ビッグセルアイズの使い方|蒸れを減らす設定と記録

臨床手技・プロトコル
記事内に広告が含まれています。

マイクロクライメイトとビッグセルアイズ|蒸れを減らすエアマット運用

褥瘡予防マットレスは「圧・ずれ・蒸れ」をまとめて見ると選びやすくなります

マットレスの選び方を見る

関連:厚さ・構造の 5 分チェックスコープライトの設定記録

結論:褥瘡予防では、圧再分配だけでなく、皮膚表面にこもる熱と湿気、つまりマイクロクライメイトを一緒に整えることが重要です。マイクロクライメイト ビッグセル iS(ビッグセルアイズ)は、マットレス内の熱と湿気をファンで排気し、背上げ時の圧切替や角度管理も補助するエアマットレスです。

この記事では、ビッグセルアイズを「製品紹介」で終わらせず、導入前の観察、初期設定、背上げ・離床時の使い分け、記録例までを 1 つの運用手順として整理します。対象は、褥瘡リスクが高い患者さんのマットレス選定や設定変更に関わる PT・OT・看護師です。

マイクロクライメイトは圧だけで説明できない皮膚トラブルを拾う視点

マイクロクライメイトとは、皮膚と支持面の間に生じる温度・湿度・空気の流れを指します。圧が大きく変わっていなくても、発汗、失禁、寝具の重ね過ぎ、背上げ時間の延長が重なると、皮膚が湿って弱くなり、発赤や浸軟が起こりやすくなります。

そのため、褥瘡予防では「体圧分散マットレスを入れたから終わり」ではなく、圧、ずれ、摩擦、温湿度を合わせて見ます。特に仙骨部や背部の蒸れが続くケースでは、マイクロクライメイトを評価軸に入れることで、寝具・室温・失禁ケア・背上げ時間まで含めた対策に広げられます。

まず疑うサインは湿潤・熱感・広い発赤です

マイクロクライメイトの問題は、局所の強い圧迫だけでなく、湿潤や熱感として先に現れることがあります。圧設定が大きく外れていないのに皮膚トラブルが増えるときは、支持面だけでなく周辺環境も一緒に確認します。

特に、仙骨部や背部が「蒸れてふやける」、広く薄い発赤が戻りにくい、夜間の不快や覚醒が増える場合は、温湿度上昇とずれが重なっている可能性があります。

※スマホは表を横スクロールできます。

マイクロクライメイト問題を疑う場面(成人・病棟)
起きていること よくある背景 まず確認すること 記録の最小セット
仙骨・背部が蒸れてふやける 発汗、失禁、寝具の重ね過ぎ、室温高め 湿潤、浸軟、寝具構成、交換頻度 部位、湿潤の程度、寝具、室温
広く薄い発赤が戻りにくい 温湿度上昇にずれが重なる 背上げ角度、滑り座り、衣類のよれ 角度、持続時間、ずれ徴候
夜間覚醒や不快感が増える 蒸れ、熱のこもり、圧切替への違和感 発汗、温感、圧切替の不快、寝具 覚醒回数、発汗、設定変更

ビッグセルアイズは蒸れ・背上げ・離床を同時に扱いやすい

ビッグセルアイズの強みは、マイクロクライメイト対応機能だけでなく、背上げ角度の検知、背上げ時の圧切替、角度・経過時間表示、クイックハードを組み合わせて使える点です。つまり、皮膚管理と離床場面を別々に考えず、同じマットレス運用の中で評価できます。

公式情報では、マットレスに内蔵されたセンサが背上げ角度を検知し、角度に応じて内圧を調整しながら、どの角度でも 5 分間隔で 3 連圧切替を行う設計とされています。背上げ角度と経過時間を表示できるため、食事・経管栄養・離床前後の皮膚変化を記録しやすい点も実務上の利点です。

仕様は厚さ 15 cm とサイズ違いを押さえれば迷いにくい

手配時は、まず厚さ 15 cm、幅 84 cm・90 cm・100 cm、長さ 192 cm または SHORT 180 cm の違いを確認します。ベッド幅、患者さんの体格、病棟で使うシーツ類との相性を見て選ぶと、導入後のずれや寝具トラブルを減らせます。

