浮腫がある患者では「皮膚」と「支持」をセットで見る
浮腫がある患者では、皮膚トラブルや褥瘡リスクが高くなりやすくなります。特に療養病棟や高齢患者では、浮腫、皮膚脆弱性、長時間同一姿勢、活動量低下が重なり、踵部や下腿部に問題が起こりやすくなります。
PT は「浮腫があるか」だけでなく、皮膚状態、圧の集中、下腿支持、踵除圧、ポジショニングまで含めて観察することが重要です。
なぜ浮腫があると褥瘡リスクが上がるのか?
浮腫がある状態では、皮膚や皮下組織が伸張され、外力に弱くなりやすくなります。軽い摩擦やずれでも表皮剥離や発赤につながることがあり、皮膚トラブルの早期発見が重要です。
また、浮腫が強い下肢では、クッションや枕による支持が不安定になりやすく、踵部、腓骨頭、外果、下腿外側などに圧が集中することがあります。
| 要因 | 起こりやすい問題 | PTが見る視点 |
|---|---|---|
| 皮膚の張り | 皮膚が伸張され、損傷しやすい | 発赤、光沢、表皮剥離を確認する |
| 圧痕 | 循環不良や皮膚脆弱性が疑われる | 圧痕の部位、程度、左右差を確認する |
| 下腿支持 | クッションが沈み込み、圧が偏る | 下腿全体で支持できているか確認する |
| 踵接触 | 踵部に局所圧が集中する | 踵が接触していないか、偏っていないか確認する |
| 外旋・偏位 | 踵外側、外果、腓骨頭に圧が集中する | 足部と下腿のアライメントを確認する |
浮腫がある患者でPTが見たい4つのポイント
浮腫がある患者では、皮膚、支持、圧、アライメントをセットで確認します。ひとつの項目だけで判断せず、姿勢や支持面との関係を見ながら、褥瘡や皮膚トラブルのリスクを整理します。
1.皮膚の張り・発赤
まず確認したいのは皮膚状態です。発赤、光沢感、湿潤、テカリ、表皮剥離、スキンテアの有無を確認します。
浮腫が強い患者では、軽微な圧迫や摩擦でも皮膚障害につながることがあります。発赤がある場合は、単に「赤い」と記録するだけでなく、どの姿勢で圧がかかるのかを確認します。
2.下腿全体で支持できているか
踵除圧では、踵だけを浮かせるのではなく、下腿全体で支持できているかが重要です。支持範囲が狭いと、下腿遠位部、アキレス腱周囲、膝窩部などに圧が集中することがあります。
クッションを入れた後は、踵が浮いているかだけでなく、膝裏に直接圧がかかっていないか、下腿全体で支えられているかを確認します。
3.外旋・アライメント
浮腫がある患者では、下肢外旋や足部偏位が起こりやすくなります。その結果、踵外側、外果、腓骨頭などに圧が集中しやすくなります。
「クッションを入れているから大丈夫」と判断せず、実際の接触部位を確認することが重要です。足部が外を向いていないか、下腿がねじれていないかもあわせて見ます。
4.体位変換だけで終わっていないか
体位変換は大切ですが、向きを変えるだけでは褥瘡予防として不十分なことがあります。重要なのは、体位変換後に、どこに圧がかかるか、どこで支持するか、ずれが起きていないかを確認することです。
特に浮腫がある患者では、クッションが沈み込んだり、下肢の位置がずれたりすることで、時間経過とともに圧のかかり方が変わることがあります。
踵除圧で注意したいポイント
浮腫がある患者の踵除圧では、「踵を浮かせる」ことだけに意識が向きやすくなります。しかし実際には、下腿支持、膝窩圧迫、外旋、クッションのずれ、体位変換後の再確認までセットで考える必要があります。
| 確認したい点 | 観察ポイント | 見直しの視点 |
|---|---|---|
| 踵接触 | 踵がベッド面へ接触していないか | 接触部位を実際に確認する |
| 下腿支持 | 下腿全体で支持できているか | 一点支持になっていないか確認する |
| 膝窩圧迫 | 膝裏に直接圧がかかっていないか | クッション位置を調整する |
| 外旋 | 股関節外旋で踵外側に圧が偏っていないか | 下肢アライメントを整える |
| ずれ | 体位変換後にクッションがずれていないか | 再確認のタイミングを共有する |
浮腫患者で注意したいポジショニング
浮腫がある患者のポジショニングでは、皮膚に直接かかる圧だけでなく、支持面の広さと圧の分散を意識します。クッションを入れる目的は、単に足を持ち上げることではなく、圧の集中を減らすことです。
特に、下腿外側、腓骨頭、外果、踵部、膝窩部は確認したい部位です。浮腫が強い場合は皮膚が脆弱になっていることがあるため、摩擦やずれにも注意します。
観察時に使いやすいチェックシート
浮腫患者の観察では、踵除圧や下腿支持の確認も重要です。以下のチェックシートは、踵部除圧を中心に、下腿支持、踵接触、外旋、クッション位置、体位変換後の確認を整理できます。
多職種で共有したいポイント
浮腫がある患者では、PT単独での対応だけでは不十分なことがあります。看護師、介護士、管理栄養士などと、皮膚状態、クッション位置、支持方法、注意部位を共有することが重要です。
| 共有項目 | 共有内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 発赤部位 | どこに赤みがあるか | 早期対応につなげる |
| 支持位置 | どこで下腿を支えるか | 再現性を高める |
| クッション位置 | どの位置に置くか | 圧集中を防ぐ |
| 注意部位 | 踵、外果、腓骨頭、膝窩など | 見落としを減らす |
| 再確認 | 体位変換後や離床後に確認するか | ずれや沈み込みを修正する |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
浮腫があると褥瘡リスクは上がりますか?
上がりやすくなります。浮腫があると皮膚が伸張され、摩擦やずれ、圧迫に弱くなることがあります。特に長時間同一姿勢や活動量低下が重なる場合は注意が必要です。
PTは浮腫そのものを治療するのですか?
浮腫の原因診断は医師の領域です。PTは、浮腫による皮膚脆弱性、支持面、圧集中、活動量、ポジショニングなどを評価し、褥瘡や皮膚トラブルの予防につなげます。
浮腫患者の踵除圧で注意することは何ですか?
踵を浮かせるだけでなく、下腿全体で支持できているか、膝窩部を圧迫していないか、外旋で踵外側に圧が偏っていないかを確認します。
多職種には何を共有すればよいですか?
発赤部位、圧が集中しやすい部位、クッション位置、下腿支持方法、体位変換後の確認ポイントを具体的に共有すると、ケアの再現性が高くなります。
まとめ
浮腫がある患者では、皮膚トラブルや褥瘡リスクが高くなりやすいため、PTは「浮腫の有無」だけではなく、支持や圧分散まで含めて観察することが重要です。
特に、皮膚状態、下腿支持、踵除圧、外旋・アライメント、ずれ・圧集中はセットで確認したいポイントです。「浮かせるだけ」で終わらず、どこで支持し、どこに圧が集中しているかまで確認することが、実践的な褥瘡予防につながります。
踵部の除圧については、踵部褥瘡の予防|PTが見るべき評価・除圧・ポジショニングでも詳しく整理しています。
参考文献
- 日本褥瘡学会 学術教育委員会 ガイドライン改訂委員会.褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版).日本褥瘡学会誌.2022;24(1):29-85.
- 日本褥瘡学会.改定 DESIGN-R®2020 コンセンサス・ドキュメント.2020.
- 日本褥瘡学会.DESIGN-R®2020 褥瘡経過評価用.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下

