IMS( ICU Mobility Scale )の使い方と記録テンプレ|迷わない運用

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IMS( ICU Mobility Scale )は「今日の最高到達」を 0–10 で共有する

IMS( Intensive Care Unit Mobility Scale )は、ICU を中心とした重症患者の「その日に到達できた最高の離床・移動レベル」を 0–10 の順序尺度で記録し、多職種で共有するための評価です。点数そのものより、到達レベル+条件(介助・補助具・距離・症状)をセットで残すと、次回の意思決定が速くなります。

本記事は、IMS を迷わず付ける(境界でブレない)ことと、申し送りに使える記録の型までを 1 ページでまとめます。IMS を「測って終わり」にしないための運用手順も、現場目線で整理します。

同ジャンル回遊(まずは全体像から)

基本動作ハブで「離床の言語」をそろえる

関連:早期離床のフェーズ運用(目標/中断/記録)

関連:Perme ICU Mobility Score(バリア込みで計画する評価)

IMS とは(目的・対象・臨床での位置づけ)

IMS は、ベッド上から歩行自立までを 0–10 で一貫して表現し、「今日どこまで動けたか」を共通言語にするために開発されました。評価が短時間で、特別な機器が不要な点が強みです。申し送りや日々の進捗共有に向き、早期離床の目標設定が具体化します。

一方で、IMS は順序尺度なので、同じ点数でも歩行距離・休息回数・息切れの強さは異なります。実務では、点数に加えて距離( m )/介助者数/症状(息切れ・めまい)/バイタル反応を 1 行で添えると、情報の密度が上がります。

なお、重症患者のリハビリテーションに関する国内ガイドライン( J-ReCIP 2023 )でも、状態に応じた早期離床と評価の重要性が整理されています。IMS は「今日の到達」を短時間で共有できるため、チームで同じ言語をそろえる目的に相性が良い評価です(運用は施設基準を優先)。

結論・早見表(ポイントだけ先に)

IMS を「評価→記録→次の一手」につなげる要点(成人・ICU を想定)
見るポイント 結論 現場のコツ
何を測る? その日の「最高到達レベル」 途中で下がっても、最高値を 1 つだけ記録します。
いつ測る? 離床介入の直後(または 1 日のまとめ) 毎日同じタイミングにするとトレンドが読みやすくなります。
一緒に残す? 条件(介助・補助具・距離)+反応(症状・バイタル) 「次回 1 段上げる条件」を 1 行で添えると迷いが減ります。

スコアリングで迷わない 3 ルール

ブレやすいのは「どの場面を採用するか」「介助と補助具の扱い」「安全上の中止」です。ここでは、現場でのズレを最小化するために 3 つのルールに絞ります。

IMS の採点をブレさせない 3 ルール(施設プロトコルが最優先)
ルール 結論 よくあるブレ 対策(実務)
最高到達で 1 点 その日の最高到達レベルを採用 「最後にできた動作」で記録してしまう 先に「本日最高」を決め、条件(介助・補助具・距離)をメモします。
介助とデバイスを分ける 人の介助と補助具(歩行器・ IV ポール等)を別々に整理 歩行器や IV ポールの扱いが曖昧 「人の介助が必要か」「補助具が必要か」を別質問で確認します。
中止は 0 点に戻さない 中止した時点の到達を採用 安全中止=評価不能と思い込み、 0 点に戻す 中止は「今日の上限」。止めた理由を「次回条件」に変換します。

IMS レベル早見表(現場向けの言い換え)

ここでは原文の丸写しは避け、臨床判断に必要な範囲で「到達レベルのイメージ」を日本語で言い換えて整理します。点数は 0→10 で上がるほど、ベッド上から歩行自立へ近づきます。

IMS レベル早見(言い換え版:成人・ICU を想定)
点数 到達レベル(言い換え) 観察・記録の要点 次の一手(例)
0ベッド上で安静/他動中心鎮静深度、循環・呼吸の安定、関節可動域覚醒・呼吸条件が整えば自動運動→端座位準備
1ベッド上で能動的な動きが出る上肢挙上・下肢運動など「自分で動ける」体位変換/ベッドアップで耐久性を作る
2介助で椅子へ移乗(受動的移乗を含む)移乗方法(リフト等)とバイタル変化端座位で姿勢保持→起立準備
3端座位(ベッド端で座れる)座位保持時間、体幹支持、起立前のめまい座位耐久+足底接地→立位練習
4立位が成立する起立介助量、立位での循環反応、荷重左右差立位保持→足踏みへ段階化
5ベッド⇄椅子の能動的移乗ができる移乗の安定性、立ち直り、ライン管理その場足踏み/歩行の準備へ
6その場で足踏みができる足踏み回数、立位耐久、呼吸困難感短距離歩行へ(介助量は安全優先)
7歩行(複数名の介助が必要)介助者数、歩行距離、休息の要否介助者数を減らす/距離を伸ばす
8歩行( 1 名介助)立位・方向転換、ライン管理の自立度補助具の整理→見守りへ
9歩行(補助具ありで自立)歩行器・杖等の選択、転倒リスク補助具の最適化→屋内動線へ
10歩行(補助具なしで自立)歩行の安全性、耐久性、退室レベル生活場面(病棟内移動)へ一般化

