- 結論|血液ガスの異常だけでリハビリ可否を決めません
- 血液ガス異常を見たら最初に確認する4点
- 早見表|pH・PaCO2・酸素化・乳酸の異常で次に何を見るか
- pH低下|「アシドーシス」と決める前に原因と変化を確認します
- PaCO2高値|高いという理由だけで離床中止とは決めません
- 酸素化|PaO2は酸素条件と患者状態をセットで確認します
- 乳酸上昇|低灌流だけに決めつけず、推移と循環状態を確認します
- 実施前と実施中|血ガスではなく患者状態の変化で対応を決めます
- 相談を優先したいのは「数値が高いとき」より「新しい悪化があるとき」です
- 報告・記録|「数値」ではなく「条件+変化+患者状態+対応」を伝えます
- 新人PTが避けたい3つの判断
- よくある質問
- 次の一手|「血ガスを読む」と「リハ判断」を分けて考えます
- 参考文献
- 著者情報
結論|血液ガスの異常だけでリハビリ可否を決めません
新人PTが血液ガスの異常を見たときに大切なのは、pHやPaCO2の数値だけで「実施」「中止」を決めることではありません。採血がABGかVBGか、酸素投与条件、過去値からの変化、現在の症状・バイタル、治療状況まで確認し、その患者さんにとって新しい悪化なのかを整理することが重要です。
この記事では、pH・PaCO2・酸素化・乳酸の異常を見たあとに、PTが次に何を確認し、いつ負荷をかけずに再評価・相談へ進むかを整理します。酸塩基平衡や代償計算など、血液ガスそのものの詳しい読み方は血液ガス(ABG)の読み方で確認してください。
血液ガス異常を見たら最初に確認する4点
血液ガスの数字を詳しく読む前に、採血条件、酸素条件、過去値、現在の患者状態を確認します。同じPaCO2やPaO2でも、この4点が違えば臨床的な意味は変わります。

| 確認すること | 具体的な確認項目 | 確認する理由 |
|---|---|---|
| 採血条件 | ABGかVBGか、採血時刻、採血前後の処置 | 動脈血と静脈血では解釈できる項目が異なるため |
| 酸素条件 | 室内気、酸素デバイス、流量、FiO2、人工呼吸器設定 | PaO2やSpO2は酸素投与条件とセットで評価するため |
| 過去値との変化 | 前回のpH、PaCO2、PaO2、HCO3-、乳酸 | 慢性的な異常か、新規・増悪した変化かを区別するため |
| 現在の患者状態 | 意識、呼吸困難、呼吸数、SpO2、血圧、脈拍、末梢循環 | 検査値だけでは介入時の安定性を判断できないため |
たとえばPaCO2が高値でも、普段から高値でpHが保たれている患者さんと、前回より急上昇してpH低下や意識変化を伴う患者さんでは、同じようには扱えません。「異常値か」だけでなく「その患者さんにとって何が変わったか」を見ることが重要です。
早見表|pH・PaCO2・酸素化・乳酸の異常で次に何を見るか
血液ガス異常を見たら、その値からリハビリ可否へ直接進むのではなく、異常の意味を裏づける情報を追加します。新人PTは、以下の「次に確認すること」を先に押さえておくと判断を整理しやすくなります。
| 気づいた所見 | 考えること | 次に確認すること | PTの判断につなげる視点 |
|---|---|---|---|
| pH低下 | アシデミア | PaCO2、HCO3-、原因、経時変化、意識・循環・呼吸状態 | 原因と病態の安定性を確認し、急性悪化が疑われれば負荷をかけず相談する |
| PaCO2上昇 | 低換気、呼吸性アシドーシスなど | pH、HCO3-、過去値、意識、呼吸数、呼吸努力、治療状況 | 慢性高値か急性増悪かを区別し、数値だけで中止を決めない |
| PaO2低下 | 酸素化障害 | ABGか、SpO2、酸素デバイス、FiO2、呼吸状態、前回値 | 酸素条件と患者状態を合わせて、現在の安定性を確認する |
| 乳酸上昇 | 低灌流を含む複数の原因 | 推移、血圧、脈拍、意識、末梢循環、病態・治療状況 | 乳酸単独では決めず、循環不安定を示す所見がないか確認する |
pH低下|「アシドーシス」と決める前に原因と変化を確認します
pHが低い状態はアシデミアであり、pHを低下させる病態・過程である「アシドーシス」とは厳密には区別します。pH低下を認めたら、PaCO2とHCO3-を確認し、呼吸性・代謝性のどちらが関与しているかを整理します。
PTが当日の介入を考えるときは、酸塩基平衡の分類だけでなく、前回値から悪化していないか、意識・呼吸・循環が安定しているか、原因に対する治療が始まっているかを確認します。
特に新たなpH低下とともに意識変化、呼吸状態悪化、循環不安定などを認める場合は、血ガスを読み進めながら運動負荷を試すのではなく、患者状態を再評価して医師・看護師へ共有します。
呼吸性・代謝性の判別や代償の考え方まで確認したい場合は、親記事の血液ガス(ABG)の読み方で詳しく整理しています。
PaCO2高値|高いという理由だけで離床中止とは決めません
