体圧分散マットレス導入後72時間|再評価・見直し・記録

臨床手技・プロトコル
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体圧分散マットレス導入後は「同じ条件」で再評価する

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体圧分散マットレスは、導入した時点で「合っている」と判断するのではなく、導入後も皮膚・体位変換・快適性・睡眠・離床への影響を確認して見直します。本記事では、支持面を導入したあとに「継続してよいか」「運用条件を修正するか」「支持面そのものを見直すか」を判断する方法を整理します。

なお、72時間はガイドラインで定められた一律の適合判定期限ではありません。本記事では、導入後早期の変化を同じ条件で追いやすくするため、0–24時間、24–48時間、48–72時間に分けたrehabilikunblog独自の実務フレームとして使用します。皮膚損傷の進行や安全上の問題があれば、72時間を待たずに対応してください。

種類や方式から「何を選ぶか」は別記事で扱い、本記事は導入後の再評価と記録に絞ります。後半には、導入当日から72時間までを1枚で追えるA4記録シートPDFも掲載しています。

導入後72時間は「継続・条件修正・見直し」の3つに分ける

導入後は、時間だけを追うのではなく、同じ条件で観察した結果から次の行動を決めることが重要です。皮膚だけが改善しても、睡眠や離床が大きく悪化していれば、その条件が本人に適しているとは言い切れません。

体圧分散マットレス導入後72時間の再評価フロー。0~24時間、24~48時間、48~72時間で状態を確認し、継続・条件修正・支持面見直しを判断する流れ
体圧分散マットレス導入後72時間の再評価フロー。72時間は一律の適合判定期限ではなく、問題があればその時点で再評価します。

発赤、水疱、皮膚損傷、強い疼痛、転落リスクなど明らかな問題が生じた場合は、下表の時間区分を待たずに評価・対応します。

※スマホでは表を左右にスクロールできます。

体圧分散マットレス導入後72時間の実務上の再評価フレーム
タイミング 確認すること 判断 次の一手
0–24時間 皮膚反応、沈み込み、ずれ、体位変換、端座位・離床、安全性 導入直後から新しい問題が出ていないか 設定・体位・ベッド条件・離床手順を確認する。安全上の問題や皮膚悪化があれば早期に見直す
24–48時間 皮膚所見の推移、疼痛、快適性、睡眠、体位変換、離床状況 皮膚保護と活動・快適性が両立しているか 運用条件やケア条件を修正し、同じ観察軸で再評価する
48–72時間 皮膚所見、睡眠・快適性、離床、再発する問題、介助量 現在の条件で継続できるか 継続条件を記録する。問題が残る場合は運用・ケア・支持面のどこを見直すか決める

重要:「72時間まで様子を見る」という意味ではありません。早期の皮膚・組織損傷、安全性低下、強い疼痛などが認められた場合は、その時点で除圧方法や体位変換、支持面を含めて再評価します。

導入当日に固定する3条件

経時変化を比較するには、毎回の条件をできるだけそろえる必要があります。少なくとも基本体位・ベッド条件・離床条件を記録しておくと、「支持面の問題」なのか「運用条件の違い」なのかを切り分けやすくなります。

  1. 基本体位
    仰臥位・側臥位の方法、クッション位置、踵の除圧方法などを記録します。
  2. ベッド条件
    背上げ角度、骨盤の滑り、足側支持など、ずれに影響する条件をそろえます。
  3. 離床条件
    ベッド高さ、端座位、足底支持、立ち上がり・移乗方法を記録します。

「条件を固定する」とは、患者の状態にかかわらず同じ姿勢を続けることではありません。必要な変更を行った場合に、何を変えたかを記録して比較できるようにするという意味です。

導入直後に確認するポイント

導入直後は、臥位での圧分散だけではなく、体位変換や離床、安全性まで確認します。支持面の性能が高くても、本人の動きや介助方法と合わなければ運用上の問題につながります。

