- METs は「活動候補」まで。患者個人の強度は症状・RPE・条件で判断します
- METs が示すのは活動の絶対強度で、「その人にとってのきつさ」とは別です
- 1 MET=3.5 mL/kg/min は標準値で、患者ごとの実測値ではありません
- METs が外れる理由は「基準値」「活動条件」「患者要因」の3つに分けると整理できます
- METs と患者の反応が合わないときは「安全確認 → RPE → 条件確認」で整理します
- 「METs は低いのにきつい」ときは、METs より患者の反応を優先します
- 再評価に効くのは METs の値より「どの条件で行ったか」の記録です
- METs の限界についてよくある質問
- 次に確認する記事
- 参考文献
- 著者情報
METs は「活動候補」まで。患者個人の強度は症状・RPE・条件で判断します
METs(metabolic equivalents)は、活動のエネルギーコストを共通の尺度で整理できる便利な指標です。ただし、表で同じ3 METsとされる活動でも、患者さんによって息切れや疲労、RPEが大きく異なることがあります。
結論として、METsは活動候補を考える入口として使い、患者個人への最終的な負荷判断は症状・必要なバイタル・RPE・実施条件を確認して行います。本記事では、1 MET=3.5が外れる理由、高齢者での注意点、METsと本人の反応が一致しないときの整理方法に絞って解説します。

METs・RPE・心拍を含めて運動強度全体を決めたい方へ
METs が示すのは活動の絶対強度で、「その人にとってのきつさ」とは別です
METsで整理できるのは、ある活動が標準的にどの程度のエネルギーを必要とするかという絶対強度です。一方、実際の患者さんが「どのくらいきついか」という負荷感は、体力、疾患、疼痛、疲労、薬剤、当日の状態などによって変わります。
そのため、METsの値とRPEや症状が一致しないこと自体は不自然ではありません。METsだけから「この患者さんには軽い運動」と決めるのではなく、活動の代表値と患者個人の反応を分けて考えることが重要です。
| 見るもの | 分かること | 分からないこと | 臨床での役割 |
|---|---|---|---|
| METs | 活動の代表的なエネルギーコスト | その患者さんが実際にどれだけきついか | 活動候補を考える入口 |
| 症状・RPE・観察所見 | 実施時の患者個人の反応 | 活動そのものの標準的なエネルギーコスト | 患者個人への負荷を確認する |
1 MET=3.5 mL/kg/min は標準値で、患者ごとの実測値ではありません
一般的なAdult Compendiumでは、1 METを3.5 mL O2/kg/minとして扱います。しかし、この値は活動のエネルギーコストを共通尺度で整理するための標準値であり、すべての人の安静時酸素摂取量が3.5になるという意味ではありません。
実際の安静時代謝には個人差があり、年齢や体組成などによって3.5 mL O2/kg/minと一致しない場合があります。実際の安静時酸素摂取量が標準値より低ければ、同じ活動でも本人にとっての相対的な負荷を小さく見積もる可能性があります。
60歳以上では Older Adult Compendium の MET60+ も確認できます
2024年のCompendium更新では、19〜59歳を対象とするAdult Compendiumとは別に、60歳以上を対象としたOlder Adult Compendiumが整備されました。
Older Adult Compendiumでは、60歳以上を対象に測定された活動データを用い、活動時酸素摂取量を2.7 mL O2/kg/minで除して算出するMET60+が採用されています。
| 区分 | 主な対象 | MET値の扱い | 実務上のポイント |
|---|---|---|---|
| Adult Compendium | 19〜59歳 | 標準MET:3.5 mL O2/kg/minを基準 | 成人の活動エネルギーコストを整理する |
| Older Adult Compendium | 60歳以上 | MET60+:2.7 mL O2/kg/minを分母に算出 | 高齢者で測定された活動データを参照する |
| 患者個人 | 個別評価 | 安静時代謝や運動反応には個人差がある | MET値だけで本人の負荷を決めない |
「60歳以上なら1 METをすべて2.7へ置き換える」という意味ではありません。2.7はOlder Adult CompendiumでMET60+を算出するために用いられた基準です。患者一人ひとりの安静時酸素摂取量が必ず2.7になるわけでもありません。
したがって、高齢者では成人用METsをそのまま本人の相対強度と考えず、必要に応じてOlder Adult Compendiumを参照しながら、実際の症状やRPEなどを確認することが重要です。
