体圧分散マットレスの厚さと構造|性能表示の読み方

臨床手技・プロトコル
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体圧分散マットレスは「厚さ○cm」だけで比較しません

体圧分散マットレスの厚さを見るとき、「10cm以上だから十分」「17cmだから高性能」など、厚さの数字だけで判断することはできません。同じ厚さでも、素材、内部構造、active/reactiveの違い、身体の沈み込み・包み込み、微気候、適応体重などによって、支持面としての性能は変わります。

2026年版のInternational Guidelineでは、支持面を素材名だけでなく、カテゴリー、構成材料、設計機能、性能特性に分けて整理しています。この記事では、体圧分散マットレスの仕様を厚さ・寸法→素材・内部構造→active/reactive→性能特性→適応体重・体格→ベッド適合・安全性の順に読み、何を比較すればよいかを医療従事者向けに整理します。

患者の褥瘡リスクから「どの支持面を選ぶか」を先に確認したい場合は、体圧分散マットレスの選び方から確認してください。

体圧分散マットレスの仕様を厚さ・内部構造・Active/Reactive・性能特性・適応体重・ベッド適合の6項目で確認する図
体圧分散マットレスは、厚さだけでなく構造・性能・対象者・ベッドとの適合まで順番に確認します。

厚さの見方|何cmならよいという一律の正解はありません

マットレスの厚さは重要な仕様の1つですが、「何cm以上ならよい」という数字だけで製品性能を判断することはできません。確認したいのは、その厚さの中にどのような素材・層構造・エアセルがあり、対象者の体格や荷重に対して必要な圧再分配性能を発揮できるかです。

同じ10cm、13cm、17cmでも、フォームの硬さや層構造、エアセルの構造、沈み込み方、包み込み方は異なります。そのため、製品カタログで厚さを確認したら、そこで比較を終わらせず、内部構造と性能特性まで進みます。

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マットレスの厚さと一緒に確認する項目
確認項目 見る内容 厚さだけでは分からないこと
内部構造 フォームの層、エアセル、支持層、ゾーニングなど 身体をどのように支えるか
適応体重・体格 メーカーが想定する体重・身体サイズなど 対象者の荷重で性能を発揮できるか
沈み込み・包み込み 身体が支持面へどの程度入り、輪郭へ追従するか 接触面積と圧再分配の仕方
作動方式 reactiveかactiveか、交互圧などの機能があるか 支持特性がどのように変化するか
ベッドとの適合 幅、長さ、床面高、ベッド柵などとの位置関係 安全性や移乗環境への影響

つまり、厚さは「性能そのもの」ではなく、仕様を読み始める入口として扱うと整理しやすくなります。

構造の見方|フォーム・エアとactive/reactiveは別の分類です

フォーム・エア・ゲルなどは「何で構成されているか」、active・reactiveは「支持特性がどのように変化するか」を示す別の分類です。そのため、「エアマットレス=active」と考えると、製品仕様を読み違える可能性があります。

reactive support surfaceは、身体から荷重を受けたことに反応して圧再分配特性が変化する支持面です。圧再分配フォームだけでなく、static air mattressなどもreactiveに含まれます。

一方、active support surfaceは電力を使用し、身体からの荷重とは独立して圧再分配特性を変化させられる支持面です。エアセルを周期的に膨張・収縮させるalternating pressure air surfaceは、その代表例です。

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体圧分散マットレスの仕様を4つの階層で読む
見る階層 主な表示例 何を表すか
カテゴリー Active / Reactive 支持特性がどのように変化するか
素材・構成材料 フォーム、エア、セル、ゲルなど 支持面を構成する材料
設計機能 交互圧、ハイブリッド、ゾーニング、体位変換補助など 製品に組み込まれた構造・機能
性能特性 沈み込み、包み込み、微気候、圧再分配 支持面が実際に示す性能

製品カタログに「エア」と書かれていても、それだけでは交互圧で作動するactive support surfaceかどうかは判断できません。素材名と支持面カテゴリーを分けて確認することが重要です。

