点滴・ CVC / PICC ・動脈ラインありの離床|管理の型

臨床手技・プロトコル
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点滴・ CVC / PICC ・動脈ラインありの離床は「見る順番」を固定すると回ります

点滴や中心静脈( CVC / PICC )、動脈ラインがある患者さんの離床で迷うのは、技術よりも「どこを先に確認して、何が起きたら止めるか」が揃っていないことです。結論として、①刺入部(熱感・腫脹・発赤・疼痛)、②滴下(止まる/速い/逆流)、③固定(ゆるみ・屈曲・引っ掛かり)を毎回同じ順番で確認し、変化があれば「中止 → 形の作り直し → 報告」へ翻訳すると、事故とやり直しが減ります。

本記事は、細かな手技の解説ではなく、PT がそのまま使える準備 → 離床前チェック → 段階プロトコル → 中止基準 → SBAR → 記録の「標準フロー」を 1 ページに固定します。

進め方を先に固定すると、連絡ストレスと判断ミスが減ります

離床の「型」を揃えると、新人でも同じ報告ができます。

まず全体フローを固定する(無料)

現場の詰まりどころ:動かす前に「ライン側の事故」が起きている

離床中のトラブルは、バイタル悪化より先に滴下が止まる/速くなる刺入部が引っ張られる固定がゆるむなど「ライン側」から始まることが多いです。ここを最初に潰すには、離床の目的(端座位/立位/歩行)より先に、刺入部・滴下・固定の 3 点セットをルーチン化します。

ドレーン併存で迷いやすい人は、同じ考え方で整理した胸腔ドレーン留置中の離床プロトコルも合わせて読むと、観察 → 行動の翻訳が揃います。

まず見るのは 3 点:刺入部・滴下・固定(+機器の種類)

ライン管理の最小セットはシンプルです。離床前後で必ず確認するポイントとして、末梢と中心静脈それぞれに刺入部の炎症所見滴下の異常ボトル(必要時エア針)などが挙げられます。中心静脈では固定(縫合・固定具)も合わせて確認します。

関節近くにラインがあるときは、 ROMex で引っ張りや屈曲が起きやすいので、可動域を取る前に「固定」と「余裕」を先に作ってから実施します(刺入部周囲の注意点は Q&A で整理されています)。

準備:歩行まで想定して「引っ掛からない形」を作る

準備でやるべきことは、知識の暗記ではなく、離床中に形が崩れないようにすることです。ラインは屈曲しない余裕を確保し、患者の動線にかからない位置へまとめます。点滴スタンドは、歩行器や車椅子と相性の良いものを使い、移動中にチューブが車輪や手すりに巻き込まれないようにします。

多職種で離床する場面では、開始前に「誰が患者を守るか」「誰がラインを見るか」を決めておくと、異常の発見が早くなります( ICU 早期離床でも実施環境整備と役割の確認が重要とされています)。

離床前チェックリスト:Yes なら進む/No なら止めて整える

チェックは短く、同じ順番で回すほど機能します。下の表を「院内の最小セット」として使える形にしてあります(数値基準は施設基準で差し替えてください)。

離床前チェック(成人/点滴・ CVC / PICC ・動脈ライン)
チェック項目 見るポイント No / 変化あり の行動
刺入部 熱感・腫脹・発赤・疼痛、出血、滲出、テープの浮き 中止→固定見直し/必要なら報告(再固定・処置確認)
滴下 止まっている/明らかに速い/逆流、アラームの有無 中止→屈曲・位置・クレンメ確認→改善しなければ報告
固定・余裕 屈曲、引っ張り、引っ掛かり、チューブが床に垂れていないか 中止→形を作り直す(余裕確保・まとめ直し)
機器の種類 末梢 / CVC / PICC / 動脈ライン、加圧バッグの有無(動脈ライン) 未知なら開始しない(看護師と確認してから)
症状・バイタル 呼吸苦・胸痛・めまい・嘔気、不穏。 HR / RR / SpO2 / 血圧(施設基準) 中止→安静化→再評価→報告

段階プロトコル:端座位 → 立位 → 歩行(止めどきは同じ)

離床は段階を刻むほど回ります。各段階で、刺入部 → 滴下 → 固定(+症状)の順に再チェックし、変化があれば次へ進まず止めます。

1)端座位

端座位では、ラインが衣服やシーツに引っ掛かって引っ張られることが多いです。姿勢が落ち着いたら、刺入部のテープが浮いていないか、屈曲がないかを確認し、滴下の異常(止まる/速い)をチェックします。

2)立位

立位では、点滴スタンドが患者の進行方向から外れてラインが張ることがあります。立位にしたら、スタンド位置を整え、滴下が安定しているかを確認します。動脈ラインがある場合は、加圧バッグやトランスデューサの状態を勝手に触らず、固定と屈曲の有無に集中します。

3)歩行

歩行は短距離 → 停止 → 再チェックで進めます。止まるたびに、滴下の変化と屈曲の有無を確認し、引っ掛かりが出たら一旦戻して形を整えます。歩行中は患者の注意がラインに向きにくいので、ライン係(スタンド係)を決めておくと事故が減ります。

