・入所環境で介護・看護職などの専門職から聞き取る場合はNPI-NHが基本です。本記事では、両者の違い、採点方法、結果の読み方、記録・再評価の進め方を、PDF記録シート付きで解説します。

NPIを使う前に、急変や身体要因を含むBPSD評価全体の順番を確認しておくと、尺度だけで判断するのを防げます。

BPSD評価フローの全体像を確認する

NPIとNPI-NHの違い、情報提供者による使い分け、採点方法、12ドメイン、聞き取りと再評価のポイントを整理した図版
NPI/NPI-NHの使い分けと採点・運用の全体像

NPIとNPI-NHの使い分け

選択の基準は、評価場所そのものよりも誰が情報提供者になるかです。対象者の日常を把握している家族などから聞き取る場合はNPI、入院・入所中の状態を専門職から聞き取る場合はNPI-NHを選びます。

家族が情報提供者であっても、十分な観察機会がなければ正確な回答は困難です。反対に、施設職員から聞き取る場合も、勤務帯や担当者によって観察場面が異なります。「在宅か施設か」だけで機械的に決めず、対象期間の状態を説明できる情報提供者を選びます。

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NPIとNPI-NHを選ぶときの判断基準
評価場面 主な情報提供者 選択の目安
在宅・外来 日常生活を把握している家族や介護者 NPI
病棟・老健・特養など 対象期間の状態を把握している介護・看護職など NPI-NH
入退院・入退所の移行期 家族と職員に情報が分散している 主情報提供者を決め、情報源を記録する

NPIとNPI-NHの主な違い

NPIとNPI-NHは、頻度と重症度を掛けて各ドメインの得点を求める基本構造は共通しています。主な違いは、想定される情報提供者と、負担度を誰の立場から評価するかです。

一般のNPIでは、対象者をよく知る情報提供者から聞き取ります。NPI-NHは、家族ではない専門職が情報提供者となる入院・入所環境での使用を想定した版です。

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NPIとNPI-NHの主要な違い
項目 NPI NPI-NH
主な情報提供者 対象者の日常をよく知る家族などの介護者 介護・看護職などの専門職
主な使用場面 在宅、外来など 病棟、介護施設など
評価する内容 各ドメインの頻度と重症度 各ドメインの頻度と重症度
各ドメインの得点 頻度0〜4×重症度0〜3 頻度0〜4×重症度0〜3
負担度 介護者の苦痛・負担を別に評価できる 職員の業務への影響を別に評価できる
情報がぶれる要因 観察機会、介護者の解釈、生活場面の違い 勤務帯、担当者、観察場面、申し送りの違い
再評価時の注意 情報提供者と評価条件を記録する 情報提供者、勤務帯、対象期間を記録する

NPIが評価する12のドメイン

NPIでは、BPSDを複数のドメインに分けて評価します。各ドメインは診断名を付けるためではなく、どの症状を優先して観察・介入するかを整理するための枠組みです。

  • 妄想(Delusions)
  • 幻覚(Hallucinations)
  • 興奮・攻撃性(Agitation / Aggression)
  • 抑うつ・ディスフォリア(Depression / Dysphoria)
  • 不安(Anxiety)
  • 多幸(Elation / Euphoria)
  • 無関心・アパシー(Apathy / Indifference)
  • 脱抑制(Disinhibition)
  • 易刺激性・感情不安定(Irritability / Lability)
  • 異常行動(Aberrant Motor Behavior)
  • 夜間行動・睡眠障害(Sleep and Nighttime Behavior Disorders)
  • 食欲・摂食の変化(Appetite / Eating Changes)

基本となる10ドメインに、夜間行動・睡眠と食欲・摂食の2ドメインを加えた構成があります。合計点を記録するときは、10ドメインで計算したのか、12ドメインで計算したのかを明記してください。構成が異なる合計点を、そのまま比較することはできません。

