
いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!
この記事は「ブレーデンスケール」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。
褥瘡は発生してしまってから治すより、未然に発生を予防できればそれに越したことはありません。発生を防ぐためにはどうすればいいのか?そこで効果を発揮するのがリスクアセスメントスケールになります。
褥瘡の発生を防止するにはリスクアセスメントツールを活用し、様々な褥瘡発生要因からその対象者の褥瘡発生リスクを評価し、リスクに応じた予防策を実施することが重要になります。
今までに褥瘡発生リスクが高い患者および利用者を抽出するためにいくつものリスクアセスメントスケールが考案されてきました。その中で、信頼性が高く世界中で最も広く使われているのはブレーデンスケールになります。
こちらの記事では、ブレーデンスケールの評価方法を解説し、すぐにでも臨床でブレーデンスケールを活用した評価ができるように、Excelファイルの評価表をダウンロードできるようにしてあります。是非ご活用して頂ければと思います!

【簡単に自己紹介】
30代の現役理学療法士になります。
理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。
現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。
臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。
そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。
理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです
登録理学療法士
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
ブレーデンスケール(Braden Scale)とは

ブレーデンスケール(Braden Scale)は、1986 年に米国のブレーデン博士とバーグストローム博士によって開発された、褥瘡発生リスクを予測するためのリスクアセスメントツールです。
1980 年代初頭、米国では介護施設や病院で褥瘡の多発が社会問題化しており、その原因や予防方法を明確化する必要がありました。
研究の過程で、褥瘡発生には「持続的な圧迫」と「組織耐久性の低下」という 2 つの要因が大きく関与していることが示され、さらに詳細な検討により次の 6 項目が重要であると結論づけられました。
- 知覚の認知(Sensory Perception)
- 湿潤(Moisture)
- 活動性(Activity)
- 可動性(Mobility)
- 栄養状態(Nutrition)
- 摩擦とずれ(Friction & Shear)
これらを評価することで、褥瘡発生のリスクを総合的に判断できるのがブレーデンスケールです。日本では 1988 年に真田弘美先生と大岡美智子先生が日本語訳を発表し、現在も広く用いられています。
エビデンスレベル(推奨度)
日本褥瘡学会発行の「褥瘡予防・管理ガイドライン」では、褥瘡予防におけるリスクアセスメントスケールとしてブレーデンスケールを推奨しています。
複数の評価法が存在する中で、ブレーデンスケールは唯一、推奨度 B(根拠があり、行うよう勧められる)を獲得しており、国内外で最も普及しているスケールの一つです。
特に急性期病院、慢性期施設、在宅介護まで幅広く活用されており、看護師やリハビリ専門職がチームで予防策を立案する際の基礎資料として機能します。
活用上のポイント
ブレーデンスケールは点数が低いほどリスクが高く、一般的には合計点が 16 点以下で褥瘡発生リスクありと判断されます。ただし、患者の疾患背景や急性期か慢性期かなどの状況によって閾値を調整する必要があります。
また、単回評価ではなく、状態変化に応じた定期的な再評価が重要です。リハビリテーション場面では、活動性や可動性の改善がスコア向上につながるため、介入効果の客観的指標としても有用です。
評価項目

ブレーデンスケールは、褥瘡発生リスクを多側面から総合的に評価するために以下の 6 項目で構成されています。
- 知覚の認知
- 湿潤
- 活動性
- 可動性
- 栄養状態
- 摩擦とずれ
これらの 6 項目について、1 点(もっとも悪い)から 4 点(もっとも良い)で評価し、合計点を算出します。
※「摩擦とずれ」の項目のみ 1 点から 3 点の 3 段階評価となる
ブレーデンスケール 評価方法

ブレーデンスケールは 6 項目(知覚の認知、湿潤、活動性、可動性、栄養状態、摩擦とずれ)について採点し、合計点から褥瘡発生リスクを判定します。
各項目は 1 点(最も不良)から 4 点(最も良好)で評価しますが、「摩擦とずれ」のみは 1 ~ 3 点の 3 段階評価です。
評価には対象者の状態観察と日常生活動作の把握が必要であり、適切な判定には一定の経験と臨床判断が求められます。
知覚の認知
体に圧迫や不快感が加わった際に、それを感知して適切に反応できるかを評価します。
評価文の前半は「意識レベル」、後半は「皮膚感覚」に関する内容で構成されており、両者の点数が異なる場合は低い方を採用します。
褥瘡の主因である圧迫や摩擦を自力で回避できるかを念頭に置いて採点します。
湿潤
尿失禁、便失禁、発汗、創傷からの浸出液、ドレナージからの排液などが原因となり、皮膚が湿潤にさらされる頻度を評価する項目になります。皮膚が湿潤していると皮膚の防御機能が低下し、皮膚組織の耐久性が低下するため皮膚の損傷が起こりやすくなります。
寝衣・寝具にはオムツも含まれており、オムツをしている場合は「1 点」または「2 点」、膀胱留置カテーテルを留置している場合は、尿もれがなければ「3 点」となります。
活動性
対象者の行動範囲についてを身体的活動性と歩行能力から評価する項目になります。
ベッドから離れて活動できるということは全身の血流に良い影響を与えるため、褥瘡発生に関係する重要な要素となります。
活動性が低下すると組織への圧迫を受けやすくなるため褥瘡発生の危険性が高くなります。
病前の活動能力に関わらず、現状の活動性を捉えるます。手術直後の影響でベッド上での安静を指示されている場合には「1 点」となります。
可動性
可動性は体位変換の実施能力から判断します。寝返り動作を含めた体幹や四肢の動きと、その動きが本人の意思に基づいているのかを評価します。
他者による体位変換の実施については評価の対象には含まれません。24 時間介護によって体位変換をしている場合には「1 点」となります。
完全に体の向きを変えることと同様に、局所を浮かせたり、位置を変えたりすることも採点に影響します。
栄養状態
普段の食事摂取状態について、カロリーとタンパク質の摂取量から評価する項目になります。
他の項目はリアルタイム、その場面での採点になりますが、栄養状態については 1 週間の食事摂取状態を評価します。
こちらの項目の説明文の前半は「経口栄養」、 後半は「経管(経腸)栄養または静脈栄養」の 2 つの構成要素に分類されています。
栄養摂取経路を併用し、得点が異なる場合は、主となる経路の得点を採用します。
1 皿(カップ)とは、その対象者に必要と推定される必要栄養量(体重や身長、活動量等から算出)を示しています。
必要栄養量を満たす高カロリー輸液を実施している場合は「3 点」、食事がほとんど摂取できず末梢静脈輸液の場合は「1 点」となります。
摩擦とずれ
「摩擦」とは、皮膚が寝衣・寝具に擦れること、「ずれ」とは、筋肉と骨が外力によって引き伸ばされることを表します。
「摩擦」と「ずれ」の両者を捉える項目となり、摩擦とずれの生じやすさ、頻度を評価します。
こちらの項目のみ 1 ~ 3 点の 3 段階で判定を行います。
ブレーデンスケール 評価表