中止基準:ライン側トリガーを先に入れておく

中止基準は「迷ってから」作ると遅れます。バイタル基準は施設基準に沿いつつ、ライン管理では刺入部の異常滴下の異常固定の破綻をトリガーに入れると判断が速くなります。

離床の中止トリガー(ライン管理)
トリガー 疑うこと 行動(順番)
刺入部:出血・滲出増加、疼痛増悪、テープ浮き 固定不良、皮膚トラブル、位置ずれ 中止→安静化→固定見直し→必要なら報告
滴下:止まる/明らかに速い/逆流、アラーム 屈曲、位置異常、クレンメ、回路トラブル 中止→屈曲解除・位置調整→改善しなければ報告
固定:引っ張り、引っ掛かり、ラインが張る 偶発抜去リスク 中止→形の作り直し(余裕確保)→再開は再チェック後
症状:めまい・嘔気・胸部不快、呼吸苦の増悪 負荷過多、循環変動 中止→安静化→再評価→報告
バイタル:施設の中止基準に抵触 循環・呼吸の負荷過多 中止→施設基準で判断→報告

よくある失敗:知識より「運用の穴」を潰す

ライン事故は「知らなかった」より「形が崩れた」「役割が曖昧だった」で起きます。次の 4 つは再発しやすいので、先にルール化しておくと回ります。

離床時のライン管理( OK / NG 早見)
場面 NG(起きがち) OK(型) 共有ポイント
開始前 患者の準備だけして、滴下と固定を見ない 刺入部 → 滴下 → 固定 の順で確認してから開始 刺入部所見、滴下の状態、屈曲の有無
立位・歩行 スタンドが遅れてラインが張る ライン係を決める/止まるたび再チェック 引っ掛かりポイント(手すり・車輪)
ROMex 関節近くの刺入部を引っ張る角度で動かす 固定と余裕を作ってから可動域を取る 刺入部周囲の注意点
異常時 「戻せば大丈夫」で報告が遅れる 変化を事実で SBAR 報告(短く) いつから、何が、どう変わったか

SBAR:ライン異常を短く通すテンプレ

報告は「短く・事実だけ」が最速です。口頭・チャット・カルテに転記できる形で置いておきます。

  • S(状況):離床(端座位/立位/歩行)中にライン所見の変化があり中止しました。
  • B(背景):ラインは(末梢/ CVC / PICC /動脈ライン)。直前は滴下(正常)、刺入部(問題なし)でした。
  • A(評価):刺入部(発赤/疼痛/出血/テープ浮き)、滴下(止まる/速い/逆流)、固定(屈曲/張り)が出現しました。症状は( )。バイタルは( )。
  • R(提案):屈曲解除・位置調整・固定見直しを実施し安静化済です。再固定や指示確認をお願いします。

記録の最小セット:前 → 中 → 後 を固定する

記録は「次に迷わない」情報に絞るほど機能します。最低限は、開始前・離床中(段階ごと)・終了後の 3 タイミングで固定します。

離床とライン管理の記録テンプレ(最小セット)
タイミング 必須 補足(あれば)
開始前 ライン種(末梢/ CVC / PICC /動脈)、刺入部所見、滴下状態、屈曲の有無 役割分担(ライン係)、引っ掛かりポイント
離床中 段階(端座位/立位/歩行距離)と、滴下・固定の変化 中止・調整理由、実施した確認
終了後 刺入部・滴下の再確認、症状・主要バイタル 次回の段階目標、注意点

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

離床前後で「必ず」見るべきポイントは何ですか?

最小セットは 3 つです。①刺入部(熱感・腫脹・発赤・疼痛など)、②滴下(止まる/速い/逆流)、③固定(屈曲・引っ掛かり・張り)です。これを毎回同じ順番で見るだけで、トラブルの見落としが減ります。

ROMex のとき、刺入部の近くは動かしていいですか?

「動かす前に固定と余裕を作る」が基本です。関節近くの刺入部は引っ張りや屈曲が起きやすいので、角度とラインの走行を確認し、張りが出ない形に整えてから実施します。

滴下が止まったら、まず何を確認しますか?

まず屈曲と位置(スタンドの高さ、体位変化での張り)を確認し、次にクレンメや接続を見ます。すぐ戻らない、頻回に再発する場合は中止して報告し、原因の切り分けをします。

動脈ラインがあるとき、 PT が機器側を触っていいですか?

機器設定は施設ルールと担当職種に依存します。本記事では、 PT は「固定と屈曲の有無」「引っ掛かりの回避」「症状の変化」に集中し、機器側は勝手に触らず、異常があれば SBAR で報告する運用を基本にしています。

歩行まで進めるとき、いちばん起きやすい事故は何ですか?

多いのは、スタンド遅れでラインが張る、車輪や手すりに絡む、屈曲で滴下が止まる、の 3 つです。短距離で止まり、滴下と屈曲を再チェックしながら進めると回ります。

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参考文献

  1. Therapist Plus(マイナビコメディカル). リハビリでも気をつけて!離床における点滴の注意点について.(参照 2026-02-22)https://co-medical.mynavi.jp/contents/therapistplus/career/useful/979/
  2. 日本離床学会. Q&A Vol.50 点滴ライン挿入部付近の関節可動域訓練実施に際してのポイント.(参照 2026-02-22)https://www.rishou.org/for-memberships/qa/qa-vol-50
  3. 日本集中治療医学会. 早期離床の進め方( resident 向け資料).(参照 2026-02-22)https://www.jsicm.org/resident/pdf/pics07.pdf
  4. はてナース(看護のお仕事). 点滴やドレーンがある場合の早期離床の援助の注意点は?(参照 2026-02-22)https://kango-oshigoto.jp/hatenurse/article/6294/

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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