嚥下 GL 2024|所見から訓練を選ぶ運用の型

制度・実務
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嚥下 GL 2024|所見→訓練の選び方を「型」に固定

嚥下障害の現場で一番つまずきやすいのは、VE / VF の所見は分かるのに、次に何を選ぶかがブレることです。本記事は、嚥下 GL 2024 の考え方をベースに、所見→介入→記録→再評価を 1 本の流れとして固定し、チームで再現できる「運用の型」を作ります。

評価の武器(所見→介入の型)を増やしつつ、働き方の選択肢も押さえると迷いが減ります。 PT キャリアの全体像を 5 分で把握する

この記事の使い方:所見を 3 群に分けて迷いを消す

まず所見を、①安全(気道防御)②効率(残留・輸送)③持続(疲労・栄養)の 3 群に分けます。次に、優先順位(安全→効率→持続)で介入を選び、最後に記録テンプレで「理由」と「次の一手」を残します。これだけで、同じ患者でも担当者で方針が割れにくくなります。

評価のまとめ方:VE / VF 所見を「行動に変換」するメモ術

所見は、専門用語を並べるよりも行動が決まる単位に落とすと再現性が上がります。おすすめは「何が(問題)→いつ(タイミング)→どこで(部位)→どれくらい(程度)→何が起きた(誤嚥・残留・咳反射など)」の順で 1 行化することです。

  • :薄い液体で嚥下反射が遅れ、咽頭侵入が増える(姿勢調整とボーラス調整が必要)
  • :梨状窩残留が多く、複数回嚥下でもクリアしにくい(効率改善と代償手技を優先)

所見→介入マッピング表(早見)

※ 表は横にスクロールできます。

VE / VF 所見から介入を選ぶ早見(成人・運用版)
所見カテゴリ よくある観察所見(言い換え) まずやる(第一選択) 次に検討(条件つき) 記録キーワード(例)
気道防御 嚥下前後で咽頭侵入が増える/咳が弱い 安全条件の固定(体位・速度・量)+呼吸状態の整理 呼吸筋トレーニング/咳介助の標準化 「安全条件:体位○、量○、速度○」「咳反応:○」
タイミング 嚥下反射の立ち上がりが遅れる印象 刺激量と提示方法の統一(同条件で反応を見る) 段階づけ(食形態の調整)+疲労回避の休憩設計 「反射:遅延あり/条件で変化」
残留(効率) 喉に残って何度も飲み直す 複数回嚥下のルール化+姿勢調整(頭頸部・体幹) 咽頭クリア方法の選択(条件つき) 「残留:部位○、程度○、クリア:可/不可」
片側優位 左右差があり、片側に残留しやすい 左右差を前提にポジショニングと提示側を固定 頸部回旋など代償の検討(実施条件を記録) 「左右差:右>左」「提示側:○」
口腔期 送り込みが不安定/口腔内に残る 姿勢・支持面・注意資源を整えて再試行 食形態の段階づけ/口腔ケアの運用 「口腔残留:○」「送り込み:安定/不安定」
疲労 後半で咳・声・嚥下が崩れる 回数・休憩・時間帯を固定(負荷設計) 栄養・水分と連動した頻度設計 「疲労:○ 分で悪化」「休憩:○」
呼吸 SpO2 低下や呼吸苦で嚥下が不安定 呼吸状態の安定化(先に呼吸、後に嚥下) 呼吸筋トレーニング/呼吸リズムの再学習 「呼吸:RR ○、SpO2 ○」「呼吸先行」
認知・注意 指示が入らず、手順が保てない 環境調整(刺激減)+介助手順の固定 家族・看護へ介助統一の申し送り 「手順:統一」「介助:○」
嚥下後 嚥下後の湿声・痰が増える 嚥下後の確認手順を固定(声・痰・呼吸) 排痰介助の併用/体位ドレナージ検討 「嚥下後:湿声あり」「痰:○」
全体設計 評価と訓練が日によってバラつく 条件(体位・量・形態・回数)の標準化 週単位で再評価日を固定 「条件固定」「再評価:○ 日」

迷ったときの優先順位:安全→効率→持続で決める

介入の選択で迷ったら、安全(誤嚥リスク)を最優先に固定し、次に効率(残留・輸送)、最後に持続(疲労・栄養)を整えます。安全が崩れている状態で効率を追うと、短期的に摂取量が増えても合併症リスクが上がりやすいので、順番を崩さないことがポイントです。

安全管理 OK / NG:中止・延期ラインを表で固定

※ 表は横にスクロールできます。

嚥下訓練の安全管理(成人・運用版)
状況 OK(続行条件) NG(中止/延期) その場の対応
意識 覚醒が保て、指示が 1 手は入る 傾眠が強く、手順が維持できない まず覚醒・座位保持を優先し、別枠で再評価
呼吸苦 呼吸が落ち着き、会話が可能 息切れで嚥下が分断される 呼吸を整える介入へ切替(休憩・体位)
SpO2 ベースラインで安定(個別基準) 低下が持続/回復が遅い 中止し、呼吸状態の確認と共有
喀出が可能で、増悪傾向がない 喀出困難で痰が貯留する 排痰介助・吸引を優先し、嚥下は延期
発熱 感染徴候が落ち着き、全身状態が安定 急な発熱・悪寒・全身状態悪化 中止し、医師/看護へ報告(誤嚥性肺炎も含め確認)
疲労 休憩で回復し、後半も手順が保てる 後半で湿声・咳・誤嚥徴候が増える 回数を減らし、疲労が出る前で終了
疼痛 疼痛がコントロールされ、姿勢が保てる 疼痛で姿勢が崩れ、代償が増える 鎮痛・ポジショニングを先に整える
ライン/機器 体位変換が安全に可能 体位変換でリスクが高い 実施範囲を限定し、代替手段へ