境界で迷う所だけ早見( 6 ↔ 7 / 8 ↔ 9 / 9 ↔ 10 )

IMS はシンプルな分、境界は「人の介助」と「補助具/ライン管理」の解釈でズレやすいです。迷ったら、介助の必要性(安全確保のために人手が必須か)と、補助具がなければ成立しないかを分けて考えると整理できます。

境界で迷いやすいケースの判断軸(成人・ICU を想定)
迷う境界 主な判断軸 記録で残す 1 行 次回の狙い
6 ↔ 7 足踏みはできるが「前進歩行」に移る時、介助者増員が必須か 歩行距離( m )/介助者数/休息の要否 まず距離より「介助者数を減らす条件」を作る
8 ↔ 9 人の介助が不要で、補助具(歩行器等)が必要か 補助具の種類/ライン管理の自立度/ふらつき 補助具最適化+見守りに移す条件を言語化
9 ↔ 10 補助具なしでも安全に歩けるか(方向転換・疲労で崩れないか) 補助具なし歩行の距離( m )/方向転換/症状 生活場面(トイレ動線・病棟内移動)へ一般化

IMS と他スケールの使い分け(IMS/Perme/FSS-ICU)

IMS は「今日どこまで動けたか」を素早く共有するのに強く、申し送り・日々の進捗管理に向きます。一方、バリア(ライン・機器)や障壁を含めて「なぜ動けないか」を整理したい場合は Perme などが役立ちます。目的に合わせて、スケールを“役割分担”させるのが実務的です。

ICU の活動度評価:目的別の使い分け(目安)
目的 向く評価 強み 一緒に残すと強い記録
日々の最高到達を共有 IMS 短時間・共通言語・目標が立てやすい 距離( m )/介助者数/症状/バイタル反応
動けない理由(バリア)を可視化 Perme ライン・機器・意識など障壁を含めて整理 障壁の内訳(ライン、鎮静、疼痛など)
機能課題を分解して追う FSS-ICU(等) 起き上がり等の課題別に変化を追いやすい 課題ごとの介助量と「できない理由」

評価の流れ( 60 秒で終わる運用テンプレ:申し送り 1 行/カルテ 4 行)

IMS は「点数」だけだと次回の意思決定につながりません。おすすめは、IMS(最高到達)+条件+反応+次回条件をセットで残す運用です。ここでは現場で使いやすいよう、申し送り用 1 行カルテ用 4 行の 2 パターンを用意します。

迷ったら「人の介助」と「補助具(歩行器・ IV ポール等)」を分けて書くと、職種間のズレが減ります。

申し送り用: 1 行テンプレ(コピペ用)

IMS 申し送りテンプレ( 1 行/コピペ想定)
テンプレ 記入例
IMS=[ ]|到達=[端座位/立位/足踏み/歩行 ]|介助=[ ]名|補助具=[ ]|距離=[ ] m|反応=[ ]|次回=[ ] IMS= 6 |到達=足踏み|介助= 1 名|補助具=なし|距離= 0 m|反応=息切れ軽度・めまいなし|次回=足踏み 30 回→休息後に短距離歩行

カルテ用: 4 行テンプレ(要点が漏れない)

IMS カルテ記録テンプレ( 4 行:評価→条件→反応→次回条件)
書く内容
①評価 本日の最高到達(IMS)+到達レベル IMS= 7(歩行到達)
②条件 介助者数/補助具/ライン・酸素/休息 介助 2 名、 IV ポール管理あり、酸素 2 L、途中 1 回休息
③反応 バイタル・症状(息切れ、めまい、疼痛、不穏) 歩行中 HR 上昇、息切れ中等度、めまいなし、疼痛軽度
④次回条件 1 段上げるための条件(介助者数、距離、補助具の整理) 介助 2 名→ 1 名へ(ライン役固定)、距離 10 m を目標

安全管理(中止・中断の判断をチームでそろえる)

早期離床は有益である一方、リスクも伴います。IMS の運用では「上げる条件」だけでなく「止める条件」をチームで共有しておくと、介入の再現性が上がります(施設の基準が最優先です)。

離床の中止・中断を検討する代表的サイン(例:施設基準で調整)
カテゴリ サイン 現場の次アクション
循環 血圧低下に伴う冷汗・失神前症状、胸痛、著明な不整脈など 姿勢を戻す/報告/次回は段階(ベッドアップ→端座位)を細かくする
呼吸 呼吸困難の急増、 SpO2 低下が改善しない、チアノーゼなど 酸素・休息を見直し、改善しなければベッド上に戻す
神経・意識 覚醒の低下、強い不穏、指示理解が保てない 鎮静・せん妄・疼痛の要因整理/介助者増員で安全確保
ライン・創部 抜去リスク、出血、ドレーン異常など 固定確認・配置変更/ライン管理役を決めて実施

現場の詰まりどころ(よくある失敗と回避策)

