マットレスの厚さ・構造・機能の見方|褥瘡予防と離床の両立

臨床手技・プロトコル
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結論|マットレスは「厚さ」より「底づき・ずれ・微気候」を先に見ます

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体圧分散マットレスの導入で詰まるのは、「どれが良いか」より合っているかの見分けです。厚さや高機能を足すほど安全そうに見えますが、臨床では底づき(局所圧の残存)/ずれ(せん断)/微気候(温湿度)の 3 点が崩れると、褥瘡リスクも離床も同時に悪化します。

本記事は、マットレスの厚さ・構造・機能を「現象ベース」で読み解くための実務ガイドです。種類から選ぶ全体像は、先に体圧分散マットレスの選び方で確認しておくと、判断がぶれにくくなります。

まず整理|マットレスで解く問題は 3 つに分かれます

「体圧分散=圧を下げる」と捉えると、厚い・柔らかい方向へ寄りやすいです。実際は、支持面で解く問題は① 圧の再分配(沈み込み・包み込み)② 圧の時間的移動(交互圧・自動体位変換)③ 微気候(蒸れ・熱)の管理の 3 つに分かれます。

臨床ではこの 3 つを「どれだけ足すか」よりも、「どれが足りていないか」を見つけるほうが速いです。結果として、厚さ・構造・機能の読み方が症例ごとの最短ルートになります。

導入前後の 5 分チェック|底づき・ずれ・微気候を同じ条件で見ます

マットレス評価は、詳細な測定より同一条件での比較が強いです。導入前→導入直後→ 48–72 時間後で「同じ体位・同じギャッチ条件」で観察すると、合っている/合っていないが短時間で分かれます。

ポイントは、マットレス単体ではなくベッド操作・ポジショニング・離床まで含めて 1 セットで記録することです。担当者が変わっても運用が崩れにくくなります。

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マットレス導入・見直しの 5 分チェック(成人・臥位)
チェック項目 見るポイント OK の目安 NG のサイン 記録(例)
底づき 骨突出(仙骨・踵など)で支持が抜けていないか 局所の沈み込みが過度でない/圧痕が短時間で戻る 一点が硬く当たる感触/発赤が残る 部位・持続時間・体位
ずれ(せん断) ギャッチで体が下方へ移動していないか 骨盤位置が保てる/背抜きで戻る 仙骨部の摩擦感/衣類のよれ/疼痛増 背上げ角度、背抜きの有無
微気候 蒸れ・熱感・発汗で皮膚がふやけていないか 湿潤が少ない/皮膚が乾燥〜軽度 汗で湿る/浸軟/熱感 寝衣・シーツ・発汗状況
離床 起き上がり・端座位が崩れていないか 介助量が増えない/恐怖感が増えない 滑り座り増/立ち上がり準備が遅い 所要時間、介助量、転倒リスク
睡眠・不穏 作動音・揺れで覚醒が増えていないか 夜間覚醒が増えない 覚醒・不穏増/せん妄兆候 夜間覚醒回数、日中傾眠

厚さの見方|厚いほど安全、ではありません

厚さは「支えられる量」が増える一方で、沈み込みが増えるほど起き上がり・端座位・ずれの問題が出やすくなります。つまり厚さは、褥瘡リスクだけでなく離床の再現性にも直結する要素です。

厚さを判断するときは、「厚い/薄い」の二択にせず、底づきが消えているかずれが増えていないかの 2 点で評価するのが実務的です。

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厚さで起きやすい変化(臨床の見立て)
厚さを増やすと 起きやすいメリット 起きやすい副作用 先に見るポイント まず試す調整
沈み込み・包み込みが増える 局所圧が下がりやすい 体幹回旋が作りにくい/端座位が崩れる 起き上がり時間・介助量 ポジショニングで「支点」を作る
身体の移動が増える 姿勢を変えやすい症例もある ギャッチで下方移動→仙骨ずれ 衣類のよれ・骨盤位置 背抜き+膝上げの順番を固定
側方の安定が低下しやすい 圧は分散しやすい 体幹が揺れて不安/恐怖感 端座位のふらつき 上肢支持・体幹支持を追加

構造の見方|フォーム・エア・ハイブリッドは「支え方」が違います

構造は、厚さ以上に「どこで支えるか」を決めます。フォームは面で支える(圧再分配)が得意で、交互圧エアは時間で支える(圧の移動)が得意です。ハイブリッドは、その中間を狙った設計になりやすいです。

選定の実務では、構造を「名称」で覚えるより、自力体位変換の有無/夜間体位変換の回り方/離床の優先度で当たりを付け、 5 分チェックで微調整するほうが回ります。

ギャッチで赤くなる理由|ずれ(せん断)は支持面だけでは消えません

仙骨部の発赤が「ギャッチアップ後に増える」なら、疑うべきはずれ(せん断)です。マットレスで圧を下げても、体が下方へ移動すれば皮膚には別の負荷が乗ります。

実務のコツは、① 角度を上げる前に骨盤位置を整える、② 角度を上げたら背抜きで摩擦を抜く、③ 膝上げを組み合わせて下方移動を抑える、の順で「操作の型」を固定することです。

エアマットレスの機能|設定は「観察→調整→記録」で初めて武器になります

エア系の強みは、圧の時間的移動や自動運転など「人手の不足を補える」点です。一方で、設定が合っていないと揺れ・睡眠低下・不穏が出て、結果的に離床が止まります。

運用は、① 皮膚(部位と持続)② 体動(寝返り・同一体位)③ 離床(介助量・恐怖感)④ 睡眠(覚醒回数)をセットで記録し、設定変更の前後差分を残すと、チーム内で合意が取りやすくなります。

