【形態測定とは?】ランドマークや計測のポイント【四肢長周径】

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形態測定の「標準化」と「臨床力」を同時に上げる手順を学ぶ(PTキャリアガイド)

形態測定とは

形態測定とは身体全体および各部の大きさや長さなどを計測することを意味しています。形態計測の実施は以下の項目のアセスメントとなります。

  • 栄養状態
  • 筋萎縮の有無とその程度
  • 浮腫や腫脹の有無とその程度
  • 骨や関節変形などの形態異常

形態測定は理学療法や作業療法にとって基礎的な評価方法となります。また、肢体の障害関係の測定としても必要になる技術となります。

形態測定に関して分からないことがある人、不安を感じている人、実施前に確認したい事項がある人にとって、役立つ記事になるようにわかりやすくまとめていきます。

四肢長

四肢長および肢節長を計測し左右の比較をすることにより、関節疾患・拘縮・骨折の有無や仮性短縮、仮性延長を知ることができます。

四肢長の計測はメジャーを用いて計測区間の最短距離を 0.1 cm あるいは 0.5 cm 単位で計測します。

四肢長を評価する意義として、以下の項目があげられます。

  • 個体の左右差の把握
  • 骨折の転位に対する評価
  • 骨盤の傾斜、腰椎の弯曲の評価
  • 四肢の関節可動域制限および拘縮の確認
  • 切断端の長さ
  • 仮性延長、仮性短縮の確認

視診による左右差の確認、後述する各部位の(棘果長、転子果長、大腿長、下腿長等)長さを計測することで、左右の長さに差が生じている原因を推定することができます。

四肢長は上肢と下肢の計測に分類されています。計測方法、計測のポイントについて以下で解説していきます。

上肢の測定部位

上肢の代表的な測定部位は上肢長、上腕長、前腕長になります。姿勢は坐位または背臥位、肢位は肘関節伸展位・前腕回外位(いわゆる解剖学的肢位)で測定します。

上肢長

上肢長は[肩峰 ~ 橈骨茎状突起]までの長さを指します。

【肩峰ランドマーク】

肩甲棘の下縁を外側方向へ触れていくと、ほぼ直角に前方へ折れる肩峰角を触診することができます。この肩峰角から前方へ広がる扁平な骨部位が肩峰になります。

【橈骨茎状突起ランドマーク】

橈骨の最も遠位部で隆起している領域が橈骨茎状突起になります。

上腕長

上腕長は[肩峰 ~ 上腕骨外側上顆]までの長さを指します。

【上腕骨外側上顆ランドマーク】

上腕骨の最も遠位部かつ外側の隆起している領域が上腕骨外側上顆になります。

前腕長

前腕長は上腕長は[上腕骨外側上顆 ~ 橈骨茎状突起]までの長さを指します。

下肢の測定部位

下肢の代表的な測定部位は下肢長(棘果長、転子果長)、大腿長、下腿長になります。

姿勢は背臥位、肢位は股関節内外旋中間位、膝関節伸展位で測定します。

下肢長

下肢長は棘果長(SMD)と転子果長(TMD)の 2 種類があります。

棘果長(SMD)

SMD とは Spina Malleollar Distance の略称になります。

棘果長(SMD)は[上前腸骨棘 ~ 内果]までの長さを指します。

【上前腸骨棘ランドマーク】

腸骨の前面および上部に位置し、前方に突き出している骨盤の先端部分が上前腸骨棘になります。上前腸骨棘は略称で ASIS とも呼ばれています。

【内果ランドマーク】

脛骨の下端部内側の隆起している領域のうち最も下方(遠位端)の部位が内果になります。

転子果長(TMD)

TMD とは trochanter malleolar distance の略称になります。

転子果長(TMD)は[大転子 ~ 外果]までの長さを指します。

【大転子ランドマーク】

大腿骨の上方外側の最も隆起している領域が大転子になります。

【外果ランドマーク】

腓骨の下端部外側の隆起している領域のうち最も下方(遠位端)の部位が外果になります。

大腿長

大腿長は[大転子 ~ 大腿骨外側上顆(膝関節外側裂隙)]までの長さを指します。

【大腿骨外側上顆ランドマーク】

大腿骨の下端部外側の隆起している領域が大腿骨外側上顆になります。

下腿長

下腿長は[大腿骨外側上顆(膝関節外側裂隙)~ 外果]までの長さを指します。

四肢周径

四肢周径を計測し、左右の比較を行うことは、栄養状態、筋肉の状態、浮腫・腫脹のアセスメントに繋がります。より具体的には以下のような意義があげられます。

  • 栄養状態のアセスメント
  • 筋萎縮を認めるのか
  • 筋線維の発達(筋力トレーニングの効果)
  • 浮腫や腫張の状態評価
  • 切断肢の成熟度を知る

