ODI の評価方法|採点・欠損対応・記録シート PDF 付き
ODI( Oswestry Disability Index )は、腰痛による生活障害を 0〜 100 %で共有できる代表的な PROM です。この記事で決めることは、① ODI を使う場面、② 欠損や複数回答を含む採点のしかた、③ 得点を記録と次回介入にどうつなげるか、の 3 点です。
一方で、このページは RDQ・ODI・PSFS の総論を深掘りする記事ではありません。目的は、ODI を “同じ条件” で回せる状態にすることです。比較で迷う論点は親記事へ逃がしつつ、ここでは実施条件、採点、解釈、記録、配布用 PDF に絞って整理します。
採点式だけ覚えても、版が混ざる、説明が毎回違う、記録が残らない、という状態では再評価が安定しません。評価の型は個人の努力だけで身につくとは限らず、教育体制や相談環境の影響も受けやすいです。
学び方や環境の整え方も一緒に見直したい方へ 教育体制がない、相談相手が少ない、見本となる記録に触れにくいと感じるなら、評価の型とあわせて働き方の整理もしておくと動きやすくなります。 PT キャリアガイドを見る
ODI で何がわかるか|腰痛の “生活障害” を % で共有する
ODI は、腰痛が日常生活にどの程度影響しているかを、複数の生活場面を通して割合で示す尺度です。痛みの強さだけでは見えにくい「座る・立つ・歩く・眠る・外出する」といった困りごとを、チームで共有しやすい数字に変えられるのが強みです。
向いているのは、術前後や外来フォローなどで、生活障害の変化を “説明できる形” で追いたい場面です。選び分けから整理したい場合は 腰痛 PROM の選び方 を先に見ておくと、尺度の固定がしやすくなります。
ODI を選ぶ場面| RDQ ・ PSFS との役割分担をここで決める
ODI は “割合(%)で説明したい腰痛” に向きます。短時間で回収したいなら RDQ、本人の最重要課題をそのまま目標に落としたいなら PSFS が向きやすいため、ODI 記事では「いつ ODI を選ぶか」だけを押さえれば十分です。
迷ったら、腰痛の生活障害は RDQ か ODI を 1 つ固定し、必要時だけ PSFS を追加します。固定項目式で現在地を共有し、個別課題は PSFS で補う、という分担にすると再評価が続きやすくなります。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 比較軸 | RDQ | ODI | PSFS |
|---|---|---|---|
| 向いている場面 | 手早く生活障害を追いたい | %で説明し、経過を共有したい | 本人の最重要課題を追いたい |
| スコア表現 | 0〜 24 点 | 0〜 100 % | 活動ごとの 0〜 10 |
| 運用のコツ | Δ と生活場面メモを残す | 高い領域を介入計画に翻訳する | 活動を “行動+条件” に具体化する |
| 次に読む | RDQ のやり方 | 腰痛 PROM の選び方 | PSFS のやり方 |
実施手順|版・説明・回収条件を固定する
ODI の価値は、点数そのものより “比較できる条件” を揃えられるかで決まります。特に大事なのは、版(バージョン)、配布時の説明、回収の流れを毎回そろえることです。
ここで注意したいのは、施設都合で設問や教示を書き換えないことです。使う版に従って運用し、想起期間や説明文を勝手に変えないようにすると、再評価の比較可能性を守りやすくなります。
| 固定するもの | おすすめの運用 | 記録メモの例 |
|---|---|---|
| 版( ver ) | 施設で 1 版に統一し、混在させない | ODI ver:__ |
| 教示文 | 使用する版の記載に従う。独自改変はしない | 教示:版どおりに説明 |
| 回答方法 | 自記入が原則。代読は可、選択は本人 | 代読の有無、介助の有無 |
| 回収導線 | 受付・病棟・外来で回収ポイントを固定 | 回収日、次回再評価日 |
採点方法| 0〜 5 点 → 0〜 100 %(欠損・複数回答を含む)
ODI の採点は、各セクションを 0〜 5 点で合計し、回答した項目数に応じた満点で割って 100 を掛けます。実務で迷いやすいのは、未回答と複数回答の扱いです。
まず、未回答があるときは分母を「回答したセクション数 × 5」に合わせます。さらに、1 セクション内で複数の選択肢に印がある場合は、原則として高い点を採る扱いにしておくとブレません。
| ステップ | やること | 例 |
|---|---|---|
| 1 | 各セクションを 0〜 5 点で合計する | 合計 20 点 |
| 2 | 分母=回答セクション数 × 5 を決める | 10 セクション回答 → 50 / 9 セクション回答 → 45 |
| 3 | (合計 ÷ 分母)× 100 で % 化する | 20 ÷ 50 × 100 = 40 % |