NPI/NPI-NHの採点方法

症状が認められたドメインについて、頻度と重症度を評価し、両者を掛けてドメインスコアを求めます。頻度は1〜4、重症度は1〜3で評価するため、症状があるドメインの得点は1〜12点です。症状がない場合は0点になります。

ドメインスコア=頻度×重症度

たとえば、ある症状の頻度が3、重症度が2であれば、そのドメインスコアは6点です。10ドメインを合計する場合の上限は120点、12ドメインを合計する場合の上限は144点です。

ただし、合計点だけでは、どの症状が介入対象なのか分かりません。結果を確認するときは、次の順番で整理します。

  1. 得点が高いドメインを確認する
  2. 本人や周囲への影響が大きいドメインを確認する
  3. 安全性や緊急性を確認する
  4. 具体的に生じた場面と誘因を確認する
  5. 介護者負担または職員への影響を別に確認する

採点結果の読み方

合計点はBPSD全体の概況を把握する指標です。介入を決めるときは、合計点だけでなく、上位ドメイン、具体的な出来事、安全性、本人への影響、介護者・職員への影響を組み合わせて判断します。

介護者負担と職員への影響は合計点と分けて記録する

NPIの介護者負担と、NPI-NHの職員への業務上の影響は、頻度×重症度の合計点とは別の指標です。症状の重さと支援者側への影響を混ぜず、分けて記録します。

たとえば、ドメインスコアが同じでも、夜間に繰り返し生じて職員配置に大きく影響する症状と、短時間で対応できる症状では、支援上の優先度が異なることがあります。

カンファレンスでは、次のように並べると共有しやすくなります。

  • 対象ドメイン:何が起きているか
  • 頻度×重症度:どの程度起きているか
  • 具体例:いつ、どこで、何の前後に起きたか
  • 本人への影響:苦痛、安全性、生活への影響
  • 支援者への影響:介護負担または業務への影響

聞き取りは有無・具体例・頻度・重症度の順で進める

点数を先に決めようとすると、情報提供者の印象に左右されやすくなります。まず症状の有無を確認し、次に具体例を聞き、その事実をもとに頻度と重症度を評価します。

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NPI/NPI-NHの聞き取り手順
順番 確認する内容 記録する内容
1 症状が認められるか あり、なし、判断困難
2 どのような出来事があったか 発言、行動、本人の反応
3 いつ、どこで起きたか 時間帯、場所、ケア場面
4 何の前後に起きたか 誘因になった可能性がある出来事
5 どのくらいの頻度か 尺度の定義に沿った頻度
6 どの程度の重症度か 本人への影響と対応の難しさ

聞き取った具体例は、点数の根拠として残します。「興奮6点」だけでは、次の担当者が同じ状態を再現して評価できません。「夕食前の待機中に大声があり、席を移すと落ち着いた」のように、場面と対応後の変化を添えると介入へつながります。

再評価では情報提供者と評価条件をそろえる

再評価の目的は、点数だけを取り直すことではなく、同じ条件で症状の変化を比較することです。情報提供者や対象期間が変わると、点数の変化が症状によるものか、評価条件によるものか判断できなくなります。

評価時には、少なくとも次の項目を記録します。

  • 使用した尺度の版
  • 評価日
  • 情報提供者と本人との関係
  • 情報提供者が観察した期間・勤務帯
  • 評価対象とした期間
  • 採用したドメイン構成
  • 上位ドメインの具体例
  • 評価期間中に変更した介入

対象期間や再評価の時期は、使用する正式な評価手順、目的、介入内容、症状の変動性に合わせて決めます。施設独自に「直近1週間」などの運用単位を設定する場合は、尺度の正式な採点基準と混同しないよう、ローカルルールとして明記してください。

NPI/NPI-NH記録シートPDF

NPI/NPI-NHの得点、情報提供者、評価条件、上位ドメインを1枚で整理できるA4記録シートです。初回評価だけでなく、再評価時に同じ条件で比較するための補助資料として使用できます。

