在宅で体重が測れないときの栄養評価|代替指標と記録の型

栄養・嚥下
記事内に広告が含まれています。

在宅で体重が測れないときの栄養モニタリング|代替指標セットと記録の型

在宅の栄養は「拾う → 条件を揃えて追う」を固定すると、説明と連携が速くなります。 臨床の型と働き方をまとめて整理する( PT キャリアガイド )

在宅・訪問リハでは、体重が測れない(体重計がない/拒否/起立困難/安全面で無理)または、浮腫などで体重が“信頼できない”場面が珍しくありません。ここで重要なのは「体重の代わりに何を 1 つ測るか」ではなく、代替指標を 1 セット化し、同一条件で追うことです。

本ページは、体重が取れない状況でも回るように、摂取量(量)+周径(形)+浮腫(質)+機能(動作)+食欲(主観)の「代替指標セット」で、初回 5 分で“追える形”に落とし込む手順と、連携で通る記録の型( SOAP )を 1 ページにまとめます。

この記事の守備範囲|「測り方」ではなく「追い方(モニタリング)」に特化

体重が測れないときは、①測定そのものが難しい、②測れても浮腫・脱水・点滴・排泄などで読み違えやすい、の 2 パターンがあります。どちらも “数字がない” こと以上に、変化を説明できないのが問題です。

本記事は、体重の測定方法そのもの(車椅子体重計などの手技)ではなく、体重がなくても変化が説明できる追跡設計に絞ります。スクリーニングツールの使い分けは、親記事で整理しています。

関連:栄養スクリーニング(低栄養リスク)の使い分け【場面別フロー】

体重が取れないと何が困る?(現場の詰まりどころ)

体重がないと、①低栄養リスクの説明が「印象」になりやすい、②介入(補食・ ONS ・運動)の効果判定が曖昧になる、③多職種への相談が通りにくい、が起きやすくなります。

解決策はシンプルで、代替指標セットを決めて、同一条件で反復し、1 行で共有できる形に整えることです。次章でセットの作り方を固定します。

代替指標セット|「量・形・質・動作・主観」を 1 セットでそろえる

体重が取れない場面でも、栄養の変化は 食べられているか(量)体型が落ちていないか(形)水分でごまかされていないか(質)動けているか(動作)食欲はどうか(主観)で追えます。

ポイントは「どれが正しいか」よりも、同じ条件で繰り返すことです。最小限でよいので、時間帯(朝/夕)・姿勢(座位など)・側(右/左)・測定者を固定してください。

早見表|体重が取れないときの代替指標(在宅・訪問版)

※スマホでは表を左右にスクロールできます。

体重が測れない場面の代替指標セット(在宅・訪問リハ向け)
カテゴリ 指標(例) 残すときの型 解釈のコツ 読み違えやすい点
摂取量(主食・主菜・間食の割合) 「普段を 10 として今日は?」で数値化 3 日〜 1 週の平均で見る “昨日だけ” で判断
MUAC(上腕周囲長) 側・姿勢・時間帯を固定して cm を残す 週次〜隔週で同条件比較 浮腫側で測る/条件が毎回変わる
下腿周径(最大周径) 座位・膝角度など条件を 1 行で残す 筋量の proxy として “変化” を追う 浮腫で増えても “改善” と誤解
浮腫(圧痕・左右差・時間帯) 「夕方に圧痕あり」など再現できる言い方 周径・症状とセットで解釈 水分で“体型が保たれて見える”
動作 立ち上がり/歩行(最小 1 つ) 条件固定(同じ椅子・見守り)で回数/可否 栄養単独ではなく “結果” として併記 疼痛や呼吸症状で一時的に低下
主観 食欲(簡易質問)/食後症状 同じ聞き方で頻度を残す 摂取量とセットで残す 抑うつ・疼痛の影響を見落とす

初回 5 分フロー|「追える形」にして再評価条件まで決め切る

  1. 摂取量(量):主食・主菜・間食の割合を数値化( 10 段階でも可)
  2. 周径(形):MUAC と下腿周径のうち “同条件で回しやすい方” を 1 つ決める
  3. 浮腫(質):圧痕の有無、左右差、時間帯(朝/夕)を 1 行で残す
  4. 機能(動作):最小 1 つ(立ち上がり or 歩行)を条件固定で記録
  5. 1 週間目標:摂取量(例: 5/10 → 7/10 )と支援(補食・環境)を 1 行で
  6. 再評価条件:いつ(曜日・時間帯)/姿勢/側/担当を固定