製品例|スコープライトを「機能の読み方」の練習台にします

製品名で迷うときは、仕様を覚えるより「この機能は何を解決するか」を言語化すると速いです。ここでは例として、全自動運転タイプのエアマットレスを取り上げ、機能を臨床課題へ落とし込みます。

目的はレビューではなく、機能→現象→調整ポイントの対応表を作ることです。これができると、別メーカーでも同じ読み方で運用できます。

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機能の読み方(例:スコープ/スコープ ライト)
見る機能 解く課題 合わないサイン まず試す調整 記録ポイント
自動運転(圧の移動) 同一部位の持続圧を減らす 体幹の揺れで不安・眠れない 設定を弱める/夜間設定を見直す 覚醒回数、ふらつき、疼痛
体位変換系の動き 夜間の体位変換負担を下げる めまい・血圧低下・痛み 動作を止める/介入時間帯を限定 血圧変動、疼痛、拒否反応
(機種差)可視化など 介入前後の変化を共有しやすい 数字に引っ張られて実態が見えない 皮膚所見・ずれを優先して評価 発赤の部位・持続、ずれ兆候

現場の詰まりどころ|厚さ・高機能に寄せるほど起きる失敗があります

支持面は「上位にすれば解決」しやすい領域に見えますが、現場では逆で、上位ほど離床・睡眠・ずれの副作用が表に出ます。ここを放置すると、褥瘡予防も離床も止まりやすいです。

失敗パターンはだいたい決まっています。原因を「設定」ではなく「現象(底づき/ずれ/微気候)」へ戻すと、修正が速くなります。

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よくある失敗と修正の方向性( PT 視点)
起きやすい失敗 主な原因 まずやる対策 再評価の見方 記録ポイント
起き上がりが急に難しくなる 沈み込み過多で体幹回旋が作れない 支点を作るポジショニング/離床前の整位を固定 所要時間・介助量の変化 起き上がり回数、介助量
仙骨部の発赤がギャッチで悪化 下方移動→ずれ(せん断)が増える 背抜き+膝上げの順番を固定 発赤の持続、衣類のよれ 角度、背抜き実施、体位
夜間覚醒・不穏が増える 揺れ・音・動きが刺激になる 夜間設定を見直す/必要最小限の active に絞る 覚醒回数、日中傾眠 睡眠、せん妄兆候
汗で浸軟して皮膚が弱る 微気候が悪い/寝具が合っていない 寝衣・シーツの見直し+体位変換とセットで運用 浸軟・熱感の推移 発汗、湿潤、スキンケア

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

厚いマットレスほど褥瘡予防に有利ですか?

局所圧が下がりやすい一方で、沈み込みが増えるほど「ずれ」と「離床の崩れ」が出やすくなります。厚さは単独で評価せず、底づきが消えているか/ギャッチでずれが増えていないか、の 2 点で判断すると失敗しにくいです。

底づきはどうやって見分けますか?

「骨突出が一点で当たっていないか」「発赤が残りやすくなっていないか」を同じ条件で観察します。導入前→導入直後→ 48–72 時間後で、部位と持続時間をそろえて比較すると、合っている/合っていないが分かれやすいです。

ギャッチアップで仙骨が赤くなるとき、最初に何を変えますか?

まず「操作の型」をそろえます。骨盤位置を整える→背抜きで摩擦を抜く→膝上げを組み合わせて下方移動を抑える、の順番を固定し、発赤の持続と衣類のよれを再評価します。設定変更はその後でも遅くありません。

エアマットレスで揺れて不安定なときは、外すべきですか?

外す前に「どの時間帯で困るか(夜間/離床前後)」「何が出ているか(恐怖感/ふらつき/睡眠低下)」を整理します。夜間だけ設定を見直す、離床前後は安定を優先するなど、運用で解決できることが多いです。

製品名で迷うときのコツはありますか?

名称ではなく、「この機能は何を解決するか」で読み替えます。自動運転は夜間体位変換の不足を補うのか、圧の時間移動が必要なリスクなのか、離床を優先すべき症例なのか。機能→現象→調整ポイントに落とすと、メーカーが変わっても判断が安定します。

次の一手|選定と運用を「型」にして、チームで迷いを減らす

支持面は、単発の導入より「見直しの型」があると強いです。まずは全体像→ 5 分チェック→設定変更の差分記録までを、チームで揃えると運用が止まりません。

運用を整える→共有の型を作る→環境の詰まりも点検(無料チェックシート)

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参考文献

  • 一般社団法人 日本褥瘡学会(編集). 褥瘡予防・管理ガイドライン 第 5 版. 照林社, 2022. doi:10.32249/9784796525534
  • Lustig M, Wiggermann N, Gefen A. How patient migration in bed affects the sacral soft tissue mechanical state in supine patients: Computational study. Int Wound J. 2020;17(3):631-640. doi:10.1111/iwj.13316 / PubMed
  • Fontaine R, Risley S, Castellino R. A quantitative analysis of pressure and shear in the effectiveness of support surfaces. J Wound Ostomy Continence Nurs. 1998;25(5):233-239. PubMed
  • Lian C, Zhang J, Wang P, Mao W. Impact of head-of-bed elevation angle on the development of pressure ulcers and pneumonia in patients on mechanical ventilation: a systematic review and meta-analysis. BMC Pulm Med. 2024;24(1):462. doi:10.1186/s12890-024-03270-9 / PubMed

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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