血ガス(ABG/VBG)の初期対応|新人PTの5分フロー

臨床手技・プロトコル
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結論|血ガスは「解釈」より先に「当日判断に翻訳する順番」を固定します

新人が血ガス( ABG / VBG )で迷うのは、数式ではなく「どの順で見て、今日どうするか」を決め切れないことが多いです。先に型をそろえると、所見の抜けが減り、相談も早くなります。

このページは、血ガスを pH → PaCO2 → HCO3- / BE → 酸素化 → 乳酸 の順で拾い、通常 / 軽負荷 / 中止・相談へ翻訳する最小フローに絞って解説します。

現場で迷う時間を減らしたいときは PT キャリアの全体像を 5 分で確認する

新人向け 5 分フロー|pH→CO2→HCO3→O2→乳酸で迷いを消す

血ガスは「読む順番」を固定すると、混乱が一気に減ります。ポイントは、病名を当てにいくのではなく、危険サインの有無当日介入の可否を先に決めることです。

この 5 分フローは、申し送りでそのまま使えるように ①前提→②酸塩基→③換気→④酸素化→⑤循環・代謝(乳酸)の順で進みます。

  1. 前提をそろえる(動脈 / 静脈、酸素条件、採血タイミング)
  2. pH で酸塩基の方向を決める(アシドーシス / アルカローシス)
  3. PaCO2 と HCO3- / BE で主因を絞る(呼吸性 / 代謝性)
  4. 酸素化を確認する( PaO2 / SpO2 / FiO2 の整合)
  5. 乳酸・循環所見で「危険度」を上げ下げする(ショック / 低灌流を疑う)

まず 30 秒|採血条件と酸素条件が分からないと判断がブレます

最初に確認するのは「数値」ではなく条件です。ここが抜けると、酸素化や CO2 の解釈がズレて、介入判断も割れます。

新人指導では、報告のテンプレとして 動脈/静脈、O2 条件(デバイス・流量)、採血時の体位/直前の状態 を必ずセットで言わせると、上達が速くなります。

新人向け|血ガスを読む前の前提チェック(最小)
項目 確認すること なぜ重要? 報告の言い方(例)
採血 動脈 / 静脈、空気混入・遅延の疑い PaO2・pH がブレやすい 「動脈です/静脈です」
酸素条件 室内気 / デバイス / 流量(推定 FiO2 ) 酸素化の評価軸が変わる 「鼻 2 L、 SpO2 92 %」
直前の状態 体位、運動直後、呼吸介助後 PaCO2 が変動しやすい 「離床後 10 分で採血」

酸塩基|pH を見て「方向」を決めるだけで十分です

このページでは、まず pH が低い / 高いで方向を決め、次に PaCO2(呼吸性)HCO3- / BE(代謝性)で「主因の当たり」を付けます。詳細な代償計算や混合性の精査は、別ページの役割にします。

この段階で重要なのは、危険なアシドーシスを見逃さず、介入を「軽くする / 止める」判断につなげることです。

換気|CO2 は「上がっているか」で中止・相談のきっかけになります

PaCO2 が高い(高 CO2 )ときは、換気不全の可能性が上がります。新人がやりがちなのは、数値を読めても「今日の運動負荷」を変えないことです。負荷で CO2 がさらに上がると、眠気・頭痛・意識変容が出やすくなります。

このページでは、CO2 高値=“中止・相談”のトリガーとして扱い、呼吸介助・体位・休息の優先度を上げる運用に統一します。

酸素化|PaO2 と SpO2 の整合を見て「今の安全域」を決めます

酸素化は「低い / 低くない」をまず押さえ、酸素条件とセットで判断します。SpO2 は灌流不良や体動でブレるため、可能なら PaO2 と整合を確認し、値の背景(波形、末梢冷感など)も必ず添えます。

酸素化の低下がある場合は、当日介入を 通常→軽負荷へ落とす、もしくは 中止・相談へ振り切る判断を優先します。

乳酸|「循環が怪しい」サインとして負荷を下げる根拠にします

乳酸は「代謝の数字」というより、低灌流・ショックの可能性を上げるサインとして扱うと実務に直結します。呼吸苦や SpO2 と一緒に見たときに、急変リスクの評価が安定します。