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NPI/NPI-NHで起こりやすい失敗

評価が安定しない主な原因は、尺度の計算方法ではなく、情報提供者と評価条件がそろっていないことです。

  • 家族と職員の情報を区別せず採点する:誰の観察に基づく得点か分からなくなります。
  • 異なる期間の出来事を混ぜる:現在の状態と以前の状態が同じ得点に含まれます。
  • 具体例を記録しない:得点の根拠と介入対象が分からなくなります。
  • 10ドメインと12ドメインの合計点を比較する:得点範囲が異なるため、そのまま比較できません。
  • 介護者負担や職員への影響を合計点へ混ぜる:症状の重さと支援者側の負担を分離できません。
  • 合計点だけで介入を決める:安全性、本人の苦痛、具体的な誘因が見落とされます。

NPI/NPI-NHについてよくある質問

Q1.NPIとNPI-NHはどう使い分けますか?

主な判断基準は情報提供者です。対象者の日常を把握している家族などから聞き取る場合はNPI、入院・入所環境で介護・看護職などの専門職から聞き取る場合はNPI-NHを選びます。評価場所だけで決めず、対象期間の状態を説明できる人を情報提供者にします。

Q2.NPIの合計点は120点と144点のどちらですか?

採用するドメイン構成によって異なります。10ドメインの合計は最大120点、夜間行動・睡眠と食欲・摂食を加えた12ドメインでは最大144点です。記録には、どの構成で計算したかを必ず明記してください。

Q3.介護者負担や職員への影響は合計点に含めますか?

頻度×重症度による症状の合計点とは分けて記録します。症状の程度と、家族や職員が受ける影響は異なる指標です。両方を並べて確認することで、支援の優先順位を検討しやすくなります。

Q4.合計点が下がればBPSDは改善したと判断できますか?

合計点だけでは判断できません。使用した版、情報提供者、対象期間、ドメイン構成が同じかを確認したうえで、上位ドメインの得点、具体例、本人への影響、介護者・職員への影響を比較します。

Q5.短時間でBPSDの概況を確認したい場合は何を使いますか?

短時間で概況を把握する場合はNPI-Qが選択肢になります。ただし、NPI-QとNPI/NPI-NHでは評価方法が異なります。継続的な介入評価に使う場合は、目的に合う尺度を選び、同じ尺度と条件で再評価してください。

次に確認する記事

NPIとNPI-NHの違いを理解したら、次は評価全体の中で尺度を使う位置を確認するか、NPI-NHを施設で継続運用する方法へ進みます。

運用を整えたあとに、職場環境の詰まりも点検しておきましょう
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参考文献

  • Cummings JL, Mega M, Gray K, Rosenberg-Thompson S, Carusi DA, Gornbein J. The Neuropsychiatric Inventory: comprehensive assessment of psychopathology in dementia. Neurology. 1994;44(12):2308-2314. DOI: 10.1212/WNL.44.12.2308
  • Wood S, Cummings JL, Hsu MA, et al. The NPI-Nursing Home version: a comprehensive personality and behavior rating scale for patients with dementia in extended care facilities. Am J Geriatr Psychiatry. 2000;8(1):75-83. DOI: 10.1097/00019442-200002000-00010
  • Kaufer DI, Cummings JL, Christine D, et al. Assessing the impact of neuropsychiatric symptoms in Alzheimer’s disease: the Neuropsychiatric Inventory Caregiver Distress Scale. J Am Geriatr Soc. 1998;46(2):210-215. DOI: 10.1111/j.1532-5415.1998.tb02542.x
  • Kaufer DI, Cummings JL, Ketchel P, et al. Validation of the NPI-Q, a brief clinical form of the Neuropsychiatric Inventory. J Neuropsychiatry Clin Neurosci. 2000;12(2):233-239. DOI: 10.1176/jnp.12.2.233
  • Cummings J. The Neuropsychiatric Inventory: development and applications. J Geriatr Psychiatry Neurol. 2020;33(2):73-84. DOI: 10.1177/0891988719882102

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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