記録テンプレ|体重なしでも「変化が説明できる」SOAP の型

体重が測れないときの SOAP 記録テンプレ(在宅・訪問リハ)
区分 書き方(例) ポイント
S 食事量は主食 6/10、主菜 4/10。夕方に下肢がむくむ。食欲は「以前より落ちた」。 割合と時間帯で “再現” する
O MUAC 24.0 cm(右・座位・朝食前)。下腿周径 32.0 cm(座位・膝 90°)。浮腫:夕方に圧痕あり。立ち上がり:見守りで 5 回可。 条件(側・姿勢・時間帯)を必ず書く
A 摂取量低下が持続。浮腫があり体型は見かけ上保たれやすい。周径は “同条件での変化” を重視して追跡。 水分の影響を先に言語化する
P 補食を 1 回追加し、夕方のむくみ対策(体位・下肢挙上)を併用。次回( 1 週後)も同条件で摂取量+周径+浮腫+動作を再評価。 次回条件の固定を計画に入れる

連携で通る 1 行要約|相談・引き継ぎの “型”

多職種に通りやすいのは、「量+形+質+次の一手」を 1 行にまとめた共有です。

  • 例:「摂取量 5/10 が 1 週続き、夕方浮腫あり。MUAC 24.0 cm(右・座位・朝食前)で固定して追跡予定。補食導入し 1 週後に再評価します。」

よくある失敗(OK / NG)|“条件固定” が崩れると追えなくなる

体重が測れない場面の OK / NG(追跡設計の崩れを防ぐ)
テーマ NG OK 一言記録(例)
条件固定 毎回、姿勢・時間帯・側がバラバラ 「右・座位・朝食前」など最小固定 「右・座位・朝食前で統一」
浮腫の扱い 周径が増えた=改善と判断 浮腫所見とセットで解釈 「夕方圧痕あり、周径は参考」
摂取量 “食べている” の一言で終わる 割合で数値化して残す 「主食 6/10、主菜 4/10」
次アクション 評価して終わる 1 週目標+再評価日を決める 「補食 1 回、1 週後再評価」

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. MUAC と下腿周径、どちらを優先すればいい?

結論として、同条件で反復しやすい方を優先します。重要なのは “どちらが正しいか” ではなく、側・姿勢・時間帯を固定して、変化を説明できる形で追うことです。

Q2. 浮腫が強いとき、周径は使えませんか?

使えないわけではありませんが、単独解釈は危険です。浮腫(圧痕・左右差・時間帯)を併記し、摂取量や動作とセットで “変化” を追います。「浮腫が落ち着くまでは参考値」と明示すると判断が揃います。

Q3. どのくらいの頻度で再評価すればいい?

まずは 1 週で 1 回、同条件で回すと “追える形” が作れます。状況が落ち着けば 2〜 4 週へ延長し、摂取量と機能の推移で調整します。

Q4. スクリーニング陽性のあと、相談(栄養士・医師)はいつ?

摂取量低下が続く、浮腫などで評価が難しい、原因が複合(嚥下・疼痛・抑うつなど)のときは早めがスムーズです。相談時は「摂取量(割合)・周径(条件固定)・浮腫所見・動作」を 1 行でまとめて共有してください。

次の一手

参考文献

  1. Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition – A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. doi:10.1016/j.clnu.2018.08.002PubMed
  2. Kondrup J, Allison SP, Elia M, Vellas B, Plauth M. ESPEN guidelines for nutrition screening 2002. Clin Nutr. 2003;22(4):415-421. doi:10.1016/S0261-5614(03)00098-0PubMed
  3. Cruz-Jentoft AJ, Bahat G, Bauer J, et al. Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis (EWGSOP2). Age Ageing. 2019;48(1):16-31. doi:10.1093/ageing/afy169PubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

運営者について編集・引用ポリシーお問い合わせ

タイトルとURLをコピーしました