体重設定は 20〜140 kg で、体重設定を省略できるかんたんモードも用意されています。ただし、導入後は設定名だけで判断せず、皮膚所見、睡眠、離床時の安定性を見て再評価することが大切です。

※スマホは表を横スクロールできます。

ビッグセルアイズ:タイプ別のサイズ・品番・ TAIS
タイプ 品番 マットレスサイズ TAIS
840 CR-750 84 × 192 × 15 cm 00206-000140
900 CR-753 90 × 192 × 15 cm 00206-000141
840 / SHORT CR-755 84 × 180 × 15 cm 00206-000142
900 / SHORT CR-757 90 × 180 × 15 cm 00206-000143
1000 CR-761 100 × 192 × 15 cm 00206-000144
ビッグセルアイズ運用 5 分フロー。導入前、初期設定、背上げ確認、離床確認、48〜72時間後再評価の流れを示した図版

導入は 5 分フローでベースラインから比較します

ビッグセルアイズは機能が多いため、導入直後に設定を触りすぎると、何が効いたのか分かりにくくなります。最初は、導入前の皮膚・湿潤・背上げ・睡眠・離床をそろえて観察し、48〜72 時間後に同じ項目で比較します。

導入前、導入直後、再評価の 3 点を同じ型で見ると、「換気を続ける」「圧切替を弱める」「寝具を減らす」「背上げ時間を短くする」など、チームで判断しやすくなります。

  1. 導入前:仙骨・踵の発赤、湿潤・浸軟、背上げ時間、夜間覚醒、寝返り、起き上がり介助量を確認する
  2. 導入直後:底づき、背上げ 30°・45° での滑り座り、皮膚の熱感と湿潤を確認する
  3. 初期設定:換気は ON、圧切替は通常から開始し、不快や不穏が強い場合だけ弱・静止を検討する
  4. 離床場面:端座位の安定性、沈み込み、移乗時の恐怖感を見て、必要時のみクイックハードを短時間使う
  5. 再評価:48〜72 時間後に、皮膚、睡眠、離床の変化を導入前と比較する

設定は困りごとから逆算すると使い分けやすい

設定は「どれが正解か」ではなく、「今、何に困っているか」で決めます。蒸れが主問題なら換気と寝具調整、揺れが主問題なら圧切替の弱化、背上げで発赤が増えるなら角度・時間・ずれ対策を優先します。

PT が関わる場合は、皮膚所見だけでなく、起き上がり、端座位、移乗、背上げ中の滑り座りを一緒に見ます。設定変更は必ず記録し、変更前後で皮膚・睡眠・離床のどれが改善したかを残します。

※スマホは表を横スクロールできます。

ビッグセルアイズ設定の使い分け早見(PT 実務)
困りごと まず見る まず試すこと 記録例
蒸れ・湿潤が強い 発汗、寝具、失禁、室温 換気 ON を基本に、寝具と失禁ケアも見直す 「仙骨部湿潤あり。換気 ON、寝具 1 枚減量」
揺れが気になって眠れない 覚醒回数、恐怖感、不穏 圧切替を弱へ。必要時のみ一時的に静止を検討 「圧切替で覚醒あり。弱へ変更し夜間再評価」
背上げで仙骨部発赤が増える 角度、時間、滑り座り、衣類のよれ 骨盤位置、足部支持、背抜き、角度時間管理を統一 「45° 背上げ 40 分後に仙骨部発赤。骨盤位置修正」
端座位・移乗が不安定 沈み込み、恐怖感、介助量 離床時のみクイックハードを短時間併用 「端座位時のみクイックハード使用。移乗後解除確認」

現場の詰まりどころはマットレスだけで解決しようとすることです

よくある失敗は、マイクロクライメイト機能があるため「蒸れはマットレスが解決してくれる」と考えてしまうことです。実際には、寝具、失禁、室温、背上げ時間、衣類のよれが重なるため、マットレス設定だけでは改善しないケースがあります。

詰まったときは、設定の使い分けだけでなく、寝具や背上げ手順も同時に見直します。記録の型を職場でそろえたい場合は、支持面の見方を整理した マットレスの厚さ・構造の 5 分チェック と併用すると、観察項目を共有しやすくなります。

