PT/OT/STの喀痰吸引ガイド2025

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呼吸器系
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この記事の内容
  1. この記事は「PT/OT/STの喀痰吸引」をキーワードに内容を構成しています。
  2. 本記事は、病棟・在宅・施設で吸引に関わる PT/OT/ST 向けに、最新ガイドラインに沿った「安全で再現性の高い吸引」をまとめました。
  3. 理学療法士の強みである呼吸理学療法のアセスメントと結びつけ、気管吸引・口腔内吸引・鼻腔内吸引の実施フロー、推奨吸引圧・時間、閉鎖式/開放式の選択、合併症対策、記録までを一気通貫で提示します。UMIN SQUARE
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理学療法士として以下の経験と実績を持つリハビリくんが解説します♪

リハビリくんの実績
  1. rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設
  2. 2025 年 9 月時点:190 記事公開(月間 3 万 PV)
  3. 実務経験(医療機関、介護福祉施設、訪問リハビリ等)
  4. 講師活動(脳卒中、褥瘡等をテーマに複数回講演)
  5. 脳卒中 認定理学療法士
  6. 褥瘡 創傷ケア 認定理学療法士
  7. 3 学会合同呼吸療法認定士
  8. 福祉住環境コーディネーター 2 級
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厚生労働省通知では、理学療法・作業療法・言語療法の安全な遂行のために必要な喀痰吸引は、適切な教育と医師の指示・連携のもとで PT/OT/ST が実施可能と整理されています。

現場では施設 SOP に基づき、適応・禁忌・報告連絡の基準を明確化し、訓練中に必要となる吸引をためらわず安全に提供できる体制を整えます。訓練の前後で気道クリアランスと酸素化を再評価し、非侵襲的排痰で代替できるかも常に検討します。

気管吸引の実施フロー(2023改訂準拠)

改訂ガイドラインは、人工気道を有する成人に対し「アセスメント→感染対策→機器選択→実施→再評価」の順で標準化することを推奨します。

PT/OT/ST は呼吸音・努力呼吸・換気波形・SpO₂・咳嗽力・分泌物性状を統合し、本当に気管吸引が必要か、体位ドレナージや咳介助などで代替できないかを判断します。

実施中は低酸素・徐脈・血圧変動等を監視し、異常時は直ちに中止して酸素化を優先、安定後に再評価します。

ステップ要約

  1. 適応評価 → 他法で代替可否を判断
  2. 準備:標準予防策・必要時N95、無菌/清潔操作、体位最適化、機器設定
  3. 実施:後述の圧・時間を厳守(浅吸引が基本)
  4. 実施中評価:SpO₂/心拍/血圧/波形を連続監視
  5. 実施後評価と記録:効果・合併症・分泌量/性状を記録、継続適応を再判定

圧・時間・深さ・方式:実務の基準

気管吸引は吸引圧 200 mmHg(≒26.6 kPa)以下1 回 15 秒以内を目安に制限します。原則浅吸引とし、効果不十分時のみ深吸引を検討します。

方式は閉鎖式を弱く推奨(施設 SOP と患者条件で選択)します。生理食塩水の routine 注入は非推奨です。必要時の短時間プレオキシジェネーションを検討し、回数は最小限に抑えます。

これらの基準をチェックリスト化してチームで共有すると、再現性と安全性が高まります。

  • 圧:≤200 mmHg(≒26.6 kPa)
  • 時間:1 回 ≤15秒、2 ~ 3 回まで(毎回再評価)
  • 方式:閉鎖式 > 開放式(弱推奨)
  • Saline:routine 使用は避ける/必要時のみ
  • 前処置:必要時にプレオキシジェネーション

口腔内吸引の実施フロー(嚥下・ADL場面)

口腔内吸引は誤嚥予防と換気安定の基盤です。実施前に意識状態・同意・体位・開口可否を確認し、手指衛生→声かけ→カテーテル接続→陰圧 20 kPa(≒150 mmHg)以下を確認します。

