膝の整形外科テスト一覧|最小セットと順番【図解・記録シート付き】

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膝の整形外科テストは「全部やる」より、仮説に合わせて絞る

膝の整形外科テストは、すべてを順番に実施するものではありません。まず受傷機転・荷重可否・腫脹・可動域・疼痛部位から仮説を立て、骨折や感染など先に共有すべき所見を確認したうえで、半月板・十字靱帯・側副靱帯・膝蓋大腿のうち必要なテストだけを選びます。

この記事では、成人の一般臨床で「何から確認し、どこまでテストし、何を1行で残すか」を整理します。細かな手技は子記事へ分け、ここでは最小セット・使い分け・失敗回避・記録に集中します。本文には最小セット選択フローの図版と、印刷用PDF・編集用ExcelのA4記録シートv2も掲載しています。

5分フロー|安全確認 → 基本所見 → 疑う領域へ分岐する

全員に同じスペシャルテストを一通り行うのではなく、安全確認と基本所見をそろえたあと、訴えや所見から疑う領域へ分岐するのが基本です。下の図は、テストのやりすぎを避けながら再評価までつなげるために、rehabilikunblogで整理した実務上の選択フローです。

膝の整形外科テストの最小セット選択フロー。安全確認、基本所見、疑う領域への分岐、1行記録の順に整理
膝の整形外科テストは、安全確認と基本所見をそろえたあと、半月板・ACL・PCL・MCL/LCL・膝蓋大腿など疑う領域へ分岐し、左右差・角度・疼痛・終末感を記録します。
  1. 安全確認:骨折、感染、著明な変形・不安定性など、テストより先に共有すべき状態を確認する
  2. 基本所見:受傷機転、疼痛部位、腫脹・水腫、可動域、荷重可否を確認する
  3. 疑う領域へ分岐:半月板、ACL、PCL、MCL/LCL、膝蓋大腿などから必要なテストを選ぶ
  4. 1行で記録:左右差、角度、疼痛、終末感、判定できなかった理由を残す

受傷機転や症状からACL損傷など特定の病態が強く疑われる場合は、安全確認後に該当領域へ進んで構いません。図の項目を上からすべて機械的に実施する必要はありません。

最小セット早見表|疑う領域ごとに1〜2個から始める

重要なのはテスト数ではなく、病歴・基本所見とテスト結果が整合するかです。単一テストだけで病態を確定せず、まず少数の所見から仮説を絞ります。

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膝の整形外科テスト:病態別の最小セットと記録
疑う領域 まず確認 必要時に追加 1行記録
骨折・レッドフラッグ 外傷機転・荷重可否・骨性圧痛 急性外傷ではOttawa Knee Ruleの適用可否を確認 受傷機転、荷重、骨性圧痛、共有の要否
水腫・腫脹 視診・触診・水腫の確認 熱感、周径、膝蓋跳動など 水腫の程度、熱感、疼痛、評価を制限した理由
半月板 関節裂隙痛・機械症状 McMurray / Thessaly / Apleyから条件に合うもの 内外側、再現痛、クリック・ロッキング、実施条件
ACL Lachmanなどで前方移動を確認 前方引き出し / Pivot shiftなど 健側比、前方移動、終末感、疼痛・防御
PCL Sagging徴候+後方引き出し Quadriceps active testなど 後方落ち込み、後方移動、終末感、左右差
MCL / LCL 外反・内反ストレス(20〜30°前後) 伸展位(0°)でも確認 角度、方向、開大、終末感、疼痛部位
膝蓋大腿 スクワット・階段で前面膝痛が再現するか 他の前面膝痛を起こす病態の除外 疼痛部位、再現動作、角度、左右差

最初に外すこと|骨折・感染・著明な不安定性はテストより先に共有する

急性膝外傷では、スペシャルテストより先に画像評価や医師への共有を優先すべき状態がないかを確認します。荷重困難、明らかな変形や著明な不安定性、急速な腫脹、発熱を伴う熱感・発赤、強い安静時痛などがあれば、疼痛を再現するテストを繰り返す必要はありません。

急性膝外傷で確認するOttawa Knee Rule

Ottawa Knee Ruleは、急性膝外傷でX線撮影が必要かを判断するために開発された臨床意思決定ルールです。成人の急性膝外傷では、以下のいずれかがある場合に膝X線撮影を検討する基準として用いられます。

  • 55歳以上
  • 腓骨頭に圧痛がある
  • 膝蓋骨だけに限局した圧痛がある
  • 膝を90°まで屈曲できない
  • 受傷直後と評価時の両方で4歩の荷重歩行ができない

これは骨折に対する画像検査の判断ルールであり、感染や靱帯損傷、半月板損傷を除外するルールではありません。適用対象と施設の診療手順を確認し、必要時は医師へ共有します。

