DHI は「めまいによる生活上の支障」を数値化する評価です
DHI(Dizziness Handicap Inventory)は、めまい・ふらつきが生活、活動、感情面にどれだけ影響しているかを確認する患者報告型評価です。この記事では、DHI の目的、採点方法、解釈、記録例を臨床で使いやすい形に整理します。前庭リハ全体の評価・介入の流れは 前庭リハビリのやり方 と役割を分け、本記事では DHI の実践的な使い方に絞って解説します。
DHI とは
DHI は、めまいそのものの有無ではなく、めまいが日常生活に与える影響を把握する評価です。眼振や頭位変換検査だけでは見えにくい「外出が怖い」「買い物でふらつく」「振り向くと不安定」といった本人の困りごとを整理できます。
構成は 25 項目で、機能面 9 項目、情緒面 9 項目、身体面 7 項目に分かれます。合計点は 0〜100 点で、点数が高いほど、めまいによる自己認識上の支障が大きいと解釈します。
| 項目 | 内容 | 臨床での見方 |
|---|---|---|
| 目的 | めまいによる生活上の支障を確認する | 本人がどの場面で困っているかを整理する |
| 構成 | 25 項目 | 機能・情緒・身体の 3 領域で見る |
| 採点 | いいえ 0 点、ときどき 2 点、はい 4 点 | 合計点と下位領域の傾向を確認する |
| 合計点 | 0〜100 点 | 高いほど生活上の支障が大きい |
DHI の採点方法
DHI の採点は、各項目を 0 点、2 点、4 点で合計するだけです。ただし、臨床でブレやすいのは採点そのものではなく、説明の仕方と評価時点です。
初回評価では「現在の生活の中で、めまいのためにどの程度困っているか」を確認する形で説明をそろえます。再評価時も同じ説明で実施し、急性増悪直後か、症状が落ち着いた時期かを記録しておくと、点数変化を解釈しやすくなります。
| 確認項目 | そろえる理由 | 記録例 |
|---|---|---|
| 評価方法 | 自己記入か聞き取りかで回答が変わることがある | 自己記入で実施 |
| 評価時点 | 急性増悪直後と安定期では点数が変わりやすい | 発症 10 日後、症状は軽減傾向 |
| 内服・増悪 | 症状の強さに影響する可能性がある | 内服変更なし、前日増悪なし |
| 欠測 | 未回答を推定で埋めると比較しにくい | 1 項目未回答、理由を記載 |
DHI の解釈
DHI は合計点だけで重症度を断定せず、どの生活場面に支障が出ているかを読む評価です。一般的には、16〜34 点を軽度、36〜52 点を中等度、54 点以上を重度のハンディキャップとして扱う資料がありますが、点数だけで病態を判断しないことが重要です。
療養病棟や高齢患者では、めまいだけでなく筋力低下、不安、活動量低下、視力、認知機能なども生活上の支障に影響します。そのため、DHI は「本人が困っている場面を拾う評価」として使い、歩行やバランスの客観評価と組み合わせて解釈します。
| 所見 | 読み方 | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 合計点が高い | 生活上の支障が大きい可能性 | 外出、買い物、方向転換、起居動作での困りごと |
| 身体面が高い | 頭部運動や姿勢変化で症状が出やすい可能性 | 頭位変換、視線移動、寝返り、起き上がり |
| 機能面が高い | ADL・IADL に支障が出ている可能性 | 歩行、家事、買い物、屋外移動 |
| 情緒面が高い | 不安や回避行動の影響が大きい可能性 | 活動量低下、転倒不安、自信低下 |
DHI と組み合わせたい評価
DHI は主観的な生活影響をみる評価なので、病態の切り分けやバランス能力の確認には別の評価が必要です。DHI で「どれだけ困っているか」を確認し、客観評価で「どの条件で崩れるか」を確認すると、介入方針が立てやすくなります。

BPPV が疑われる場合は Dix-Hallpike のやり方と判定 を併用し、歩行中のふらつきが問題になる場合は FGA や TUG、立位での感覚依存を見たい場合は mCTSIB などを組み合わせます。
| 評価 | 主に見るもの | DHI と組み合わせる理由 |
|---|---|---|
| Dix-Hallpike | BPPV の誘発所見 | 生活影響と病態評価を分けて整理できる |
| mCTSIB | 視覚・体性感覚・前庭覚への依存 | 立位で崩れやすい条件を確認できる |
| FGA | 歩行中のバランス | 方向転換や頭部運動時の不安定さを確認できる |
| TUG | 起立、歩行、方向転換 | 生活動作に近い移動能力を確認できる |
臨床での使い方
DHI は、初回評価、介入方針の整理、再評価の 3 場面で使うと運用しやすい評価です。特に、客観検査では改善していても本人の不安や活動制限が残る場合に、生活上の支障を見える化できます。
実際の現場では、合計点だけをカルテに残すと次の介入につながりにくくなります。DHI の点数に加えて、困っている活動、悪化する動作、併用評価の結果を 1 行で残すと、カンファレンスや申し送りでも使いやすくなります。
DHI の記録例
DHI の記録は、合計点、目立つ領域、困る活動、併用評価、次回確認する課題まで書くと実践的です。点数だけではなく、生活場面と介入課題をつなげて記録します。
