結論|高 CO2 は「読影」より先に「止めどころの順番」を統一します
高 CO2(換気不全)の場面で新人が迷うのは、数値の解釈よりも「今日の離床を続けてよいか」を即決できないことです。まずは 眠気・頭痛・会話量の低下などの変化を起点に、中止/軽負荷/延期へ翻訳する順番を固定しましょう。
このページは、PT が現場で使える 5 分フロー(観察 → 判断 → 報告)に絞って整理します。所見の深掘りは別ページに委ね、ここでは「見落としを減らす型」を作ります。
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この記事でわかること
高 CO2(換気不全)が疑わしいときに、PT が その場でやることを最短でまとめます。狙いは「正解探し」ではなく、同じ順番で止めどころを判断できることです。
- まず見る所見(眠気・頭痛・会話量・呼吸パターン)
- 中止/軽負荷/延期の決め方(迷う前に基準化)
- 先輩・医師・看護へ伝える報告テンプレ( SBAR )
新人向け 5 分フロー|高 CO2 を「当日判断」に落とす順番
ポイントは、血ガスを読む前に 「危ない変化」を拾うことです。検査結果が手元にない場面でも、所見から一貫して判断できるようにします。
血ガス全体の「見る順番」を先に押さえたい場合は、血ガスの初期対応のまとめから流れを確認すると、報告がさらに速くなります。血ガスの初期対応(新人向け)
- 症状:眠気、頭痛、ぼんやり、会話量低下、ふらつき
- 呼吸:呼吸数、努力呼吸、呼吸の浅さ、呼吸パターンの変化
- バイタル: SpO2 、 HR 、 BP 、体温(直近推移も含む)
- 当日判断:通常/軽負荷/延期(中止)を決める
- 報告・記録:所見+判断+次の条件を 1 行で残す
中止・軽負荷・延期の目安|迷う前に「3 段階」で揃える
高 CO2 は「 SpO2 が保てているのに眠い」など、見逃されやすいパターンがあります。そこで、所見を 3 段階にして先輩と同じ言葉で共有します。
| 区分 | まず見る所見(例) | その場の対応 | 報告の要否 |
|---|---|---|---|
| 通常(継続) | 眠気なし/会話量ふだん通り/呼吸パターン安定 | 計画通り。ただし負荷は急に上げない | 必要時(申し送りで 1 行) |
| 軽負荷(調整) | 眠気が増える/頭痛が出る/会話が短い/呼吸が浅い | 強度を下げる、休息、体位調整。観察項目を増やす | 看護 or 先輩へ共有(早め) |
| 延期(中止) | 意識低下が進む/反応が鈍い/強い頭痛/悪化が明確 | 離床は中止。安静・安全確保。すぐ相談 | 医師へ至急相談(施設ルールに従う) |
報告テンプレ( SBAR )|「所見→判断→お願い」を 20 秒で
高 CO2 は、所見と判断がバラバラだと「結局どうしたいの?」になりやすいです。所見( S )→背景( B )→評価( A )→提案( R )の型で、短く伝えます。
| 区分 | そのまま言える例 |
|---|---|
| S(状況) | 「本日、離床中に眠気が強く、会話量が落ちました。」 |
| B(背景) | 「 COPD 既往で、直近は換気不全傾向です。昨日の VBG で CO2 高めでした。」 |
| A(評価) | 「 SpO2 は保てていますが、呼吸が浅く、眠気が増えているため高 CO2 を疑います。」 |
| R(提案) | 「本日は強度を下げて中止基準で運用します。追加の評価や指示が必要か確認したいです。」 |
よくある失敗|高 CO2 は「 SpO2 だけ」だと見落とします
高 CO2 は低酸素とセットとは限りません。 SpO2 が安定していても、眠気や頭痛が進むなら「換気」を疑う余地があります。
- SpO2 が良いので安心して強度を上げる
- 眠気を「疲れているだけ」と解釈して続行する
- 所見は書いたが、当日判断(中止/軽負荷)が記録に残っていない
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 高 CO2 を疑う「最初のサイン」は何ですか?
A. 眠気、頭痛、会話量の低下など「いつもと違う反応」が最初のサインになりやすいです。 SpO2 が保てていても、反応が鈍い/ぼんやりが進むなら強度を下げて観察に切り替えます。
Q2. 血ガスが手元にないときはどう判断しますか?
A. まずは所見(意識・呼吸パターン・バイタル推移)で 3 段階(通常/軽負荷/延期)を決めます。血ガスは「確証」よりも、報告と次の評価につなげる材料として使うと運用しやすいです。
Q3. どのタイミングで先輩に相談すべきですか?
A. 「眠気が増える」「会話量が落ちる」「呼吸が浅い」など変化が出た時点で共有が安全です。延期(中止)相当なら、施設ルールに従い医師へ早めにエスカレーションします。
Q4. 記録は何を書けばよいですか?
A. 所見(眠気・頭痛・呼吸)+判断(通常/軽負荷/延期)+次回条件(観察項目や強度)を 1 行で残すのが最小です。判断が残ると、チームで再現性が上がります。
次の一手|今日の運用を前に進める
まずは、チームで「高 CO2 の 3 段階(通常/軽負荷/延期)」を共有し、申し送りで同じ言葉を使ってください。運用が揃うだけで、新人の判断は安定します。
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参考文献
- Almanza-Hurtado A, et al. Hypercapnia from Physiology to Practice. Curr Anesthesiol Rep. 2022. PMID: 36225533. PubMed
- Osadnik CR, et al. Non-invasive ventilation for the management of acute hypercapnic respiratory failure due to exacerbation of COPD. Cochrane Database Syst Rev. 2017;7(7):CD004104. doi: 10.1002/14651858.CD004104.pub4. PubMed
- Abdo WF, Heunks LMA. Oxygen-induced hypercapnia in COPD: myths and facts. Crit Care. 2012;16:323. doi: 10.1186/cc11312. PMC
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


