認知症 OT|見当識ドリルと注意課題ドリルの使い分け

臨床手技・プロトコル
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認知症 OT|見当識ドリルと注意課題ドリルの使い分け

見当識ドリルと注意課題ドリルは、どちらも認知症の方に短時間で使いやすい紙面課題です。ただし、目的を混ぜると「何を整えたい介入なのか」「次回に何を比較するのか」が曖昧になり、担当者が変わったときに記録がつながりにくくなります。

結論は、見当識で土台を整え、注意課題で遂行を確認する流れを基本にすることです。本記事では、開始順・同日実施・進級判断・記録の残し方を、認知症 OT の紙面ドリル運用として比較しやすい形に整理します。

最初に決めるのは「注意課題へ進める土台があるか」

開始順で迷う場合は、注意課題から入るのではなく、見当識の安定を先に確認します。時・場所・状況の把握が不安定なまま注意負荷を上げると、遂行低下の原因が「注意の問題」なのか「混乱・不安・疲労」なのか判断しにくくなります。

見当識ドリルは、課題前の土台確認として使います。注意課題ドリルは、見当識がある程度整った日の遂行確認として使うと、記録の比較がしやすくなります。

認知症 OT における見当識から始める 5 分判断フロー
見当識で土台を確認し、注意課題へ進むかを判断する 5 分フロー
注意課題へ進む前の見当識チェック(認知症 OT)
確認項目 進めてよい目安 不安定なときの対応
導入理解 短い説明で開始できる 導入文を固定し、見当識課題を先行する
手がかり量 手がかりが増え続けない 課題量を減らし、同条件で再確認する
不安・拒否 強い拒否や混乱が目立たない 成功しやすい見当識課題に戻す
疲労 短時間の集中が保てる 同日 2 種は避け、短縮して終了する

見当識ドリルと注意課題ドリルの違いを分けて記録する

見当識ドリルは「時・場所・状況の把握」、注意課題ドリルは「探索・選択・持続・切替」の遂行確認に向いています。目的を分けると、次回の課題設定と家族・スタッフへの説明が短くなります。

点数だけでなく、手がかり量、再指示、見落とし位置、疲労徴候を残すと、次回の負荷調整に使いやすくなります。

見当識ドリルと注意課題ドリルの比較
項目 見当識ドリル 注意課題ドリル
主目的 時・場所・状況の把握を整える 探索・選択・持続・切替を確認する
使いやすい場面 初回、混乱が目立つ日、導入に時間がかかる日 見当識が保たれ、課題に向かえる日
記録の中心 正答、手がかり量、再指示、不安・拒否 正答率、見落とし位置、誤反応、疲労徴候
進級の目安 手がかりが減って安定して答えられる 手がかり最小で 7〜8 割以上を維持できる
戻す目安 不安・拒否・再指示が増える 見落とし、誤反応、疲労が増える

同日実施は「見当識→休憩→注意課題」で固定する

同日に 2 種類を行う場合は、順番を固定します。見当識で土台を確認し、短い休憩を挟んでから注意課題へ進むと、疲労や混乱の影響を見分けやすくなります。

課題量は短くしてもかまいません。ただし、記録項目まで減らすと次回比較ができなくなるため、最低限の観察項目は残します。

同日実施の 5 分フロー(見当識→注意課題)
ステップ 目安 記録すること
導入 30 秒 今日の目的を 1 文で説明できたか
見当識 2〜4 分 正答、手がかり量、再指示、不安・拒否
休憩 30 秒 疲労徴候、表情、集中の戻り
注意課題 3〜6 分 正答率、見落とし位置、誤反応、疲労徴候
次回設定 30 秒 維持、進級、戻しのどれにするか

記録は「条件・手がかり・反応・次回設定」で残す

記録は、点数よりも次回の条件設定に使える形で残します。特に、課題条件と手がかり量が書かれていないと、次回担当者が同じ条件で再現できません。

紙面ドリルは短時間で回せる反面、記録が薄いと「やっただけ」になりやすいです。比較可能性を保つため、次の型を固定しておくと運用しやすくなります。

見当識・注意課題ドリルの記録テンプレ
項目 記録例
条件 見当識 L2 を 3 分実施。注意課題 L1 は記号探索 20 問。
手がかり 日付は選択肢提示で正答。場所は口頭手がかり 1 回で修正。
反応 注意課題は正答 16/20。右下の見落とし 2 件。疲労訴え軽度。
次回設定 見当識 L2 維持。注意課題は同条件で再実施し、見落とし位置を比較。

現場の詰まりどころは「条件が変わる・負荷を上げすぎる・点数だけ残す」

認知症 OT の紙面ドリルで詰まりやすいのは、毎回条件が変わること、最初から注意負荷を上げすぎること、点数だけで記録が終わることです。比較できる記録を残すには、変更する要素を 1 回 1 つに絞ります。

迷ったら、以下の順で確認してください。

評価や記録が職場で標準化しにくいときは、学び方と環境も整理しておくと迷いが減ります。
PT キャリアガイドを見る

よくある失敗と回避策

見当識・注意課題ドリルのよくある失敗と回避策
よくある失敗 起きる問題 回避策
同日に条件を複数変える 改善・悪化の理由が分からなくなる 量、時間、ルール、手がかりのうち 1 つだけ変える
見当識を確認せず注意課題に入る 注意低下なのか混乱なのか判断しにくい 最初に見当識を確認し、土台が整った日に注意課題へ進む
正答率だけを記録する 次回の負荷調整に使いにくい 手がかり量、再指示、見落とし位置、疲労徴候も残す

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

最初は見当識ドリルと注意課題ドリルのどちらから始めますか?

初回や混乱が目立つ日は、見当識ドリルから始めるのが基本です。時・場所・状況の把握が不安定なまま注意課題へ進むと、遂行低下の理由を判断しにくくなります。

同じ日に 2 種類を実施してもよいですか?

可能です。ただし、順序は「見当識→短い休憩→注意課題」で固定します。課題量は短くしても、正答、手がかり量、再指示、見落とし位置、疲労徴候は残してください。

進級の目安はどう決めますか?

手がかりが最小で、7〜8 割以上の達成が続く場合に進級を検討します。拒否、不安、疲労、見落としが増える場合は、同レベル維持または 1 段階戻しを優先します。

時間がない日は何を優先しますか?

課題量を減らしても、記録項目は減らさないことを優先します。最低限、条件、手がかり量、反応、次回設定を残せば、次回の比較と負荷調整につながります。

次の一手

まずは 2 週間、同じ条件で見当識と注意課題の変化を比較しましょう。全体像を整えるなら認知症 OT 紙面ドリルの運用プロトコル、すぐ使うなら紙面ドリル集へ進むと実装しやすくなります。


参考文献

  1. Livingston G, Huntley J, Sommerlad A, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission. Lancet. 2020;396(10248):413-446. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30367-6
  2. World Health Organization. Risk reduction of cognitive decline and dementia: WHO guidelines. 2019. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31112926/
  3. Sunderaraman P, Cosentino S. Integrating the constructs of anosognosia and metacognition: a review of recent findings in dementia. Curr Neurol Neurosci Rep. 2017;17(3):27. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28251384/

著者情報

rehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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