奥歯と頬間、舌上・舌縁、前歯部を中心に最小限で行い、咽頭後壁の過刺激は嘔吐反射・誤嚥を招くため回避します。

終了後は外面拭上げ・回路内洗浄を行い、分泌物の量・粘稠度・色調を記録します。必要に応じ口腔清掃・保湿までを一連のケアとして実施します。

鼻腔内吸引の実施フロー

鼻腔吸引は入口でやや上向きに挿入し、すぐ下向きに角度を切り替えて鼻底に沿わせるのがコツです。

通過良好なら 8 ~ 10 cm 到達可能で、抵抗が強い側は避け反対鼻腔から実施します。圧は口腔同様 20 kPa 以下を基本とし、粘膜損傷・出血に留意します。

終了後は状態確認と吸引物の記録、必要に応じ保湿・清拭を行います。嚥下訓練や食事前後に最小侵襲で頻度を最小化し、再評価を徹底します。

口腔ケア+吸引の臨床的意義

系統的な口腔ケアは高齢者施設での肺炎発症・発熱日数・肺炎死の低減に寄与します。PT/OT/ST は訓練前後のルーティンとして口腔評価と簡易清掃を組み込み、必要時に口腔内吸引を併用します。

嚥下機能評価や姿勢調整とも連携し、摂食嚥下評価(PT視点)呼吸困難の評価の記事と合わせて参照すると、誤嚥性肺炎の一次予防・二次予防が実践的に進みます。

合併症とその場の対処

代表的合併症は低酸素血症、徐/頻脈・血圧変動、不整脈、痰血・粘膜損傷、無気肺、頭蓋内圧上昇などです。兆候が出たら即時中止し酸素化を最優先、体位・換気設定を見直して安定化後に再評価します。

繰り返し必要な症例では「吸引バンドル」(必要時吸引、≤200 mmHg、≤15 秒、浅吸引、回路離断最小化、無菌操作、口腔垂れ込み予防)を徹底し、非侵襲的排痰や加温加湿など代替策も併用します。

記録テンプレ

【喀痰吸引 記録】
日時/実施者:
適応(所見):
前処置:前酸素化(FiO₂: )、体位、鎮静/疼痛
方式:開放式/閉鎖式 カテ径:Fr 陰圧:  mmHg(or  kPa)
挿入深さ:浅/(必要時のみ深) 回数: 回(各≤15秒)
分泌物:量(少/中/多)、性状(漿液/粘液/膿性/血性)
モニタ:SpO₂ 前→中→後( %→ %→ %)、脈拍、血圧
合併症/対処:
併用手技:体位ドレナージ/ハフ/咳介助/口腔ケア 等
評価:呼吸努力/音、換気波形、患者反応
指示確認・連携:医師/Ns/他職種

よくある質問(FAQ)

Q1. 吸引は定時で回るべきですか?

→ いいえ、必要時吸引が原則です。呼吸音・換気波形・分泌物所見で判断します。

Q2. 毎回酸素を上げますか?

→ 低酸素リスクが高い場合に短時間のプレオキシジェネーションを検討します。

Q3. 生理食塩水を流してから吸引した方が取れますか?

→ routine使用は推奨されません。必要時のみ慎重に実施します。

まとめ

本記事では、PT/OT/STが現場で安全に喀痰吸引を行うための判断基準と手順を統一しました。気管吸引は「必要時吸引」を原則に、閉鎖式の弱推奨、圧≤200mmHg・時間≤15秒・浅吸引を基本とします。口腔・鼻腔は圧≤20kPaで最小侵襲に行い、嚥下訓練や口腔ケアと一体で肺炎予防を図ります。実施前後の評価、合併症への即応、SOAP記録の標準化を徹底することで、チーム内の再現性と患者安全性が向上します。

参考文献

  1. Blakeman TC, et al. AARC Clinical Practice Guidelines: Artificial Airway Suctioning. Respir Care. 2022;67(2):258–271. https://doi.org/10.4187/respcare.09548
  2. Jongerden IP, et al. Open vs closed suction systems in ventilated ICU patients: meta-analysis. Crit Care Med. 2007;35(1):260–270. https://doi.org/10.1097/01.CCM.0000251126.45980.E8
  3. Yoneyama T, et al. Oral care reduces pneumonia in nursing homes: RCT. J Am Geriatr Soc. 2002;50(3):430–433. https://doi.org/10.1046/j.1532-5415.2002.50106.x
  4. 日本呼吸療法医学会. 気管吸引ガイドライン2023〔改訂第3版〕(成人で人工気道を有する患者のための). 2023-12-27. PDF / Minds掲載情報
  5. 厚生労働省. 喀痰吸引等研修テキスト:口腔・鼻腔吸引の手順ほか. 口腔・鼻腔の手順(PDF)

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