PaCO2高値では低換気やCO2貯留を考えますが、PaCO2の絶対値だけでは急性悪化か慢性高値かを判断できません。慢性的な高CO2血症では、腎性代償によってHCO3-が上昇し、PaCO2が高くてもpHが比較的保たれている場合があります。
そのため、PaCO2高値を見たら、次の順で確認します。
- pHは低下しているか
- HCO3-は上昇しているか
- 以前のPaCO2と比べて変化しているか
- 傾眠、意識変化、呼吸困難など新しい症状がないか
- 呼吸数や呼吸努力に変化がないか
- 酸素療法、NIV、人工呼吸器などの治療条件が変わっていないか
特に重要なのは「いつも高い」のか「今回上がった」のかです。慢性呼吸不全患者では、正常範囲から外れていることだけを理由に当日のリハビリを中止するのではなく、基準となる過去値と現在の臨床状態を照合します。
ABGとVBGのPCO2を同じ値として扱わない
動脈血ではPaCO2、静脈血ではPvCO2です。VBGは酸塩基状態を把握するために利用されることがありますが、静脈血PCO2と動脈血PaCO2には患者さんごとのばらつきがあり、同じ値として置き換えることはできません。
カルテに血ガス結果があった場合は、数値を読む前にABGかVBGかを確認します。換気状態を正確に評価する必要がある場面では、採血種別を曖昧にしたまま判断しないことが大切です。
酸素化|PaO2は酸素条件と患者状態をセットで確認します
PaO2低下を認めたら、PaO2だけではなく酸素投与条件、SpO2、呼吸状態、経時変化を確認します。同じPaO2でも、室内気なのか高いFiO2を必要としているのかによって意味が異なります。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 酸素条件 | デバイス、流量、FiO2、直近の変更 |
| SpO2 | 現在値だけでなく推移、波形、測定状態 |
| 呼吸 | 呼吸数、呼吸困難、呼吸努力、呼吸パターン |
| 経時変化 | 前回のPaO2・SpO2と比べて悪化していないか |
| 治療状況 | 酸素療法、NIV、人工呼吸器設定などの変更 |
VBGのPO2を酸素化評価へそのまま使わない
末梢静脈血のPO2は、動脈血PaO2の代用にはなりません。VBGしかない場合に酸素化を確認するときは、静脈血PO2から判断せず、SpO2、酸素投与条件、呼吸状態などを確認します。より詳細な酸素化評価が必要かどうかは、患者さんの病態と治療方針を踏まえてチームで判断します。
乳酸上昇|低灌流だけに決めつけず、推移と循環状態を確認します
乳酸上昇は循環不全や組織低灌流を考える重要な情報の1つですが、乳酸だけで循環状態やリハビリ可否を決めることはできません。病態、薬剤、代謝亢進など複数の要因が関与するため、原因と経時変化を合わせて評価します。
PTが乳酸上昇を確認したときは、次の情報を追加します。
- 前回値から上昇しているか、低下しているか
- 血圧・脈拍は安定しているか
- 意識変化がないか
- 冷汗、皮膚冷感、末梢循環不良などがないか
- 敗血症、循環不全など乳酸上昇を来しうる病態があるか
- 輸液や循環管理などの治療がどの段階にあるか
乳酸上昇に加えて循環動態や意識などにも新たな異常を認める場合は、運動負荷を追加するより先に患者状態を再評価し、チームへ共有します。
実施前と実施中|血ガスではなく患者状態の変化で対応を決めます
リハビリの実施・中断・相談は、血液ガスだけでなく患者全体の状態を見て判断します。特に実施前と実施中では、確認する目的が異なります。
| 場面 | 確認すること | 対応の考え方 |
|---|---|---|
| 実施前 | 血ガスの変化、症状、意識、呼吸・循環、治療状況、医師指示 | 新規・増悪した異常の意味が不明な場合は、負荷を開始する前に確認・相談する |
| 実施中 | 呼吸困難、意識、SpO2、呼吸数、心拍数、血圧、表情などの変化 | 施設の中止基準に従い、病態不安定を疑う変化があれば中断して再評価する |
| 中断後 | 症状とバイタルの回復、原因、医師・看護師の評価、治療変更 | 安定を確認し、再開条件をチームで整理する |
血液ガスに異常があるから機械的に中止するのではなく、施設基準、疾患・病態、医師指示、患者さんの現在の反応を統合することが基本です。
相談を優先したいのは「数値が高いとき」より「新しい悪化があるとき」です
PTが相談を考えるときは、異常値そのものよりも、新規性、経時変化、症状・バイタルとの一致を重視します。
たとえば、以下のような場合は患者状態を再評価し、負荷を進める前に医師・看護師へ共有します。
- 前回と比べてpHやPaCO2が明らかに悪化している
- 血ガス異常とともに新たな意識変化を認める
- 呼吸困難や呼吸努力が増大している
- 酸素条件が増えているのに酸素化が改善していない
- 血圧低下、冷汗、末梢循環不良など循環不安定を疑う
- 乳酸が上昇傾向で、全身状態も悪化している
- 異常の原因や治療方針が確認できず、安全に負荷を設定できない