| 項目 | 記録内容 | 記録例 |
|---|---|---|
| 合計点 | DHI total | DHI 42 / 100 |
| 目立つ領域 | 機能面・情緒面・身体面の傾向 | 機能面の訴えが目立つ |
| 困る活動 | 実際に支障が出る場面 | 買い物中の方向転換でふらつきあり |
| 併用評価 | 客観評価の結果 | FGA で頭部運動課題に低下 |
| 次回課題 | 再評価・介入で見るポイント | 方向転換と視線安定性を再確認 |
記録例:DHI 42 / 100。機能面の訴えが目立つ。買い物中の方向転換でふらつきがあり、屋外歩行への不安を認める。FGA では頭部運動課題で低下。次回は方向転換時の安定性と視線固定課題を再評価する。
よくある失敗
DHI でよくある失敗は、合計点だけで判断してしまうことです。DHI は便利な評価ですが、病態を確定する検査ではないため、頭位変換検査や歩行・バランス評価と組み合わせて使います。
| 失敗 | 問題点 | 対策 |
|---|---|---|
| 合計点だけで終わる | 生活場面や介入課題が見えにくい | 困る活動を 1 つ記録する |
| 病態判断に使いすぎる | DHI だけでは原因を特定できない | 頭位変換検査やバランス評価を併用する |
| 再評価条件がそろわない | 点数変化の意味が読み取りにくい | 評価時点、内服、増悪の有無を残す |
| 説明が評価者ごとに違う | 回答がぶれやすい | 導入文を短く固定する |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. DHI は BPPV の患者さんにも使えますか?
使えます。ただし、DHI は BPPV を診断する検査ではありません。BPPV が疑われる場合は、Dix-Hallpike などの頭位変換検査で病態を確認し、DHI は生活上の支障や再評価の確認に使います。
Q2. DHI は何点から重いと判断しますか?
一般的には 16〜34 点を軽度、36〜52 点を中等度、54 点以上を重度のハンディキャップとして扱う資料があります。ただし、点数だけで判断せず、困っている活動や併用評価の結果と合わせて解釈します。
Q3. DHI だけで前庭リハの効果判定はできますか?
DHI だけでは不十分です。DHI は本人の困りごとを把握する評価であり、バランス能力や病態を直接示す評価ではありません。FGA、mCTSIB、TUG、頭位変換検査などと組み合わせると判断しやすくなります。
Q4. DHI の項目文を記事に全文掲載してもよいですか?
全文掲載は避けるのが安全です。記事では目的、採点、解釈、記録例を中心に整理し、実際の評価用紙は配布元や信頼できるデータベースから確認する運用が望ましいです。
次の一手
DHI を使うと、めまいによる生活上の支障を整理しやすくなります。次は、前庭リハ全体の流れと、BPPV 評価の実践手順を確認してください。
参考文献
- Jacobson GP, Newman CW. The development of the Dizziness Handicap Inventory. Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 1990;116(4):424-427. PubMed / DOI
- Hall CD, Herdman SJ, Whitney SL, et al. Vestibular Rehabilitation for Peripheral Vestibular Hypofunction: An Updated Clinical Practice Guideline From the Academy of Neurologic Physical Therapy of the American Physical Therapy Association. J Neurol Phys Ther. 2022;46(2):118-177. PubMed / DOI
- Tamber AL, Wilhelmsen KT, Strand LI. Measurement properties of the Dizziness Handicap Inventory by cross-sectional and longitudinal designs. Health Qual Life Outcomes. 2009;7:101. PubMed / DOI
- Eijsden K, Schermer T, Bruins Slot R, et al. Measurement Properties of the Dizziness Handicap Inventory: A Systematic Review. Otol Neurotol. 2022;43(3):e282-e297. DOI
- Shirley Ryan AbilityLab. Dizziness Handicap Inventory. Rehabilitation Measures Database. 公式ページ
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

