起立性低血圧は、立位(起立後3分以内)で収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期が10mmHg以上低下し、めまい・ふらつき・失神などを生じる状態です。安全確保と原因同定のため、標準化したスクリーニング→非薬物→薬物の順で段階的に対応します。
注意:本稿は医療情報であり診断や治療を代替しません。症状が強い/失神歴がある場合は医師の評価を優先してください。
歩行耐容能の評価は 6MWT を併用し、外来・在宅の安全運用に繋げます。
スクリーニング手順(ベッドサイド)
① 臥位で5分安静 → ② 臥位BP/HR測定 → ③ 立位へ(必要なら座位を挟む) → ④ 立位直後・1分・3分でBP/HR測定・症状聴取。強いめまい・蒼白・失神前兆があれば、即座に座位/臥位へ戻して安全を最優先します。
併用薬(降圧薬・利尿薬・α遮断薬・抗PD薬・向精神薬など)、脱水、貧血、感染、自律神経障害/末梢神経障害、食後・入浴直後の発作性低血圧などを鑑別メモに残し、同条件で再評価できるよう記録を標準化します。
対応フロー(非薬物 → 薬物)
まずは教育・体位・物理的対策などの非薬物介入で再現性の高い改善を狙い、症状や転倒リスクが残る場合に薬物療法を検討します。臥位高血圧や夜間悪化への配慮も忘れずに。
以下の簡易フローを院内マニュアルとして共有し、家族・多職種とも目線を揃えましょう。
段階 | 介入 | 要点 |
---|---|---|
教育 | 立ち上がりの段階化/朝の急起立回避/水分・塩分摂取 | 脱水予防、起立直後は静止、深呼吸→足踏みで循環促進 |
物理的対策 | 弾性ストッキング(大腿〜腹部まで)/腹圧バンド | 下肢〜腹部の静脈プールを低減。装着は起床前が有効 |
体位・動作 | 就寝時頭側挙上/足組み・握りこぶし等の対抗圧運動 | 夜間の血圧低下&朝の立ちくらみを軽減 |
薬物(医師) | ミドドリン/フルドロコルチゾン/ドロキシドパ 等 | 臥位高血圧に注意。用量調整は専門医の指示で |
よくある誤り(OK/NG)
評価や説明の“型”が定まっていないと、見逃しや再発につながります。下表のOK/NGで運用を統一しましょう。
場面 | OK | NG/要修正 | 理由/対策 |
---|---|---|---|
測定 | 臥位→立位直後・1分・3分 | 立位のみ1回 | 見逃し→経時で測る |
安全 | 強い症状で即座に座位/臥位へ | 我慢させる | 失神・転倒リスク |
原因 | 薬剤・脱水・貧血を点検 | 対症のみ | 再発→原因に介入 |
説明 | 段階起立・朝対策・装着タイミング | “気をつけて”のみ | 再現性低→具体行動に落とす |
まとめ
起立性低血圧は、標準化した評価と段階的な非薬物介入で多くが安全運用に乗ります。薬剤調整は医師と連携し、歩行耐容能(6MWT)や在宅IADLと併読して生活場面へ落とし込みましょう。
6MWT|ATS準拠プロトコル 耐容能の評価と安全管理。 |
ADL/IADL ガイド 生活機能の全体像を整理。 |
よくある質問(FAQ)
Q. 何分で判定しますか?
A. 立位3分以内の血圧低下で判定します。初期型/遷延型が疑われる場合は延長評価を検討します。
Q. ストッキングはどのタイプ?
A. 下肢に加えて腹部まで覆うタイプが効果的です。装着は起床前が理想です。
Q. いつ医師へ?
A. 失神・頻回の転倒・重度の症状、薬剤調整が必要な場合は速やかに医師の評価を受けてください。
参考文献
- 起立性低血圧の定義・評価・非薬物介入に関する標準的記述(院内手順・総説に準拠)