GUSS は「急性期脳卒中で誤嚥リスクを段階的に整理する」ための尺度です
GUSS は、急性期脳卒中で「いま経口を始めてよいか」「どの程度の見守りが必要か」を、単発の陽性・陰性だけでなく段階評価で整理しやすい嚥下スクリーニングです。水だけで終わらず、半固形・液体・固形へ順に進める発想があるため、誤嚥リスクと食事条件の目安を同時に考えやすいのが特徴です。
先に全体フローを確認したい場合は、脳卒中の ST 嚥下初期評価を見ておくと位置づけがつかみやすいです。この記事では、原票の転載ではなく、急性期病棟で GUSS をどう回し、どう解釈し、次の一手へつなげるかに絞って整理します。
結論|GUSS は「安全域を小さく探る」時に強い尺度です
GUSS の強みは、危険なら止める、通れば次へ進む、という順番が明確なことです。いきなり高負荷の飲水を試すのではなく、まず間接所見を確認し、その後に半固形から始めるため、急性期でも比較的安全に回しやすい設計です。
一方で、点数だけで食形態を決めると運用が硬くなりやすい面もあります。GUSS は「経口 OK の証明」ではなく、「どの程度まで安全に試せるか」を整理する入口と捉えると使いやすくなります。
まず要点|GUSS を 1 分で整理
最初に全体像を押さえると、その後の本文が読みやすくなります。GUSS は、急性期脳卒中を主な対象とした多段階の bedside screen で、間接嚥下テストの後に、半固形 → 液体 → 固形の順で直接テストへ進む構成です。
スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 項目 | ポイント | 実務での意味 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 急性期脳卒中 | 病棟での初期判断に乗せやすい |
| 評価の考え方 | 段階評価 | 単発の陽性・陰性より安全域を探りやすい |
| 進め方 | 間接 → 半固形 → 液体 → 固形 | 高リスク例にいきなり負荷をかけにくい |
| 向く場面 | 経口開始の可否、見守り条件の仮決め | 病棟の共通言語を作りやすい |
| 注意点 | 点数だけで食形態変更しない | 呼吸、姿勢、口腔、疲労と合わせて判断する |
GUSS とは|陽性・陰性より「段階評価」が強みです
水飲み系のスクリーニングは、「通った / 通らない」の 2 分法で扱われやすい一方、GUSS は重症度を段階で捉えやすいのが特徴です。急性期脳卒中では状態変動が大きく、「完全にダメ」でも「完全に大丈夫」でもない患者さんが多いため、この中間帯を表現しやすいことに価値があります。
また、GUSS は食事条件の目安に結びつけやすい一方で、後続研究では FEES より保守的な食事提案になりやすい群も報告されています。つまり、リスクを低く見積もりすぎない利点がある反面、点数だけで強く制限しすぎない視点も必要です。
GUSS が病棟で使いやすい理由
| 理由 | 臨床的な意味 | 申し送りで使う言葉 |
|---|---|---|
| 順番が固定されている | 評価者ごとの差が出にくい | どこで止まったかを共有しやすい |
| 半固形から試せる | 高負荷飲水を避けやすい | 液体前に残留と喉頭反応を見られる |
| 段階評価 | 軽度〜重度を分けやすい | 条件付き OK の言語化に向く |
GUSS の構成|間接 → 半固形 → 液体 → 固形の順で進めます
GUSS は、大きく「間接嚥下テスト」と「直接嚥下テスト」に分かれます。まず、覚醒、唾液嚥下、咳、流涎、声質などの間接所見を確認し、進められる条件がそろっていれば、直接テストへ移ります。
直接テストは、半固形から始まり、問題がなければ液体、さらに固形へ進む構成です。この順番があることで、いきなり危険な条件へ進みにくく、急性期で「小さく安全に試す」運用に向きます。
| 段階 | 主に見ること | 止めどころ |
|---|---|---|
| 間接嚥下テスト | 覚醒、随意咳嗽、唾液嚥下、声、流涎 | 前提条件が崩れるなら直接テストへ進まない |
| 半固形 | 咽頭通過、残留、湿性嗄声、むせ | 危険所見が出たら次へ進めない |
| 液体 | 薄い液体での安全性 | 咳、湿性嗄声、呼吸変化で中止 |
| 固形 | 咀嚼と送り込み、残留、疲労 | 咀嚼困難や残留が強ければ条件再設計 |
GUSS の見方|点数は「食事条件の仮説」を立てるために使います
