浮腫患者の褥瘡予防|PTが見る皮膚・支持・踵除圧

臨床手技・プロトコル
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浮腫患者の褥瘡予防は「皮膚・支持・圧」をセットで見る

浮腫がある患者の褥瘡予防では、浮腫の程度だけでなく、皮膚の変化、下腿の支持範囲、踵や外果への圧集中、下肢アライメントをセットで確認することが重要です。特に療養病棟や長期臥床患者では、活動量低下、皮膚湿潤、拘縮、低栄養などが重なることがあります。本記事では、PTが浮腫患者を観察する順番、踵除圧と下腿支持の注意点、ポジショニング後の再評価方法を実践的に整理します。

褥瘡予防全体の評価順序を確認したい方へ

皮膚観察、リスク評価、除圧、ポジショニング、再評価までの全体像は、褥瘡予防の基本フローで整理しています。

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浮腫がある患者で褥瘡リスクを確認する理由

浮腫は、褥瘡リスクを判断するときに確認したい危険因子の一つです。ただし、浮腫があるだけで褥瘡が発生すると判断するのではなく、体動、拘縮、皮膚湿潤、栄養状態、支持面などと組み合わせて評価します。

浮腫が強い部位では皮膚に張りや光沢がみられ、皮膚の密着、摩擦、ずれなどによるトラブルにも注意が必要です。また、下肢の重量や形状が変化することでクッションへの沈み込みが生じ、踵、外果、腓骨頭、下腿外側などに圧が偏ることがあります。

表1.浮腫患者で褥瘡リスクを整理する視点
確認項目 起こり得る問題 PTが確認すること
皮膚の張り・光沢 摩擦やずれに伴う皮膚障害を見落としやすい 発赤、表皮剥離、湿潤、滲出液の有無を確認する
圧痕・腫脹 クッションや寝具の跡が残ることがある 部位、左右差、範囲、時間経過による変化を確認する
活動量低下 同じ部位への圧迫が続きやすい 寝返り、足の動き、離床時間、介助量を確認する
下腿支持 狭い範囲で支えると圧が偏る 下腿全体で広く支持できているか確認する
踵・外果の接触 骨突出部へ局所的に圧が集中する 実際の接触部位を手で確認する
外旋・偏位 踵外側、外果、腓骨頭に圧が偏る 股関節、下腿、足部の向きを確認する

浮腫患者を5分で確認する評価フロー

浮腫患者では、皮膚だけを観察して終わらず、接触部位と支持状態まで同じ姿勢で確認します。臨床では、皮膚、接触部位、支持、アライメント、再評価の順に確認すると、見落としを減らしやすくなります。

浮腫患者の褥瘡リスクを5分で確認する皮膚・接触部位・支持・アライメント・再評価のフロー
浮腫患者では、皮膚を見る、接触部位を触る、支持を確認する、アライメントを見る、再評価する、の順に確認します。

浮腫患者の5分確認フロー

  1. 皮膚:発赤、光沢、湿潤、表皮剥離、圧痕を確認する
  2. 接触:踵、外果、腓骨頭、下腿外側の当たりを手で確認する
  3. 支持:下腿が広い面で支えられているか確認する
  4. 姿勢:外旋、足部偏位、膝窩部への圧迫を確認する
  5. 再評価:調整後と時間経過後に皮膚・接触・ずれを再確認する

療養病棟では、訪室時には適切に見えても、時間経過とともにクッションが沈み込み、踵が再接触していることがあります。そのため、ポジショニング直後の完成形だけでなく、その姿勢が維持されているかまで確認することが重要です。

浮腫がある患者でPTが見たい4つのポイント

PTが優先して確認したいのは、皮膚、下腿支持、アライメント、時間経過による変化の4点です。ひとつの所見だけで判断せず、どの姿勢と支持条件で問題が起きているかを整理します。

浮腫患者の褥瘡予防でPTが確認する皮膚・下腿支持・圧・アライメント
浮腫患者では、皮膚だけでなく、下腿支持、圧の集中、下肢アライメントまでセットで観察します。

1.皮膚の張り・発赤・圧痕

最初に、発赤、光沢、湿潤、表皮剥離、スキンテア、滲出液などの有無を確認します。皮膚色だけで判断せず、周囲との温度差、硬さ、痛み、触れたときの反応も必要に応じて確認します。