記録テンプレ:評価→介入→反応→再評価→共有

嚥下の記録は「やったこと」だけでは伝わりません。所見(根拠)→選択(理由)→条件(再現)→反応(評価)→次回(判断)まで 1 セットで残すと、チームで迷いが減ります。

※ 表は横にスクロールできます。

嚥下リハ記録テンプレ(現場運用・最小セット)
書く内容(例) 落とし穴 回避のコツ
評価 条件(体位・形態・量)+所見(安全/効率/持続) 条件が書かれず再現できない 体位・量・回数を必ず固定して書く
介入 第一選択(何を/どの条件で/何回) 目的が曖昧で「やった感」だけになる 所見→介入の対応を 1 行で書く
反応 湿声・咳・痰・呼吸の変化、残留の変化 評価が主観だけ 観察項目を固定(声/咳/痰/呼吸)
再評価 次回の判断(継続/変更/延期)と理由 次の一手が書かれず連携が止まる 「条件固定で再試行」など判断を明示
共有 看護/家族へ伝える手順(介助方法・注意点) 申し送りが口頭のみで揺れる 介助手順を 3 点に絞って書く

症例で見る:書き方の完成形(そのまま使える)

評価:座位保持可。薄い液体で嚥下後の湿声あり。咳反応は弱く、嚥下後に痰が増える傾向。残留は中等度で複数回嚥下で一部クリア。

介入:安全優先で条件固定(体位調整+量と速度を統一)。嚥下後チェック(声・咳・痰・呼吸)を毎回実施。疲労が出る前(一定回数)で終了。

反応/再評価:条件固定で湿声が減少し、嚥下後の痰も軽減。次回は同条件で再試行し、残留が残る場合は効率改善(姿勢と複数回嚥下のルール化)を追加する。

現場の詰まりどころ:連携・時間・教育で崩れやすい

嚥下は「個人技」になりやすい領域です。崩れやすいのは、①条件が毎回変わる②安全ラインが共有されていない③記録が所見止まりで判断が残らないの 3 点です。この記事の表(マッピング表・OK/NG・記録テンプレ)を院内の共通言語として置くと、担当者が変わっても質が落ちにくくなります。

よくある失敗 5 つと回避策

  • 所見は書くが、訓練選択の理由がない:マッピング表の「記録キーワード」を 1 行添えて根拠を残します。
  • 体位・量・回数が日替わりで比較できない:条件を 1 つずつ固定し、変えるなら「何を変えたか」を明記します。
  • 安全ラインが曖昧で中止判断がブレる:OK/NG 表をチームで共有し、NG に 1 つでも当てはまれば中止に寄せます。
  • 疲労が出てから続けてしまう:疲労が出る前の回数で終え、次回に繋げるほうが結果が安定します。
  • 申し送りが口頭のみで介助が揺れる:介助手順を「 3 点だけ」に絞り、記録に残して統一します。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1.VE / VF が見られない日でも、方針は決められますか?

A.決められます。重要なのは「条件固定」と「安全優先」です。体位・量・回数を固定し、嚥下後の確認(声・咳・痰・呼吸)を毎回同じ手順で行うと、日内変動があっても判断がブレにくくなります。

Q2.代償手技と訓練は、どちらを先に入れますか?

A.基本は安全を担保したうえで、まず再現性が出る「条件固定」を作ります。その上で、残留など効率課題が残る場合に、代償手技を条件つきで入れて「効いた条件」を記録に残します。

Q3.神経筋電気刺激や呼吸筋トレは、いつ検討しますか?

A.第一選択は「安全条件の固定」と「手順の標準化」です。それでも安全や効率が伸びないときに、対象・禁忌・実施条件を整理したうえで検討します(最新の知見は参考文献にまとめています)。

Q4.記録が長くなりがちです。最小セットは?

A.最小は「所見(安全/効率/持続)」「選んだ介入」「条件(体位・量・回数)」「反応」「次回判断」の 5 点です。ここさえ揃えば、チームで方針が繋がります。

次の一手

運用を整える → 共有の型を作る → 環境の詰まりも点検(無料チェックシート)

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臨床の武器(評価・記録)を増やしつつ、働き方の選択肢も押さえるなら:PT キャリアガイド

参考文献

  1. 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(編). 嚥下障害診療ガイドライン 2024 年版[ Web 動画付]第 4 版. 東京:金原出版; 2024. ISBN: 978-4-307-37137-7. (学会 公開ページ) (出版社 読者サポート)
  2. Giraldo-Cadavid LF, et al. Accuracy of endoscopic and videofluoroscopic evaluations of swallowing for oropharyngeal dysphagia: a systematic review and meta-analysis. Laryngoscope. 2017;127:2002-2010. PubMed
  3. Wang Z, et al. Neuromuscular Electrical Stimulation for Post-Stroke Dysphagia: A Systematic Review. 2024. PubMed
  4. Zhang W, et al. Respiratory muscle training for dysphagia after stroke: A systematic review and meta-analysis. 2022. PubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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