Trendelenburgテスト|やり方・陽性所見・30秒との違い

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Trendelenburgテストは「遊脚側骨盤の下制」をみる

Trendelenburgテスト(Trendelenburg徴候)は、片脚立位で支持脚と反対側の骨盤が下がるかを確認する身体所見です。陽性所見は股関節外転機構の機能不全を考える手がかりになりますが、「陽性=中殿筋の筋力低下」と単独で判断することはできません。

この記事では、理学療法士などの医療従事者向けに、Trendelenburgテストのやり方、陽性所見、体幹側屈の扱い、30秒片脚立位テストとの違い、結果の解釈と記録方法を整理します。ポイントは、骨盤下制・体幹代償・疼痛を別々の所見として読むことです。

まずここだけ:右脚で立ったときに左骨盤が下がれば、「右支持でTrendelenburg徴候陽性」と整理します。支持側への体幹側屈や膝内側偏位、外側股関節痛は重要な所見ですが、骨盤下制と同じ陽性所見として扱わないことがポイントです。

Trendelenburgテストの陽性|どちらの骨盤が下がるか

Trendelenburg徴候の中心となる陽性所見は、片脚立位で遊脚側、つまり支持脚と反対側の骨盤が下がることです。股関節周囲の外転機構が働くことで、通常は片脚支持中の骨盤を前額面上で保持します。対側骨盤が下制した場合は、支持側股関節を中心とした側方支持機能をさらに確認するきっかけになります。1

Trendelenburgテストで分けて見る4つの所見
確認項目 所見 扱い
遊脚側骨盤 支持脚と反対側へ下制する 中心となる陽性所見
体幹 支持脚側へ側屈する 代償所見として記録する
支持脚の膝・足部 膝内側偏位、回旋など 支持戦略の補足所見として記録する
疼痛 外側痛、鼠径部痛など Trendelenburg陽性とは分けて記録する
Trendelenburgテストの陽性所見と体幹側屈、膝内側偏位、30秒片脚立位テストとの違いを整理した図版
Trendelenburgテストでは遊脚側骨盤の下制が中心所見です。支持側への体幹側屈は代償、膝内側偏位は補足所見として分けて観察します。30秒片脚立位で外側股関節痛をみるテストとは判定対象が異なります。

特に注意したいのが体幹側屈です。支持脚側へ体幹を傾けることで股関節周囲に必要な外転モーメントを変化させ、骨盤下制が目立ちにくくなることがあります。そのため、「骨盤が下がっていないから問題なし」とせず、体幹の位置も別項目として確認します。

Trendelenburgテストのやり方

Trendelenburgテストでは、どちらを支持脚にしたかを明確にし、骨盤と体幹を同じ条件で左右比較することが重要です。10秒や30秒といった時間だけを先に固定する必要はありません。

  1. 立位の安全性を確認する:片脚立位が可能か、転倒リスクや強い疼痛がないかを確認します。
  2. 開始時の骨盤を確認する:腸骨稜などを目安に、両脚立位での骨盤の左右差を確認します。
  3. 検査する側を支持脚にする:反対側の足を床から離し、片脚立位とします。
  4. 遊脚側骨盤を観察する:骨盤が保持されるか、上がるか、下がるかを確認します。
  5. 体幹を観察する:支持脚側への体幹側屈が出ていないかを確認します。
  6. 補足所見を確認する:膝・足部の位置、疼痛、ふらつき、外部支持の有無を必要に応じて記録します。
  7. 反対側も同じ条件で行う:左右差を見る場合は、手の位置や外部支持などの条件をできるだけそろえます。

片脚立位そのものが難しい症例では、安全確保を優先します。手すりや壁への接触が必要であれば使用し、「手すり支持あり」「軽度上肢支持あり」など実施条件を記録してください。支持ありの結果と支持なしの結果を同じものとして比較しないことが重要です。

Trendelenburgテストは何秒?|10秒・30秒を固定基準にしない

Trendelenburg徴候について、すべての対象者に共通する「10秒で判定する」「30秒保持すれば陽性を判断できる」という統一された時間基準はありません。研究や臨床報告でも、実施条件や陽性判定方法には違いがあります。視診による陽性・陰性判定と3次元動作解析との一致が弱かった報告もあり、微細な骨盤運動の判定には注意が必要です。1

したがって再評価では、「何秒が正しいか」を決めることより、支持条件・上肢支持・足部位置・観察位置などをそろえて比較することを優先します。施設内で保持時間を決めて運用する場合も、それをTrendelenburg徴候そのものの公式な陽性基準とは分けて扱います。

