大結節はどこ?肩峰との位置関係
大結節(上腕骨大結節)は、上腕骨近位部の外側から後外側にある骨性隆起です。肩峰を基準に、その下方にある上腕骨側の硬さを探し、軽い内外旋で骨性隆起の位置が変わることを確認すると、触診位置を絞り込みやすくなります。
大切なのは、肩外側の痛い場所をそのまま大結節と決めないことです。肩峰は肩甲骨、大結節は上腕骨に属するため、上腕骨の回旋に伴う位置変化が見分ける手がかりになります。
この記事では、新人PT・OTや肩関節の触診を復習したい医療従事者向けに、大結節の位置、触診の3ステップ、触れないときの修正、圧痛の解釈、記録例まで整理します。大結節は棘上筋・棘下筋・小円筋の停止部と関係しますが、触診だけで個々の腱の障害や断裂を診断することはできません。
大結節の触診方法|肩峰から探す3ステップ
大結節の触診は「肩峰を確認する→上腕骨近位部の骨性隆起を探す→軽い内外旋で位置を再確認する」の順に進めます。指先で一点を強く押すより、指腹で骨の輪郭と動きを確認することが重要です。
安全確認:急性外傷後で骨折・脱臼が疑われる場合、著明な腫脹・変形・強い安静時痛がある場合は、通常の触診や他動回旋を進めず、医師による評価を優先します。術後や骨折治療中は、接触部位と可動域の制限を事前に確認してください。

準備:肩の力を抜ける肢位にする
基本は座位または背臥位で、肩周囲の筋緊張をできるだけ減らします。座位では上肢を自然に下垂させ、必要に応じて前腕を支持します。肩に力が入りやすい場合は、上肢を支えて疼痛防御を軽減してください。
触診の目的を説明し、痛みが生じたら伝えてもらいます。左右比較を行う場合は、肢位と触診圧をできるだけそろえます。
STEP1:肩峰の前外側を確認する
肩の上外側で、比較的表在に触れる肩峰を確認します。肩峰は肩甲骨の一部であり、上腕骨の内外旋では大結節のように移動しません。
肩峰の位置が曖昧な場合は、肩甲棘を外側へたどるか、鎖骨外側端からAC関節・肩峰の位置関係を確認します。最初に肩峰を捉えることで、大結節を肩峰そのものと取り違えることを防ぎます。
STEP2:肩峰の下方で骨性隆起を探す
肩峰の前外側縁を基準に、少し下方の深部へ指腹を移動します。三角筋の表層を強く押し込むのではなく、軟部組織の下にある上腕骨近位部の硬い輪郭を探します。
大結節は上腕骨の外側から後外側に位置し、肩関節の回旋角度によって前外側からの触れやすさが変わります。肩峰の直下で常に同じ場所に触れるとは限らないため、次の回旋確認と組み合わせて判断します。
STEP3:軽い内外旋で位置を再確認する
候補位置に指腹を当てたまま、患者が痛みなく行える範囲で上腕骨をゆっくり内外旋します。必要に応じて肘を軽く屈曲させ、前腕を動かして上腕骨の回旋を誘導します。前腕だけの回内・回外にならないよう注意してください。
肩峰に対して骨性隆起が指の下を移動することを確認できれば、上腕骨側のランドマークを触れている可能性が高まります。ただし、大結節と小結節はどちらも上腕骨にあるため、回旋による移動だけで両者を区別することはできません。
回旋で痛みや筋性防御が強まる場合は無理に動かさず、触診位置を「推定」または「同定困難」として扱います。強い痛みを誘発することは触診の目的ではありません。
大結節が触れないときの修正方法
大結節が触れない場合は、圧を強める前に「肩峰の位置」「肩の肢位」「三角筋の緊張」「回旋時の骨の動き」を確認します。骨性隆起の触れやすさには個人差があり、触知できないこと自体を異常所見と判断しません。
| 困る場面 | 考えられる原因 | 修正方法 |
|---|---|---|
| 硬い場所が分からない | 三角筋や皮下組織の影響で骨の輪郭が不明瞭 | 上肢を支持し、指腹で広く触れてから候補位置を絞る |
| 肩峰を触れてしまう | 位置が上方に偏っている | 肩峰を確認し、上腕骨側へ移動して回旋時の動きを比べる |
| 回旋しても動きが分からない | 回旋角度が小さい、筋性防御が強い、前腕のみ動いている | 上腕骨の回旋を確認し、可能な範囲で肢位を調整する |
| 前方の圧痛部位と混同する | 結節間溝や長頭腱周囲を触れている可能性 | 大結節の前方境界と結節間溝の位置関係を確認する |