「発赤あり」だけでは、原因となる姿勢や接触部位が伝わりません。記録するときは、部位、範囲、左右差、姿勢、寝具やクッションとの位置関係まで残すと、対応につなげやすくなります。

2.下腿全体で支持できているか

踵除圧では、踵を浮かせることに加えて、下腿を広い範囲で支えられているかを確認します。支持範囲が狭いと、下腿遠位部、アキレス腱周囲、膝窩部などに新たな圧が集中する可能性があります。

クッションを入れた後は、踵の下に手を入れて接触の有無を確認し、さらに下腿のどこへ荷重がかかっているかを触診します。膝窩部へクッションの縁が直接当たっていないかも確認します。

3.外旋・下腿偏位・足部の向き

浮腫や筋力低下、拘縮がある患者では、股関節外旋や足部偏位が生じ、踵外側、外果、腓骨頭へ圧が集中することがあります。

「クッションが入っているから除圧できている」と判断せず、実際の骨突出部がどこへ接触しているかを確認します。外旋を完全に矯正することが目的ではなく、患者の疼痛や拘縮を考慮しながら、局所的な圧を減らせる支持位置を探します。

4.時間経過後も支持が維持されているか

ポジショニング直後に踵が浮いていても、クッションの沈み込み、患者自身の体動、ケア後のずれによって再接触することがあります。

体位変換後、離床後、オムツ交換後、リハビリ終了後など、姿勢が変わる場面を再確認のタイミングとして共有します。浮腫の強さや寝具の状態によっては、確認頻度を個別に調整します。

浮腫患者の踵除圧で注意したいこと

浮腫患者の踵除圧では、踵の完全な免荷だけを目標にせず、下腿支持によって別の部位へ圧を移していないかを確認します。

表2.浮腫患者の踵除圧で確認したいポイント
確認項目 確認方法 見直しの視点
踵接触 踵とベッド面の間へ手を入れる 踵の一部だけが接触していないか確認する
下腿支持 下腿とクッションの接触範囲を触る 一点支持やクッションの縁による圧を避ける
膝窩部 膝裏へ直接圧が加わっていないか確認する クッションの位置や高さを調整する
踵外側・外果 外旋時の接触部位を確認する 下腿と足部の向きに合わせて支持を調整する
ずれ・沈み込み 時間経過後に踵とクッション位置を再確認する 再確認する場面と担当者を共有する

踵部褥瘡の評価や除圧方法を詳しく確認したい場合は、踵部褥瘡の予防|PTが見るべき評価・除圧・ポジショニングで整理しています。

浮腫患者のポジショニングで避けたい失敗

浮腫患者のポジショニングでは、クッションを入れた事実ではなく、圧が分散され、姿勢が安定し、皮膚への新たな負担が生じていないことを確認します。

表3.浮腫患者のポジショニングでよくある失敗
よくある失敗 起こり得る問題 修正方法
踵だけを高く持ち上げる 下腿遠位部や膝窩部へ圧が集中する 下腿を広い範囲で支持する
柔らかいクッションへ深く沈ませる 踵や外果が寝具へ再接触する 沈み込み後の接触状態を確認する
外旋したまま固定する 踵外側、外果、腓骨頭へ圧が偏る 拘縮と安楽性を考慮して支持位置を調整する
体位変換後に確認しない クッションのずれや局所圧を見落とす 体位変換後の確認をケア手順に含める
皮膚所見だけを記録する 原因となる姿勢や支持条件が共有されない 姿勢、接触部位、支持方法、再評価結果を残す

なお、下肢挙上、圧迫療法、運動負荷などは、浮腫の原因や全身状態によって適否が異なります。急な左右差、疼痛、熱感、呼吸苦、急激な腫脹などがある場合は、ポジショニングだけで対応せず、医師や看護師へ共有します。

浮腫患者の記録例

記録では、「浮腫あり」「踵除圧実施」だけで終わらせず、所見、原因となる接触、実施した調整、再評価結果を残します。

記録例

両下腿に浮腫を認め、右踵外側に軽度発赤あり。仰臥位では股関節外旋により右踵外側がベッド面へ接触していた。下腿全体をクッションで支持し、膝窩部への直接圧迫がない位置へ調整。調整直後は踵接触なし。30分後も踵免荷を維持し、発赤の拡大なし。クッション位置と再確認部位を看護師へ共有した。