導入直後のセットアップ確認
観点 確認すること 記録する条件
沈み込み 骨突出部の支持、過度な沈み込み、底付き、姿勢の崩れ 体位、設定、クッション、踵の除圧
ずれ 背上げ時の頭側・足側への滑り、骨盤後傾 背上げ角度、足側支持
体位変換 寝返りや介助による体位変換が行いやすいか 介助量、体位、使用した補助具
端座位・離床 端座位での沈下や滑り、足底支持、立ち上がり・移乗への影響 ベッド高さ、介助量、離床方法
機器安全 ホース・電源・アラーム・ベッドとの適合 設置条件、ベッド周囲の動線
転落・挟み込み マットレスの厚さや端部の沈下、ベッド柵との位置関係 柵、センサー、見守り条件

再評価の前に導入前データを残す

導入後だけ観察しても、変化したかどうかは判断できません。少なくとも皮膚、活動・移動能力、ケア条件、悪化因子を導入前に記録しておきます。

導入前に残す最小情報
項目 確認内容 記録例
皮膚・組織 発赤、疼痛、硬結、水疱、既存褥瘡など 部位、所見、皮膚反応
活動・移動 寝返り、端座位、移乗、立位、離床 介助量、回数、難しい動作
体位変換 自力での体位変換、介助方法、実施状況 方法、頻度、介助量
悪化因子 湿潤、ずれ、疼痛、低活動、睡眠への影響など 原因と生じやすい場面

問題が出たら「運用・ケア・支持面」を切り分ける

問題が出たからといって、すべてを支持面の性能だけで説明することはできません。運用条件、ケア条件、支持面そのものを分けて確認すると、何を変えるべきか判断しやすくなります。

体圧分散マットレスが合わないときの切り分け
確認する場所 対応
運用条件 体位、背上げ角度、離床方法がスタッフごとに異なる 変更した条件を明確にし、同じ観察軸で再評価する
ケア条件 湿潤、しわのあるリネン、体位変換不足、クッション配置など 修正可能なケア要因を見直す
支持面 本人の体格・状態・移動能力に合わない、皮膚反応や快適性の問題が続く 支持面の設定または別の支持面を含めて再検討する

ただし、皮膚・組織損傷が進んでいる場合や安全性に問題がある場合は、「まず72時間運用してから支持面を考える」という順序にはしません。状態に応じて早期に多職種で評価し、除圧方法・体位変換・支持面を同時に見直します。

再評価で迷いやすい5つの場面

支持面の再評価では、「良い・悪い」よりも何が改善し、何が悪化したかを分けて考えることが重要です。

仙骨部の発赤が続く

体位、背上げによるずれ、湿潤、クッション配置、支持面の設定などを確認します。早期の皮膚・組織損傷が疑われる場合は、傷害部への圧を避ける方法を優先し、72時間を待たずに再評価します。

離床しにくくなった

沈み込みにより寝返り・端座位・立ち上がりが難しくなっていないか確認します。ベッド高さや足底支持などの離床条件を修正しても活動性が大きく低下する場合は、支持面との適合も再検討します。

睡眠や快適性が悪化した

疼痛、揺れ、作動音、体位変換方法など、睡眠を妨げる要因を切り分けます。褥瘡予防では皮膚だけでなく、快適性や睡眠を含めて体位変換計画を個別化することが重要です。

汗・失禁などで湿潤が続く

支持面だけでなく、失禁管理、リネン、皮膚ケア、マイクロクライメットに影響する条件を確認します。支持面と皮膚の間に不要な寝具を重ねることで性能を妨げていないかも確認します。

皮膚は安定したが活動性が落ちた

皮膚保護の効果だけで継続を決めず、寝返り、起き上がり、移乗、離床などへの影響を確認します。本人の褥瘡リスクが高い場合は圧再分配を優先すべき場面もあるため、単純に柔らかい・硬いだけで判断せず、リスクと活動性を合わせて検討します。

体位変換は「2時間固定」ではなく個別化する

体圧分散マットレスを使用していても、支持面だけで体位変換を完全に置き換えることはできません。一方、すべての患者に同じ時間間隔を機械的に適用するのでもなく、活動・移動能力、自力での体位変換、皮膚・組織耐性、全身状態、快適性、睡眠、使用中の支持面などを踏まえて個別に考えます。