| 痛みが強く確認できない | 疼痛防御や急性期の炎症・外傷など | 強い触診を中止し、安全確認と別の評価方法を優先する |
健側で同じ手順を試すことも有用ですが、左右の形態や可動域は必ずしも同一ではありません。健側で触れた位置を患側に機械的に当てはめず、患側の肢位・疼痛・可動性を踏まえて判断します。
判断の境界:骨性の硬さと回旋時の動きを確認できれば位置同定の根拠になります。一方、疼痛防御や軟部組織の影響で輪郭を確認できない場合は、同定困難と記録して次の評価へ進みます。
大結節と肩峰・結節間溝・小結節の見分け方
大結節を捉えるには、隣接するランドマークの所属する骨と位置関係を区別します。特に重要なのは、肩峰が肩甲骨、大結節・小結節が上腕骨にあるという違いです。
| ランドマーク | 位置・構造 | 触診での確認点 |
|---|---|---|
| 大結節 | 上腕骨近位部の外側〜後外側 | 上腕骨の内外旋で位置が変わる骨性隆起 |
| 肩峰 | 肩甲骨の上外側に張り出す部分 | 表在で触れやすく、上腕骨の回旋では移動しない |
| 結節間溝 | 上腕骨近位前面、大結節と小結節の間 | 前方の溝として位置関係を確認する |
| 小結節 | 上腕骨近位部の前方寄り | 結節間溝の内側に位置する骨性隆起 |
| 三角筋 | 肩外側を覆う軟部組織 | 筋の弾力と深部の骨性の硬さを区別する |
肩前面まで触診を広げる場合は、結節間溝の触診方法で大結節・小結節との位置関係を確認すると整理しやすくなります。
上腕骨の回旋による移動は、大結節と肩峰を区別する手がかりですが、大結節と小結節はどちらも上腕骨に属します。両者を区別するには、結節間溝を挟んだ位置関係と、肩関節の肢位を合わせて確認する必要があります。
大結節の圧痛をどう解釈するか
大結節周囲の圧痛は、回旋筋腱板停止部周囲の疼痛を検討する手がかりになります。ただし、圧痛の位置だけで棘上筋腱・棘下筋腱・小円筋腱の病変を特定したり、回旋筋腱板断裂と診断したりすることはできません。
触診所見を解釈するときは、患者が普段感じている痛みと同じ痛みが再現されるか、どの動作で増悪するか、筋力低下や可動域制限があるかを合わせて確認します。
| 所見 | 次に確認すること | 判断上の注意 |
|---|---|---|
| 大結節周囲の限局した圧痛 | 自動・他動ROM、挙上時痛、抵抗運動時痛 | 圧痛単独で腱障害を確定しない |
| 挙上時に外側痛が出現 | 疼痛出現角度、肩甲帯の動き、筋力 | 痛みの部位と病変部位は必ずしも一致しない |
| 外旋時痛や外旋筋力低下 | 抵抗外旋、左右差、神経学的所見、発症経過 | 疼痛による筋力発揮低下と構造的損傷を区別する必要がある |
| 前方から結節間溝方向の圧痛 | 結節間溝、長頭腱周囲の所見、関連動作 | 長頭腱病変を圧痛のみで診断しない |
| 外傷後の著明な痛み・筋力低下 | 受傷機転、変形、腫脹、神経血管症状、医師への相談 | 骨折・脱臼・急性腱板断裂などを考慮し、無理な誘発検査を避ける |
評価を続ける・保留する・相談する境界
- 評価を続ける:疼痛が許容範囲で、急性外傷などの危険所見がなく、ROMや抵抗運動を安全に確認できる場合。
- 触診を保留する:疼痛防御が強い、骨性ランドマークを十分に同定できない、接触によって症状が増悪する場合。
- 医師へ相談する:骨折・脱臼が疑われる外傷、急激な筋力低下、明らかな変形、進行する神経症状、感染を疑う所見などがある場合。
夜間痛や持続痛も発症経過と併せて確認します。安静時痛が強い場合や症状が進行している場合は、単なる回旋筋腱板由来の痛みと決めつけず、医師による評価の必要性を検討してください。
肩関節の身体診察は、個々の検査だけで高い診断精度を保証できるものではありません。病歴、複数の身体所見、必要に応じた画像検査を組み合わせることが重要です。
大結節の触診結果をどう記録するか
記録では「大結節圧痛あり」だけで終わらず、左右、触診位置、同定の確かさ、疼痛の再現性、関連動作、次の対応を残します。再評価時に同じ条件で比較できることが重要です。
以下は記載方法を示すための架空の記録例です。実在症例の所見ではありません。
| 場面 | 記録例 |
|---|---|