| 欠損例 | 1 セクション欠損なら分母 45 で計算する | 20 ÷ 45 × 100 = 44.4 % → 44 % |
| 複数回答 | 1 セクションで 2 つ以上に印がある場合は高い点を採る | 2 点と 3 点に印 → 3 点として扱う |
解釈|重症度分類と変化量の読み方を固定する
ODI は、得点が高いほど生活障害が強い状態です。まずは重症度の帯で “現在地” を共有し、次に変化量がどの程度あるかを見ます。絶対値と Δ を分けて考えると、説明がかなり通しやすくなります。
変化量は研究や対象集団で幅がありますが、臨床では 10 点前後を最初の目安にしつつ、より保守的には 12〜 13 点前後も意識しておくと解釈が安定します。小さな変化は、痛み指標や機能所見と合わせて読むのが実務的です。
| ODI(%) | 重症度 | 生活像の目安 |
|---|---|---|
| 0〜 20 | 最小〜軽度 | 多くの活動は可能だが、負荷の高い作業や長時間同一姿勢で悪化しやすい |
| 21〜 40 | 中等度 | 家事・仕事・趣味に明らかな制限がある |
| 41〜 60 | 重度 | 多くの ADL に工夫が必要で、参加制約も目立つ |
| 61〜 80 | 著明( crippling ) | 生活全般の制限が強く、痛みが前景に出やすい |
| 81〜 100 | 極めて高い | 回答内容や条件の再確認も含めて再評価したい帯 |
| 見方 | 目安 | 臨床での使い方 |
|---|---|---|
| 絶対値 | 重症度分類で把握 | 現在の生活障害の強さを共有する |
| 変化量( Δ ) | 10 点前後、保守的には 12〜 13 点前後も意識 | 意味のある改善・悪化かを考える |
| 内訳 | 高い領域を 1 行で残す | 次回介入の焦点を決める |
スコアを介入に落とす|高い領域を “行動” に翻訳する
ODI は合計点だけ残すと、次の介入が決まりません。高い領域を 1 つ選び、「何ができないか」「どの条件で悪化するか」「次に何を変えるか」に翻訳すると、点数が介入の言葉に変わります。
コツは、抽象語で終わらせず、行動と条件まで落とすことです。たとえば “座れない” ではなく “座位 20 分で増悪する” と書けると、次回の判定軸も作りやすくなります。
| 高値になりやすい領域 | まず確認する条件 | 介入の当たり(例) | 次回の判定軸 |
|---|---|---|---|
| 座位・立位の耐性 | 悪化する時間、休止のきっかけ | 姿勢調整、休息戦略、作業配分 | 耐性時間(分)+ ODI の Δ |
| 歩行・移動 | 距離、坂・階段、補助具 | 負荷の段階化、環境調整、曝露計画 | 距離・頻度+ ODI の Δ |
| 睡眠 | 寝返り、起床時痛、中途覚醒 | 寝姿勢、寝具、セルフマネジメント | 中途覚醒回数+起床時痛 |
| 社会生活・役割 | 仕事、家事、趣味で困る作業 | 作業分析、環境調整、段階的復帰 | 実施できた回数・時間+ ODI の Δ |
現場の詰まりどころ|よくある失敗 → 回避の手順
ODI は「難しい尺度」ではなく、「運用がズレやすい尺度」です。特に、版が混ざる、教示が毎回違う、欠損時の分母が統一されていない、合計だけ残して内訳がない、の 4 つで価値が落ちやすくなります。
まずは次の 3 つで “評価が続く状態” に戻します。
・よくある失敗へ
・回避の手順へ
・全体像に戻る:腰痛 PROM の選び方
よくある失敗( NG )と対策
| よくある NG | 何が困るか | 対策(最小) |
|---|---|---|
| 版が混在する | 経時比較が成立しない | 施設で 1 版に固定する |
| 教示文を独自に変える | 前回との比較条件が崩れる | 使用版の説明に合わせる |
| 欠損時の分母が毎回違う | % がズレる | 回答数 × 5 で統一する |
| 合計だけ残して内訳がない | 介入に結びつかない | 高値領域を 1 行で補足する |
| 回収が途切れる | 経過が追えない | 回収場所と再評価日を先に決める |
回避の手順(チェック)
| チェック項目 | OK の目安 | メモ |
|---|---|---|
| 版( ver ) | 配布物が 1 種類に統一されている | ____ |
| 教示文 | 使用版に合わせて毎回同じ説明をしている | ____ |
| 欠損ルール | 回答数 × 5 で計算している | ____ |
| 記録テンプレ | 合計+高値領域+次回焦点が残る | ____ |
| 再評価日 | 初回の時点で次回が決まっている | ____ |
記録・共有の型|カルテに残す最小テンプレ
ODI は「何%だったか」だけでは不十分です。合計、変化量、残っている高値領域、次回の焦点の 4 点をそろえると、申し送りで止まりにくくなります。
まずは下の最小テンプレだけ固定すれば十分です。文言を施設で統一しておくと、担当者が変わっても再評価が続きやすくなります。