GUSS は最高点が 20 点で、一般に 20 点を嚥下障害なし、15〜19 点を軽度、10〜14 点を中等度、0〜9 点を重度の目安として扱います。ただし、この区分は「病棟でそのまま食事を決める命令」ではなく、誤嚥リスクと見守り強度をそろえるための共有言語と考える方が安全です。
実際には、同じ点数でも、湿性嗄声が強いのか、疲労で崩れるのか、体位で改善するのかで意味が変わります。点数は入口、最終判断は呼吸・姿勢・口腔・耐久性・病棟再現性まで含めて行う、という順番を崩さないことが大切です。
| 区分の目安 | 解釈 | 実務で意識すること |
|---|---|---|
| 20 点 | 嚥下障害なしの目安 | それでも疲労、注意低下、姿勢崩れは別で確認する |
| 15〜19 点 | 軽度の目安 | 条件付き経口や見守り強化が必要なことがある |
| 10〜14 点 | 中等度の目安 | 安易な食上げを避け、追加評価を検討する |
| 0〜9 点 | 重度の目安 | 経口見送りと精査の優先度が高い |
急性期病棟での回し方|「24 時間以内の赤旗確認」の後に使うと安定します
GUSS は、いきなり単独で回すよりも、「24 時間以内に赤旗を除外したあと」に使うと安定します。意識、呼吸、姿勢、口腔環境が整っていない患者さんに形式的に点数を付けても、実際の安全性を反映しにくいからです。
急性期脳卒中での入口整理は、嚥下評価フロー完全版や、先に挙げた脳卒中初期評価の記事と合わせて見ると、GUSS をどこで使うかが見えやすくなります。病棟では「誰が、いつ、どこまで進めるか」を固定しておくと、再現性が上がります。
| タイミング | まず確認すること | GUSS の位置づけ |
|---|---|---|
| 入院直後〜24 時間 | 意識、呼吸、姿勢、分泌物、随意咳嗽 | 赤旗が強ければ実施より条件調整を優先 |
| 24〜48 時間 | 前提条件が整ったか | 経口条件の仮設定に使う |
| 初回結果後 | 食事場面で再現できるか | 食形態・一口量・見守りへ翻訳する |
| 状態変化時 | 発熱、疲労、呼吸悪化、離床量変化 | 再評価の入口として再使用を検討する |
GUSS の結果をどう活かすか|経口開始・精査・再評価につなげる
GUSS の結果は、点数をカルテに書いて終わりではありません。実務で必要なのは、「いま経口を始めるか」「何を条件にするか」「どの所見が出たら止めるか」を短く共有できる形にすることです。
また、GUSS だけで迷いが解けない場面では、VE / VF の検討や、別のスクリーニング、食事場面観察へ進む判断も必要です。GUSS は“答え”ではなく、“次の分岐をそろえるための入口”と考えると使いやすくなります。
| 結果の読み方 | その場で決めること | 次に見ること |
|---|---|---|
| 高リスク | 経口見送り、代替手段、精査相談 | 呼吸、分泌物、姿勢、VE / VF の必要性 |
| 中間帯 | 条件付きで試すか、見送るか | 一口量、食形態、疲労、見守り強度 |
| 低リスク寄り | 病棟での再現条件を明文化 | 食事場面での崩れ、注意低下、耐久性 |
現場の詰まりどころ|よくある失敗と回避策
GUSS で最も多い失敗は、点数をそのまま食形態に置き換えてしまうことです。実際には、同じ点数でも、呼吸状態、湿性嗄声、座位の安定性、疲労の出方で病棟の安全性は変わります。尺度は共通言語ですが、最終判断そのものではありません。
もう一つ多いのは、前提条件がそろっていないまま実施することです。傾眠、努力呼吸、強い分泌物貯留があるときは、GUSS を回すこと自体より、まず条件調整と再評価のタイミング設定が先になります。
| よくある失敗 | なぜ起こるか | 回避策 |
|---|---|---|
| 点数だけで食形態を決める | 尺度を最終判断と誤解しやすい | 呼吸・姿勢・疲労・食事場面で補正する |
| 条件不良のまま実施する | 意識や呼吸の前提が崩れている | 赤旗があれば実施より条件調整を優先する |
| どこで止まったか残さない | 点数のみ記録してしまう | 止まった段階と危険所見を短文化する |
| 陰性で安心しすぎる | 疲労や状態変動を拾えていない | 食事場面と経時変化で再評価する |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
GUSS は誰に向いていますか?
