エアドクターの使い方|設定・点検・記録の型

臨床手技・プロトコル
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エアドクターの使い方|体重設定だけで圧管理するベーシック交互圧エアマット

支持面の迷いは「機能の暗記」より「評価→設定→記録」の型で減らせます

PT のキャリア設計(全体像)を見る

結論:エアドクターは、体重設定ダイヤルを合わせるだけで内圧を自動コントロールし、 20 本のエアセルが交互に膨張・収縮して持続圧を切る、床ずれ防止用具のベーシックモデルです。導入で差が出るのは「ボタン操作」ではなく、離床(起き上がり・端座位)と皮膚所見を同じ軸で再評価できるかです。

本記事は、エアドクターを「導入して終わり」にしないために、設置→体重設定→点検→ 48〜72 時間の見直しまでを 1 ページで固定します。まず支持面の選び方から整理したい場合は、体圧分散マットレスの種類と選び方(親記事)が入口になります。

エアドクターは何ができる? 3 行で要点

  • 交互圧:隣り合ったエアセルが交互に膨張・収縮し、局所の持続圧を切る
  • 自動圧管理:ポンプ内蔵の圧力センサで内圧を自動コントロール(体重設定ダイヤルで基準を合わせる)
  • 上敷きタイプ:ベッドマットレスの上に敷いて使う(薄型で導入しやすい)

向くケース/向かないケース( PT の判断)

エアドクターは「まず交互圧を入れて、持続圧を切りたい」場面で使いやすい一方、離床を強く進めたいフェーズでは揺れや沈み込みが邪魔になることがあります。導入は 48〜72 時間で見直す前提にしておくと、過剰導入を減らせます。

※表は横にスクロールできます。

エアドクターの適応イメージ(成人・実務)
観点 向く 向かない(工夫が必要)
体動 自力体位変換が乏しい/同一体位が長い 寝返りが自立で、離床練習を優先したい
目標 皮膚リスクの抑制を優先 起き上がり・端座位の質を優先(沈み込みや揺れが邪魔なら見直し)
夜間 夜間に体位変換が回りにくい 作動で覚醒・不穏が増える(設定と睡眠の再評価が必要)

仕様(サイズ・厚さ・ポンプ)

まずは「 84 / 90 の 2 タイプ」と「厚さ 9 cm」「 TAIS 00206-000014 」を固定で覚えると、手配と入れ替えが速くなります。

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エアドクターの仕様(上敷きタイプ)
項目 840( CR-238 ) 900( CR-268 )
マットレスサイズ 幅 84 × 長 192 × 厚 9 cm 幅 90 × 長 192 × 厚 9 cm
マットレス重量 3.3 kg 3.4 kg
エアセル本数 20 本
専用カバー 防水・抗菌防臭・伸縮(清拭対応)
ポンプ 幅 24.4 × 高 17.9 × 奥行 8.9 cm /定格 AC100V・ 5 W /コード長 4 m
TAIS 00206-000014

仕組み|交互膨縮+圧力センサで「持続圧」を切る

エアドクターは、隣り合ったエアセルが交互に膨張・収縮し、支持点を入れ替えることで、同一部位への持続圧を避けます。交互膨縮は約 5 分間隔で進み、体圧分散と “圧のオフ時間” を作る設計です。

内圧は、ポンプ内蔵の圧力センサが自動でコントロールします。運用上は「体重設定ダイヤルを合わせる」と「点検(チューブ・警告灯)」の 2 点が守れれば、担当が変わっても再現性が保ちやすいモデルです。

導入 10 分フロー(設置→体重設定→確認)

導入直後のトラブルは、故障よりも「送風チューブの差し込み不足」「折れ曲がり」「挟み込み」が多いです。最初に “確認の型” を固定すると、問い合わせが減ります。

  1. 専用マットをベッドマットレス上へ固定(巻き込み部を使う)
  2. 専用ポンプへ送風チューブを接続(奥までしっかり)
  3. 専用カバーを固定
  4. ポンプをベッド足元へ設置(物が乗らない位置)
  5. 電源プラグを差し込む
  6. 体重設定ダイヤルを合わせる(使用可能まで約 10 分が目安)
  7. 療養者をエアマット上へ移動し、底づきと姿勢を確認

体重設定ダイヤルの使い方( 30〜90 kg )

体重設定は「正確な数字」より「底づきがない・ずれが増えない」を優先します。まずは体重に合わせ、背上げ 30〜45° と端座位で “滑り座り” が増えていないかを確認して微調整します。

  • 設定範囲: 30 〜 90 kg(範囲外はレンタル事業者/メーカーへ相談)
  • 確認:仙骨・踵などで底づきがないか、圧痕が戻るか、背上げでずれが増えないか

