RRS / RRTの起動基準は「自施設の基準」を最優先に確認します
RRS(Rapid Response System)は、入院患者の病状増悪を早期に捉え、重篤化する前に対応へつなげる院内の医療安全システムです。リハビリ中に異変へ気づいたPTも、院内の起動基準に該当すれば、決められた連絡経路に沿ってMET / RRTなどへつなぎます。
ポイントは、NEWS2の点数やPT独自の中止基準だけでRRS起動を決めないことです。日本集中治療医学会の「Rapid Response System運用指針」では、気道・呼吸・循環・意識などの異常に加えて、「何らかの懸念」も起動基準の例として示されています。この記事では成人病棟を想定し、RRS / RRTを呼ぶ目安と、リハ中に異変へ気づいたPTが院内RRSへどうつなぐかを整理します。
日本集中治療医学会が示す数値は、すべての病院へ一律に適用する絶対的な起動基準ではありません。実際の起動では、自施設のRRS運営マニュアル・起動基準・連絡方法を優先してください。
RRSの起動基準|気道・呼吸・循環・意識・懸念を確認します
日本集中治療医学会の「Rapid Response System運用指針」では、運営マニュアルに含める成人患者の起動基準の例として、気道・呼吸・循環・意識・その他の異常が示されています。
以下は起動基準の例です。患者背景や院内体制によって基準は異なるため、この表の数値をそのまま自施設の基準へ置き換えるのではなく、院内マニュアルと照合してください。
| 領域 | 起動基準の例 | PTが共有するとよい情報 |
|---|---|---|
| 気道 | 気道閉塞疑い、ストライダー、気管チューブ・気管切開カニューレの異常 | 呼吸の様子、気道に関する異常、人工気道の種類、異変が生じた時点と直前の状況 |
| 呼吸 | 努力呼吸、不規則な呼吸パターン、呼吸数9回/分以下または30回/分以上、SpO2 92%以下、酸素投与量10 L/分以上 | 呼吸数、SpO2、酸素デバイス・投与量、呼吸苦、リハ開始前からの変化 |
| 循環 | 心拍数40回/分未満または130回/分以上、収縮期血圧90 mmHg以下または200 mmHg以上、尿量4時間で50 mL以下 | 血圧、心拍数、症状、皮膚所見、直近値との差。尿量は必要に応じてカルテや病棟スタッフから確認 |
| 意識 | 急激な意識レベル低下、覚醒しない状態、持続または反復するけいれん | 発症時刻、直前までの意識・会話との違い、反応性、けいれんの有無と経過 |
| その他 | 何らかの懸念、明らかな出血 | 「いつもと何が違うのか」を、症状・行動・反応性・バイタルの変化として共有 |
重要なのは、上表の数字を新しい「リハビリ中止基準」にすることではありません。RRSの起動基準は、病状増悪を早期に認識し、主治医チームやMET / RRTなどへのエスカレーションにつなげるための基準です。
リハ中に起動基準へ該当したら、介入を中断して院内手順へつなぎます
リハビリ中にRRS起動基準へ該当する異常を認めた場合は、運動や離床を続けながら様子を見るのではなく、患者の安全を確保し、自施設のRRS起動・連絡手順へつなぎます。

図の流れは、PT独自の新しいプロトコルではありません。リハ中に異変を認めた場面で、介入を中断して安全を確保し、院内基準と照合して必要な起動・連絡へつなぐための実務上の整理です。
明らかに起動基準へ該当している場合や急速に状態が悪化している場合は、すべての数値を測定してから連絡する必要はありません。患者の安全確保と院内手順による起動を優先し、可能な範囲で状態と経過を共有します。
心停止またはそれに準ずる状態を疑う場合は、RRSを待つのではなく、コードブルーなど自施設の心停止対応手順を優先します。
数値が基準内でも「何らかの懸念」はRRSにつながることがあります
RRSでは、バイタルサインの閾値だけを見るのでは不十分です。日本集中治療医学会の指針では、シングルパラメータによる起動について、客観的な異常だけでなくスタッフによる懸念など、主観的な気づきにも対応できる基準を設定することが推奨されています。
リハ場面では、「普段より反応が鈍い」「急に会話量が減った」「呼吸の様子が明らかに違う」「顔色や発汗が普段と異なる」など、患者と活動しているからこそ気づける変化があります。
このような場合に、「NEWS2が低いから問題ない」「血圧が基準内だから様子を見る」と数値だけで決めるのではなく、いつもと何が違うのかを言語化し、自施設の起動・相談基準と照合することが重要です。
RRS起動時は「現在値」だけでなく発症前後の変化を伝えます
PTから提供できる情報は、バイタルの現在値だけではありません。リハ開始前から異変までの経過を見ている場合は、何をしていたときに、何が変化し、その後どうなったかをまとめて共有すると、MET / RRTや主治医チームが状況を把握しやすくなります。
| 確認項目 | 共有する内容 |
|---|---|
| 発生状況 | いつ、どのような活動中に異変へ気づいたか |
| 症状・所見 | 呼吸苦、胸部症状、意識・反応性、出血、けいれんなど |
| バイタル | 呼吸数、SpO2、血圧、心拍数など。可能であれば介入前や直近値との変化も添える |
| 酸素条件 | 室内気か酸素投与中か、酸素デバイス、投与量、直近の変更 |
| 実施済みの対応 | 介入中断、安全確保、体位変更など、すでに行った対応とその後の変化 |
施設でSBARを使用している場合は、これらの情報をSituation、Background、Assessment、Recommendationの枠組みに整理すると共有しやすくなります。SBARそのものの使い方は、記事末の関連記事へ役割を分けています。
NEWS2はRRS起動を補助する方法の1つです