| 位置を確認できた場合 | 右肩峰下方にて上腕骨近位部の骨性隆起を触知。軽度内外旋で骨性隆起の移動を確認。右大結節周囲に限局した圧痛あり。自動挙上時に同部位周囲の疼痛を認める。 |
| 前方痛を伴う場合 | 右大結節前方から結節間溝方向に圧痛あり。触診による疼痛は普段の肩前方痛と類似。結節間溝周囲の所見と抵抗運動時痛を追加評価予定。 |
| 触診困難な場合 | 右肩外側に疼痛防御を認め、大結節の明確な同定は困難。強い圧迫・他動回旋は実施せず。疼痛経過と肩関節可動域を確認し、再評価方法を検討する。 |
| 相談が必要な場合 | 転倒後より右肩外側痛が出現。自動挙上困難、上腕骨近位部に著明な圧痛あり。骨損傷の可能性を考慮し、誘発的な触診・他動回旋を中止。医師へ報告。 |
触診部位が不明確な場合は、無理に「大結節」と確定せず、「大結節周囲と推定」「肩峰下方の圧痛部位」「骨性ランドマーク同定困難」など、確認できた範囲に応じて記載します。
次の一手|触診を肩関節評価につなげる
大結節の触診は、位置を同定して終わりではありません。肩峰との違いを確認し、圧痛が再現された場合はROM、挙上時痛、外旋筋力、結節間溝周囲の所見と照合してください。
次回の評価では、同じ肢位・触診圧・動作条件をできるだけそろえ、疼痛部位と再現性の変化を確認します。触診だけでは病態を確定できないことを前提に、必要な検査や相談へつなげることが重要です。
参考文献
- Kadi R, Milants A, Shahabpour M. Shoulder Anatomy and Normal Variants. J Belg Soc Radiol. 2017;101(Suppl 2):3. doi:10.5334/jbsr.1467.
- Jain NB, Luz J, Higgins LD, Dong Y, Warner JJP, Matzkin E, et al. The diagnostic accuracy of special tests for rotator cuff tear: the ROW Cohort Study. Am J Phys Med Rehabil. 2017;96(3):176-183. doi:10.1097/PHM.0000000000000568.
- Gismervik SØ, Drogset JO, Granviken F, Rø M, Leivseth G. Physical examination tests of the shoulder: a systematic review and meta-analysis of diagnostic test performance. BMC Musculoskelet Disord. 2017;18:41. doi:10.1186/s12891-017-1400-0.
- Moulton SG, Bhatia S, Civitarese DM, Frank RM, Dean CS, LaPrade RF. Risk Factors, Pathobiomechanics and Physical Examination of Rotator Cuff Tears. Open Orthop J. 2016;10:277-289. doi:10.2174/1874325001610010277.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
2022年4月に rehabilikun blog を開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの経験をもとに、医療従事者が評価結果を実際の臨床判断へつなげられる情報を発信しています。現在は療養病院に勤務しています。
脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に、評価方法、リスク管理、実務で迷いやすい判断の境界を整理しています。本記事も、骨性ランドマークの位置確認だけでなく、触診所見の解釈と次の評価につながる構成を重視しています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

