- IMS( ICU Mobility Scale )は「今日の最高到達」を 0–10 で共有する
- IMS とは(目的・対象・臨床での位置づけ)
- 結論・早見表(ポイントだけ先に)
- スコアリングで迷わない 3 ルール
- IMS レベル早見表(現場向けの言い換え)
- 境界で迷う所だけ早見( 6 ↔ 7 / 8 ↔ 9 / 9 ↔ 10 )
- IMS と他スケールの使い分け(IMS/Perme/FSS-ICU)
- 評価の流れ( 60 秒で終わる運用テンプレ:申し送り 1 行/カルテ 4 行)
- 安全管理(中止・中断の判断をチームでそろえる)
- 現場の詰まりどころ(よくある失敗と回避策)
- よくある質問(FAQ)
- 次の一手(運用を整える→共有の型→環境も点検)
- 参考文献
- 著者情報
IMS( ICU Mobility Scale )は「今日の最高到達」を 0–10 で共有する
IMS( Intensive Care Unit Mobility Scale )は、ICU を中心とした重症患者の「その日に到達できた最高の離床・移動レベル」を 0–10 の順序尺度で記録し、多職種で共有するための評価です。点数そのものより、到達レベル+条件(介助・補助具・距離・症状)をセットで残すと、次回の意思決定が速くなります。
本記事は、IMS を迷わず付ける(境界でブレない)ことと、申し送りに使える記録の型までを 1 ページでまとめます。IMS を「測って終わり」にしないための運用手順も、現場目線で整理します。
同ジャンル回遊(まずは全体像から)
IMS とは(目的・対象・臨床での位置づけ)
IMS は、ベッド上から歩行自立までを 0–10 で一貫して表現し、「今日どこまで動けたか」を共通言語にするために開発されました。評価が短時間で、特別な機器が不要な点が強みです。申し送りや日々の進捗共有に向き、早期離床の目標設定が具体化します。
一方で、IMS は順序尺度なので、同じ点数でも歩行距離・休息回数・息切れの強さは異なります。実務では、点数に加えて距離( m )/介助者数/症状(息切れ・めまい)/バイタル反応を 1 行で添えると、情報の密度が上がります。
なお、重症患者のリハビリテーションに関する国内ガイドライン( J-ReCIP 2023 )でも、状態に応じた早期離床と評価の重要性が整理されています。IMS は「今日の到達」を短時間で共有できるため、チームで同じ言語をそろえる目的に相性が良い評価です(運用は施設基準を優先)。
結論・早見表(ポイントだけ先に)
| 見るポイント | 結論 | 現場のコツ |
|---|---|---|
| 何を測る? | その日の「最高到達レベル」 | 途中で下がっても、最高値を 1 つだけ記録します。 |
| いつ測る? | 離床介入の直後(または 1 日のまとめ) | 毎日同じタイミングにするとトレンドが読みやすくなります。 |
| 一緒に残す? | 条件(介助・補助具・距離)+反応(症状・バイタル) | 「次回 1 段上げる条件」を 1 行で添えると迷いが減ります。 |
スコアリングで迷わない 3 ルール
ブレやすいのは「どの場面を採用するか」「介助と補助具の扱い」「安全上の中止」です。ここでは、現場でのズレを最小化するために 3 つのルールに絞ります。
| ルール | 結論 | よくあるブレ | 対策(実務) |
|---|---|---|---|
| 最高到達で 1 点 | その日の最高到達レベルを採用 | 「最後にできた動作」で記録してしまう | 先に「本日最高」を決め、条件(介助・補助具・距離)をメモします。 |
| 介助とデバイスを分ける | 人の介助と補助具(歩行器・ IV ポール等)を別々に整理 | 歩行器や IV ポールの扱いが曖昧 | 「人の介助が必要か」「補助具が必要か」を別質問で確認します。 |
| 中止は 0 点に戻さない | 中止した時点の到達を採用 | 安全中止=評価不能と思い込み、 0 点に戻す | 中止は「今日の上限」。止めた理由を「次回条件」に変換します。 |