関節水腫・腫脹|水腫だけで病態や実施可否を決めない

水腫は膝関節内の病態を考える重要な所見ですが、水腫の有無だけで損傷部位やテスト実施可否を決めることはできません。受傷機転、疼痛、荷重可否、熱感、可動域などと合わせて判断します。

  • 腫脹と疼痛が強い:疼痛を増やすテストを繰り返さず、確認できた範囲と中止理由を記録する
  • 左右比較が難しい:無理に陽性・陰性へ分類せず、判定できなかった条件を残して再評価する
  • 水腫を経過で追う:施設内で表記方法を統一し、できるだけ同じ条件で再評価する

半月板(McMurray / Thessaly / Apley)|単独テストではなく所見の組み合わせで読む

半月板損傷を疑うときは、関節裂隙部の疼痛、受傷機転、引っかかり・ロッキングなどの機械症状と、誘発テストの結果を組み合わせます。McMurray、Thessaly、Apleyなどはいずれも、単独で半月板損傷を確定するためのテストではありません。

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半月板テストの使い分けと記録
テスト 選びやすい条件 確認する所見 記録
McMurray 非荷重位で評価したい 関節裂隙部の疼痛、クリックなど 内外側、疼痛・クリック、出現した範囲
Thessaly 安全に荷重・回旋できる 荷重回旋時の関節裂隙部症状 荷重条件、回旋方向、疼痛部位
Apley圧迫 腹臥位で追加確認したい 圧迫・回旋による症状 疼痛部位、回旋方向、再現性

疼痛が強く荷重できない症例へThessalyを無理に行う必要はありません。また、真のロッキングや著明な伸展制限などがある場合は、テストを増やすより共有を優先します。

ACL / PCL|移動量だけでなく左右差と終末感を残す

十字靱帯の評価では、テスト名の陽性・陰性だけではなく、前後方向の移動量、健側との差、終末感、疼痛や防御収縮を記録します。単独テストだけで損傷を確定せず、受傷機転や他の所見と統合します。

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ACL・PCLテストの最小セット
疑う領域 まず確認 追加候補 記録
ACL Lachman 前方引き出し、Pivot shiftなど 前方移動、健側比、終末感、疼痛・防御
PCL Sagging徴候+後方引き出し Quadriceps active testなど 後方落ち込み、後方移動、健側比、終末感

LachmanはACL評価で広く用いられるテストですが、「Lachmanが陰性だからACL損傷はない」「Lachmanだけで十分」とは判断しません。急性期では疼痛、腫脹、防御収縮によって評価条件が崩れることもあるため、判定できなかった場合はその条件自体を記録します。

MCL / LCL(外反・内反)|20〜30°前後と0°を分けて記録する

側副靱帯を評価するときは、膝軽度屈曲位(20〜30°前後)と伸展位(0°)の所見を分けて記録します。軽度屈曲位では側副靱帯を中心とした内外側安定性を確認し、伸展位でも明らかな開大がみられる場合は、より広範な支持組織の損傷を考える材料になります。

ただし、0°で開大したという所見だけから損傷組織を断定することはできません。健側との比較、疼痛部位、終末感、受傷機転を合わせて共有します。

膝蓋大腿関節(前面膝痛)|グラインドより動作で痛みが再現するかを見る

膝蓋大腿痛を疑うときは、局所の圧迫テストだけで判断せず、膝蓋骨周囲または膝蓋骨後面の痛みが、スクワット・階段など膝屈曲位で負荷される動作によって再現するかを確認します。前面膝痛を起こす他の病態を除外することも必要です。

  • まず確認:スクワット、階段昇降などで症状が一致するか
  • 記録:疼痛部位、再現した動作、膝屈曲角度、左右差
  • 膝蓋骨不安定性を疑う:不安感が主所見なら、膝蓋大腿痛と同一視せず膝蓋骨不安定性として評価する

Patellar grind testやClarke signのような局所テストだけを、膝蓋大腿痛の最小セットとして扱う必要はありません。

よくある失敗|「陽性・陰性」だけで病態を決めない

膝の整形外科テストで起こりやすい失敗は、テスト数不足よりも1つの結果を強く解釈しすぎることです。陽性・陰性だけで終わらず、「どの条件で、どこに、どのような所見が出たか」を残します。

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膝の整形外科テストで起こりやすい失敗と修正方法
失敗 問題 修正 記録例
レッドフラッグ確認前に誘発テストを始める 画像評価や共有が必要な状態への対応が遅れる 受傷機転・荷重・骨性圧痛・全身所見を先に確認 急性外傷、荷重困難あり。徒手テストより共有を優先
1つの陽性所見で診断する 偽陽性・偽陰性の影響を受ける 病歴・疼痛部位・他所見と整合させる 内側裂隙痛+McMurrayで同部位痛。機械症状はなし
痛みが強いのにテストを追加し続ける 防御収縮が増え、後の所見が読みづらくなる 必要な情報が得られた時点で止める 疼痛増悪のため追加誘発テストは中止、再評価予定
条件を書かず陽性・陰性だけ残す 再評価で比較できない 角度・左右差・終末感・疼痛部位を残す 外反30°:健側比で開大あり、内側痛、終末感は軟

