【ブレーデンスケールを徹底解説】評価の要点とダウンロード
ブレーデンスケール(Braden Scale)は、感覚知覚・湿潤・活動・移動・栄養・摩擦ずれの 6 項目で褥瘡リスクを 6–23 点で判定する評価法です。一般的な “リスクあり” の目安は ≤ 18 ですが、最終判断は院内規定と対象者の臨床像を優先します。この記事では 6 項目の着眼点、スコアの解釈、評価表ダウンロードまでを 1 ページに集約しました。
ブレーデンスケールとは
ブレーデンスケールは 6 項目の合計点で、点数が低いほど褥瘡リスクが高いと判断します。因子は「外力(圧・ずれ・摩擦)」と「組織耐久性」に対応しており、急性期から生活期まで汎用できます。評価は入院・入所時だけでなく、状態変化や転棟・転院時にも実施するのが原則です。
活用のコツは、総合点だけでなく「どの項目が弱いか」を可視化して介入の優先度に直結させることです。たとえば湿潤が弱ければ失禁対策、活動・移動が弱ければ 体圧分散マットレスの再検討 やポジショニング強化へつなげます。
評価項目( 6 項目の着眼点)
各項目は「直近 24 時間の実態」を基準に、最も当てはまるレベルで採点します。判断に迷うときは安全側(低得点)に倒し、弱点項目=優先介入としてチームで共有するとケア計画がぶれません。ICU・せん妄・麻痺・失禁などはスコアを押し下げやすい要因です。
なお「摩擦・ずれ」は 1–3 点(他は 1–4 点)で、ベッド上のずり上がりや頭高位の固定に強く影響されます。移乗・離床の方法と寝具の選択を合わせて見直すと改善が早まります(参考:体圧管理の基礎)。
総合点 | リスク区分(目安) | 介入の例 |
---|---|---|
≤ 9 | 非常に高い | 体圧分散+自動体位変換、2–3 時間毎の体位変換、皮膚保護材、栄養評価の即時実施 |
10–12 | 高い | エアマット導入、ずれ対策(スライディングシート/リフト)、排泄ケアの標準化 |
13–14 | 中等度 | 静止型 or 交互圧、2–4 時間毎の体位変換、離床拡大 |
15–18 | 軽度 | 標準マットレスの見直し、セルフ体位変換の促進、教育 |
≥ 19 | リスク低 | 基本ケアの継続、変化時に再評価 |
評価方法とよくある迷い
判定は「最も低い機能水準」に合わせます。例:日中は座位でも夜間は全介助なら、活動は低得点で評価します。留置カテ中は失禁がなくても皮膚湿潤リスクが残るため、湿潤を過大評価しないことが重要です。移動は “ベッド上移動能力”、活動は “離床レベル” を評価軸にします。
再評価は「入院・入所時/状態変化時/転棟・転院時」を原則とし、急性期では 48 時間ごとの実施を運用例として設定します(院内規定があればそちらを最優先)。総合点だけでなく、弱点項目の改善度(例:湿潤 2 → 3)を短評で残すとカンファレンスでの意思決定が速くなります。
評価表(ダウンロード)
ブレーデンスケールの評価用シートは下記からダウンロードできます。印刷してラウンド時のチェックリストとしてご活用ください(PDF)。
カットオフ値と運用の考え方
一般的には ≤ 18 を “リスクあり” と扱うのが標準です。ただし対象や病棟特性で最適閾値は変動します(ICU では 12–16 など)。本記事では「標準は ≤ 18 /ローカルは規定を優先」という二層説明に統一し、誤解を避けます。スコアは目的ではなく介入のスタート地点です。
近年のレビューでも、ブレーデンは中等度の予測妥当性であり、環境により最適カットオフが揺れることが示されています。体圧分散・ずれ対策・栄養の 3 本柱を、スコアの弱点項目に合わせてセットで実装しましょう。
他のリスクアセスメントとの関係
OH スケールや K 式は介護力や環境要因を取り込みやすく、在宅・施設での運用に向きます。ブレーデンは因子別に弱点を特定しやすく、ケアプランへの落とし込みに強いのが利点です。現場のリソースや導線に応じて併用をご検討ください。
小児では Braden Q/QD の利用が推奨されます。新生児〜小児 ICU、装着デバイス関連の褥瘡リスク評価に対応した拡張版です。
まとめ
・総合点だけでなく「弱い項目=優先介入」を明確化する。
・標準の目安は ≤ 18、ただし院内規定を最優先。
・入院時/状態変化時/転棟時に再評価、急性期は 48 時間ごと等の運用例。
・体圧分散とずれ対策、栄養介入をセットで。
参考文献
- Bergstrom N, Braden BJ, Laguzza A, Holman V. The Braden Scale for Predicting Pressure Sore Risk. Nurs Res. 1987;36(4):205–210. PubMed / DOI
- Agency for Healthcare Research and Quality. Preventing Pressure Ulcers in Hospitals: Braden Scale. AHRQ
- Huang C, et al. Predictive validity of the Braden Scale for pressure injury risk: systematic review and meta-analysis. Nurs Open. 2021;8(5):2194–2207. PubMed / DOI
- 日本褥瘡学会. 褥瘡の予防(一般向け). JSPU
- Indiana Dept. of Health. Braden Scale(スコア帯を含む配布版). PDF
- Braden Q / QD(小児)教育モジュール. Children’s Hospital of Philadelphia. CHOP