胸腔ドレーン留置中の離床・歩行|泡と水面で止めどき固定

臨床手技・プロトコル
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胸腔ドレーン留置中の離床・歩行は「泡と水面」で止めどきを揃える

胸腔ドレーン(気胸・術後)留置中の離床で迷うポイントは、バイタルだけではなく排液ボトル(水封室)の変化です。結論として、①泡(エアリーク)の変化、②水面の呼吸性移動、③症状・バイタルの 3 点を同じ順番で確認し、変化があれば「中止→回路確認→報告」へ翻訳すると、安全判断がブレません。

本記事は採点や機器の細かい解説ではなく、PT が現場で使える準備 → 離床前チェック → 段階プロトコル → 中止基準 → SBAR → 記録の「型」を 1 ページに固定します。

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判断の順番が揃うと、報告のストレスと「やり直し」を減らせます。

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まず見るのは 3 点:泡・呼吸性移動・症状(+バイタル)

胸腔ドレーン留置中の離床は、「動かしていいか」をバイタルだけで決めると事故りやすいです。排液ボトル(水封室)で泡(エアリーク)の変化水面の呼吸性移動を確認し、いつも同じ順番で判断するだけで、トラブルの早期発見につながります。

特に気胸では、断続的な泡が連続した泡へ変化したり、泡が急に増える場合は、再発や回路の気密不良(接続ゆるみ、挿入部のリークなど)を疑い、離床は一旦止めて確認します。呼吸性移動が消える場合は閉塞や屈曲などの異常を疑います。

離床前の準備:ボトル位置と回路の「引っ張られない形」を作る

離床前にやることは「機器の知識」ではなく、事故が起きない形を先に作ることです。排液ボトルは倒れにくい位置に置き、チューブは屈曲しない程度に余裕を持たせ、患者の動線に引っ掛からないようにまとめます。歩行まで想定するなら、スタッフ間で「誰が何を見るか(患者/ライン/排液ボトル)」を決めてから開始します。

ポイントは、離床中に設定をいじらないことです。吸引か水封か、離床時の取り扱いは事前に合意し、PT 側の判断だけで切り替えない運用にします。

離床前チェックリスト:Yes なら進む/No なら止めて確認

チェックは「短く、同じ順番」で回すほど機能します。下の表をそのまま院内の最小セットとして使える形にしています(施設ルールがある項目は欄だけ残し、数値は施設基準に合わせてください)。

胸腔ドレーン留置中の離床前チェック(成人/一般病棟〜 ICU )
チェック項目 見るポイント No / 変化あり のときの行動
水封室の泡 断続?連続?急増?(咳で一時的に増えるかも含めて「変化」を見る) 中止→接続・挿入部・回路を確認→必要なら報告
呼吸性移動 水面が呼吸に合わせて上下するか(急に消えた/変化した) 中止→屈曲・閉塞・位置ずれを疑い回路確認→報告
症状 呼吸苦、胸痛、冷汗、不穏、会話量低下 中止→安静化→バイタル再評価→報告
バイタル HR / RR / SpO2 / 血圧(施設の中止基準に沿う) 中止→施設基準で判断→報告
回路・固定 接続ゆるみ、チューブ屈曲、皮下気腫の拡大、ボトル位置(倒れやすさ) 中止→形を作り直す(屈曲解除・固定見直し)
チーム合意 吸引 / 水封の状態、離床時の取り扱い、役割分担(患者/回路/ボトル) 合意がないなら開始しない(まず共有してから)

段階プロトコル:端座位 → 立位 → 歩行(各段階で「同じ確認」)

離床は「段階」を刻むほど安全です。各段階で、泡・呼吸性移動・症状(+バイタル)を同じ順番で確認し、変化があれば次へ進まず止めます。

1)端座位

まずは端座位で 30 秒〜 1 分の観察時間を確保します。ボトルの位置と回路の屈曲が起きやすいタイミングなので、立ち上がる前に「引っ張られない形」を作り直します。泡が断続から連続へ変化したり、呼吸性移動が消える場合は中止して確認します。

