OT 初期評価チェックリスト|初回〜 1 週間の「 6 ブロック」運用
OT の初期評価で迷いやすいのは、項目が多いことよりも「初日から 1 週間で何を先に決めるか」が曖昧なことです。本記事は、成人・一般の OT 初期評価を 初回 / 72 時間 / 1 週間の 3 段で整理し、抜け漏れを防ぐチェックリストと 1 行記録の型まで固定します。
結論:①背景 ②安全 ③心身機能 ④活動 ⑤環境 ⑥目標の 6 ブロックを、初回は「安全と最優先 ADL 」、その後に「背景・主要因・環境・目標」の順で埋めると、評価 → 仮説 → 介入 → 共有がつながります。
OT 評価の全体像から辿る:まず入口を押さえ、次に総論で順番を固定し、最後に本記事のチェックへ戻ると迷いにくくなります。
このページで決めること
このページで答えるのは、「 OT 初期評価で初回〜 1 週間に何をどこまで見るか」と「どう書けば共有しやすいか」です。個別スケールの比較、疾患別の深掘り、高次脳や上肢評価の各論は別ページに分け、本記事は運用用チェックリストに絞ります。
順番と最小セットの総論は 作業療法( OT )評価の全体像 に任せ、本記事はその次に使う実務の子記事として読んでください。読むべき人は、新人 OT /異動直後で評価が散らばる方/評価の標準化を進めたい指導者です。
6 ブロックで「何を見て、何を残すか」を固定する
初期評価は、検査を足すほど良くなるわけではありません。大事なのは、何を先に決めるかを固定して、必要な評価だけを追加することです。 6 ブロックで整理しておくと、評価が増えても記録が散らばりにくくなります。
OT らしさが出るのは、背景と活動を早い段階で押さえることです。背景では「その人が大事にしたい作業」をつかみ、活動では「いま一番困っている ADL / IADL 」を決め、そこに影響する心身機能と環境を後から足します。
まずは図版で全体の流れをつかみ、そのあとに表と PDF を見返すと、時系列と評価項目の対応が揃いやすくなります。
スマホでは表を横スクロールできます。
| ブロック | 何を決めるか | 代表項目 | 残す一言 |
|---|---|---|---|
| ①背景 | 大事にしたい作業の軸 | 生活歴、役割、趣味、価値観、家族、退院後の希望 | 「何を再開したいか」を 1 文で |
| ②安全 | 今日の可 / 不可 | 疼痛、バイタル、疲労、転倒リスク、注意点、既往 | OK 条件 / NG 条件 |
| ③心身機能 | 活動を崩す主要因 | 上肢機能、感覚、認知、注意、視知覚、精神機能など | 主要因を 2〜 3 個 |
| ④活動 | 最優先の ADL / IADL | 食事、更衣、トイレ、移乗、整容、家事、仕事 | 最優先課題+理由 |
| ⑤環境 | 先に変えられる条件 | 道具、動線、住環境、家族支援、制度、職場条件 | 環境で増やせること |
| ⑥目標 | 共有できる到達点 | 短期 / 長期、期限、条件、評価指標 | 目標を 1 文で |
初期評価チェックリスト(初回 → 72 時間 → 1 週間)
以下は「そのまま見返せる」実務チェックです。ポイントは、全部を初日に終わらせないことです。初回は安全と優先 ADL 、 72 時間で背景と主要因、 1 週間で環境と目標までそろえば、実務では十分に回ります。
逆に、初日から網羅しようとすると、情報量だけ増えて介入の一手が遅くなります。まずは「今日どう動くか」を決め、その後に深さを足してください。
| タイミング | ブロック | 見ること(最小セット) | 記録のコツ | 目安 |
|---|---|---|---|---|
| 初回(当日) | ②安全 | 疼痛 / 禁忌、バイタル、疲労、転倒リスク、注意点 | 「 OK 条件 / NG 条件」を 1 行で | 5–10 分 |
| 初回(当日) | ④活動 | 食事 / 更衣 / トイレ / 移乗のうち最優先 1 つ | 「最優先 ADL +理由」を 1 行で | 10–15 分 |
| 72 時間 | ①背景 | 生活歴、役割、価値観、家族支援、退院後の方向 | 大事にしたい作業を 1 つ確定 | 15–20 分 |
| 72 時間 | ③心身機能 | 上肢機能 / 感覚、認知、注意、視知覚(必要最小) | 活動に効く「主要因」を 2〜 3 個 | 15–30 分 |
| 1 週間 | ⑤環境 | 住環境、道具、家族介助、制度、職場条件(必要範囲) | 「環境で増やす作業」を 1 つ | 15–30 分 |
| 1 週間 | ⑥目標 | 短期 / 長期、期限、評価指標、優先順位の合意 | 「目標+評価指標+期限」を 1 セット | 10–15 分 |
チェックシート PDF ダウンロード
記事の流れに沿って、そのまま使える OT 初期評価チェックシート を用意しました。初回〜 1 週間の確認項目を 1 枚で見返したいときや、指導用の共通フォーマットを作りたいときに使いやすい構成です。
まずは PDF を開いて印刷し、実際の現場で「どの欄が足りるか / 足りないか」を確認すると、自部署の運用に合わせた微調整もしやすくなります。
PDF を記事内でプレビューする
現場の詰まりどころ:よくある失敗と戻し方
初期評価が崩れる原因は、努力不足より順番のズレです。ここでは、実務で起きやすい詰まりを「原因 → 戻し方」で固定します。迷ったときに戻る場所があるだけで、記録と介入はかなり安定します。
とくに多いのは、「検査が増える」「記録が散る」「目標が抽象的」の 3 つです。どれも、最優先作業と主要因が先に決まっていないと起こりやすくなります。
| よくある失敗 | 起きる原因 | 戻し方 | 記録の一言例 |
|---|---|---|---|