IMS レベル早見表(現場向けの言い換え)
ここでは原文の丸写しは避け、臨床判断に必要な範囲で「到達レベルのイメージ」を日本語で言い換えて整理します。点数は 0→10 で上がるほど、ベッド上から歩行自立へ近づきます。
| 点数 | 到達レベル(言い換え) | 観察・記録の要点 | 次の一手(例) |
|---|---|---|---|
| 0 | ベッド上で安静/他動中心 | 鎮静深度、循環・呼吸の安定、関節可動域 | 覚醒・呼吸条件が整えば自動運動→端座位準備 |
| 1 | ベッド上で能動的な動きが出る | 上肢挙上・下肢運動など「自分で動ける」 | 体位変換/ベッドアップで耐久性を作る |
| 2 | 介助で椅子へ移乗(受動的移乗を含む) | 移乗方法(リフト等)とバイタル変化 | 端座位で姿勢保持→起立準備 |
| 3 | 端座位(ベッド端で座れる) | 座位保持時間、体幹支持、起立前のめまい | 座位耐久+足底接地→立位練習 |
| 4 | 立位が成立する | 起立介助量、立位での循環反応、荷重左右差 | 立位保持→足踏みへ段階化 |
| 5 | ベッド⇄椅子の能動的移乗ができる | 移乗の安定性、立ち直り、ライン管理 | その場足踏み/歩行の準備へ |
| 6 | その場で足踏みができる | 足踏み回数、立位耐久、呼吸困難感 | 短距離歩行へ(介助量は安全優先) |
| 7 | 歩行(複数名の介助が必要) | 介助者数、歩行距離、休息の要否 | 介助者数を減らす/距離を伸ばす |
| 8 | 歩行( 1 名介助) | 立位・方向転換、ライン管理の自立度 | 補助具の整理→見守りへ |
| 9 | 歩行(補助具ありで自立) | 歩行器・杖等の選択、転倒リスク | 補助具の最適化→屋内動線へ |
| 10 | 歩行(補助具なしで自立) | 歩行の安全性、耐久性、退室レベル | 生活場面(病棟内移動)へ一般化 |
境界で迷う所だけ早見( 6 ↔ 7 / 8 ↔ 9 / 9 ↔ 10 )
IMS はシンプルな分、境界は「人の介助」と「補助具/ライン管理」の解釈でズレやすいです。迷ったら、介助の必要性(安全確保のために人手が必須か)と、補助具がなければ成立しないかを分けて考えると整理できます。
| 迷う境界 | 主な判断軸 | 記録で残す 1 行 | 次回の狙い |
|---|---|---|---|
| 6 ↔ 7 | 足踏みはできるが「前進歩行」に移る時、介助者増員が必須か | 歩行距離( m )/介助者数/休息の要否 | まず距離より「介助者数を減らす条件」を作る |
| 8 ↔ 9 | 人の介助が不要で、補助具(歩行器等)が必要か | 補助具の種類/ライン管理の自立度/ふらつき | 補助具最適化+見守りに移す条件を言語化 |
| 9 ↔ 10 | 補助具なしでも安全に歩けるか(方向転換・疲労で崩れないか) | 補助具なし歩行の距離( m )/方向転換/症状 | 生活場面(トイレ動線・病棟内移動)へ一般化 |
IMS と他スケールの使い分け(IMS/Perme/FSS-ICU)
IMS は「今日どこまで動けたか」を素早く共有するのに強く、申し送り・日々の進捗管理に向きます。一方、バリア(ライン・機器)や障壁を含めて「なぜ動けないか」を整理したい場合は Perme などが役立ちます。目的に合わせて、スケールを“役割分担”させるのが実務的です。
| 目的 | 向く評価 | 強み | 一緒に残すと強い記録 |
|---|---|---|---|
| 日々の最高到達を共有 | IMS | 短時間・共通言語・目標が立てやすい | 距離( m )/介助者数/症状/バイタル反応 |
| 動けない理由(バリア)を可視化 | Perme | ライン・機器・意識など障壁を含めて整理 | 障壁の内訳(ライン、鎮静、疼痛など) |
| 機能課題を分解して追う | FSS-ICU(等) | 起き上がり等の課題別に変化を追いやすい | 課題ごとの介助量と「できない理由」 |
評価の流れ( 60 秒で終わる運用テンプレ:申し送り 1 行/カルテ 4 行)