PT が見るポイント|皮膚だけでなく「離床」とセットで評価

交互圧は皮膚には有利でも、離床に不利になることがあります。 PT は “褥瘡予防” と “離床” の両方を守るために、次の 5 点をそろえて観察します。

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エアドクター導入時の観察軸(導入前→直後→ 48〜72 時間)
観察軸 見る項目 記録の最小セット
皮膚 仙骨・踵の発赤、圧痕、疼痛、持続時間 部位/持続/圧抜き後の回復
ずれ(せん断) 背上げで滑り座り、衣類のよれ、骨盤後傾 角度/時間/ずれ徴候
離床 起き上がり所要時間、端座位の支持量、移乗の恐怖感 所要時間/介助量/不安定要因
睡眠 覚醒回数、揺れ・音の訴え、不穏 覚醒回数/不穏の有無
呼吸 背上げでの呼吸苦、努力呼吸の増減 呼吸苦の有無/SpO2/主観

よくある失敗と対策(原因→修正→記録)

設定を触る前に「設置」「チューブ」「背上げ手順」を点検すると、解決が速いです。

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エアドクター運用の詰まりどころ( PT 視点)
起きやすい問題 よくある原因 まずやる対策 記録ポイント
体幹が揺れて不安定 交互膨縮の体感が強い/体幹支持が不足 体幹支持のポジショニング、離床時間帯の調整(睡眠と両立) 恐怖感、端座位到達、覚醒回数
背上げで仙骨が赤くなる ずれ(せん断)を放置 骨盤位置・足部支持・背抜きなど “操作の型” を固定 角度、時間、ずれ徴候、発赤の持続
マットが膨らまない 送風チューブの差し込み不足/折れ曲がり/挟み込み 差し込みを奥まで、折れ曲がりと挟み込みを解除 点検した箇所、復旧の有無
皮膚が改善しない 支持面だけで解決しようとしている 体位変換計画、ずれ対策、寝具・栄養・浮腫も同時に 部位/持続/体位変換の実施状況

警告灯と停電対応(最低限ここだけ)

電源ランプの点滅で「内圧低下(パンクや接続不良など)」を知らせる機能があります。点滅が出たときは、まず送風チューブ・接続部・折れ曲がりを確認します。

停電時は、送風チューブ栓で空気漏れを抑える設計です。停電が長引く場合は、機能が停止するため体位変換計画を一時的に強化し、電力復旧後は安全確認と再設定を行います(復旧まで 2 時間おきの体位変換が推奨されます)。

カルテ・記録テンプレ(コピペ用)

記録は「機種名」だけでなく、導入後に比較できる “所見” を残すと運用が揃います。

【支持面】エアドクター(体重設定:__kg)
【皮膚】仙骨__(持続__分)/踵__(持続__分)/湿潤__
【ずれ】背上げ__°・__分:滑り座り(あり/なし)
【離床】起き上がり(介助__)/端座位(__分・支持__)/移乗(恐怖感__)
【睡眠】夜間覚醒__回 【次回再評価】導入後__時間( 48〜72 時間で比較)

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 体重設定はどこまで正確に合わせる必要がありますか?

A. まず体重に合わせた上で、「底づきがない」「背上げでずれが増えない」を優先して確認します。数字よりも所見(圧痕の戻り、発赤の持続、滑り座り)で微調整すると、失敗が減ります。

Q2. 交互圧で揺れて不安が強いときはどうしますか?

A. 体幹支持のポジショニングと、離床・睡眠のタイミング調整を先に行います。睡眠が崩れると体動が減り、皮膚リスクが上がるため、覚醒回数を記録して再評価します。

Q3. マットが膨らまない/弱いときは故障ですか?

A. 故障の前に、送風チューブの差し込み不足・折れ曲がり・挟み込みを疑います。点検しても改善しない場合はレンタル事業者/メーカーへ相談します。

Q4. 停電時はどうすればいいですか?

A. 停電中は機能が停止するため、体位変換計画を一時的に強化します。復旧後は安全確認と再設定を行い、マットの状態が落ち着くまで所見を確認します。

次の一手

運用を整える → 共有の型を作る → 環境の詰まりも点検(無料チェックシート)

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参考文献

  1. 株式会社ケープ.エアドクター(製品情報).公式
  2. 株式会社ケープ.エアドクター 取扱説明書( PDF ).PDF
  3. 株式会社ケープ.エアドクター カタログ( PDF ).PDF
  4. 株式会社ケープ.エアドクター 簡単ガイド( PDF ).PDF
  5. McInnes E, et al. Support surfaces for pressure ulcer prevention. Cochrane Database Syst Rev. 2015;2015(9):CD001735. doi:10.1002/14651858.CD001735.pub5 / PubMed
  6. Nixon J, et al. Randomised, controlled trial of alternating pressure mattresses compared with alternating pressure overlays for the prevention of pressure ulcers (PRESSURE trial). BMJ. 2006;332:1413. PubMed

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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