- AVPU スケールは「30 秒で意識レベルを分類する一次評価」です
- AVPU を使う場面は「一次評価」と「経時変化の確認」です
- 判定手順は「観察 → 声かけ →(必要時のみ)痛み刺激 → 最良反応」を固定します
- A と V の境界は「呼名が必要なら原則 V」でブレが減ります
- 痛み刺激の目的は「反応確認」です:短時間・最小限・標準化が基本
- AVPU で異常(V / P / U)なら、次は「詳細評価+原因評価」へつなぎます
- 記録のコツは「AVPU だけで終わらせず、反応の中身を 1 行残す」ことです
- 小児・挿管・失語・難聴では「声への反応」だけで決めない
- 現場の詰まりどころ:評価者差と「刺激の暴走」を防ぐ
- よくある質問(FAQ)
- 次の一手
- 参考文献
- 著者情報
AVPU スケールは「30 秒で意識レベルを分類する一次評価」です
AVPU は、意識レベルを A(Alert)/ V(Voice)/ P(Pain)/ U(Unresponsive)の 4 段階で素早く分類するスケールです。救急・急変時に「まず分類して、次の行動を決める」入口として強く、短時間でチームの共通言語になります。
一方で、AVPU は情報量が少ないため、異常(V / P / U)なら詳細評価(JCS / GCS など)へつなぐ運用が前提です。本記事では、迷いやすい A と V の境界、痛み刺激の標準化、記録の 1 行テンプレまで、現場で迷わない形にまとめます。
AVPU を使う場面は「一次評価」と「経時変化の確認」です
AVPU が最も活きるのは、急変対応やトリアージなど「その場で次の手を決める」一次評価です。4 段階なので、観察 → 刺激 → 記録までが速く、処置前後や 5 分ごとの再評価にも向きます。
逆に、重症度の細かな比較や予後推定が目的なら、AVPU だけでは情報量が不足します。AVPU は入口として使い、異常があれば詳細スケールと原因評価へ進む、という役割分担が安全です。
判定手順は「観察 → 声かけ →(必要時のみ)痛み刺激 → 最良反応」を固定します
AVPU は、最良反応(best response)を 1 つだけ記録します。重要なのは、毎回同じ順番で刺激し、同条件で比較できる形にすることです(手順が違うと、変化なのか評価のブレなのか判断できません)。
| 順番 | やること | ポイント | 記録の型(例) |
|---|---|---|---|
| 1 | 観察(見た目の覚醒) | 自発開眼、追視、会話の自然さ | A(会話明瞭) |
| 2 | 声かけ(呼名+簡単指示) | 「名前を呼ぶ」「握って」「開眼して」など | V(呼名で開眼、指示で握手) |
| 3 | 痛み刺激(必要時のみ) | 短時間・最小限・再現できる方法に固定 | P(爪床圧迫で逃避) |
| 4 | 最良反応で 1 つだけ決定 | 同時に複数書かない(A / V / P / U のどれか 1 つ) | AVPU:V |
A と V の境界は「呼名が必要なら原則 V」でブレが減ります
AVPU で最もブレやすいのが A(Alert)と V(Voice)の境界です。実務で迷いを減らすコツは、呼名や声かけが“必要”なら原則 Vとすることです(安全側に寄せる)。
会話が成立し、見当識(人・場所・状況)が保てているなら A に寄せますが、迷うときは A を厳しめにし、補足 1 行(例:呼名で開眼)を添えると、引き継ぎの精度が上がります。
痛み刺激の目的は「反応確認」です:短時間・最小限・標準化が基本
痛み刺激は、声かけで無反応のときに限り、必要最小限で行います。目的は「反応を確認して分類する」ことであり、強い刺激で無理に覚醒させることではありません。皮膚損傷やせん妄増悪のリスクを避け、短時間・再現性・安全性を優先します。
| 観点 | OK(推奨) | NG(起きがち) | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 部位 | 外傷部位を避け、評価者間で再現しやすい部位に固定 | 毎回部位が違う/関節痛を誘発する部位を押す | 例:爪床圧迫(右手第 2 指) |
| 時間 | 短時間(数秒)で反応確認し、深追いしない | 長時間刺激し続ける | 例:2–3 秒で反応確認 |
| 強さ | 必要最小限で一定に近づける | 弱すぎて U を誤判定/強すぎて侵襲が増える | 「刺激条件」を毎回そろえる |
| 順番 | 呼名 → 大声 → 刺激の段階を崩さない | いきなり痛み刺激/評価者の気分で順番が変わる | 段階を短文で残す |
AVPU で異常(V / P / U)なら、次は「詳細評価+原因評価」へつなぎます
AVPU は「分類」なので、異常があれば次の行動を決めます。実務では、(1)生理学的に危ない原因を先に除外(低酸素、低血糖など)しつつ、(2)意識スケールで詳細化して共有、が基本になります。
評価がブレないようにするコツは、「同じ刺激条件で再評価できる情報」を残すことです(刺激条件/反応の中身/同時所見)。
図:AVPU は「入口」→ 異常なら詳細評価へつなぐ
記録のコツは「AVPU だけで終わらせず、反応の中身を 1 行残す」ことです
AVPU は単純な分、申し送りで情報が薄くなりがちです。そこで、刺激条件 → 反応の順に、反応の中身を 1 行だけ添えると再現性が上がります。
- 例:V(呼名で開眼、指示で握手)
- 例:P(爪床圧迫で上肢逃避、発声なし)