30秒片脚立位テストとは別|外側股関節痛をみるテストと混同しない

「30秒」という数字が出てくる理由の1つに、殿筋腱障害など外側股関節痛の評価で用いられる30秒片脚立位テストがあります。このテストでは、患側で片脚立位を行い、30秒以内に普段の外側股関節痛が再現するかを確認します。3

つまり、Trendelenburg徴候の中心は骨盤下制、30秒片脚立位テストの中心は外側股関節痛の再現です。同じ片脚立位でも、何を陽性とするかが異なります。

Trendelenburg徴候と30秒片脚立位テストの違い
項目 Trendelenburg徴候 30秒片脚立位テスト
主にみるもの 片脚支持時の骨盤保持 外側股関節痛の誘発
中心となる陽性所見 遊脚側骨盤の下制 患側片脚立位中の外側股関節痛の再現
30秒 必須の陽性基準ではない 疼痛誘発を確認する観察時間として研究されている
解釈 側方支持機能を考える手がかり 殿筋腱障害などを疑う所見の1つ

外側股関節痛が再現したとしても、それだけでTrendelenburg徴候陽性とはしません。また、GTPSや殿筋腱障害を評価する場合も単独テストで診断を確定せず、大転子周囲の圧痛や抵抗下股関節外転など、他の臨床所見と組み合わせて判断します。システマティックレビューでも、複数所見を組み合わせた診断戦略が検討されています。4

Trendelenburg陽性=中殿筋低下ではない

Trendelenburg徴候は股関節外転機構の機能不全を考える手がかりですが、陽性だから中殿筋の筋力が低下している、と単独で断定することはできません。

2020年の研究では、健常若年成人におけるTrendelenburgテスト中の骨盤運動と股関節外転筋トルクの関連は限定的で、視診による判定と3次元動作解析との一致も弱い結果でした。1

さらに2026年に報告された実験研究では、殿筋群を選択的に神経ブロックした際にも、Trendelenburg徴候や体幹代償の出現は一様ではありませんでした。著者らは、Trendelenburg徴候とDuchenne徴候を中殿筋・小殿筋の筋力低下だけに帰属させるべきではないとしています。2

そのため臨床では、「陽性か陰性か」で評価を終えず、何が片脚支持を崩しているかを追加評価します。

Trendelenburg所見から次に確認すること
主な所見 考えること 次に確認すること
遊脚側骨盤が下がる 側方支持機能の低下 股関節外転筋力、疼痛、片脚支持能力
支持脚側へ体幹側屈する 骨盤下制を補う戦略や疼痛回避 体幹を中間位に近づけたときの変化、疼痛
外側股関節痛を伴う GTPS・殿筋腱障害などを含む外側痛 大転子周囲の圧痛、抵抗下外転など
膝内側偏位を伴う 下肢全体の支持戦略 股関節・膝・足部のアライメントと運動戦略
歩行時にも対側骨盤が下がる 動的な立脚期での骨盤制御 出現する歩行相、体幹代償、疼痛との関係

体幹側屈はどう読む?|骨盤下制とは分けて記録する

片脚立位で支持脚側へ体幹を傾ける所見は、骨盤下制と同じものではありません。体幹を支持側へ移動させることで、片脚支持時の力学的条件を変える代償として現れることがあります。

このため、体幹側屈が強い症例では「骨盤が下がったか」だけを確認すると、支持戦略を見落とす可能性があります。例えば、骨盤がほぼ水平でも強い体幹側屈を伴う場合は、単純に「Trendelenburg陰性、問題なし」とせず、骨盤下制は明らかでないが支持側への体幹側屈ありと記録します。

逆に、体幹側屈があることだけを理由にTrendelenburg徴候陽性とするのではなく、骨盤所見と分けて残すと再評価しやすくなります。

よくある判定ミス|陽性所見と補足所見を混ぜない

Trendelenburgテストで判定がブレる原因は、片脚立位で起きた変化をすべて「中殿筋低下」や「Trendelenburg陽性」とまとめてしまうことです。特に次の5点は分けて考えます。

Trendelenburgテストでよくある判定ミス
判定ミス 修正する考え方
体幹側屈があれば陽性とする 骨盤下制と体幹代償を分けて記録する
膝が内側へ入れば陽性とする 膝内側偏位は支持戦略の補足所見として扱う
外側股関節痛が出れば陽性とする 疼痛誘発と骨盤下制を分ける
30秒保持しないと判定できないと考える Trendelenburg徴候に30秒という統一基準はない
陽性なら中殿筋低下と確定する 筋力、疼痛、体幹、支持戦略を追加評価する

