SARA・ICARS・BARS の違い【比較・使い分け】運動失調の評価

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ICARS・ SARA ・ BARS の違い【比較・使い分け】運動失調の評価を迷わない

運動失調の評価で迷いやすいのが、ICARS / SARA / BARS を「どれに揃えるか」です。結論として、目的(何を決めたいか)と頻度(どれだけ繰り返すか)を先に固定すると、スケール選びと再評価がブレません。

本記事では 3 つの尺度を「点数の説明」で終わらせず、いつ使い、いつ切り替え、記録に何を残すかまで、現場で回る形にまとめます。

結論:迷ったら「 BARS → SARA 」、詳細が必要なら「 ICARS 」

迷いを最短で減らすなら、まず BARS で全体像を掴み、以後の定点観測(経時変化)は SARA に揃える運用が回りやすいです。要素別に丁寧な説明が必要なときだけ、ICARS を「差し込み」で使います。

評価が崩れる最大の原因は、点数そのものではなく条件(補助具・介助量・時間帯・疲労)が揃っていないことです。揃えられない日は、条件変更を一言で残して比較の解釈を分けると安全です。

ICARS・ SARA ・ BARS の違い(早見表)

3 つの尺度は同じ「運動失調」を見ているようで、狙いと運用コストが違います。現場で選ぶために必要な軸だけを 1 枚にまとめます。

※スマホでは表を左右にスクロールできます。

ICARS / SARA / BARS の比較(成人・臨床運用の目安)
尺度 主な狙い 向く場面 強み 注意点(弱み) 運用のコツ
BARS 短時間で重症度を把握 忙しい病棟/外来/初回の当たり付け 短い/全体像が速い 要素分解は弱い(点数だけだと介入が決まりにくい) 点数+「崩れる条件」を 1 行で残す
SARA 定点観測(経時変化)に強い 定期再評価(週〜月)/チーム共有 回しやすい/比較がしやすい 合計点だけだと介入に落ちにくい 合計点+内訳(歩行・立位など)を短文化
ICARS ドメイン別に詳細評価 精査/説明責任が高い場面/方針変更前後 内訳が豊富/弱点を分解できる 運用が重い/継続しにくい 「差し込むタイミング」をルール化

使い分けの判断軸:目的 → 頻度 → 必要な細かさ( 3 ステップ )

スケール選択は、①目的 → ②頻度 → ③必要な細かさの順に決めるとブレません。たとえば「短時間で全体像が欲しい」なら BARS 、「同じ条件で経過を追いたい」なら SARA 、「要素別に説明して方針を決めたい」なら ICARS が向きます。

途中でスケールを変えるのは問題ありません。ただし比較が難しくなるので、切り替えた理由を 1 行で残すのがおすすめです(例:「時間短縮のため BARS へ」「精査のため ICARS 追加」)。

運用の型を作るなら、まず BARS で「全体像」を掴み、以後の定点観測は SARA に揃える方法が回しやすいです。忙しい現場でも継続しやすく、チーム共有の言語になりやすいのが利点です。

そのうえで、「どこが落ちたかを要素別に説明したい」「方針変更の根拠を作りたい」など詳細が必要なタイミングだけ ICARS を差し込みます。続かない尺度はデータが死ぬので、運用負担を先に設計しておくと安定します。

現場の詰まりどころ:点数はあるのに比較できない(条件が違う)

3 つの尺度に共通する落とし穴は、再評価の条件が揃わず、点数の上下を誤解してしまうことです。運動失調は疲労や体調で見え方が変わりやすいため、同条件で比較できるように「固定するもの」を先に決めます。

よくある失敗: NG → OK(再評価が強くなる)

「点数はあるのに活かせない」原因は、ほとんどが運用のズレです。“ OK ” に寄せるだけで、比較と共有が一気に楽になります。

※スマホでは表を左右にスクロールできます。

運動失調スケール運用で多い NG と対策(比較の精度を上げる)
NG(起きがち) 何が困る? OK(修正) 記録の一言(例)
補助具・介助量が毎回違う 点数変化が「条件差」か「病状変化」か不明 可能な範囲で同条件に固定/固定できないなら明記 「 T 字杖+見守り」「軽介助」
時間帯・疲労の統制なし 日内変動で点数が揺れる 時間帯を揃える/揃わない日は疲労を残す 「午後」「疲労強い」
点数だけで所見がない 介入に繋がらない/次回の比較も曖昧 崩れる条件を 1 行添える(条件+現象) 「方向転換で増悪」
実施順が毎回バラバラ 疲労の影響で見え方が変わり再現性が落ちる 実施順を固定(歩行→協調など) 「手順固定」

回避の手順:条件固定チェック(これだけ揃える)

再評価を強くする最短手順は、点数の前に条件を揃えることです。揃えられない項目があっても構いませんが、その場合は「比較の読み方」を分けるために一言で明記します。

※スマホでは表を左右にスクロールできます。

条件固定チェック(成人・臨床運用の最低限)
固定するもの なぜ必要? 揃わないときの扱い 記録の一言(例)
補助具・介助量 点数の上下が条件差になりやすい 変更理由を残し、比較は注意して読む 「安全優先で歩行器へ」
時間帯(内服後など) 日内変動・薬効で見え方が変わる 揃えられない日は疲労や体調も残す 「午後・疲労強い」
実施順 疲労で後半ほど崩れやすい 順番が違ったら比較は慎重に 「本日は順番変更」
床条件・靴 歩行・立位の難易度が変わる 床条件が違う日は別セッション扱い 「院内廊下/スニーカー」

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. まず 1 つに揃えるなら、どれが無難ですか?

A. 継続しやすさを最優先するなら、定点観測は SARA に揃えるのが無難です。時間がない日だけ BARS に落とす、詳細が必要な場面だけ ICARS を差し込む、という「例外ルール」を先に決めておくと運用が安定します。

Q2. 点数が日によって変わります。悪化と判断していいですか?

A. まず条件が同じかを確認します(補助具・介助量・時間帯・疲労・床条件)。条件が揃っていない場合、点数変化は「変動」かもしれません。同条件で数回そろえてブレ幅を把握してから解釈すると安全です。

Q3. スケールを途中で変えるのは NG ですか?

A. NG ではありません。ただし比較が難しくなるので、「なぜ変えたか」を 1 行で残すのがおすすめです。例:「外来の時間短縮で BARS へ」「精査のため ICARS 追加」など、目的が明確なら解釈が安定します。

Q4. 点数以外に、最低限どんな所見を書けばいいですか?

A. 「どの条件で崩れるか(条件+現象)」を 1 行で残します。例:「方向転換で増悪」「反復で破綻」「速度を上げると狙いが外れる」など、再評価と介入の両方に繋がります。

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参考文献

  1. Trouillas P, Takayanagi T, Hallett M, et al. International Cooperative Ataxia Rating Scale for pharmacological assessment of the cerebellar syndrome. J Neurol Sci. 1997;145(2):205-211. DOI: 10.1016/S0022-510X(96)00231-6
  2. Schmitz-Hübsch T, Tezenas du Montcel S, Baliko L, et al. Scale for the Assessment and Rating of Ataxia: Development of a new clinical scale. Neurology. 2006;66(11):1717-1720. DOI: 10.1212/01.wnl.0000219042.60538.92
  3. Schmahmann JD, Gardner R, MacMore J, Vangel MG. Development of a Brief Ataxia Rating Scale (BARS) based on a modified form of the ICARS. Mov Disord. 2009;24(12):1820-1828. DOI: 10.1002/mds.22681

著者情報

rehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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