ここは「読ませるゾーン」です。まずは、詰まりやすい所にショートカットしてから読み進めてください。

よくある失敗(IMS の価値が落ちるパターン)

IMS 運用で起きやすい失敗と回避策
よくある失敗 起きる理由 回避策(実務)
採点タイミングがバラバラ 介入時間が日々変動する 「介入直後」か「 1 日まとめ」を施設で統一します。
“歩行できた”の定義が職種で違う 距離・介助・補助具の解釈が曖昧 距離( m )と介助者数を最低限セットで書きます。
点数だけ残って次回につながらない 評価が「記録」で止まる 「次回条件( 1 行)」を必ず併記します。
中止時に 0 点へ戻す 安全配慮=評価不能と思い込む 中止した時点の到達を採用し、止めた理由を条件に変換します。

回避のチェック(最小):ズレを減らす 3 ステップ

  1. 同時採点:同一患者を Ns と PT(または 2 名)で同時に採点します。
  2. ズレた所だけ振り返り:境界( 6 ↔ 7 / 8 ↔ 9 / 9 ↔ 10 )と「人の介助/補助具」を確認します。
  3. 記録の型を固定:IMS+距離( m )+介助者数+症状(息切れ・めまい)を最低限のセットにします。

よくある質問(FAQ)

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Q1. 迷ったら「最高到達」以外に何を見れば点数が安定しますか?

A. まず「最高到達」を 1 つ決めたうえで、介助(人手が必須か)補助具(ないと成立しないか)を分けて整理します。最後に距離( m )と症状(息切れ・めまい)を 1 行添えると、同じ点数でも“中身の違い”が伝わり、職種間のズレが減ります。

Q2. 6 ↔ 7(足踏み ↔ 歩行)で悩みます。判断の軸は?

A. 軸は 2 つです。①前進歩行に移るとき、安全確保のために介助者の増員が必須か、②距離( m )をどれだけ確保できるか。迷ったら「介助者数」と「距離」を必ずセットで記録し、次回は距離を追うより先に介助者数を減らす条件(ライン役固定、休息ポイント設定など)を作ると安定します。

Q3. 8 ↔ 9、9 ↔ 10 の違いが曖昧です(補助具・自立の扱い)。

A. 8 ↔ 9 は「人の介助が不要」かつ「補助具が必要か」が中心です。9 ↔ 10 は「補助具なしでも安全に成立するか(方向転換・疲労で崩れないか)」がポイントです。どちらも、補助具の有無だけでなく方向転換/ライン管理/ふらつきを一言添えると解釈が揃いやすくなります。

Q4. 看護師と PT で点数がズレます。最短で整える方法は?

A. 最短は“ミニ校正”です。①同一患者を同時に採点→②ズレたケースだけ 10 分振り返り→③「IMS+距離( m )+介助者数+症状」を最低限セットで書式化、の 3 ステップを数回回すとズレが収束します。ズレが起きやすいのは境界( 6 ↔ 7 / 8 ↔ 9 / 9 ↔ 10 )なので、そこだけ共通ルールを明文化するのがコスパ高いです。

Q5. 中止・中断した場合、IMS はどう扱えばいいですか?

A. 原則は中止した時点の到達(その日の上限)を採用し、理由を「次回条件」に変換します。例:息切れ増悪→「休息ポイントを固定」、血圧低下→「端座位で反応確認→立位へ段階化」など。0 点に戻すより、次回の安全条件が共有されるため運用が回ります。

Q6. いつ測るのが一番いいですか(タイミング問題)?

A. 施設で 1 つに統一するのが最優先です。おすすめは「離床介入の直後」または「 1 日のまとめ」のどちらか。日々の比較が目的ならタイミング固定が効きます。タイミングが揺れる施設は、せめて「本日最高」の考え方(最高到達を 1 点だけ)を統一すると、トレンドが読みやすくなります。

次の一手(運用を整える→共有の型→環境も点検)

教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。

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参考文献

  • Hodgson CL, Needham D, Haines K, et al. Feasibility and inter-rater reliability of the ICU Mobility Scale. Heart Lung. 2014;43(1):19–24. doi: 10.1016/j.hrtlng.2013.11.003 / PubMed: 24373338
  • Yasumura D, Katsukawa H, Matsuo R, et al. Feasibility and Inter-rater Reliability of the Japanese Version of the Intensive Care Unit Mobility Scale. Cureus. 2024;16(4):e59135. doi: 10.7759/cureus.59135 / PubMed: 38803745
  • Tanaka K, Nakanishi N, Watanabe S, et al. The Construct and Predictive Validity of the Japanese Version of the Intensive Care Unit Mobility Scale. J Clin Med. 2025;14(16):5843. doi: 10.3390/jcm14165843 / PubMed: 40869669
  • Unoki T, Hayashida K, Kawai Y, et al. Japanese clinical practice guidelines for rehabilitation in critically ill patients 2023 ( J-ReCIP 2023 ). J Intensive Care. 2023;11:47. doi: 10.1186/s40560-023-00697-w / PubMed: 37932849
  • 日本離床学会:集中治療室活動度スケール(IMS)日本語版(配布ページ) https://www.rishou.org/ims_jp

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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