2)立位

立位では、呼吸苦・胸痛・不穏などの症状が出やすくなります。バイタルが許容範囲でも、泡の変化(急増・連続)や呼吸性移動の消失があれば、歩行へ進めず一旦止めます。回路が衣服や手すりに引っ掛かることがあるため、スタッフの役割分担(回路係)を固定します。

3)歩行

歩行は「短い距離 → 立ち止まり → 再評価」で進めます。歩行中はボトル位置の変化、屈曲、接続ゆるみが起きやすいので、止まるたびに泡と呼吸性移動をチェックし、変化があれば中止します。歩行練習の組み立て自体は ICU でも共通なので、全体の安全設計はICU リハの安全 SOP(病棟共通の考え方として)も合わせて参照してください。

中止基準:バイタルだけでなく「泡と水面の変化」を入れる

中止基準は、現場で迷う前に先に固定すると回ります。特に気胸では「泡の変化」が重要です。断続的な泡が連続した泡へ変化した場合は、再発や回路の気密性不良(チューブ外れ、挿入部・接続部のリークなど)を疑います。呼吸性移動が突然消える場合は、閉塞や屈曲などの異常が疑われます。

離床の中止トリガー(成人/胸腔ドレーン留置中)
観察トリガー 意味づけ(疑うこと) PT の行動(順番)
泡:断続 → 連続へ変化/急増 再発、回路の気密不良、接続ゆるみ、挿入部リーク など 中止→安静化→接続・挿入部・回路を確認→ SBAR で報告
呼吸性移動:突然消失 屈曲、閉塞、位置ずれ、回路異常 など 中止→屈曲解除・回路確認→改善しなければ報告
症状:呼吸苦・胸痛の増悪、不穏の増加 呼吸仕事量の増大、再発・悪化の可能性 中止→安静化→バイタル再評価→報告
バイタル:施設の中止基準に抵触 循環・呼吸の負荷過多 中止→施設基準で判断→報告
回路:屈曲が戻る/接続が緩い/ボトル転倒リスク ドレナージ不良、逆流リスク、偶発抜去リスク 中止→形の作り直し→再開は再評価してから

よくある失敗:知識より「運用の穴」を潰す

胸腔ドレーンの事故は「知らなかった」より「形が崩れた」「合意がなかった」で起きます。次の 4 つは現場で再発しやすいので、最初からルール化しておくと安全です。

胸腔ドレーン離床で起きやすいミス( OK / NG 早見)
場面 NG(起きがち) OK(型) 記録・共有ポイント
開始前 泡だけを見て判断(原因の切り分けをしない) 泡「変化」+呼吸性移動+症状の 3 点セットで確認 泡の状態(断続/連続/急増)、呼吸性移動の有無
離床中 ボトル位置が不安定で倒れそう/チューブが屈曲 ボトル位置固定、回路係を決める、止まるたびに再チェック 屈曲の有無、固定の見直し実施
設定 PT 判断で吸引/水封を勝手に切り替える 事前にチーム合意(取り扱いを固定) 現状(吸引/水封)と合意内容
異常時 「なんとなく危ない」で報告が遅れる SBAR で短く報告(何が、いつから、どう変わったか) 変化の時点、再評価の結果、実施した確認

トラブル時の SBAR:報告が短く通るテンプレ

異常は「短く・事実だけ」で通すほど対応が速くなります。下の SBAR は、そのまま口頭・チャット・カルテに転記できる形です。

  • S(状況):胸腔ドレーン留置中。離床(端座位/立位/歩行)で排液ボトル所見の変化があり中止しました。
  • B(背景):目的は(気胸/術後)。現在(吸引/水封)。直前は泡(断続/なし)、呼吸性移動(あり)でした。
  • A(評価):泡が(断続→連続/急増)しました/呼吸性移動が消失しました。症状は(呼吸苦/胸痛/不穏)。SpO2 は( )%、RR は( )/min です。
  • R(提案):回路(屈曲・接続・挿入部)を確認し安静化済です。設定・診察・画像確認の要否をご指示ください。