NEWS2は、病状増悪を早期に捉え、診療のエスカレーションへつなげるEarly Warning Scoreの1つですが、RRSそのものと同義ではありません。RRSでは、単一のバイタル異常を用いるシングルパラメータ方式と、NEWS2など複数項目を点数化するEWS方式があります。
NEWS2では、単一項目3点、合計5〜6点、合計7点以上などに応じて、臨床的なレビューやケアのエスカレーションが設定されています。一方で、NEWS2の点数だけから「端座位まで」「リハ中止」「低負荷なら実施可能」といったリハ負荷を直接決める尺度ではありません。
NEWS2の採点とリハ前の確認方法については、NEWS2 / MEWSと離床前スクリーニングで詳しく整理しています。
RRS・RRT・MET・コードブルーは役割が異なります
RRSは、病状増悪の認識から起動、対応、システム改善までを含む院内の仕組み全体です。RRTやMETは、そのRRSの中で患者への評価・初期対応を担う対応チームに位置づけられます。
| 名称 | 位置づけ |
|---|---|
| RRS | 病状増悪を早期に認識し、対応へつなげ、重篤有害事象の軽減を目指す院内システム全体 |
| RRT | 医師を必ずしも含まず、患者の初期評価と基本的な初期対応を行い、必要に応じて医師の緊急招集へつなぐチーム |
| MET | 医師を1名以上含み、気管挿管などの二次救命処置をベッドサイドで開始できる能力を備えた対応チーム |
| コードブルー | 心停止やそれに準ずる病態で起動する緊急対応システム。病状増悪を心停止前に捉えるRRSとは目的が異なる |
実際には施設によってチーム名称や連絡経路が異なります。PTも「院内では何という名称で、誰が、どの方法で起動できるのか」を事前に確認しておくことが重要です。
起動後の記録は「異変・起動・対応・反応」が追えるように残します
RRS起動後の記録では、独自の固定フォーマットを増やすより、電子カルテや院内のRRS記録様式に沿って、異変を認めてから引き継ぐまでの経過が追えるように残します。
- 異変に気づいた時刻と状況
- 症状・意識・バイタルと酸素条件
- 介入前または直近値からの変化
- リハを中断した時刻と安全確保の内容
- RRS等を起動・連絡した時刻と連絡先
- 起動前後に行った対応
- 患者の反応と、その後の引き継ぎ先
「SpO2が低かったため中止」のように結果だけを残すのではなく、発症前後の変化と、どの院内ルートへつないだのかまで分かる記録にすると、後から経過を振り返りやすくなります。
よくある質問
RRSは数値が起動基準を超えたときだけ呼ぶものですか?
いいえ。日本集中治療医学会の指針では、起動基準の例に「何らかの懸念」が含まれています。自施設の基準に同様の項目がある場合は、数値だけでなく「いつもと違う」という臨床的な変化も起動・相談につながります。
PTが患者の異変に気づいた場合もRRSへつなげてよいですか?
RRSは医師や看護師だけで完結するシステムではなく、患者に関わるメディカルスタッフが病状増悪に気づき、必要な情報を提供することが重要です。誰が直接起動できるか、どの経路で連絡するかは施設ごとに異なるため、自施設のマニュアルを確認してください。
NEWS2が低ければRRSは不要ですか?
NEWS2だけでは決まりません。RRSでは、シングルパラメータ、EWS、臨床的な懸念などを用いて病状増悪を捉えます。NEWS2が高くなくても、院内起動基準への該当や明らかな変化、懸念があれば、自施設の手順に沿って相談・起動します。
心停止を疑う場合もRRSを呼べばよいですか?
心停止またはそれに準ずる緊急事態では、コードブルーなど自施設の心停止対応手順を優先します。RRSは、主として心停止などの重篤な急変へ至る前の病状増悪を早期に捉えるためのシステムです。
次の一手|急変対応全体と報告方法を確認する
離床判断や急変対応など、臨床手技・安全管理の記事をまとめています。
中止後の状況を短く整理して医師・看護師へ共有するときは、SBARの記事へ進んでください。
参考文献
- 日本集中治療医学会RRS運用指針作成ワーキンググループ.Rapid Response System運用指針.日本集中治療医学会雑誌.2025;32:R15.doi:10.3918/jsicm.2400002 / J-STAGE
- Royal College of Physicians.National Early Warning Score(NEWS)2:Standardising the assessment of acute-illness severity in the NHS.London:RCP;2017.PDF
- National Institute for Health and Care Excellence.National Early Warning Score systems that alert to deterioration in adult patients in hospital(MIB205).2020.Web
- Maharaj R, Raffaele I, Wendon J. Rapid response systems: a systematic review and meta-analysis. Crit Care. 2015;19:254. doi:10.1186/s13054-015-0973-y / PubMed
- Hillman K, Chen J, Cretikos M, et al. Introduction of the medical emergency team(MET)system: a cluster-randomised controlled trial. Lancet. 2005;365(9477):2091-2097. doi:10.1016/S0140-6736(05)66733-5 / PubMed
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