記録時間や再評価間隔を一律に固定するのではなく、皮膚所見、患者の体動、クッションの沈み込み、病棟のケア場面に合わせて設定します。

観察と共有に使える踵部除圧チェックシート

踵部除圧チェックシートでは、下腿支持、踵接触、外旋、クッション位置、体位変換後の再確認をまとめて確認できます。浮腫患者では、踵だけでなく、外果、腓骨頭、下腿外側の接触も追加して観察してください。

踵部除圧チェックシート

浮腫がある患者の踵除圧、下腿支持、クッション位置の確認にも活用できます。

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多職種で共有したいポイント

浮腫患者では、個人のポジショニング技術だけでなく、誰が対応しても同じ状態を再現できる共有方法が重要です。部位名だけではなく、姿勢、支持位置、確認するタイミングまで具体的に伝えます。

表4.浮腫患者について多職種で共有したい内容
共有項目 具体的な共有内容 目的
皮膚所見 発赤、表皮剥離、湿潤、圧痕の部位と変化 皮膚トラブルを早期に把握する
浮腫の変化 左右差、範囲、急な増悪、疼痛や熱感の有無 全身状態や局所病変の変化を見逃さない
支持位置 下腿のどこを、どのクッションで支えるか ポジショニングの再現性を高める
注意部位 踵、外果、腓骨頭、下腿外側、膝窩部 新たな圧集中を防ぐ
再確認場面 体位変換後、ケア後、離床後、リハビリ後 ずれや沈み込みを早期に修正する

浮腫と褥瘡予防に関するよくある質問

各項目名をタップまたはクリックすると回答が開きます。

浮腫があると褥瘡リスクは上がりますか?

浮腫は褥瘡に関する危険因子の一つとして確認されます。ただし、浮腫だけで判断するのではなく、体動、拘縮、栄養状態、皮膚湿潤、骨突出、圧の持続などと組み合わせて評価します。

浮腫患者では、まず何を確認すればよいですか?

最初に皮膚の発赤、光沢、湿潤、表皮剥離、圧痕を確認します。その後、踵や外果などの接触部位、下腿の支持範囲、外旋や足部偏位を確認し、調整後に再評価します。

踵が浮いていれば除圧できていますか?

踵が浮いていても、下腿遠位部、膝窩部、外果、腓骨頭などへ圧が移っている可能性があります。踵の免荷と下腿全体の支持をセットで確認してください。

浮腫がある場合は下肢を挙上すればよいですか?

一律に下肢挙上を行うのではなく、浮腫の原因、循環・呼吸状態、疼痛、皮膚状態などを考慮する必要があります。挙上や圧迫療法の適否は、医師や看護師と共有して判断します。

ポジショニング後はいつ再確認しますか?

体位変換後、オムツ交換後、離床後、リハビリ後など、姿勢やクッション位置が変わる場面で確認します。皮膚所見やクッションの沈み込みに応じて、時間経過後の再評価も行います。

まとめ

浮腫患者の褥瘡予防では、浮腫の有無だけでなく、皮膚、接触部位、下腿支持、下肢アライメント、時間経過後の変化をセットで確認します。

踵を浮かせるだけでは、下腿遠位部や膝窩部、外果などへ圧が移ることがあります。ポジショニング後は実際の接触部位を手で確認し、体位変換やケアの後にも支持状態を再評価することが重要です。

療養病棟では、クッション位置と注意部位を多職種で共有し、誰が対応しても同じ状態を再現できるようにすると、継続的な褥瘡予防につながります。

次の一手

① 褥瘡予防の全体像を確認する

褥瘡予防の基本|評価・除圧・再評価の進め方

② 踵部の評価と除圧を詳しく確認する

踵部褥瘡の予防|PTが見るべき評価・除圧・ポジショニング


参考文献

  1. 日本褥瘡学会学術教育委員会ガイドライン改訂委員会.褥瘡予防・管理ガイドライン.第5版.東京:照林社;2022.
  2. 厚生労働省.褥瘡に関する危険因子評価票
  3. 日本褥瘡学会.褥瘡の予防について
  4. 日本褥瘡学会.改定DESIGN-R®2020コンセンサス・ドキュメント.2020.
  5. Gould LJ, Alderden J, Aslam R, et al. WHS guidelines for the treatment of pressure ulcers—2023 update. Wound Repair Regen. 2024;32(1):6-33. PubMed

著者情報

褥瘡・創傷ケア認定理学療法士のrehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハビリテーションの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中、褥瘡・創傷ケアなどの講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハビリテーション、栄養、シーティング、摂食・嚥下

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