四肢周径はメジャーを長軸に対し垂直になるように巻き 0.1 cm あるいは 0.5 cm 単位で計測します。

周径は測定者によって誤差が出やすいことが報告されています。事前に測定部位にペンで印をつけておく工夫やメジャーの扱い方(いったん軽く絞めた後、自然に緩めた状態で計測する)などの計測方法の統一化が重要になります。

上肢の測定部位

上肢の代表的な測定部位は上腕周径、前腕周径になります。

姿勢は座位または背臥位、肢位は肘関節伸展位・前腕回外位(いわゆる解剖学的肢位)で測定します。

上腕周径

上腕周径は「肘伸展位」と「肘屈曲位」で測定することができます。一般的には「肘伸展位」で測定したものを『上腕周径』として扱います。

「肘伸展位」と「肘屈曲位」のそれぞれを測定する意義としては、「肘伸展位」と「肘屈曲位」の上腕周径の差が少ない時には筋萎縮を疑うことができます。

前腕周径

前腕周径は「最大前腕周径」と「最小前腕周径」の 2 つに分類されます。一般的には「最大前腕周径」を『前腕周径』として扱います。

下肢の測定部位

上肢の代表的な測定部位は大腿周径、下腿周径になります。

姿勢は背臥位、肢位は股関節内外旋中間位、膝関節伸展位で測定します。

大腿周径

大腿周径の測定部位はいくつか種類があります。

  • 膝蓋骨上縁
  • 膝蓋骨上縁から 5 cm上
  • 膝蓋骨上縁から 10 cm上
  • 膝蓋骨上縁から 15 cm上
  • 大腿中央部(大腿長の中点)

先行研究では、これら測定部位によって、それぞれ得ることができる情報が異なることが報告されています。諸説ありますが、一般的には以下のように報告されています。

身体障害者診断書等における大腿周径の計測部位は、膝蓋骨上縁から 10 cm 上と定められています。このことから、一般的には「大腿周径」=「膝蓋骨上縁から 10 cm 上」と考えてよいのかもしれません。

下腿周径

下腿周径は「最大下腿周径」と「最小下腿周径」の 2 つに分類されます。一般的には「最大下腿周径」を『前腕周径』として扱います。

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印刷推奨:A4/余白 10–12 mm/ヘッダ・フッタ非表示。院内ルールに従って運用してください。

FAQ(よくある質問)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

同じ部位は何回測れば良いですか?

基本は 2 回測定して平均値を採用。差が大きい場合は 3 回目を追加し、外れ値を除外します。測定者・器具・体位は同一条件に固定します。

どれくらいの変化が“臨床的に意味あり”ですか?

測定誤差(者間差・器具・体位)を加味し、目的に応じた閾値で判断します。一般的には ± 5 mm 程度までは誤差域となることが多く、± 10 mm 以上の変化は臨床的検討の対象にします。単発値ではなく経時変化(Δ)で確認してください。

立位と座位、どちらで測れば良いですか?

目的に合わせて選択し、以後は同一条件で固定します。例:車いすフィッティング→座位(座面高・背支持・足部接地を固定)、体格評価→立位。条件は記録欄に明記します。

ランドマークが取りづらいときの対処は?

代替ランドマークをチームで合意し、定義を記録。触診→マーキング→再確認の 3 ステップで誤差を抑えます。必要に応じて位置写真を院内保管します。

安全面での中止基準はありますか?

めまい・気分不快・疼痛増悪・血圧/SpO2 異常などが出現した場合はいったん中止し、休息・再評価を行います。施設 SOP と主治医指示を優先してください。

参考文献

  1. ISO/TC 173. Wheelchair and Wheelchair Seating standards – Guide (rev. 2023-12). PDF
  2. ISO 7250-1:2017. Basic human body measurements for technological design — Part 1: Body measurement definitions and landmarks. ISO
  3. World Health Organization. Guidelines on the provision of manual wheelchairs in less resourced settings. 2008(および 2023 改訂版の要点)。 NCBI2023 概説PDF
  4. Owens J, et al. Seating and Wheelchair Evaluation. StatPearls. 2023. Link
  5. NCART. A Clinical Application Guide to Standardized Wheelchair Seating Measures of the Body and Support Surfaces. 2013. PDF
  6. Yamada S, et al. Reliability of anthropometric landmarks on body surface for estimating pelvic incidence without lateral X-ray. Environ Occup Health Practice. 2021. Link
  7. RESNA Position Paper. Application of Ultralight Manual Wheelchairs. 2012. PDF

E-E-A-T(信頼性の担保)

  • 一次情報の優先: 用語・座標系は ISO 16840-1、ランドマーク定義は ISO 7250-1 を参照。臨床運用は StatPearls・NCART・RESNA 文書で補完。
  • 再現性の配慮: ランドマークの者間差(特に PSIS/肩峰/尾骨)に注意し、2 回測定の平均と条件固定を徹底(本文手順参照)。
  • 更新方針: ISO 16840-1 は改訂進行中のため、版更新時に用語・表記を点検して本文へ反映。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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