※スマホは表を横スクロールできます。

よくある失敗と修正ポイント(原因→対策→記録)
失敗 原因 まずやる対策 記録ポイント
蒸れが改善しない 寝具が多層で密閉し、失禁対応も遅れている 寝具を減らす、交換頻度を上げる、室温湿度を調整する 寝具、室温、湿潤の程度
圧切替で不穏が増える 揺れや音がストレスになっている 圧切替を弱へ変更し、必要時のみ一時的に静止を検討する 覚醒回数、不穏、設定変更
背上げで発赤が増える ずれを残したまま角度と時間が増えている 骨盤位置、足部支持、背抜き、角度時間管理を統一する 角度、経過時間、ずれ徴候

評価や記録が職場で標準化しにくいときは、個人の努力だけでなく学べる環境も見直す視点が必要です。

PT キャリアガイドを見る

点検はチューブ・カプラー・センサから始めます

効きが悪い、動作が不安定、換気されている感じがしないときは、故障を疑う前に接続部を確認します。送風チューブの折れ曲がり、カプラーの接続不良、ヘッドアップセンサの外れは、寝具交換や体位変換のあとに起こりやすいポイントです。

点検は 1 日 1 回の定時確認にすると運用が安定します。特に、背上げケアが多い患者さん、失禁ケアが多い患者さん、夜間に寝具調整が入る患者さんでは、日勤帯だけでなく夜勤帯との共有も重要です。

  • 送風チューブが折れ曲がっていないか
  • カプラーが正しく接続されているか
  • ヘッドアップセンサのコネクタが外れていないか
  • 寝具やシーツが送風部・接続部を圧迫していないか
  • 設定変更後に、皮膚・睡眠・離床の変化を再評価しているか

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

蒸れ対策は換気 ON だけで足りますか?

足りないことがあります。換気機能は温湿度上昇を抑える助けになりますが、寝具の重ね過ぎ、失禁、室温湿度が強いと効果が頭打ちになります。換気は支持面側の対策、寝具・失禁・環境は周辺側の対策としてセットで見直します。

圧切替の通常・弱・静止はどう使い分けますか?

基本は通常から開始します。圧切替が気になって睡眠が崩れる場合は弱へ、術後安静や強い不穏などで動きを抑えたい条件がある場合は一時的に静止を検討します。設定変更後は、皮膚所見と睡眠・不穏をセットで再評価します。

背上げ角度と時間管理は PT が見ても意味がありますか?

意味があります。背上げ時間が長いほど、仙骨部に圧とずれが乗りやすくなります。角度と経過時間を記録すると、食事、経管栄養、離床、皮膚所見を結びつけてチームで共有しやすくなります。

クイックハードはいつ使うとよいですか?

端座位や移乗など、短時間だけ安定性を高めたい場面で使います。離床が終わったら通常運用へ戻し、解除忘れがないかを確認します。長時間の使用を前提にせず、使用場面と解除確認を記録します。

導入後はいつ見直すのがよいですか?

導入前、導入直後、48〜72 時間後の 3 点で比較すると判断しやすくなります。皮膚の発赤・湿潤、睡眠の覚醒、離床時の滑り座りや介助量を同じ型で見直すと、設定を足すか戻すかを決めやすくなります。

次の一手


参考文献

  1. Kottner J, Black J, Call E, Gefen A, Santamaria N. Microclimate: A critical review in the context of pressure ulcer prevention. Clin Biomech (Bristol). 2018;59:62-70. doi:10.1016/j.clinbiomech.2018.09.010 / PubMed
  2. Yusuf S, Okuwa M, Shigeta Y, et al. Microclimate and development of pressure ulcers and superficial skin changes. Int Wound J. 2015;12(1):40-46. doi:10.1111/iwj.12048 / PubMed
  3. EPUAP/NPIAP/PPPIA. Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: International Guideline. 2019. PDF
  4. 株式会社ケープ. マイクロクライメイト ビッグセル アイズ(製品情報). 公式ページ
  5. 株式会社ケープ. マイクロクライメイト ビッグセル iS 取扱説明書. PDF
  6. 公益財団法人テクノエイド協会. TAIS 福祉用具情報システム:マイクロクライメイト ビッグセル アイズ 840 タイプ. TAIS

著者情報

rehabilikun(理学療法士)のアイコン

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

運営者について編集・引用ポリシーお問い合わせ