記録方法|支持側・骨盤・体幹・疼痛を残す

カルテでは「Trendelenburg陽性」の一言だけで終えず、どちらを支持脚にしたか、遊脚側骨盤がどう動いたか、体幹代償、疼痛、実施条件を残すと再評価につながります。

Trendelenburgテストのカルテ記録例
場面 記録例
骨盤下制あり Trendelenburg:右支持で左骨盤下制あり。体幹右側屈あり。疼痛なし。
体幹代償が目立つ Trendelenburg:左支持で明らかな右骨盤下制は認めないが、体幹左側屈が強い。
外側痛を伴う Trendelenburg:右支持で左骨盤下制あり。右大転子周囲に荷重時痛あり。
外部支持が必要 Trendelenburg:右支持。軽度手すり支持下で左骨盤下制あり。支持なしでは片脚立位困難。

再評価では、骨盤の高さだけを比較するのではなく、体幹代償が減ったか、外部支持が変わったか、疼痛の出方が変化したかも同じ条件で確認します。保持時間を記録する場合も、時間そのものを陽性基準とせず、実施条件の1つとして残します。

臨床では「所見→追加評価」までつなげる

Trendelenburgテストの役割は、片脚立位で骨盤が下がったことを確認して終わることではありません。その所見を説明するために、次に何を確認するかを決めることが重要です。

  • 骨盤下制がある → 股関節外転筋力、疼痛、片脚支持能力を確認する
  • 体幹側屈が強い → 代償を減らした条件で骨盤がどう変化するか確認する
  • 外側痛がある → GTPS・殿筋腱障害を含め、大転子周囲の所見を確認する
  • 歩行時にも骨盤下制がある → 立脚期のどこで出るか、疼痛や体幹代償との関係を確認する

このように、「中殿筋が弱いから外転筋トレーニング」とすぐに介入へ進むのではなく、筋力低下、疼痛、支持戦略のどれが主要因なのかを絞ってから介入と再評価へつなげます。

よくある質問

Trendelenburgテストでは、どちらの骨盤が下がると陽性ですか?

支持脚と反対側、つまり遊脚側の骨盤が下がるとTrendelenburg徴候陽性です。例えば右脚支持で左骨盤が下がれば、「右支持で左骨盤下制あり」と記録します。

Trendelenburgテストは30秒保持する必要がありますか?

Trendelenburg徴候そのものに、30秒という統一された陽性基準があるわけではありません。外側股関節痛の評価で用いられる30秒片脚立位テストは、外側痛の再現を確認する別の評価です。再評価では、保持時間だけでなく実施条件をそろえることが重要です。

Trendelenburg陽性なら中殿筋が弱いと判断してよいですか?

単独では断定できません。股関節外転機構の機能不全を考える材料にはなりますが、疼痛、体幹代償、他の殿筋群、支持戦略なども関係します。筋力を確認したい場合は、徒手筋力検査や必要に応じた筋力測定を別に行います。

次の一手

Trendelenburgテストは、股関節テスト全体の中では片脚支持時の側方安定を確認する位置づけです。テストを選ぶ段階へ戻る場合と、歩行中の骨盤下制を深掘りする場合で次の記事を分けます。


参考文献

  1. McCarney L, Andrews A, Henry P, Fazalbhoy A, Selva Raj I, Lythgo N, Kendall JC. Determining Trendelenburg test validity and reliability using 3-dimensional motion analysis and muscle dynamometry. Chiropr Man Therap. 2020;28(1):53. DOI: 10.1186/s12998-020-00344-3. PubMed: 33076947.
  2. Schmid M, Hoch A, Dimitriou D, Rosner J, Schubert M, Eichenberger U, Zingg PO. Evaluation of Trendelenburg and Duchenne signs by experimentally induced gluteal muscle paralysis. Clin Biomech (Bristol). 2026;139:106931. Epub 2026 Jul 24. DOI: 10.1016/j.clinbiomech.2026.106931. PubMed: 42501605.
  3. Grimaldi A, Mellor R, Nicolson P, Hodges P, Bennell K, Vicenzino B. Utility of clinical tests to diagnose MRI-confirmed gluteal tendinopathy in patients presenting with lateral hip pain. Br J Sports Med. 2017;51(6):519-524. DOI: 10.1136/bjsports-2016-096175. PubMed: 27633027.
  4. Kinsella R, Semciw AI, Hawke LJ, Stoney J, Choong PFM, Dowsey MM. Diagnostic Accuracy of Clinical Tests for Assessing Greater Trochanteric Pain Syndrome: A Systematic Review With Meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2024;54(1):26-49. DOI: 10.2519/jospt.2023.11890. PubMed: 37561820.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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