METs が外れる理由は「基準値」「活動条件」「患者要因」の3つに分けると整理できます
METsと実際のきつさが一致しないときは、原因を細かく列挙するより、①基準値とのズレ、②活動条件の違い、③患者要因の3つに分けると整理しやすくなります。
| 要因 | 代表例 | 起こりうるズレ | 確認すること |
|---|---|---|---|
| 基準値とのズレ | 高齢、体組成など | 標準METsと本人の相対的な負荷が一致しにくい | 年齢、体力、RPE、症状 |
| 活動条件の違い | 速度、坂、路面、補助具、休憩 | 同じ活動名でも実際の負荷が変わる | 速度、環境、補助具、時間、休憩 |
| 患者要因 | 疾患、疼痛、疲労、薬剤など | 低いMETsの活動でも症状や負荷感が強くなる | 症状、RPE、必要なバイタル、当日の状態 |
特に避けたいのは、「METsが低い=この患者にも軽い」「METsが低い=安全」と読み替えることです。METsは活動のエネルギーコストを整理する指標であり、患者個人の安全性や相対強度を単独で判定する指標ではありません。
METs と患者の反応が合わないときは「安全確認 → RPE → 条件確認」で整理します
表のMETsと本人の反応が一致しないときは、METs側に患者を合わせようとせず、患者の実際の反応を優先します。
まず症状と、その患者で確認が必要なバイタル・観察所見から実施継続の可否を判断します。そのうえでRPEを確認し、最後に速度、坂、補助具、休憩などの活動条件を分解します。
| ステップ | 確認すること | 判断のポイント | 記録すること |
|---|---|---|---|
| 1.安全確認 | 息切れ、胸部症状、めまい、疼痛、必要なSpO2・血圧・心拍など | METsより患者の症状・所見を優先する | 症状、数値、出現タイミング |
| 2.RPEを確認 | 本人が実際にどの程度きついと感じているか | 想定した負荷と本人の負荷感が一致しているか確認する | RPE、確認した時点 |
| 3.条件を確認 | 速度、坂、補助具、時間、休憩、環境 | 調整するときは変数を1つずつ変更する | 変更条件、変更後の反応 |
例えばβ遮断薬を使用している場合は、運動時の心拍反応が鈍くなることがあります。このような場面では心拍だけに依存せず、症状やRPEなど他の反応も組み合わせて判断します。
METs・RPE・心拍・Talk testのどれを主指標として運動強度を設定するかは、本記事では広げません。運動強度全体の決め方は親記事で確認してください。
「METs は低いのにきつい」ときは、METs より患者の反応を優先します
METsの限界が問題になるのは、表の値と実際の患者反応が食い違った場面です。典型的な2つのケースで考えると、METsの役割が分かりやすくなります。
| 場面 | 起こりやすいズレ | 確認すること | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 高齢者・低体力 | 成人用METsでは低い値でも、本人には強い負荷になる | 症状、RPE、疲労、活動条件 | 成人用METsをそのまま本人の相対強度とみなさない |
| 心不全・COPDなど | 低いMETsの活動でも息切れや倦怠感が先に出る | 症状、RPE、必要なバイタル | 患者反応を優先し、速度・時間・休憩などを調整する |
どちらも「METsが間違っている」と考える必要はありません。METsが示している活動の代表値と、患者本人に生じている相対的な負荷を別々に評価することがポイントです。
再評価に効くのは METs の値より「どの条件で行ったか」の記録です
再評価では、同じ活動名やMETs値だけをそろえても十分ではありません。「平地歩行」でも速度、補助具、休憩、実施時間が違えば、患者への負荷は変わります。
最低限、活動+条件+時間+反応を1行で残します。次回に変更する条件を1つに絞ると、何を変えたことで反応が変化したのかを判断しやすくなります。
| 項目 | 書き方 | 例 |
|---|---|---|
| 活動 | 実施した活動 | 平地歩行 |
| 条件 | 速度、補助具、休憩など | 60 m/分、T字杖、休憩2回 |
| 時間 | 合計時間と分割方法 | 合計12分(3分×4) |
| 反応 | RPEと症状 | RPE 13、終了直後に軽度息切れ |
この記録で重要なのは「METsを正確に当てること」ではなく、どの条件で、患者がどう反応したかを次回と比較できることです。
METs の限界についてよくある質問
METsを臨床で使用するときに迷いやすいポイントを整理します。
Q1.1 MET=3.5 mL/kg/min は間違いなのですか?