IMS は「点数」だけだと次回の意思決定につながりません。おすすめは、IMS(最高到達)+条件+反応+次回条件をセットで残す運用です。ここでは現場で使いやすいよう、申し送り用 1 行とカルテ用 4 行の 2 パターンを用意します。
迷ったら「人の介助」と「補助具(歩行器・ IV ポール等)」を分けて書くと、職種間のズレが減ります。
申し送り用: 1 行テンプレ(コピペ用)
| テンプレ | 記入例 |
|---|---|
| IMS=[ ]|到達=[端座位/立位/足踏み/歩行 ]|介助=[ ]名|補助具=[ ]|距離=[ ] m|反応=[ ]|次回=[ ] | IMS= 6 |到達=足踏み|介助= 1 名|補助具=なし|距離= 0 m|反応=息切れ軽度・めまいなし|次回=足踏み 30 回→休息後に短距離歩行 |
カルテ用: 4 行テンプレ(要点が漏れない)
| 行 | 書く内容 | 例 |
|---|---|---|
| ①評価 | 本日の最高到達(IMS)+到達レベル | IMS= 7(歩行到達) |
| ②条件 | 介助者数/補助具/ライン・酸素/休息 | 介助 2 名、 IV ポール管理あり、酸素 2 L、途中 1 回休息 |
| ③反応 | バイタル・症状(息切れ、めまい、疼痛、不穏) | 歩行中 HR 上昇、息切れ中等度、めまいなし、疼痛軽度 |
| ④次回条件 | 1 段上げるための条件(介助者数、距離、補助具の整理) | 介助 2 名→ 1 名へ(ライン役固定)、距離 10 m を目標 |
安全管理(中止・中断の判断をチームでそろえる)
早期離床は有益である一方、リスクも伴います。IMS の運用では「上げる条件」だけでなく「止める条件」をチームで共有しておくと、介入の再現性が上がります(施設の基準が最優先です)。
| カテゴリ | サイン | 現場の次アクション |
|---|---|---|
| 循環 | 血圧低下に伴う冷汗・失神前症状、胸痛、著明な不整脈など | 姿勢を戻す/報告/次回は段階(ベッドアップ→端座位)を細かくする |
| 呼吸 | 呼吸困難の急増、 SpO2 低下が改善しない、チアノーゼなど | 酸素・休息を見直し、改善しなければベッド上に戻す |
| 神経・意識 | 覚醒の低下、強い不穏、指示理解が保てない | 鎮静・せん妄・疼痛の要因整理/介助者増員で安全確保 |
| ライン・創部 | 抜去リスク、出血、ドレーン異常など | 固定確認・配置変更/ライン管理役を決めて実施 |
現場の詰まりどころ(よくある失敗と回避策)
ここは「読ませるゾーン」です。まずは、詰まりやすい所にショートカットしてから読み進めてください。
よくある失敗(IMS の価値が落ちるパターン)
| よくある失敗 | 起きる理由 | 回避策(実務) |
|---|---|---|
| 採点タイミングがバラバラ | 介入時間が日々変動する | 「介入直後」か「 1 日まとめ」を施設で統一します。 |
| “歩行できた”の定義が職種で違う | 距離・介助・補助具の解釈が曖昧 | 距離( m )と介助者数を最低限セットで書きます。 |
| 点数だけ残って次回につながらない | 評価が「記録」で止まる | 「次回条件( 1 行)」を必ず併記します。 |
| 中止時に 0 点へ戻す | 安全配慮=評価不能と思い込む | 中止した時点の到達を採用し、止めた理由を条件に変換します。 |
回避のチェック(最小):ズレを減らす 3 ステップ
- 同時採点:同一患者を Ns と PT(または 2 名)で同時に採点します。
- ズレた所だけ振り返り:境界( 6 ↔ 7 / 8 ↔ 9 / 9 ↔ 10 )と「人の介助/補助具」を確認します。
- 記録の型を固定:IMS+距離( m )+介助者数+症状(息切れ・めまい)を最低限のセットにします。
よくある質問(FAQ)
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Q1. 迷ったら「最高到達」以外に何を見れば点数が安定しますか?