主に急性期脳卒中で、経口開始の可否や見守り条件を段階的に整理したい場面に向きます。単発の陽性・陰性より、中間帯を含めて考えたい病棟運用と相性が良いです。
GUSS の点数だけで食事を決めてよいですか?
点数だけで決めるのはおすすめできません。GUSS は共通言語として有用ですが、呼吸、姿勢、口腔、疲労、食事場面での再現性まで合わせて判断する必要があります。
GUSS が低得点なら必ず VE / VF が必要ですか?
必ずではありませんが、経口見送りの妥当性確認、病態の可視化、代償手段の検討が必要なときは VE / VF の優先度が上がります。特に、中間帯で判断に迷うときは機器評価が有用です。
GUSS は液体から始めないのですか?
一般に GUSS は、間接所見の確認後に半固形から進める構成です。高負荷の液体を最初に入れないことで、急性期でも比較的安全にスクリーニングしやすい設計になっています。
次の一手
GUSS の使い方を押さえたら、次は「他のスクリーニングとどう使い分けるか」「機器評価へいつ進むか」をつなげて考えると、病棟での判断が安定します。尺度単体で止めず、全体フローに戻して使うのが実務では重要です。
続けて読むなら、脳卒中の ST 嚥下初期評価、嚥下スクリーニング検査|妥当性と中止基準、VE と VF の違い【比較】の順がつながりやすいです。
評価の型を整えても、教育体制や相談環境で止まりやすいことがあります。運用を整える視点まで含めて見直したい方は、無料チェックシートで職場環境を見える化してみてください。
働き方や学び方を含めて整理したい場合は、PT のキャリア総合ガイドも役立ちます。
参考文献
1)Trapl M, Enderle P, Nowotny M, Teuschl Y, Matz K, Dachenhausen A, Brainin M. Dysphagia bedside screening for acute-stroke patients: the Gugging Swallowing Screen. Stroke. 2007;38(11):2948-2952. DOI: 10.1161/STROKEAHA.107.483933
2)Warnecke T, Im S, Kaiser C, Hamacher C, Oelenberg S, Teismann I, Dziewas R. Aspiration and dysphagia screening in acute stroke – the Gugging Swallowing Screen revisited. Eur J Neurol. 2017;24(4):594-601. DOI: 10.1111/ene.13251
3)Boaden E, Burnell J, Hives L, Dey P, Clegg A, Lyons MW, Lightbody CE, Hurley MA, Roddam H, McInnes E, Alexandrov A, Watkins CL. Screening for aspiration risk associated with dysphagia in acute stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2021;10(10):CD012679. DOI: 10.1002/14651858.CD012679.pub2
4)Danube University Krems. GUSS – Gugging Swallowing Screen. 公式ページ
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