間違いではありません。活動のエネルギーコストを標準化して扱うための値としてAdult Compendiumで使用されています。ただし、患者一人ひとりの安静時酸素摂取量が必ず3.5 mL O2/kg/minになるという意味ではありません。
Q2.60歳以上では1 MET=2.7として計算すればよいですか?
単純にすべての計算を3.5から2.7へ置き換えるという意味ではありません。2024年Older Adult Compendiumでは、60歳以上で測定された活動時酸素摂取量を2.7 mL O2/kg/minで除したMET60+が掲載されています。高齢者の活動値を確認するときは、Older Adult Compendiumに示されたMET60+を参照します。
Q3.METsとRPEが合わない場合はどちらを優先しますか?
患者個人への負荷判断では、METsの表に患者を合わせるのではなく、症状、必要なバイタル、RPEなど実際の反応を優先します。そのうえで速度、坂、補助具、実施時間、休憩などの条件を確認し、METsは活動候補の目安として使います。
Q4.β遮断薬を使用しているとMETsは使えませんか?
METsそのものが使えなくなるわけではありません。ただし、β遮断薬では運動時の心拍反応が鈍くなることがあるため、心拍だけで患者個人の強度を判断しないことが重要です。症状やRPEなどを組み合わせて確認します。
次に確認する記事
- 運動療法全体を整理する:運動療法ハブで安全管理・運動処方・再評価の全体像を確認する
- 活動ごとの値を調べる:METs早見表で生活動作・歩行・運動の値を確認する
参考文献
- Franklin BA, Brinks J, Berra K, Lavie CJ, Gordon NF, Sperling LS. Using Metabolic Equivalents in Clinical Practice. Am J Cardiol. 2018;121(3):382-387. doi: 10.1016/j.amjcard.2017.10.033
- Kozey S, Lyden K, Staudenmayer J, Freedson P. Errors in MET estimates of physical activities using 3.5 ml × kg-1 × min-1 as the baseline oxygen consumption. J Phys Act Health. 2010;7(4):508-516. doi: 10.1123/jpah.7.4.508
- Leal-Martín J, Muñoz-Muñoz M, Keadle SK, et al. Resting Oxygen Uptake Value of 1 Metabolic Equivalent of Task in Older Adults: A Systematic Review and Descriptive Analysis. Sports Med. 2022;52(2):331-348. doi: 10.1007/s40279-021-01539-1
- Herrmann SD, Willis EA, Ainsworth BE, et al. 2024 Adult Compendium of Physical Activities: A third update of the energy costs of human activities. J Sport Health Sci. 2024;13(1):6-12. doi: 10.1016/j.jshs.2023.10.010
- Willis EA, Herrmann SD, Hastert M, et al. Older Adult Compendium of Physical Activities: Energy costs of human activities in adults aged 60 and older. J Sport Health Sci. 2024;13(1):13-17. doi: 10.1016/j.jshs.2023.10.007
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