性能特性|沈み込み・包み込み・微気候・圧再分配を確認します

厚さと内部構造を確認したら、次に支持面が実際にどのような性能を持つかを見ます。International Guidelineでは、支持面のperformance characteristicsとして、envelopment、immersion、microclimate、pressure redistributionが整理されています。

Immersion|身体がどの程度沈み込むか

Immersionは、身体が支持面へどの程度沈み込むかを示す考え方です。適切に沈み込み、身体と支持面の接触面積が広がることで、荷重をより広い範囲へ分散しやすくなります。

ただし、沈み込みが大きければ大きいほど優れているわけではありません。対象者の体格や活動性、寝返り・起き上がりなどの動作、使用するベッド環境まで含めて考える必要があります。

Envelopment|身体の輪郭へどの程度沿うか

Envelopmentは、支持面が身体の輪郭へどの程度沿うかを示します。骨突出部など身体形状の凹凸へ追従し、接触面積を確保することは圧再分配に関係します。

ImmersionとEnvelopmentは似ていますが、前者は「身体がどの程度沈み込むか」、後者は「支持面が身体の形へどの程度沿うか」という違いがあります。

Microclimate|皮膚と支持面の温度・湿度環境を見る

Microclimateは、身体と支持面の接触部における温度や湿気の環境です。発汗、失禁、寝衣、シーツ、カバーなども影響するため、マットレス単体だけで決まるものではありません。

通気や送風などの機能がある製品では、「むれ対策」という名称だけで判断せず、どのような機構で熱や湿気へ働きかけるのかを確認します。

Pressure redistribution|圧をどのように再分配するか

Pressure redistributionは、支持面を比較する中心的な性能です。身体の沈み込みや包み込みによって接触面積を広げたり、active surfaceでは支持部位を時間的に変化させたりすることで、局所への負荷を減らすことを目的とします。

International Guidelineでは、特定の素材名や設計機能だけで判断するのではなく、利用できる場合は標準化された性能試験データを確認し、対象者のリスク因子に合わせて支持面を選択する考え方が示されています。

製品仕様は6項目を順番に確認します

候補製品を比較するときは、同じ順番で仕様を見るとメーカーや製品が変わっても判断軸をそろえられます。厚さだけで横並びにせず、以下の6項目を確認します。

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体圧分散マットレスの仕様を読む6項目
順番 確認項目 確認する内容 読み方のポイント
1 厚さ・寸法 厚さ、幅、長さ 厚さ単独で性能を判断しない
2 素材・内部構造 フォーム、エアセル、支持層、ゾーニングなど 素材名だけで優劣を決めない
3 Active / Reactive 荷重への反応で変わるか、機械的に支持特性を変えるか エア=activeとは限らない
4 性能特性 沈み込み、包み込み、微気候、圧再分配 可能なら性能試験データも確認する
5 対象者への適合 体重、身長、身体サイズ、体重分布 メーカーの推奨範囲と照合する
6 ベッドとの適合 幅、長さ、床面高、ベッド柵、電源、ポンプなど 安全性や移乗環境まで確認する

International Guidelineでも、支持面は対象者の身体サイズや質量分布に適合し、性能特性が想定どおり機能できることが重要とされています。メーカーが体重・体格などの使用条件を示している場合は、その範囲を確認します。

また、マットレスの厚さが変わると床面高やベッド柵との位置関係も変わります。支持面単体だけを見るのではなく、ベッドシステム全体として安全に使用できるかを確認することが重要です。

同じ厚さでも機能は違う|スコープとスコープライトの例

同じ厚さの製品でも、内部構造や付加機能まで同じとは限りません。具体例として、モルテンの「スコープ」と「スコープ ライト」は、公式仕様上いずれも厚さ17cmです。

一方、スコープは「全自動運転+体圧可視化」のモデルで、スコープ ライトは「全自動運転」のモデルです。臀部周辺の圧を可視化する機能はスコープのみで、スコープ ライトには搭載されていません。