新人教育では、乳酸を見たら バイタル・意識・尿量・皮膚所見の再確認をセットにして、「中止・相談」に寄せる判断軸を共有すると安全です。

早見表|血ガスを「通常 / 軽負荷 / 中止・相談」に翻訳する

ここがこのページの本体です。血ガスを “読めた” で止めず、当日判断を揃えます。数値の厳密な閾値は施設基準や診療方針に従い、ここでは 赤信号を拾う考え方を統一します。

新人向け|血ガス所見から当日介入判断へ翻訳する(最小)
見つけたこと まず疑う方向 当日判断 観察・対応(PT) 相談の言い方(例)
pH が明らかに低い アシドーシス(重症度↑) 軽負荷〜中止・相談 症状・意識・呼吸数を再確認、負荷は下げる 「pH 低下があり、負荷を落として実施可否を確認したい」
PaCO2 が高い 換気不全(高 CO2 ) 中止・相談 体位・呼吸介助・休息、眠気/頭痛/意識変化を確認 「CO2 高値で、離床は見合わせて呼吸状態を確認したい」
酸素化が低い(条件付きで) 低酸素血症 軽負荷〜中止・相談 酸素条件と SpO2 波形、体位での変化を確認 「O2 条件下でも酸素化が低く、負荷調整の相談をしたい」
乳酸が高い 低灌流・ショックの可能性 中止・相談 バイタル再測定、意識・皮膚所見・尿量の確認 「乳酸上昇があり、循環面が不安で離床を止めたい」

現場の詰まりどころ|血ガス教育で止まりやすい 3 点

血ガス教育が進まない原因は「解釈が難しい」より、運用が揃っていないことです。新人は、所見の説明はできても「中止」「相談」のタイミングが曖昧になりがちです。

ここは ①読む順番、②相談トリガー、③記録の 1 行をセットで標準化すると、見落としが減り、報告が短くなります。

  • 読む順番が人で変わる
  • CO2・乳酸のときの「止めどころ」が曖昧
  • 所見と当日判断が記録で分離している

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. このページだけで血ガスを「解釈」できますか?

A. このページは「当日判断に落とす最小フロー」に特化しています。酸塩基の解釈を体系的に学ぶ場合は、読み方に特化した解説( 3 ステップ )も併読すると整理が速いです。血液ガス( ABG )の読み方(解釈手順)で背景を確認できます。

Q2. ABG と VBG は同じように見ていいですか?

A. 目的を「危険サインを拾って相談につなぐ」に置くなら、同じ順番で読めます。ただし PaO2 は静脈では評価できないため、酸素化は SpO2 や臨床像と合わせて扱います。報告では「動脈か静脈か」を必ず先に伝えてください。

Q3. CO2 が高いとき、PT は何を優先しますか?

A. 負荷を上げないことと、眠気・頭痛・意識変化の確認を優先します。体位調整や休息、呼吸介助など“安全側”の対応を先に行い、早めに医師・看護へ共有します。

Q4. 乳酸が高いとき、リハは必ず中止ですか?

A. 数値だけで決めず、バイタル・意識・皮膚所見など循環の裏付けを取りにいきます。低灌流が疑われる場合は安全側に倒し、中止・相談を優先してください。

次の一手|チームで「読む順番」と「当日判断」を 1 行でそろえる

まずは、血ガスを見たら pH → CO2 → HCO3 → 酸素化 → 乳酸の順で報告し、最後に当日判断(通常 / 軽負荷 / 中止・相談)を 1 行で残してください。

呼吸苦・ SpO2 の現場対応は 呼吸苦・ SpO2 低下の初期対応、バイタルの入口は バイタル異常の初期対応、新人導線の全体は 新人 PT の臨床基礎ガイド からまとめて確認できます。


参考文献

  1. Yee J, Frinak S, Mohiuddin N, Uduman J. Fundamentals of Arterial Blood Gas Interpretation. Kidney360. 2022;3(8):1458–1466. doi: 10.34067/KID.0008102021. PubMed: 36176645.
  2. Laffey JG, Kavanagh BP. Hypocapnia. N Engl J Med. 2002;347(1):43–53. doi: 10.1056/NEJMra012457. PubMed: 12097541.

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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