反対に、基準値から外れているという理由だけで一律に中止することも避けます。慢性呼吸不全などでは、患者さん固有のベースラインと治療目標が一般的な正常値と異なる場合があります。
報告・記録|「数値」ではなく「条件+変化+患者状態+対応」を伝えます
血液ガス異常を報告するときは、検査値を読み上げるだけではなく、その値をどう捉え、患者さんに何が起きているかを短く整理します。
報告する4要素
- 条件:ABG / VBG、酸素デバイス・流量、採血時刻
- 変化:pH、PaCO2、酸素化、乳酸などで何が変わったか
- 患者状態:意識、呼吸、SpO2、血圧、脈拍など
- 対応:開始前に保留した、中断した、再評価しているなど
たとえば、「PaCO2が高いので離床できません」と伝えるより、「ABGでPaCO2が前回より上昇しpHも低下しています。普段より傾眠傾向があるため、離床前に状態確認をお願いします」のように、変化と患者状態をつなげて伝えるほうが判断材料になります。
記録でも同様に、血液ガスの数値だけではなく、当日の症状・バイタルと、リハビリでどのように対応したかを残します。
新人PTが避けたい3つの判断
血液ガスで迷ったときは、異常値を「リハ可否の基準値」に変換しすぎないことが重要です。
1.PaCO2が高ければ必ず中止と考える
PaCO2高値には急性と慢性があり、患者さんによってベースラインが異なります。pH、HCO3-、過去値、症状を確認してから現在の病態を整理します。
2.VBGのPO2から酸素化を判断する
静脈血PO2を動脈血PaO2の代わりにはできません。VBGであれば、酸素化はSpO2、酸素条件、呼吸状態などから確認します。
3.乳酸高値だけでショックと決める
乳酸上昇には複数の原因があります。循環状態、末梢循環、病態、治療内容、経時変化を確認し、患者全体から解釈します。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. PaCO2が高ければリハビリは中止ですか?
PaCO2高値だけでは一律に中止とは決めません。pH、HCO3-、過去値、意識・呼吸状態を確認し、慢性的な高CO2血症なのか急性に悪化しているのかを整理します。急性悪化や病態不安定が疑われる場合は、負荷を進める前に相談します。
Q2. VBGでもPaO2やPaCO2を評価できますか?
VBGのPO2は動脈血PaO2の代用にはなりません。また、静脈血PCO2と動脈血PaCO2にもばらつきがあるため、同じ値として置き換えません。まずABGかVBGかを確認し、目的に応じて解釈します。
Q3. 乳酸が高ければ離床を中止したほうがよいですか?
乳酸値だけでは決めません。前回値からの推移、血圧・脈拍、意識、末梢循環、原因となる病態や治療状況を確認します。乳酸上昇とともに全身状態の悪化がみられる場合は、負荷をかける前に再評価・相談します。
次の一手|「血ガスを読む」と「リハ判断」を分けて考えます
血液ガスに異常があったときは、まず採血条件・酸素条件・過去値・患者状態を確認し、数値単独でリハビリ可否へ変換しないことがポイントです。
pH、PaCO2、HCO3-から酸塩基平衡を詳しく整理したい場合は血液ガス(ABG)の読み方、実際のリハビリ中にバイタル異常や体調変化が起きた場合はリハビリ中のバイタル異常の初期対応を確認してください。
参考文献
- 卯野木健, 林田敬, 河合佑亮, et al. 重症患者リハビリテーション診療ガイドライン2023. 日本集中治療医学会雑誌. 2023;30(Suppl 2):S905-S972. doi:10.3918/jsicm.30_S905.
- Yee J, Frinak S, Mohiuddin N, Uduman J. Fundamentals of Arterial Blood Gas Interpretation. Kidney360. 2022;3(8):1458-1466. doi:10.34067/KID.0008102021.
- Byrne AL, Bennett M, Chatterji R, Symons R, Pace NL, Thomas PS. Peripheral venous and arterial blood gas analysis in adults: are they comparable? A systematic review and meta-analysis. Respirology. 2014;19(2):168-175. doi:10.1111/resp.12225.
- Shime N, Nakada TA, Yatabe T, et al. The Japanese Clinical Practice Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2024. J Intensive Care. 2025;13(1):15. doi:10.1186/s40560-025-00776-0.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