現場の詰まりどころ|所見が曖昧なら「追加」より条件を戻す

所見が曖昧なときに、別のテストを次々と追加しても判断しやすくなるとは限りません。まず姿勢、疼痛、荷重条件、左右比較、検査角度がそろっているかを確認します。

  • ページ内アンカー:よくある失敗へ戻り、単独テストへ依存していないか確認する
  • ページ内アンカー:10秒チェックで再評価条件をそろえる

回避の手順チェック|10秒で評価条件をそろえる

  • 骨折・感染・著明な不安定性など、先に共有すべき所見を確認した
  • 受傷機転、荷重可否、疼痛部位、腫脹を確認した
  • 疑う病態に必要なテストだけを選んだ
  • 単一テストの陽性・陰性だけで診断していない
  • 左右差、角度、終末感など再評価できる条件を残した
  • 疼痛や防御収縮で判定できない場合は、判定できなかった理由を残した

記録の型|角度・左右差・症状・終末感を1行で残す

記録の目的は「陽性だった」と残すことではなく、次回も同じ条件で比較できることです。病態ごとに最低限残す内容を固定します。

  • 骨折・レッドフラッグ:受傷機転、荷重可否、骨性圧痛、共有の要否
  • 水腫:程度、熱感、疼痛、検査を制限した理由
  • 半月板:内・外側、再現痛、クリック・ロッキング、実施条件
  • ACL:前方移動、健側比、終末感、疼痛・防御
  • PCL:後方落ち込み、後方移動、健側比、終末感
  • MCL / LCL:角度、方向、開大、終末感、疼痛部位
  • 膝蓋大腿:疼痛部位、スクワット・階段など再現動作、角度

1行記録の例

例:右膝外反ストレス30°で健側比の内側開大あり、内側部痛を再現、終末感は軟。0°では明らかな開大なし。

このように「どの条件で・どちらと比べて・何が起きたか」まで残すと、再評価と多職種共有に使いやすくなります。

膝の整形外科テスト記録シートv2|PDF・Excelをダウンロード

膝の整形外科テストを同じ条件で記録しやすいように、A4 1枚の「膝の整形外科テスト記録シート v2」を用意しました。患者情報、評価前に固定する項目、仮説別の最小セット、優先仮説・共有事項、再評価メモを1枚にまとめています。

記録シートは確定診断を行うための用紙ではなく、安全確認・仮説・所見・再評価条件をそろえて共有するための記録補助として使用してください。全部のテストを埋める必要はなく、疑う領域に絞って記録します。

用途に合わせて選べます

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よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。

Q1. 痛みや腫れが強い急性期は、どこまでテストしてよい?

すべてのテストを実施する必要はありません。まず骨折・感染など先に共有すべき状態、荷重可否、腫脹、可動域を確認します。疼痛や防御収縮が強く判定条件がそろわない場合は、誘発テストを追加せず、判定できなかった理由と再評価条件を残します。

Q2. 半月板はMcMurrayとThessalyのどちらを優先すべき?

一律にどちらかを優先するのではなく、荷重できるか、疼痛が強くないか、どの姿勢なら安全に評価できるかで選びます。McMurray、Thessaly、Apleyなどの単独テストだけで半月板損傷を確定せず、関節裂隙痛や機械症状、受傷機転と組み合わせて判断します。

Q3. Lachmanと前方引き出しは、どちらを優先すべき?

LachmanはACL評価で広く使用され、前方移動と終末感を左右比較するテストの1つです。ただしLachmanだけでACL損傷の有無を確定するものではありません。疼痛、防御収縮、受傷機転、他のACLテストなどを含めて判断します。

Q4. 外反・内反ストレスは0°と30°の両方が必要?

目的が異なるため、必要に応じて両方を確認します。20〜30°前後では側副靱帯を中心とした内外側安定性を確認し、伸展位でも明らかな開大がある場合は、より広範な支持組織の損傷を考える材料になります。角度ごとに結果を分けて記録してください。

Q5. 前面膝痛ではPatellar grind testを必ず行う?

必須ではありません。膝蓋大腿痛では、膝蓋骨周囲・後面の痛みがスクワットや階段など膝屈曲位で負荷される動作によって再現するかを重視します。局所の圧迫テストだけで膝蓋大腿痛と判断せず、他の前面膝痛の原因も確認します。

次の一手|全体像を広げるか、ACLテストを深掘りする

膝の整形外科テストは、テスト名を増やすより、仮説に合わせて選び、同じ条件で記録・再評価することが重要です。次は目的に合わせて進んでください。


参考文献

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著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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