ブレーデンスケールの評価表をダウンロードできるようにしておきました!
評価表が必要な方はこちらからどうぞ☺
カットオフ値と評価の頻度
ブレーデンスケールのカットオフ値と評価の頻度について解説していきます。
カットオフ値
ブレーデンスケールのカットオフ値は、褥瘡発生リスクが高いかどうかを判定する基準となる点数です。
褥瘡の発生は、身体機能・全身状態・栄養状態などの内的要因だけでなく、介護力や環境といった外的要因にも左右されます。そのため、評価基準は「病院」と「施設・在宅」で分けて設定されています。
- 病院(入院中):14 点以下
- 施設・在宅:17 点以下
この点数を下回った場合、褥瘡発生リスクは極めて高いと判断され、予防的介入の強化が必要となります。
なぜ「病院」と「施設・在宅」で違うのか
入院中の患者は医療スタッフによる観察や体位変換などの介入が頻繁に行われるため、同じ点数でも実際のリスクは低く抑えられやすい傾向があります。
一方、施設や在宅では介護スタッフや家族によるケアが中心となり、医療的な介入頻度が低くなるため、同じ状態でもリスクは高くなります。
そのため、施設・在宅ではより高めのカットオフ値(17 点以下)が設定されています。
初回評価のタイミング
初回評価は可能な限り早期に行うことが重要です。
入院や入所のタイミングが理想ですが、難しい場合でも寝たきりや活動性低下が顕著になった時点で必ず評価を実施します。
再評価の頻度(目安)
- 急性期:48 時間ごと
- 慢性期:2 週間ごと
- 高齢者:最初の 4 週間は毎週、その後は 3 か月ごと
ただし、状態変化(体調悪化、活動性低下、栄養状態悪化、湿潤の増加など)があった場合は、定期評価のスケジュールに関係なく随時再評価を行います。
臨床での活用ポイント
- カットオフ値はあくまでリスク抽出の目安であり、必ず臨床判断と併せて評価する必要があります。
- 得点だけでなく、どの項目で点数が低いのかを分析し、その原因に応じた予防策(除圧・スキンケア・栄養管理など)を立案することが重要です。
- 褥瘡リスクは短期間で変動するため、「一度評価して終わり」ではなく継続的モニタリングが不可欠です。
その他のリスクアセスメントスケール
ブレーデンスケールの他にも褥瘡のリスクアセスメントスケールは開発されています。
- 小児を対象:ブレーデン Q スケール
- 厚生労働省が開発:厚生労働省危険因子評価票
- 寝たきり高齢者に有効:OH スケール
- 入院患者に使用:K 式スケール
- 在宅療養者に使用:在宅版 K 式スケール
- 脊髄損傷者:SCIPUS スケール
この中でも最も「褥瘡予防・管理ガイドライン」における褥瘡予防に使用するべきリスクアセスメントスケールとして、推奨度が高い指標がブレーデンスケール(推奨度 B)となります。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「ブレーデンスケール」をキーワードに解説させて頂きました。
こちらの記事を読むことでブレーデンスケールについての理解が深まり、臨床における褥瘡対策の一助となれば幸いです。
ブレーデンスケール以外のリスクアセスメントスケールについては、他の記事でまとめています!こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【褥瘡のリスクアセスメントスケールについての記事はこちらから】
参考文献
- 角優子,橋下千鶴,中垣内美津穂,水野勝則.ブレーデンスケール15点以上で褥瘡が発生した要因と今後の課題.新田塚医療福祉センター雑誌.vol.7,No.1,2010,p41-44.
- 岡田克之.褥瘡のリスクアセスメントと予防対策.日本老年医学会雑誌,50巻,5号,2013:9,p583-591.
- 松原康美.ブレーデンスケール.整形外科看護.2021,vol.26,no.8,p38-42.
- 三谷和江.ブレーデンスケール.整形外科看護 .2015,vol.20,no.10,p23-25.
- 南由起子.ブレーデンスケールとOHスケールについて.泌尿器ケア.2007,vol.12,no.11,p74-78.