FRAXは「入力精度」と「結果の使い方」で価値が決まります
FRAXは、骨折リスクを短時間で層別化できる実用的な評価ツールです。 ただし、数値を出すだけでは臨床に直結しません。 入力項目の取りこぼしを減らし、結果を「介入優先度」に変換するところまでを 1 セットで運用することが重要です。
本記事では、FRAXの入力手順、結果の読み方、よくある失敗、再評価の流れを実務向けに整理します。 骨折リスク評価の全体像は 親記事 で先に確認できます。
評価の迷いは「入力の型」をそろえると減らせます。
PT キャリアガイドを見るFRAXを使う場面|まず「対象者の抽出」を固定する
FRAXは、骨折リスクを見逃したくない対象者を効率よく層別化したい場面で有用です。 実務では、年齢、既往骨折、転倒歴、薬剤情報などを起点に、先に重点評価対象を抽出してから入力すると、評価の抜け漏れを減らせます。
ここでの目的は確定診断ではなく、介入優先度を決めるための初期整理です。 チーム内で「誰に先にFRAXを回すか」を共有すると、運用が安定します。
FRAX入力手順|迷わない 5 ステップ
入力は、順番を固定すると再現性が上がります。 推奨は「基本属性 → 既往・家族歴 → 生活習慣 → 薬剤・基礎疾患 → BMD情報」の流れです。 項目ごとに「不明」を放置しないことが、結果の解釈ミスを防ぐ近道です。
特に、既往骨折と薬剤情報は取り違えやすい要素です。 問診テンプレを使って、情報源(本人申告、紹介状、薬歴)まで記録すると、後から見直しやすくなります。
Step 1:基本情報を確認する
年齢、性別、体格情報などの基本項目を最初に入力します。 この時点で記録単位の揺れをなくすことが重要です。 施設内で単位と記録様式を統一しておくと、担当者間の差を減らせます。
Step 2:既往骨折・家族歴を確認する
既往骨折の有無は、時期や部位まで確認して入力します。 家族歴も曖昧にせず、可能な範囲で具体化して記録します。 不確実な情報は「未確認」と明示して、後日更新できる形にします。
Step 3:生活習慣情報を確認する
喫煙・飲酒など、関連項目は聞き方を統一します。 聞き取りのばらつきが大きいと、同じ患者でも結果が変動しやすくなります。 事前に質問文を定型化しておくと安定します。
Step 4:薬剤・基礎疾患を確認する
骨代謝に影響する薬剤の情報は、用量や期間の確認を優先します。 服薬情報は自己申告のみで確定せず、処方情報と照合する運用が安全です。 基礎疾患の把握も並行して行い、解釈時に反映します。
Step 5:BMDの有無で解釈を分ける
BMD情報の有無で、結果の位置づけは変わります。 BMDなしはスクリーニング、BMDありはより詳細な層別化として扱うと、判断が整理しやすくなります。 どの時点で検査連携するかを院内ルール化しておくと実装しやすいです。
結果の読み方|「高・中・低」に落として介入へつなぐ
FRAXの結果は、単独で結論にせず、転倒要因・身体機能・環境要因と統合して読みます。 実務では「高・中・低」などの運用層に変換し、介入順を明確にするのが有効です。 高リスクは安全管理と環境調整を先行し、中リスクは生活場面の危険因子を減らしながら機能改善を進めます。
低リスクでも、初回評価で終わらせず、再評価で変化を追う設計が必要です。 リスクは固定値ではなく、状態や環境で変わる前提で扱います。
よくある失敗と対策(OK/NG早見)
| 場面 | NG | OK | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 入力前 | 対象者抽出なしで全員に同じ深さで実施 | 抽出条件(既往骨折・転倒歴・薬剤)を先に適用 | 抽出根拠をチェック式で残す |
| 入力時 | 不明項目を推定で埋める | 不明は未確認として記録し、更新予定を設定 | 情報源(本人/家族/紹介状)を併記 |
| 解釈時 | FRAX値のみで介入可否を判断 | 転倒・機能・環境を統合して層別化 | 層別化理由と介入優先度 |
| 運用 | 初回で終了し再評価なし | 再評価時期を初回時に設定 | 次回評価日と変更トリガー |
再評価のタイミング|「状態変化」と「生活変化」を合図にする
再評価は定期実施に加えて、状態・生活環境の変化時に行うのが実践的です。 例えば、転倒発生、活動量の増減、薬剤変更、生活場所の変更などは再評価の合図になります。 変化が起きたタイミングで見直すことで、介入のズレを最小化できます。
再評価では、前回との差分を短く残す運用が有効です。 「何が変わったか」「介入をどう修正したか」を 1 画面で追える形にすると、チーム連携が速くなります。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
FRAXはBMDがなくても使えますか?
使えます。 ただし、BMDなしの結果はスクリーニングとして扱い、必要時に検査連携して層別化の精度を上げる運用が実務的です。
FRAXの結果が低ければ転倒対策は不要ですか?
不要ではありません。 転倒要因や機能低下が強ければ、実際の骨折リスクは高まり得ます。 FRAXは他の評価と統合して解釈します。
入力のばらつきを減らすコツはありますか?
質問順と記録様式を固定することが有効です。 「不明は未確認で残す」「情報源を記録する」の 2 点を徹底すると、再現性が上がります。
次の一手
- 全体フローに戻って整理する:骨折リスク評価の親記事
- 評価の設計を固める:評価ハブ
- 運用を整える:環境の詰まりも点検(無料チェックシート)
参考文献
- 実装時は、施設内プロトコル・対象者特性・多職種連携体制に合わせて運用ルールを調整してください。
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