- 例:U(声かけ・痛み刺激とも無反応)
経時変化(A → V など)が出たら、同じ刺激条件で再確認し、急変の可能性を疑って共有します。
小児・挿管・失語・難聴では「声への反応」だけで決めない
AVPU の V は「言葉が出るか」ではなく、声刺激に対する“何らかの反応”(開眼、追視、四肢の動き、従命など)を拾うイメージです。発語が難しい状況では、反応の様式(眼・運動)を 1 行で補足すると判定の誤差が減ります。
小児( Pediatric AVPU )の注意:睡眠・覚醒状態の影響が大きい
乳児では医療者の声に反応しにくく、保護者の声で反応することがあります。また「寝ているだけ」を U 寄りに誤判定しやすいため、睡眠/鎮静の影響を確認し、必要に応じて覚醒させたうえで判定します(施設手順を優先)。
挿管・失語・難聴での誤判定回避(記録の型)
- 挿管(発声できない):開眼、追視、手で合図、従命で V を拾う
例:V(呼名で開眼、指示で右手握る/挿管中で発声なし) - 失語(言葉が出ない):「言えるか」ではなく「従命・追視」で拾う
例:V(呼名で開眼、指示理解あり/発語困難) - 難聴(声刺激が届かない):声で無反応でも即 P/U にせず、視覚・触覚(肩への軽い接触など)で反応確認
例:V(肩への触覚刺激で開眼、追視あり/難聴の可能性)
現場の詰まりどころ:評価者差と「刺激の暴走」を防ぐ
AVPU のつまずきは大きく 2 つです。① A と V の境界で評価者差が出る、② 痛み刺激が強すぎる/弱すぎる/毎回違う、の 2 点です。どちらも「順番」と「刺激条件」を固定するとブレが減ります。
よくある失敗( OK / NG 早見 )
| NG(起きがち) | なぜ問題? | OK(修正) | ひと言メモ |
|---|---|---|---|
| 呼名が必要なのに A にする | 境界が曖昧になり、経時変化が読めない | 呼名が必要なら原則 V | 迷ったら安全側 |
| いきなり痛み刺激 | 刺激条件がそろわず、侵襲も増える | 観察 → 声かけ →(必要時のみ)刺激 | 段階を固定 |
| 刺激部位が毎回違う | 改善/悪化なのか条件差なのか不明 | 部位・時間を固定 | 記録に残す |
| AVPU だけで終わる | 原因評価が遅れやすい | 異常なら詳細評価へつなぐ | 入口と割り切る |
ブレを減らすチェック(短い版)
- 毎回、同じ順番(観察 → 声かけ → 刺激)で実施できている
- 刺激は短時間・最小限で、部位と時間をそろえている
- A と V で迷ったときは「呼名が必要なら V」で統一している
- AVPU に 1 行だけ「刺激条件 → 反応」を添えている
よくある質問(FAQ)
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Q1. A( Alert )と V( Voice )の境界は、実務ではどう決めますか?
呼名や声かけが「必要」なら、基本は V とするとブレが減ります。会話が成立し見当識も保てているなら A に寄せますが、迷うときは A を厳しめ(安全側)にし、補足 1 行(例:呼名で開眼)を添えるのがおすすめです。
Q2. 痛み刺激は、どれくらいまでやっていいですか?
声かけで無反応のときに限り、短時間で必要最小限にします。施設手順に従い、皮膚損傷や不要な侵襲を避け、同じ方法で繰り返せる刺激を選びます。刺激方法(部位・時間)は記録に残すと再現性が担保されます。
Q3. AVPU は GCS と同じくらい信頼できますか?
AVPU は「迅速で簡便」な一方、情報量は少なく、A と V の識別で一致率が下がることがあります。一次評価と経時変化のスクリーニングに使い、異常(V / P / U)なら詳細評価(JCS / GCS など)へつなぐ、という役割分担が現実的です。
Q4. AVPU の記録は「 AVPU:V 」だけで良いですか?
結論として、AVPU だけだと引き継ぎ情報が薄くなりやすいです。「刺激条件 → 反応」を 1 行だけ添えると再評価が安定します(例:V=呼名で開眼、指示で握手)。
Q5. 挿管中や失語があると、 V を拾えずに P / U に落ちませんか?
落ちやすいです。発語できない状況では「声刺激に対する反応様式(開眼、追視、四肢の動き、従命)」で拾い、記録に 1 行補足します(例:V=呼名で開眼、従命あり/挿管中で発声なし)。
次の一手
- 運用を整える:意識・鎮静・せん妄の評価ハブ(入口)(全体像)
- 共有の型を作る:JCS の評価方法(刺激条件の標準化)(すぐ実装)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- McNarry AF, Goldhill DR. Simple bedside assessment of level of consciousness: comparison of two simple assessment scales with the Glasgow Coma scale. Anaesthesia. 2004;59(1):34-37. doi: 10.1111/j.1365-2044.2004.03526.x
- AVPU Scale. StatPearls. StatPearls Publishing. NCBI Bookshelf
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