A. まず「最高到達」を 1 つ決めたうえで、介助(人手が必須か)と補助具(ないと成立しないか)を分けて整理します。最後に距離( m )と症状(息切れ・めまい)を 1 行添えると、同じ点数でも“中身の違い”が伝わり、職種間のズレが減ります。
Q2. 6 ↔ 7(足踏み ↔ 歩行)で悩みます。判断の軸は?
A. 軸は 2 つです。①前進歩行に移るとき、安全確保のために介助者の増員が必須か、②距離( m )をどれだけ確保できるか。迷ったら「介助者数」と「距離」を必ずセットで記録し、次回は距離を追うより先に介助者数を減らす条件(ライン役固定、休息ポイント設定など)を作ると安定します。
Q3. 8 ↔ 9、9 ↔ 10 の違いが曖昧です(補助具・自立の扱い)。
A. 8 ↔ 9 は「人の介助が不要」かつ「補助具が必要か」が中心です。9 ↔ 10 は「補助具なしでも安全に成立するか(方向転換・疲労で崩れないか)」がポイントです。どちらも、補助具の有無だけでなく方向転換/ライン管理/ふらつきを一言添えると解釈が揃いやすくなります。
Q4. 看護師と PT で点数がズレます。最短で整える方法は?
A. 最短は“ミニ校正”です。①同一患者を同時に採点→②ズレたケースだけ 10 分振り返り→③「IMS+距離( m )+介助者数+症状」を最低限セットで書式化、の 3 ステップを数回回すとズレが収束します。ズレが起きやすいのは境界( 6 ↔ 7 / 8 ↔ 9 / 9 ↔ 10 )なので、そこだけ共通ルールを明文化するのがコスパ高いです。
Q5. 中止・中断した場合、IMS はどう扱えばいいですか?
A. 原則は中止した時点の到達(その日の上限)を採用し、理由を「次回条件」に変換します。例:息切れ増悪→「休息ポイントを固定」、血圧低下→「端座位で反応確認→立位へ段階化」など。0 点に戻すより、次回の安全条件が共有されるため運用が回ります。
Q6. いつ測るのが一番いいですか(タイミング問題)?
A. 施設で 1 つに統一するのが最優先です。おすすめは「離床介入の直後」または「 1 日のまとめ」のどちらか。日々の比較が目的ならタイミング固定が効きます。タイミングが揺れる施設は、せめて「本日最高」の考え方(最高到達を 1 点だけ)を統一すると、トレンドが読みやすくなります。
次の一手(運用を整える→共有の型→環境も点検)
- 運用を整える:早期離床のフェーズ運用(目標/中断/記録)
- 共有の型を作る:ICU の鎮静・せん妄評価の基本(評価成立条件をそろえる)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に「続ける/変える」の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Hodgson CL, Needham D, Haines K, et al. Feasibility and inter-rater reliability of the ICU Mobility Scale. Heart Lung. 2014;43(1):19–24. doi: 10.1016/j.hrtlng.2013.11.003 / PubMed: 24373338
- Yasumura D, Katsukawa H, Matsuo R, et al. Feasibility and Inter-rater Reliability of the Japanese Version of the Intensive Care Unit Mobility Scale. Cureus. 2024;16(4):e59135. doi: 10.7759/cureus.59135 / PubMed: 38803745
- Tanaka K, Nakanishi N, Watanabe S, et al. The Construct and Predictive Validity of the Japanese Version of the Intensive Care Unit Mobility Scale. J Clin Med. 2025;14(16):5843. doi: 10.3390/jcm14165843 / PubMed: 40869669
- Unoki T, Hayashida K, Kawai Y, et al. Japanese clinical practice guidelines for rehabilitation in critically ill patients 2023 ( J-ReCIP 2023 ). J Intensive Care. 2023;11:47. doi: 10.1186/s40560-023-00697-w / PubMed: 37932849
- 日本離床学会:集中治療室活動度スケール(IMS)日本語版(配布ページ) https://www.rishou.org/ims_jp
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