| 検査が増えるほど判断が遅い | 最優先 ADL が決まっていない | ④活動 → ③心身機能 の順に戻す | 最優先:トイレ動作。主要因:体幹安定と注意低下。 |
| 記録が散らばって読めない | 見出しが統一されていない | 6 ブロック見出しで固定する | ②安全:NG 条件…/④活動:優先課題… |
| 評価と介入がつながらない | 主要因が多すぎる | 主要因を 2〜 3 個に絞る | 主要因 2:右上肢巧緻性、注意配分。 |
| 家族説明が毎回ブレる | 目標が言語化されていない | ⑥目標を「行為+条件+期限」で固定 | 2 週間で上衣更衣:見守り下で完了。 |
このページの読み進め方(解決の三段)
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、書き方や努力だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。
評価・記録・報告の「型」をまとめて整理したい方は、PT キャリアガイドも参考になります。
回避の手順:迷ったらこの順で戻す
迷ったときは「足す」より「戻す」です。初期評価が散ったら、次の順番で整え直します。とくに初日は、全部を埋めるより「今日の一手」を決めることを優先してください。
- ②安全:禁忌・中止・注意点を 1 行で固定する
- ④活動:最優先 ADL を 1 つ決める(迷ったらトイレ / 移乗 / 更衣)
- ③心身機能:その ADL を邪魔している主要因を 2〜 3 個に絞る
- ⑤環境:道具・介助・動線で「できる」を先に増やす
- ⑥目標:行為+条件+期限で合意する
この順に戻すと、追加の評価は「必要な分だけ」に収まりやすくなります。
記録の型: 6 ブロック見出しで「読める」初期評価にする
初期評価の記録は、文章量より構造が重要です。 6 ブロックの見出しを固定しておくと、誰が見ても「どこに何があるか」が一致し、引き継ぎやカンファで読みやすくなります。
おすすめは、各ブロックを 1 〜 3 行でまとめることです。特に②安全と④活動は、最初に結論を置くと判断が速くなります。
| 見出し | 書く内容(最小) | 1 行の型 |
|---|---|---|
| ①背景 | 大事にしたい作業、生活像の仮説 | 重要作業:◯◯。退院後は ◯◯ を再開したい。 |
| ②安全 | OK / NG 条件、注意点 | NG:疼痛 NRS ◯ 以上/ SpO2 ◯ 未満で中止。 |
| ③心身機能 | 主要因 2〜 3 個(活動に効くもの) | 主要因:体幹安定、注意配分、右上肢巧緻性。 |
| ④活動 | 最優先 ADL +現状 | 最優先:トイレ。現状:移乗は介助 ◯ 、更衣は ◯ 。 |
| ⑤環境 | 道具・介助・動線で増やすポイント | 道具:◯◯。介助:◯◯。動線:◯◯ を調整。 |
| ⑥目標 | 行為+条件+期限+評価指標 | 2 週:更衣(上衣)を見守り下で完了。指標:観察記録。 |
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 初日はどこまでやれば十分ですか?
初日は②安全と④活動(最優先 ADL の決定)まで到達できれば十分です。全部を網羅するより、最優先 ADL を 1 つ決めて、次に見るべき主要因の見当をつけるほうが、その後の介入が速くなります。
Q2. 6 ブロックは初日に全部埋める必要がありますか?
ありません。初回は安全と優先課題、 72 時間で背景と主要因、 1 週間で環境と目標までそろえれば十分です。時期ごとに役割を分けるほうが、評価の質と再現性が上がります。
Q3. 認知や高次脳はどこまで初期に見ればいいですか?
初期は「最優先 ADL に直結する範囲」に限定するのがおすすめです。更衣が優先なら注意配分・視知覚・手順の抜け、食事が優先なら把持や片側見落としなど、作業に影響する要素から確認してください。
Q4. 記録は長く書いたほうがいいですか?
長さより構造です。まずは 6 ブロック見出しを固定し、各ブロックを 1 〜 3 行で残してください。特に②安全と④活動が短く明確に書けていると、読み手の理解が早くなります。
次の一手:入口と総論を押さえて運用を安定させる
参考文献
- World Health Organization. International Classification of Functioning, Disability and Health ( ICF ). 2001. WHO IRIS
- American Occupational Therapy Association. Occupational Therapy Practice Framework: Domain and Process—Fourth Edition. Am J Occup Ther. 2020;74(Suppl 2):7412410010p1-7412410010p87. doi: 10.5014/ajot.2020.74S2001
- American Occupational Therapy Association. AOTA Occupational Profile Template. 2022. AOTA PDF
- 白木 望, 齋藤 佑樹. 身体障害および老年期領域に勤務する若手作業療法士が初回面接評価実施時に経験する困難感─事例-コード・マトリックスによる分析を通して─. 作業療法. 2026;45(1):32-40. doi: 10.32178/jotr.45.1_32
- 一般社団法人日本作業療法士協会. 作業療法ガイドライン簡易版. 2012. 日本作業療法士協会 PDF
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