| 項目 | 記載例 | ポイント |
|---|---|---|
| 尺度 | ODI( ver:__ ) | 版を残す |
| 合計 | ODI: 38 %(前回 46 %、 Δ − 8 ) | Δ を必ず残す |
| 高値領域 | 座位耐性・睡眠が主訴 | 高い領域を 1 行で |
| 次回の焦点 | 座位 20 → 30 分へ段階化、セルフマネジメント追加 | 介入に直結させる |
記録シート PDF|そのまま使える配布物
ODI の採点と記録を紙でそろえたい方へ向けて、A4 1 枚の記録シート PDF を用意しました。患者情報、固定条件、採点欄、再評価メモを 1 ページでまとめられる構成です。
まずは印刷して使い、施設で必要な欄だけ微調整していくと、評価の再現性を保ちやすくなります。
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よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
ODI の未回答(欠損)があるとき、どう計算しますか?
基本は「回答したセクション数 × 5」を分母にして % 化します。たとえば 1 セクション欠損なら分母は 45 です。欠損が複数ある場合も、まずは回答数に合わせて計算し、必要なら再回答依頼や施設ルールに沿った扱いを追加します。
性生活のセクションが N/A の場合は?
無理に回答させず、欠損として扱って分母を調整する運用が現実的です。大事なのは、その場しのぎではなく、毎回同じルールで処理することです。
1 セクションで複数の選択肢に印があるときは?
原則として高い点を採る扱いにしておくとブレません。複数回答が続く場合は、次回から「最も近い 1 つだけ選ぶ」説明を配布時に明確にします。
再評価はどれくらいの頻度で行いますか?
外来なら 2〜 4 週、入院なら 1〜 2 週など、介入頻度と症状変化に合わせて “先に次回日を決める” と回収が途切れにくくなります。重要なのは頻度そのものより、同じ条件で比較できることです。
何点変われば “意味のある変化” と見ますか?
対象や研究で幅はありますが、臨床では 10 点前後を最初の目安にしつつ、より保守的には 12〜 13 点前後も意識すると解釈しやすくなります。数ポイントの変化は、痛みや機能所見と合わせて判断します。
次の一手
- 全体像に戻る:腰痛 PROM の選び方
- すぐ実装する:RDQ の評価方法
参考文献
- Fairbank JCT, Pynsent PB. The Oswestry Disability Index. Spine (Phila Pa 1976). 2000;25(22):2940–2953. doi: 10.1097/00007632-200011150-00017
- Fairbank JC, Couper J, Davies JB, O’Brien JP. The Oswestry Low Back Pain Disability Questionnaire. Physiotherapy. 1980;66(8):271–273. PubMed: PMID: 6450426
- Hashimoto H, Konno S, Takeshita K, et al. Discriminative validity and responsiveness of the Oswestry Disability Index among Japanese outpatients with lumbar conditions. Spine (Phila Pa 1976). 2006;31(20):E1093–E1099. doi: 10.1097/01.brs.0000233556.84917.6b
- Tonosu J, Takeshita K, Hara N, et al. The normative score and the cut-off value of the Oswestry Disability Index( ODI ). Eur Spine J. 2012;21(8):1596–1602. doi: 10.1007/s00586-012-2173-7
- Ostelo RWJG, Deyo RA, Stratford P, et al. Interpreting change scores for pain and functional status in low back pain: towards international consensus regarding minimal important change. Spine (Phila Pa 1976). 2008;33(1):90–94. doi: 10.1097/BRS.0b013e31815e3a10
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