国際ガイドラインでは、適切な体圧分散支持面を使用している褥瘡リスク患者について2時間または3時間ごとの体位変換を選択肢として示していますが、推奨は条件付きでエビデンスの確実性は非常に低く、臨床評価に基づく個別化が前提です。

記録は「条件・変化・次の判断」を残す

交代制で判断をそろえるには、「マットレス良好」のような評価だけでは不十分です。どの条件で、何が起き、次にどうするかを残します。

SOAPで残す再評価の最小項目
項目 記録する内容
S 疼痛、違和感、眠りにくさ、不安など
O 皮膚所見、体位変換、離床、設定、体位、背上げ角度など
A 改善した点、残る問題、支持面・運用・ケアのどこに原因が考えられるか
P 継続、条件修正、支持面見直し、再評価時期

申し送りは1行で条件まで伝える

申し送りの記載例
判断 記載例
継続 「仰臥位+踵除圧、背上げ20°で仙骨部の新規皮膚所見なし。離床3回実施でき、現条件を継続」
条件修正 「背上げ30°で前滑り増加。20°+足側支持へ変更し、皮膚と端座位を再評価」
支持面見直し 「設定・体位・湿潤対策を見直したが仙骨部の皮膚所見が改善せず、支持面を含め再検討」

A4記録シートで72時間の変化を追う

導入当日の条件から0–24時間、24–48時間、48–72時間までを同じ用紙で追いたい場合は、A4記録シートを使用できます。72時間を一律の交換基準として使用するのではなく、同じ観察軸で変化を比較するための記録用紙として活用してください。

PDFを開く(ダウンロード)

導入条件と0–24時間、24–48時間、48–72時間の変化を1枚で整理できます。

PDFプレビューを開く

よくある質問(FAQ)

Q1. 72時間経過すれば、マットレスが適合していると判断できますか?

72時間は一律の適合判定基準ではありません。本記事では、導入後早期の変化を同じ条件で比較する実務上の観察期間として使用しています。72時間で問題がなくても、病状、活動性、皮膚状態、ケア条件などが変われば再評価が必要です。

Q2. 発赤が出ても72時間までは様子を見てよいですか?

いいえ。早期の皮膚・組織損傷が疑われる所見や疼痛などがあれば、72時間を待たずに評価します。傷害部への圧を減らす方法、体位変換、ケア条件、支持面などを見直してください。

Q3. 体位変換は2時間ごとに固定すればよいですか?

一律固定ではなく、活動・移動能力、自力での体位変換、皮膚・組織耐性、全身状態、快適性、睡眠、使用中の支持面などを踏まえて個別化します。支持面を使用していても体位変換が不要になるわけではありません。

Q4. 皮膚は良くなりましたが、離床しにくくなりました。交換すべきですか?

直ちに交換が必要とは限りません。まずベッド高さ、足底支持、端座位、背上げ条件などを確認します。ただし条件を調整しても活動性が大きく低下する場合は、褥瘡リスクとのバランスを踏まえて支持面そのものも再検討します。

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参考文献

  1. Guideline Governance Group. Support Surfaces. International Guideline. Updated 2025 Feb 25. 公式ページ
  2. Guideline Governance Group. Repositioning. International Guideline. Updated 2025 Feb 25. 公式ページ
  3. Shi C, Dumville JC, Cullum N, Rhodes S, Leung V, McInnes E. Reactive air surfaces for preventing pressure ulcers. Cochrane Database Syst Rev. 2021;5(5):CD013622. DOIPubMed
  4. Shi C, Dumville JC, Cullum N, Rhodes S, McInnes E. Foam surfaces for preventing pressure ulcers. Cochrane Database Syst Rev. 2021;5(5):CD013621. DOIPubMed
  5. 創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン策定委員会. 2 褥瘡診療ガイドライン(第3版). 日皮会誌. 2023;133(12):2735-2797. PDF
  6. Wu Z, Song B, Liu Y, Zhai Y, Chen S, Lin F. Barriers and facilitators to pressure injury prevention in hospitals: A mixed methods systematic review. J Tissue Viability. 2023;32(3):355-364. DOIPubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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