MG-ADL の使い方|時間帯・内服・活動後を揃えて追跡する
“点数” より先に「条件」を揃えると、経過が一気に読みやすくなります。 評価 → 介入 → 再評価の型を 3 分で復習する( PT キャリアガイド )
重症筋無力症( MG )は日内変動と疲労の影響が大きく、同じ患者でも「今日は軽い/重い」が起こりやすい疾患です。MG-ADL は、こうした揺れを含めて日常生活の困りごとを追跡できる一方、実施条件が揃っていないと “変化” が読めなくなります。
本記事は、MG-ADL を外来フォロー/病棟経過/申し送りで “使える記録” にするために、時間帯・内服・活動直後の揃え方と、カルテ記載の型を整理します。MGFA や QMG との使い分けを先に確認したい場合は、重症筋無力症の重症度評価まとめ( MGFA/ MG-ADL/ QMG/ PIS )を先に読むと迷いが減ります。
結論:MG-ADL は「同じ条件で繰り返す」ほど価値が上がる
MG-ADL は “点数をつけること” が目的ではなく、同じ条件で繰り返し、困りごとの増減を短い言葉で共有するための道具です。条件が毎回違うと、点数の上下が「病勢」なのか「評価条件」なのか区別できません。
運用のコツはシンプルで、①時間帯、②内服との関係、③活動直後かどうかを “できる範囲で固定” し、難しい場合でも条件差を 1 行で残すことです。
| 固定したい条件 | なぜ必要? | 現場メモ例 | 詰まりどころ |
|---|---|---|---|
| 時間帯 | 日内変動の影響を揃える | 「午前で統一」 | 外来時間が毎回ずれる |
| 内服との関係 | 薬効の波で症状が動く | 「内服後 1 時間」 | 服薬時刻が不明 |
| 活動直後の有無 | 疲労の上乗せで過大評価になりやすい | 「歩行練習直後のため条件差あり」 | 病棟は介入直後にしか取れない |
| 補助メモ(任意) | 比較の解像度が上がる | 「食事中のむせ増/会話の息継ぎ増」 | 点数だけで終わる |
5 分フロー:MG-ADL を “比較できる記録” にする手順
MG-ADL は、手順を増やすほど良いわけではありません。条件の固定 → 点数 → 変化した領域を一言の順でまとめると、申し送りが短くなります。
病棟と外来で完全に同じ条件にできない場合は、同一場面(例:外来は外来、病棟は病棟)で条件の型を固定し、場面をまたいで比較するときだけ “条件差あり” と明記します。
| ステップ | やること | コツ | 記録の型(例) |
|---|---|---|---|
| ① 条件を確認 | 時間帯・内服・活動直後 | 全部揃わなくても “分かる範囲” を書く | 「午前・内服後」 |
| ② 点数を取る | MG-ADL 合計 | 点数は “比較のためのラベル” | 「MG-ADL 8」 |
| ③ 変化領域を一言 | 困りごとが増えた領域 | 介入の方向が決まりやすい | 「嚥下・発話の訴えが増」 |
| ④ 次回の条件を決める | 次回も同条件で追う | 比較を成立させる | 「次回も午前・内服後で統一」 |
カルテ記載のコツ: “点数+条件+一言” で伝わる
MG-ADL は「点数」よりも、条件と一言が情報のコアです。点数だけだと “揺れ” の意味が読めませんが、条件が書いてあると、次のスタッフが同じ枠で見直せます。
特に、球・呼吸が絡むケースでは、食事と会話に関する短い観察を一言添えるだけで、安全管理が上がります。
| 場面 | 記載例 | ポイント |
|---|---|---|
| 外来フォロー | 「MG-ADL 8→ 6(午前・内服後)。発話疲労が軽減」 | 同条件で比較 |
| 病棟経過 | 「MG-ADL 7(介入前・午後)。歩行練習直後のため条件差あり」 | 条件差を明記 |
| 申し送り(短文) | 「MG-ADL 6(午前・内服後)。食事でむせは増悪なし」 | 安全情報を一言 |
よくある失敗:MG-ADL が “使えない点数” になる原因
MG-ADL が使いにくくなる原因は、ほぼ 2 つです。ひとつは条件が毎回違うこと、もうひとつは点数だけで終わることです。前者は “条件 1 行” で解決し、後者は “変化領域を一言” で解決します。
忙しい現場ほど、点数を取るよりも「条件と一言」を優先すると、情報が崩れません。
| 失敗パターン | 何が困る? | 対策(最小) |
|---|---|---|
| 点数だけ記録 | 何が変わったのか分からない | 変化領域を 1 行で残す(例:嚥下/発話/易疲労) |
| 条件が不明 | 病勢か条件差か判定不能 | 時間帯・内服・活動直後を “分かる範囲” で書く |
| 比較対象がバラバラ | 前回と同じ意味で比べられない | 外来は外来、病棟は病棟で “同場面の型” を固定 |
よくある質問( FAQ )
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Q1. MG-ADL は毎回いつ取るのが良いですか?
A. “毎回同じ条件” が最優先です。外来なら「午前・内服後」など、病棟なら「介入前」など、場面ごとに型を決めて固定すると比較が成立します。
Q2. 内服時刻が分からないときはどうしますか?
A. 分からないこと自体を短く書きます(例:「内服時刻不明」)。その上で、次回は服薬時刻を確認して “同条件化” を目指すと、追跡の質が上がります。
Q3. 点数が変わったとき、何を一言で残すべきですか?
A. “困りごとが増えた領域” を一言で残すのが実務的です(例:嚥下、発話、易疲労、歩行)。点数+条件+一言が揃うと、介入の方向が決まりやすくなります。
参考文献
- Wolfe GI, Herbelin L, Nations SP, Foster B, Bryan WW, Barohn RJ. Myasthenia gravis activities of daily living profile. Neurology. 1999;52(7):1487-1489. doi: 10.1212/WNL.52.7.1487 / PubMed: 10227640
- Muppidi S, Wolfe GI, Conaway M, Burns TM; MG Composite and MG-QOL15 Study Group. MG-ADL: still a relevant outcome measure. Muscle Nerve. 2011;44(5):727-731. doi: 10.1002/mus.22140 / PubMed: 22006686
- Narayanaswami P, Sanders DB, Wolfe G, et al. International Consensus Guidance for Management of Myasthenia Gravis: 2020 Update. Neurology. 2021;96(3):114-122. doi: 10.1212/WNL.0000000000011124 / PubMed: 33144515
おわりに
MG-ADL は、点数を増やすより「同条件で繰り返す」ことで価値が上がります。時間帯・内服・活動直後を 1 行で揃え、点数に “変化領域の一言” を添えるだけで、経過が読みやすくなります。
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