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同じ厚さでも仕様が異なる例
製品 厚さ 公式仕様上の主な違い
スコープ 17cm 全自動運転+臀部周辺の体圧可視化
スコープ ライト 17cm 全自動運転。臀部周辺の体圧可視化機能なし

この例からも、「17cmだから同じ性能・機能」とは判断できないことが分かります。厚さを確認したあとに、構造、作動方式、付加機能、性能特性まで進むことが重要です。

製品固有の仕様は更新される可能性があるため、導入時はモルテン「スコープ/スコープ ライト」公式製品情報など、メーカーの最新情報を確認してください。

仕様を読むときに避けたい4つの判断

支持面の比較で避けたいのは、1つの数字や名称だけから製品性能を推測することです。特に以下の4つは、仕様を読むときに混同しやすいポイントです。

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体圧分散マットレスで起こりやすい仕様の読み違い
読み違い なぜ不十分か 代わりに確認すること
厚いほど高性能 厚さは性能特性そのものではない 内部構造、圧再分配、対象体格を見る
○cm以上なら十分 対象者・製品・使用条件の違いを反映できない メーカーの適応条件と性能特性を見る
エアならactive reactive air surfaceも存在する 支持面カテゴリーと作動方式を見る
同じ厚さなら同等 内部構造や設計機能が異なる 素材・設計機能・性能特性まで比較する

よくある質問

体圧分散マットレスは何cm以上を選べばよいですか?

すべての対象者・製品に共通する「○cm以上ならよい」という一律の基準だけで選ぶことはできません。厚さを確認したうえで、内部構造、圧再分配性能、active/reactive、対象者の体格、メーカーの使用条件、ベッドとの適合まで確認します。

エアマットレスはすべてactiveですか?

いいえ。エアを使用する支持面にもreactiveとactiveがあります。交互圧によって支持部位を機械的に変化させるものはactiveの代表例ですが、static air mattressなどはreactiveに分類されます。

厚さが同じなら体圧分散性能も同じですか?

同じとは限りません。同じ厚さでも、フォームの層構造、エアセル構造、沈み込み、包み込み、圧再分配、微気候への対応、付加機能などが異なります。厚さは仕様確認の入口として使用し、性能は別に確認してください。

まとめ|厚さ→構造→性能→適合条件の順に確認します

体圧分散マットレスは、厚さだけで性能を比較できません。まず厚さ・寸法を確認し、次に素材・内部構造、active/reactive、沈み込み・包み込み・微気候・圧再分配などの性能特性へ進みます。

さらに、対象者の体重・身体サイズなどとメーカー推奨条件を照合し、ベッドフレーム、ベッド柵、床面高などを含めて安全に使用できるか確認します。「厚さ○cm」という1つの数値ではなく、仕様全体を同じ順番で読むことがポイントです。

候補のマットレスを実際に導入したあとの皮膚、動作、睡眠などの再評価については、体圧分散マットレス導入後72時間の調整プロトコルで整理しています。


参考文献

  1. National Pressure Injury Advisory Panel, European Pressure Ulcer Advisory Panel, Pan Pacific Pressure Injury Alliance. Full Body Support Surfaces for Prevention of Pressure Injuries. In: Haesler E, ed. Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. The International Guideline. 4th ed. 2026. International Guideline
  2. 一般社団法人日本褥瘡学会 編. 褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版. 東京: 照林社; 2022. 日本褥瘡学会
  3. Shi C, Dumville JC, Cullum N, Rhodes S, McInnes E, Goh EL, Norman G. Beds, overlays and mattresses for preventing and treating pressure ulcers: an overview of Cochrane Reviews and network meta-analysis. Cochrane Database Syst Rev. 2021;8:CD013761. doi:10.1002/14651858.CD013761.pub2
  4. National Pressure Injury Advisory Panel. Support Surface Standards Initiative: Terms & Definitions Related to Support Surfaces. 2025. NPIAP S3I
  5. 株式会社モルテン 健康用品事業本部. スコープ/スコープ ライト 製品情報. 2026年10月6日閲覧. モルテン公式サイト

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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