Borg と mMRC の違い【比較・使い分け】(この記事の結論)
結論: mMRC は「日常生活でどれだけ息切れが生活を制限しているか(ベースラインの障害度)」を段階化する尺度、 Borg (修正 Borg= CR10 / RPE 6–20 )は「運動 “中” の息切れ・努力感をその場で数値化し、強度設定や中止判断に使う」尺度です。つまり、 mMRC は “生活での困り度”、 Borg は “運動中のつらさ”を測っています。
迷ったら、初診・節目は mMRC で層別化し、運動療法や歩行練習は Borg で負荷調整するのが基本です。「 mMRC が軽いのに運動で苦しい」「 mMRC が重いけど当日は動ける」などのズレは、用途が違うことで説明できます。
Borg と mMRC の違い(比較表)
同じ「息切れ評価」でも、測っているタイミングと目的が違います。出力( 0–4 / 0–10 / 6–20 )を比べるのではなく、意思決定(層別化か、負荷調整か)で選ぶのがポイントです。
| 比較軸 | mMRC | Borg(修正 Borg / RPE) | 使い分けの目安 |
|---|---|---|---|
| 何を測る? | 日常生活での息切れ制限(障害度) | 運動 “中” の主観的強度(息切れ/努力感) | 生活の困り度= mMRC /運動の負荷調整= Borg |
| タイミング | ベースライン(初診・節目・長期経過) | セッション中(分時・終了時・回復) | 「その日その瞬間」を扱うなら Borg |
| 出力 | 0–4(序数) | CR10: 0–10( 0.5 含む)/ 6–20: 15 段階 | 数値の直接比較は不可(別のものを測る) |
| 強み | 重症度の層別化、チーム共有が速い | 強度設定・中止判断・運動処方に直結 | 「層別化」→「負荷調整」の順に使う |
| 弱点 | 即時変化(数分〜数日)には不向き | 教育不足だと過小/過大申告が出る | Borg は “教育+条件固定” が必須 |
| 記録の型 | 「 mMRC 2:坂・階段で息切れ」 | 「 CR10(息切れ/脚疲労)= 4/ 3、終了時」 | Borg は “息切れ/脚疲労” を分けると介入が速い |
使い分けの結論:目的別フロー(最短で迷いを消す)
- 初診・カンファ・節目で重症度を共有したい → mMRC
- 運動療法の強度設定(上げる/下げる/中止)を決めたい → Borg( CR10 or 6–20 )
- 生活は軽いのに運動で苦しい → Borg を重視して “運動中の限界因子(息切れ/脚疲労)” を特定
- 生活でも息切れが強い → mMRC で層別化し、 Borg は “安全域の負荷調整” に使う
実施と記録のコツ:点数より「条件固定」と「短文メモ」
息切れ評価は、同じ患者でも「天候・睡眠・疼痛・不安・薬剤・歩行補助具・コース条件」で揺れます。再評価で迷わないコツは、①条件を固定し、②数字+短文 1 行で “何がつらいか” を残すことです。
mMRC : “生活場面” を短文で固定する
- いつ取る? 初診、退院前、外来の節目(例: 1–3 か月ごと)
- 何を書く? 点数+代表場面(坂、階段、平地、着替え)
- 記録例:「 mMRC 3:平地でも数分で休憩が必要」
Borg : “運動中” の負荷調整に使う(教育が命)
- どっちを使う? 患者説明が直感的なら CR10 、心拍管理と併用しやすいなら 6–20
- いつ聞く? 導入(体感デモ)→運動中(分時)→終了時→回復( 1–2 分後)
- 分けて聞く:息切れ と 脚疲労(同じ “きつい” でも介入が変わる)
- 記録例:「 CR10(息切れ/脚疲労)= 4/ 3、 HR 96、 SpO2 93 %、 6 分歩行: 4 分で減速」
関連の総論(ほかの息切れスケールも含めた整理)は 呼吸困難の評価スケール総論(使い分け) にまとめています。
現場の詰まりどころ:よくある失敗と修正
| 詰まりどころ | NG | OK | 記録の一言 |
|---|---|---|---|
| mMRC を “その日の状態” として扱う | 「今日は苦しそうだから mMRC が上がった」 | mMRC は節目の層別化、当日の変化は Borg で追う | 「節目は mMRC、当日は Borg で調整」 |
| Borg の教育なしで数値だけ取る | 患者の基準が毎回違い、過小申告が出る | 体感デモで “ 3 ” “ 5 ” の感覚合わせをしてから運用 | 「導入時に体感デモ実施」 |
| 息切れと脚疲労を混ぜる | 「きつい」で終了し、介入が曖昧になる | Borg を “息切れ/脚疲労” の 2 本で聴取 | 「 CR10(息切れ/脚疲労)= 4/ 2 」 |
| 条件が毎回違う | 靴、補助具、コース、見守りがバラバラ | 条件固定、変更があれば明記して比較を分ける | 「杖変更、コース短縮(ターン増)」 |
| “数値の改善” だけで説明する | 患者が変化を実感できない | 数字+生活場面に翻訳(階段、買い物、屋外) | 「階段で立ち止まる回数が減少」 |
よくある質問
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Q1. mMRC と Borg 、両方取る意味はありますか?
A. あります。 mMRC は “生活の障害度(層別化)”、 Borg は “運動中の負荷調整(安全と効果)” で役割が違います。初診や節目に mMRC を取って全体像を共有し、実施日は Borg を分時+終了時で記録するのが運用しやすい定石です。
Q2. Borg は CR10 と 6–20 、どちらを選べばいい?
A. 迷ったら CR10 が説明しやすく、運用が続きやすいです。心拍管理と併用して “強度の目安” を扱いたい場面は 6–20 が便利です。重要なのは、 1 セッションは 1 つのスケールで固定することです。
Q3. mMRC が低いのに、運動で苦しそうなのはおかしい?
A. おかしくありません。 mMRC は生活の層別化で、運動中の苦しさは Borg が捉えやすいです。こういうときは、 Borg を “息切れ/脚疲労” で分けて記録し、限界因子(呼吸か、下肢か、ペース配分か)を特定すると介入が速くなります。
Q4. Borg の数値が毎回バラつきます。どうすればいい?
A. ①教育(体感デモ)②条件固定(補助具・コース・見守り)③取得タイミング固定(分時・終了時・回復)の 3 点で安定します。数値に加えて「どの局面で苦しいか」を 1 行で残すと、再評価で迷いません。
おわりに
息切れ評価は、層別化( mMRC )→負荷設定( Borg )→セッション中の追跡→再評価の順に並べると、数字がそのまま臨床判断になります。面談準備チェックと職場評価シート( A4 )も一緒に整えると現場の迷いが減るので、必要なら マイナビコメディカルのまとめ(ダウンロード) も活用してください。
参考文献
- Borg GA. Psychophysical bases of perceived exertion. Med Sci Sports Exerc. 1982;14(5):377-381. doi:10.1249/00005768-198205000-00012 / PubMed
- Bestall JC, Paul EA, Garrod R, Garnham R, Jones PW, Wedzicha JA. Usefulness of the Medical Research Council (MRC) dyspnoea scale as a measure of disability in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Thorax. 1999;54(7):581-586. doi:10.1136/thx.54.7.581 / PubMed / PMC
- ATS Committee on Proficiency Standards for Clinical Pulmonary Function Laboratories. ATS statement: guidelines for the six-minute walk test. Am J Respir Crit Care Med. 2002;166(1):111-117. doi:10.1164/ajrccm.166.1.at1102 / PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