記録の最小セット:前 → 中 → 後 を固定する

記録は「全部書く」より、チームが次に迷わない情報に絞るほうが回ります。最低限は、前(開始前)中(段階ごとの変化)後(終了時)の 3 タイミングで固定します。

胸腔ドレーン離床の記録テンプレ(最小セット)
タイミング 必須 3 点 補足(あれば)
開始前 泡(断続/連続/なし)、呼吸性移動(あり/なし)、症状(呼吸苦/胸痛/不穏)+主要バイタル 吸引/水封、回路・固定の形、役割分担
離床中 段階(端座位/立位/歩行距離)ごとの変化(泡・呼吸性移動・症状) 中止・調整した理由、回路確認の結果
終了後 泡・呼吸性移動が戻ったか、症状の変化、主要バイタル 次回の目標(距離・段階)、注意点(引っ掛かりポイント)

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

泡が出ている=空気漏れ、と決めつけていいですか?

「泡がある」だけで即断するのは危険です。泡は胸腔内の余剰な空気を示しますが、肺からの漏れ以外に、接続のゆるみや挿入部、システム側の問題でも起こりえます。大事なのは泡の“変化”(断続→連続、急増)を見て、回路・接続・挿入部を確認し、必要なら早めに報告することです。

呼吸性移動が見えないときは、まず何を疑いますか?

呼吸性移動の突然の消失は、屈曲や閉塞、位置ずれなどの異常が疑われます。まずは回路の屈曲、チューブの固定、接続部の状態を確認し、それでも改善しなければ中止して報告します。

吸引か水封かは、PT が判断して切り替えていいですか?

設定変更は施設ルールと主治医指示に依存します。PT が単独で切り替える運用は事故につながるため、本記事では「離床時の取り扱いを事前に合意し、離床中にいじらない」ことを基本にしています。

歩行まで進めるとき、いちばん起きやすいトラブルは何ですか?

多いのは、回路の屈曲・引っ掛かり、接続のゆるみ、ボトル位置の不安定化です。歩行は「短距離→停止→再評価」で刻み、止まるたびに泡と呼吸性移動を確認すると安全です。

術後ドレーンと気胸ドレーンで、見方は変わりますか?

基本の型(泡・呼吸性移動・症状)は共通ですが、術後は排液(血性・量の推移)や循環変化も重要になります。施設の術後プロトコルがある場合は、離床基準と合わせて運用してください。

次の一手


参考文献

  1. 日本離床学会. 離床 Q&A Vol.365「泡の変化がポイント!胸腔ドレーン挿入下での離床」.(参照 2026-02-21)https://www.rishou.org/activity-new/qa/qa-vol-365
  2. BCcampus Open Education. 10.6 Chest Tube Drainage Systems. Clinical Procedures for Safer Patient Care.(参照 2026-02-21)https://pressbooks.bccampus.ca/clinicalproceduresforsaferpatientcaretrubscn/chapter/10-6-chest-tube-drainage-systems/
  3. Royal Children’s Hospital Melbourne. Nursing guideline: Chest drain management.(参照 2026-02-21)https://www.rch.org.au/rchcpg/hospital_clinical_guideline_index/chest_drain_management/
  4. StatPearls. Manage Chest Tube Drainage Systems. NCBI Bookshelf.(参照 2026-02-21)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK594490/
  5. Kent MS, et al. The Society of Thoracic Surgeons Expert Consensus Document on Pleural Drains. Ann Thorac Surg. 2024.(参照 2026-02-21)https://www.annalsthoracicsurgery.org/article/S0003-4975%2824%2900342-4/fulltext

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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